少しだけ残したブログ

現在更新していません。

NOVAの主張、控訴審でも通らず

2005-08-21 | 裁判
※中途解約希望の方はこちらへ → NOVA中途解約訴訟の判決は妥当か
 (記事に下に多くの方がコメントを残してくれています)


7月20日に東京高裁で、英会話教室NOVAの中途解約時の返還金に関する控訴審判決が出ています。
これは、今年2月17日の東京地裁判決でNOVAの主張が認められず、受講者側が勝訴しましたが、これを不服として、NOVAが控訴していたものです。
事実関係など経緯については、2月23日の当ブログ記事(NOVA中途解約訴訟の判決は妥当か)に譲るとして、東京高裁がどのように判断したのかを中心にご紹介します。

※話がややこしくなるので、地裁判決記事同様、レッスンポイントとVOICEチケットのうち、前者のみで説明します。

     ◇

●当事者
控訴人(一審の被告):株式会社ノヴァ
被控訴人(一審の原告):受講者

●一審判決
NOVAは、レッスンポイントを一括購入するシステムをとり、ポイント数が多いほど、1レッスン当たりの単価が安くなる制度となっている。
本件受講者は、600ポイントのまとめ買いをして、1レッスンあたり1200円の単価で受講していたが、386ポイント消化時点で中途解約をした。
残金の返還に当たって、NOVAの約款によれば、消化分386ポイントに一番近い300ポイント(@1750円)または400ポイント(@1550円)のまとめ買い単価を386ポイントに掛けて、低いほうの金額を既消化分として計算する。(結果1550円で計算)
それに従い、NOVAは10万円余り(はっきりしません)を返還したが、受講者は消化分の計算も1200円の単価で行うべきとして訴訟を起こした。

裁判所は、契約時1200円と返金時1550円との差額は、特定商取引法の定める違約金(5万円または契約残額の100分の20に相当する金額のいずれか低い額)の範囲を超えるので違法とし、386ポイント×1200円を総支払額から差し引いた31万円余りを返還するよう言い渡した。

【図式】レッスンポイントのみ紹介
・600ポイント×1,200円+消費税=756,000円 で契約
・386ポイント消化時点で解約申し入れ

NOVAは・・・
・約款により、386ポイント×1,550円=620,000円 として消化分を計算
・756,000円-620,000円で計算し、10万円余りを返還(消費税は不明)

受講者は・・・
・386ポイント×1,200円=463,200円 として消化分を計算
・756,000-463,200=292,800円 を返還すべきと主張(VOICEチケットを加え、解約手数料を引いて計31万円余りの返還を求めた)

●関係法令
(1)特定商取引法49条2項
役務提供事業者は、前項の規定により特定継続的役務提供契約が解除されたときは、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務の提供を受ける者に対して請求することができない。
一  当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始後である場合 次の額を合算した額
(イ)提供された特定継続的役務の対価に相当する額
(ロ)当該特定継続的役務提供契約の解除によつて通常生ずる損害の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額

(2)同49条7項
前各項の規定に反する特約で特定継続的役務提供受領者等に不利なものは、無効とする。


●NOVA約款
(a)消化済み受講料
消化済み受講料を算定する際に用いるべきポイント単価は、役務提供済みポイント数以下で最も近いコースの契約時のポイント単価とし、デイタイム登録、スタンダード登録、24時間登録の登録種別に該当する単価とする。
ただし、消化済み受講料は、役務提供済みポイント数以上の最も近いコースのポイント総額を上限とする。
(b)中途登録解除手数料
中途登録解除手数料は、差し引き計算後の金額の2割(ただし、5万円を上限とする)とする。


●争点
NOVA約款の消化済み受講料精算規定は、特商法49条2項1号イに違反して無効か。

●高裁の判断
【49条2項の解釈】
・NOVAは、49条2項が「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を控除できると定めているのみであって、その算定の基礎となる単価については何も規定していないから、個々の契約にゆだねる趣旨であると主張している。
・しかし、いかなる単価でも自由に定めることができるというのであれば、法の趣旨を潜脱することになりかねない。
・だから、NOVAの「消化済受講料精算規定」には、合理的な理由があり、受講者の中途解約権の行使を必要以上に制限する内容となっていないかについて検討すべきである。

【購入時単価での精算は、数量割引制度を否定するか】
・NOVAは、数量割引制度でのポイント単価は、購入数量を全部使い切ることを前提にしており、中途解約する場合に同じ単価となることを意味しない、そうしなければ数量割引制度を否定することになると主張している。
・しかし、NOVAの同業者で、購入時の単価で精算している事業者もある。(首都圏を中心に27店舗をの英会話教室を経営する業者)
・この例からも、数量割引制度と購入時単価での精算は両立しないものではなく、「消化済受講料精算規定」を無効とすれば当然に、数量割引制度の否定とはならないことは明らかである。

【大量購入した中途解約者と少量購入者との不公平感】
・NOVAは、当初から少量のポイントを購入した受講者と、当初、大量購入しておいて少量のポイントを消化したところで中途解約をした受講者との公平を図る必要があるから、「消化済受講料精算規定」は合理的であると主張している。
・そして、以下のように例示している。同じ200ポイントを消化する場合でも、当初から200ポイントだけ購入した者は、ポイント単価1950円、総額39万円で受講することになるのに対し、当初600ポイント購入して200ポイント消化後に中途解約する者は、ポイント単価1200円、総額24万円が控除されるのみとなり、結果的に割引料金でレッスンを受講できたということになるが、これでは同じポイント分だけレッスンを受講した者の間で不公平を生じる。
  最初から200ポイント購入 200×1950円=39万円
  最初600購入後200で中途解約 200×1200円=24万円 ・・・不公平を生じると主張
・しかしながら、特商法は役務の内容と対価との均衡性についてなんら介入しないから、ある受講者が有利な条件で契約したとして、他の受講者が提案されたポイント単価を容認していたのであれば、法令違反(詐欺・公序良俗違反など)がないかぎり、直ちに同一の取引条件として比較すべき事柄とはならない。

・「大量購入後の中途解約者」の取引と「少量購入者」の取引を比較する場合に考慮しなければならないのは、次のことである。
(i)前払いで支払われる料金は、事業者による英会話教授が着手前であり、仕事の結果に対する報酬としては、収納するに至らない前渡し金の意味合いがあるものであり、事業者が英会話教授をしないこと(中途解約)が確定すれば、その時点で受講者に返還されるべき性質の金銭であると理解される点。
(ii)NOVAが不公平だとして比較する両者は、そもそも前払いする購入額(総額)が大きく異なり、事業者が前払いにより得られる経済的利益には大きな差異があるので、両者の間には明らかに取引条件の差異が存在するという点。
・だから、消化済み受講料精算規定の合理性を論ずるのは筋違いと言わなければならない。
・NOVAには、本件と同様の請求に対し、「消化済受講料精算規定」によらずに、購入時の単価で精算した例があり、この例と本件との不公平のほうがむしろ問題である。
・本件では、ほかに合理的な理由があると認められないから、当該「規定」は受講者の中途解約権の行使を必要以上に制限する内容となっているものといわざるを得ず、無効というべき。

【結論】
受講者に返還すべき額は「310,486円」となる。
 ・787,500円-(1260(税込み)×386pt)=301,140円
 ・VOICEチケット差引額 59,346円
 ・中途解約手数料 ▲50,000円(約款により301,140+59,346の2割(上限5万円))
これに加え、年5分の遅延損害金を支払う。

●結論
NOVAの控訴を棄却する。

     ◇

NOVAの約款には、契約日からの経過日数によって、サービスを受けていなくても、受けたものとみなされるという規定がありました。
これについては、別件の裁判(平成16年7月13日東京地裁判決)で、「実際に提供されていないレッスンポイントを有効期限の経過等を理由に消化済みのものとみなして計算することは許されない」と判断されており、NOVAもこれを受けて、現在では約款の当該事項については無効であると自認しると、判決文の中にありました。

この控訴審判決記事については、さい法律特許事務所の杉浦幸彦先生が判決文をご自身のホームページに掲載してくださり、それを参考に書きました。
こちらのページには、昨年の別件裁判の判決文も掲載されています。

さい法律特許事務所HP
http://homepage2.nifty.com/psypsy/sub3.html

最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (yaoya)
2005-09-21 00:01:24
かなり前の記事ですがどうしてもお聞きしたいことがあるので失礼します。

私もNOVAで英会話を受講していたものですがかなりのポイントを残して期間を満了してしまいました。その場合でもそれに見合った金額の返還というのはありえるのでしょうか。



中途解約はしてもしなくてもお金が戻ってこないと言われたので解約はしませんでした。
返信する
yaoya様 (管理人Nancy)
2005-09-21 10:06:57
NOVAの約款によれば、yaoyaさんがおっしゃるとおり、返金されないようですね。

でも、昨年の判決で、実際に約款に従わず、有効期間が過ぎた分も返金された事例があり、現在、中途解約を希望している方が、戦っているところです。

その方もyaoyaさん同様、NOVAからは期間が過ぎている部分は返金できないと言われたのですが、「返金された生徒(昨年の判決の原告)もいると聞いたが、自分はなぜ返金してもらえないのか」とNOVAにFAXで質問しているところです。



当ブログの2月の記事には、中途解約希望の方や担当弁護士の方など、多くの方がコメントを書き込んでくださっています。こちらはご覧になりましたか?



NOVA中途解約訴訟の判決は妥当か

http://blog.goo.ne.jp/nancy_9/e/bd72d1a5473054393063f1651a9fcf36
返信する
Unknown (yaoya)
2005-09-21 16:13:18
ありがとうございます。覗いてみます。
返信する