インドの国技とも言えるクリケットのワールドカップ(T20方式)が3月8日からインド7都市のスタジアムで行われている。昨夜、準決勝で西インド諸島チームに敗れ、敗退が決まった。インド12億人総意気消沈。
この期間中に行われた試合で最も熱かったのはインド対宿敵パキスタン戦。それがグループ予選であっても消化試合であっても天下分け目の戦の如く人々は熱くなる。パキスタンに負ける、などあってはならないのである。
3月19日コルカタで行われた印パキ戦をカシミールの領有権をめぐり国境で抗争続くジャムー&カシミール州のジャムーの義母宅でTV観戦。インドの勝利が決まるやいなや町のあちこちで花火が上がり、バイカー達が狂ったようにインドの旗をかざして道路占拠して蛇行していた。
当夜インドのあちこちで見られた光景なのだけれど、単純に勝利の歓喜のレベルではなく、憎き敵を叩きのめした征服者とでもいうのか、興奮と陶酔はギリギリレベル。果てはところ構わず爆竹を投げ始めては歓声あげる狂気じみた若者集団があまりに不気味で動悸がして、笑って眺めている夫の腕をぐいっと引っ張って逃げ帰った。
いつまでも理解できないクリケットのルール
1週間ほど前、デリーの住宅街で子供相手に草クリケットをしていた医者が不注意から通行中のバイクに球(ゴム球)をあててしまい、言い争いの末、バイク二人組が激高。集落から集めてきた仲間15人と共に医者宅に押しかけ、クリケットのバット、鉄パイプで医者を集団で撲殺する事件があった。
案の定、というべきか。襲撃直前に危険を察知した被害者が警察に電話で助けを求めるも通話中で連絡とれず。未成年者4名を含む9人が今日までに逮捕されているがひと声で集結してたった一人の、しかも素手の人間に襲い掛かるという残虐な集団殺人事件に発展した。
まだ記憶に新しい2011年末のデリーでの集団婦女暴行致死事件。以降も数え切れない集団犯罪(特に女性を狙った)がここで起こっているのだがそれを見るにつれこの「集団」に対する警戒心がますます強くなってくる。
こんな集団犯罪の多くは、声の大きなリーダー格が周囲、同じ境遇にいる・判断力の弱い・心理的な影響を受けやすい人間たちに衝動と暴力性というものを感染させていくのだろうか。私見ではあるけれどここで見る犯罪の集団は、リーダー格に絶対服従の掟があるような手の集団ではなくて「皆でやれば怖くない」的な心理が動いているように思う。
私の日常生活でインド人の「各々が好き勝手」に困窮することが多々あり、意見をまとめるなんぞ至難の技なのだが、それはあくまでも自分には好き勝手を言う権利があると思い込んでいる社会の上層部であって、多くの集団犯罪のケースの加害者グループは、ほぼ底辺に近い、抑圧された、持たざる層でこの層の結束力は非常に高いように思う。
蓄積された抑圧への不満の矛先が、破裂のきっかけを作ったその目前の人間に全て向き、暴力がエスカレートするのか。そして加担する人数が増えるに従い、残虐な行為は何乗にも熱を帯び、加害者を陶酔させてしまうような気がする。そしてそこでもう一段集団の結束力が強まっていく。
低カーストの特別優遇枠をめぐるデリー郊外のデモから暴動に発展した2月の事件も相当凍った。農民層のお年寄りから若者たちまでのデモ行進とは別に罪のない周辺地域の商店&銀行を焼き討ちしていた暴徒たち。TVニュースに繰り返し流される彼らは時折笑みさえ浮かべて狂ったように暴れていた。
農民層が中心のデモ隊(The Economic Times)
暴徒の襲撃で焼き討ちにあったロータックの中心地(The Economic Times)
集団には細心の注意を図ろうと思う。