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グレーゾーン金利に最高裁が判断

2006-02-06 | 裁判
消費者金融での貸付金利について、無担保のフリーローンの場合、多くの貸金業者が10数%~28%ぐらいの利率で行っています。これは、刑事罰もある出資法の定める上限金利が年利29.2%だからです。
しかし一方で、刑事罰のない利息制限法は上限金利を年利15%、18%、20%(借りる額により異なる)としており、この二つの法律の間(15・18・20%~29.2%)がグレーゾーンと言われる部分です。

そして、このグレーゾーンを合法化するのが貸金業規制法です。お金を借りた人が利息制限法の利率を超える利息を“任意”に支払い、かつ、貸金業者が書面交付などの一定の要件を満たしていれば、グレーゾーンでの営業を認めているのです。これが「みなし弁済」です(貸金業規制法43条)。

これについて、最近では利息制限法を超える利息を無効とする裁判がちらほら出ています。そして1月になって相次いで最高裁判決が出ました。1月13日、19日、24日の広島高裁から上告されたもの2件、福岡高裁1件の計3件です。

金融庁ホームページから、これら判決をまとめたものがありますので、ご紹介します。

●平成18年1月13日判決
判決は、「みなし弁済」の適用の前提である法定書面の妥当性及び弁済の任意性の要件について、以下のように判示し、「みなし弁済」の適用を否定した。

① 法定書面の妥当性
▽今般の判決では契約締結時の交付書面(貸金業規制法17条)は問題にしていないが、弁済受領時の交付書面(法18条)について、現行の記載方法の妥当性を否定した。
▽具体的には、貸金業規制法施行規則においては、法定事項である「契約年月日」等に代えて「契約番号」の記載をもってすることが認められているが、これは法の委任の範囲を超えた違法な規定であり、無効である。

② 弁済の任意性
▽貸金契約における「期限の利益喪失条項(利払いが期日に遅れれば期限の利益を喪失し一括返済を求め得る旨の条項)」は、利息制限法上限金利を超える部分については無効である。
▽しかしながら、本件事案の契約における期限の利益喪失条項は、債務者に対し、利息制限法の上限金利を超える部分も含め約定どおりに利息を支払わない限り、期限の利益を喪失し、一括返済を求められるとの誤解を与え、結果として、債務者に対して、超過部分を支払うことを事実上強制することになる。
▽したがって、上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り、弁済が任意であったとはいえない。

●平成18年1月19日判決
判決は、「みなし弁済」の適用の前提である弁済の任意性について、1月13日の最高裁判決と同旨を判示した(書面要件は争われなかった)。

●平成18年1月24日判決
判決は、「みなし弁済」の適用の前提要件について、以下のように判示し、「みなし弁済」の適用を否定した。
▽日賦貸金業者について「みなし弁済」が適用されるためには、日賦貸金業者の業務方法の要件(返済期間が100日以上、一定日数以上にわたり訪問して取立てを行う等)が、契約締結時だけでなく、実際の貸付けにおいても充足されている必要がある。
▽「みなし弁済」適用の前提となる法定書面の要件は、厳格に解するべきであり、「貸付けの金額」「各回の返済期日及び返済金額」が正確に記載されておらず、また、「受領金額」の記載が誤っている書面は、法定の要件を満たさない。
▽貸金契約における「期限の利益喪失条項」については、上記1月13日及び1月19日の最高裁判決と同様の理由から任意性を否定した(但し、裁判官1名はこれと異なる意見を付している)。


3つの判決は最高裁の第1~第3小法廷で行われ、どれも「破棄差し戻し」でした。つまり、もう一度、元の裁判(広島・福岡の高等裁判所)をやり直せという判断です。

上記は分かりにくいと思いますので、アサヒコムのニュース(「法の上限超すが罰則ない『灰色金利』、最高裁が実質否定」2006年01月14日03時03分)から説明すると、下記のようになります。

・最高裁は、超過利息の任意性について、「明らかな強制だけでなく、事実上の強制があった場合も、上限を超えた分の利息の支払いは無効」と判断。
・ローン契約で一般的な「分割返済の期日までに利息を支払わなければ、直ちに一括返済を求める」との特約について、「期日通りに約束した利息を支払わないと残った元本をすぐ一括して支払わなければならないうえ、遅延損害金も支払う義務を負うことになるという誤解を与え、上限を超える利息の支払いを事実上強制している」と指摘。
・上限を超えた利息も払わなければならないとした二審判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。
・事業者は返済を受けたときにはその都度、受領証を交付しなければならず、そこには契約日や金額の記載義務があるが、契約番号だけでいいとしている内閣府令を無効とする初判断を示した。
・消費者金融や商工ローンのほとんどはグレーゾーン金利で営業している。上記の特約は、確実に利息の支払いを求める方法として広く使われているが、今回の判決によれば難しくなる。

現在、金融庁では貸金業制度について検討が進んでいます。判決を受けて、みなし弁済規定の厳格適用が図られていくことになるのでしょう。

以下、最高裁HP
平成18年1月13日 第二小法廷判決 貸金請求事件
平成18年1月19日 第一小法廷判決 貸金請求事件
平成18年1月24日 第三小法廷判決 不当利得返還請求事件

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (yutakami)
2006-02-06 04:37:28
Nancyさんのお仕事柄当然と言えば当然ですが『広告月報』の密やかな露出にコメントを畏れ入りました。

広告を世の中に出す前の倫理的、マーケティング的な「作法」を未だに編み出せない「送り手」を批判した訳でした。

ま、最後は法、司法によるルールですが。この記事のようなことがなるべく他の業界では起きないよう祈りたいものです。

TBさせてくださいませ。
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Unknown (管理人Nancy)
2006-02-06 22:05:55
yutakami様

私は『広告月報』は見てなかったんですが、たまたま上司がそのページを開いていて、みつけました。yutakami様もご活躍の範囲が広いですね。ブログ記事からもあちこちを歩いている様子だし。

お仕事がらネタがたくさん集められそう。
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グレーゾーン金利 (graucho0011)
2006-02-06 23:01:28
私も先月のBLOGで、最高裁の判決について書いていたのですが、その後も出ていたことは気がつきませんでした。これだけ判決が出て違法だというのに、サラ金のCM、グレーゾーン金利のままというのは、おかしいと思うのですが?
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Unknown (管理人Nancy)
2006-02-06 23:39:15
graucho0011様、コメントありがとうございます。

消費者金融のCMについては金利の問題ばかりでなく、いろんな意見がありそうです。

利率などの実質的な問題もそうですが、若い人が安直に借りるシチュエーションのCMなど、私はCM内容についても言いたいことありますねー。
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宜しければTBください (yutakami)
2006-02-13 08:17:54
相変わらず勤務先からはアクセスできません。どうやら学生が過去悪さをした「報い」のようです。記事ナンシーさんからもTB頂ければ幸いです。学生サービスなので・・・。
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Unknown (管理人Nancy)
2006-02-13 12:05:13
いつもお引き立てありがとうございます。

TBさせていただきました♪



そうか、学生さんの悪さで・・・。(笑)
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