少しだけ残したブログ

現在更新していません。

NOVA、京都地裁でも敗訴

2006-02-25 | 裁判
※中途解約を希望の方は、17年2月23日の当ブログ記事をご覧ください。
 たくさんの方がコメントを書き込んでくださっています。 →
 NOVA中途解約訴訟の判決は妥当か

1月30日に、京都地裁でNOVAの中途解約に関する判決が出ています。
毎日新聞の記事によれば、京都府宇治市の女性が契約時の単価に基づく清算を主張し、地裁は請求どおりの176,672円の支払いをNOVAに命じました。

記事をみると、ポイントになるのはこの部分でしょうか。
同社側は「契約時に合意しており、法規制の対象外」と反論したが、衣斐瑞穂裁判官は「契約時より高価な金銭的負担を求める内容で無効」とし、請求通り17万6672円の支払いを同社に命じた。
女性の代理人の長野浩三弁護士は「法の対象外との主張を退けた判決は初。全受講生に当てはまり影響は大きい」と話している。


今回の裁判では、「中途登録解除手数料」なる料金が出てきます。

     ◇ ◆ ◇

=裁判の概要=
●当事者
原告・・・生徒
被告・・・NOVA

●原告の契約内容
平成13年10月25日に以下を契約。
 レギュラーコース〈スタンダード〉
 150ポイント(ポイント単価2,050円)
 有効期限=3年間
 総額290,580円(10%割引価格)

●契約時交付書面
「APPLICATION FORM(生徒登録申込書・生徒控)」
上記書面の「弊社控」はNOVAへ。

●料金体系
レギュラーコース 1レッスンあたり1ポイントを使用して受講(態様によって2ポイント以上のものもある)

《ポイント単価》 購入ポイント数が多いと単価が安くなるシステム
 600pt @1,200円
 500pt @1,350円
 400pt @1,550円
 300pt @1,750円
 250pt @1,850円
 200pt @1,950円
 150pt @2,050円
 110pt @2,100円
  80pt @2,300円

●中途解約時の清算方法
 《 受領済み総額 - 下記(ア)~(オ) 》
(ア)消化済み受講料・・・※1
(イ)消化済みVOICE利用料
(ウ)マルチメディア施設利用料
(エ)中途登録解除手数料・・・※2
(オ)教材費

※1消化済み受講料を算定する際のポイント単価は、役務提供済みポイント数以下で最も近いコースの契約時のポイント単価とし、デイタイム登録、スタンダード登録、24時間登録の登録種別に該当する単価とする。ただし、消化済み受講料は役務提供済みポイント数以上の最も近いコースのポイント総額を上限とする(以下「本件規定」という)。
※2(受講料・VOICE利用料・マルチメディア施設利用料(通信料含)の契約総額-(ア)-(イ)-(ウ))×20%とする。ただし、5万円を上限とする。


●解約の意思表示
36ポイントを消費し、16年10月6日に解約の意思表示をした。

●当事者の主張
・・・省略・・・


=裁判所の判断=
●検討事項
(1) 特商法における特定継続的役務提供契約に関する規制の趣旨
(2) 本件規定が特商法49条2項、49条7項の規制を受けるか
(3) (2)が否定された場合、本件規定が、民法90条、消費者契約法10条に照らして有効といえるか
(4) (2)が肯定された場合、本件規定が、特商法49条2項、49条7項に照らして有効といえるか

(1)特商法における特定継続的役務提供契約に関する規制の趣旨
【制定の背景】
▽特定継続的役務提供取引の規制は、平成11年改正の訪問販売法に制定された。
▽英会話教室などの契約の特徴は、(a)継続的にサービスを受けることで効果が生じることで勧誘される、(b)長期間のサービス提供、(c)これに見合う対価をあらかじめ支払う、(d)高額かつ長期間の継続的な契約が取り結ばれることが多い――など。
▽それで、エステティックサロンや外国語会話教室等の契約締結時・中途解約時に紛争が急増していたことを背景として制定された。
▽訪問販売法は、12年に特定商取引法に題名が改められたが、内容は現在の特商法41条以下の規制と概ね同じ。
▽そして、特商法49条に中途解約制度が設けられ、中途解約時の事業者が請求できる金額の上限を規定した。

【規制の趣旨】
▽特定継続的役務提供取引は、(A)契約期間が長期にわたる、(B)受けたサービスの内容を客観的に確定することが難しい、(C)受けたサービスの効果や目的の実現が不確実――などの問題点があり、消費者が期待したサービス提供・効果などが得られず、以後のサービス提供を望まない場合、顧客が契約解除を希望しても事業者が応じないなどの紛争が多発していた。
▽49条の趣旨は、中途解約の要件や事業者が請求できる金額の上限を明確化したことにあると解される。

【特商法49条2項1号イとは】
▽49条2項1号イは、中途解除時に事業者が請求できる金額として「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を定めている。
▽この規定は、中途解約の効果が非遡及(さかのぼらない)であることから、中途解約時点での提供済みのサービスの対価相当額について事業者が正当に請求可能であることを確認的に定めたものと解される。

【特商法49条2項1号ロとは】
▽49条2項1号ロは、中途解除する際、事業者に、政令で定める額を上限とした「特定継続的役務提供契約の解除によって通常生ずる損害」の請求を認めている。
▽この規定は、49条に規定する中途解約が理由の如何を問わず認められることとの均衡上、事業者に一定額を上限とした損害額の請求を認めたものであると解される。

<参考>
49条2項 役務提供事業者は、前項の規定により特定継続的役務提供契約が解除されたときは、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務の提供を受ける者に対して請求することができない。
1号 当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始後である場合 次の額を合算した額
イ 提供された特定継続的役務の対価に相当する額
ロ 当該特定継続的役務提供契約の解除によつて通常生ずる損害の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額


【特商法49条7項とは】
▽49条7項は、「前各項(同法49条1項ないし6項)の規定に反する特約で特定継続的役務提供受領者等に不利なものは、無効とする」と規定しているが、49条各号が、事業者などに対する片面的強行規定であることを明らかにしたものであると解される。

<参考>
49条7項 前各項の規定に反する特約で特定継続的役務提供受領者等に不利なものは、無効とする。



(2)本件規定が特商法49条2項、同法49条7項の規制を受けるか
【規制を受けないとするNOVAの主張は採用できない】
▽NOVAは次のように主張する。(1)本件規定は、中途解約時の提供済み対価の計算方法に関する受講生との間の合意である、(2)49条2項1号イは、このような合意をすることや、具体的な合意内容について何ら制約を課していない、(3)だから、本件規定が49条2項1号イ、49条7項の規制を受けることはなく、これらの規定に違反するかは問題にならない。
▽確かに、49条2項1号イは、中途解約の時点で提供済みサービスの対価相当額について事業者が正当に請求可能であることを確認したにすぎないことからすれば、49条2項1号イが、計算方法などについて事業者と受講生との間で合意をすること自体を制限するものとは解されない。
▽しかし、49条2項1号イは、同号ロと相まって、中途解約時に事業者が請求できる上限額を定めたものである。
▽だから、上記の合意内容が、単に計算方法などを定めることを超えて、実質的に、上限額以上の請求を認める内容である場合は、49条2項1号、同49条7項に抵触するものといわなければならない。
▽したがって、中途解約時の提供済みサービスの対価の計算方法に関する合意について、「49条7項の適用が問題にならない」とするNOVAの主張は採用できず、本件規定が、49条2項1号、49条7項に照らし有効であるか否かを検討する必要がある。

(4)本件規定が、49条2項、49条7項に照らして有効といえるか
【契約時より高単価で精算することは実質的に法の許容範囲外】
▽49条2項1号イは、中途解約の時点で既に提供済みのサービスの対価相当額について事業者が正当に請求可能であることを確認的に記載したものである。
▽前払い金を返還する場合において、契約締結時にサービスの単価が定められており、この単価に基づいて前払金の金額が決定されていた場合には、原則として、この単価に従って提供済みサービスの対価を算定するべきである。
▽そして、合理的な理由なく、これと異なる単価を用いることは、実質的に事業者に49条2項1号が許容する金額以上の請求を認めるものであり、特商法が許容しない違約金を請求することになる。
▽したがって、49条2項1号の趣旨に反するものであり、49条7項により無効であるといわなければならない。

【「営業上不利益の軽減」は合理的理由とはいえない】
▽49条2項1号ロが、事業者に一定額を上限にした損害額の請求を認めている。
▽そこからいえば、特商法は、中途解約によって事業者が受ける損害や営業上の不利益は、49条2項1号ロにより填補されることを予定しているというべき。
▽だから、事業者に生じる損害や営業上の不利益を軽減・回避する必要があるといった点は、異なる単価で精算することの合理的理由とはいえないと解される。
▽本件の場合、契約時は1ポイントあたり2,050円(但し10%割引)を適用しているが、中途解約時には提供済み対価を3,800円で算定している。
▽本件全証拠によっても、この算定方法を採用するに足りる合理的理由があるとは認められず、特商法49条2項1号の趣旨に反するものであり、49条7項により無効であるといわなければならない。

【NOVAの主張に対して①-NHK受信料との同視】
▽NOVAは、数量割引制度や中途解約時の高い単価を用いて精算することの合理性を、公共交通機関の料金やNHKテレビ受信料などを例示して、本件規定の有効性の根拠として主張している。
▽しかし、本件では、特商法における有効性が問題とされているので、高い単価での精算の一般的な適否が直ちに本件の結論を左右するものではないし、NHKテレビ受信料契約などが本件契約とは、サービス内容、対価の額、サービス提供期間などの点で性質が全く異なるから、NOVAが主張するような精算方法がとられているからといって、本件規定の有効性が基礎付けられるものでもない。
▽したがって、被告の上記主張は採用の限りではない。

【NOVAの主張に対して②-受講生間の公平確保】
▽数量割引制度における高い単価での精算は、最大数量で契約しておいて中途解約することを防止したり、受講生間の公平を確保するなどの見地から、数量割引制度を維持するために必要であるとして、NOVAは、本件規定の有効性の根拠として主張している。
▽しかし、この主張は、契約時の単価で精算すると、NOVAの営業活動に不利益な結果が生ずるため、これを避ける目的で高い単価を適用する必要があると言っているにすぎず、このような不利益は、49条2項1号ロで認められている「通常生ずる損害の額」の請求によって対処すべきものである。
▽そのため、上記主張は、提供済み対価の算定に当たって、契約時と異なる単価を適用する合理的理由になるとはいい難い。したがって、被告の上記主張は採用できない。

【NOVAの主張に対して③-中途解約権行使の不当な制約】
▽NOVAは、本件規定にはペナルティー的要素はなく、受講生の中途解約権の行使を不当に制約するものではないと主張する。
▽特商法は、受講生に理由の如何を問わず中途解約を認めており、それとの均衡上、事業者に対し、一定額の通常生ずる損害を請求することを許している。
▽だから、契約において、この金額を超える合意をすること自体がペナルティー的要素を帯び、中途解約権の行使を不当に制約するものといわなければならない。

【NOVAの主張に対して④-受講生にも利益との主張】
▽NOVAは、本件規定により数量割引制度が維持されることで、多様な価格帯が提供できたり、他社より質の高い講義を安く提供できるから、受講生に利益があると主張する。
▽しかし、ある合意が49条7項に規定する「不利なもの」に該当するかを検討するに当たり、当該合意の成立過程の事情も総合的に判断することが否定されないとしても、NOVAが主張するような、本件規定が策定されるに至った一般的な背景事情を斟酌すべきものとは解されない。

●以上により、提供済み対価は・・・
▽49条2項1号イに従って提供済み対価相当額を算定すると、
  2,050円(契約時の単価)×36(消化済みポイント)-10%(割引)+消費税
  =69,741円 ・・・提供済みサービスの対価相当額
▽また、NOVAが受講者に請求する中途登録解除手数料も、その前提となる提供済みサービスの算定方法に関する規定が無効であることから、その限度で無効であるといわなければならない。
 →中途登録解除手数料・・・上記「●中途解約時の清算方法」の※2参照
▽したがって、上記で算定した69,741円を前提に、中途登録解除手数料の算定方法(この算定方法自体は、特商法の規定に違反するものではないと解される)に沿って算定すると・・・
  290,580円(受講生支払い総額)-69,741円=220,839円
  220,839×2割=44,167円  ・・・5万円を超えていない
 したがって、NOVAが受講生に請求できる中途登録解除手数料 → 44,167円
▽よって、NOVAが返還すべき金額は・・・
 290,580円(受講生支払い総額)-(69,741円+44,167円)=176,672円

●結論
NOVAは受講生に、176,672円と平成16年12月15日からの年5%の利息を支払え。

H18.2.16京都地方裁判所 平成17年(ワ)第784号 不当利得返還請求事件(最高裁HP)

グレーゾーン金利に最高裁が判断

2006-02-06 | 裁判
消費者金融での貸付金利について、無担保のフリーローンの場合、多くの貸金業者が10数%~28%ぐらいの利率で行っています。これは、刑事罰もある出資法の定める上限金利が年利29.2%だからです。
しかし一方で、刑事罰のない利息制限法は上限金利を年利15%、18%、20%(借りる額により異なる)としており、この二つの法律の間(15・18・20%~29.2%)がグレーゾーンと言われる部分です。

そして、このグレーゾーンを合法化するのが貸金業規制法です。お金を借りた人が利息制限法の利率を超える利息を“任意”に支払い、かつ、貸金業者が書面交付などの一定の要件を満たしていれば、グレーゾーンでの営業を認めているのです。これが「みなし弁済」です(貸金業規制法43条)。

これについて、最近では利息制限法を超える利息を無効とする裁判がちらほら出ています。そして1月になって相次いで最高裁判決が出ました。1月13日、19日、24日の広島高裁から上告されたもの2件、福岡高裁1件の計3件です。

金融庁ホームページから、これら判決をまとめたものがありますので、ご紹介します。

●平成18年1月13日判決
判決は、「みなし弁済」の適用の前提である法定書面の妥当性及び弁済の任意性の要件について、以下のように判示し、「みなし弁済」の適用を否定した。

① 法定書面の妥当性
▽今般の判決では契約締結時の交付書面(貸金業規制法17条)は問題にしていないが、弁済受領時の交付書面(法18条)について、現行の記載方法の妥当性を否定した。
▽具体的には、貸金業規制法施行規則においては、法定事項である「契約年月日」等に代えて「契約番号」の記載をもってすることが認められているが、これは法の委任の範囲を超えた違法な規定であり、無効である。

② 弁済の任意性
▽貸金契約における「期限の利益喪失条項(利払いが期日に遅れれば期限の利益を喪失し一括返済を求め得る旨の条項)」は、利息制限法上限金利を超える部分については無効である。
▽しかしながら、本件事案の契約における期限の利益喪失条項は、債務者に対し、利息制限法の上限金利を超える部分も含め約定どおりに利息を支払わない限り、期限の利益を喪失し、一括返済を求められるとの誤解を与え、結果として、債務者に対して、超過部分を支払うことを事実上強制することになる。
▽したがって、上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り、弁済が任意であったとはいえない。

●平成18年1月19日判決
判決は、「みなし弁済」の適用の前提である弁済の任意性について、1月13日の最高裁判決と同旨を判示した(書面要件は争われなかった)。

●平成18年1月24日判決
判決は、「みなし弁済」の適用の前提要件について、以下のように判示し、「みなし弁済」の適用を否定した。
▽日賦貸金業者について「みなし弁済」が適用されるためには、日賦貸金業者の業務方法の要件(返済期間が100日以上、一定日数以上にわたり訪問して取立てを行う等)が、契約締結時だけでなく、実際の貸付けにおいても充足されている必要がある。
▽「みなし弁済」適用の前提となる法定書面の要件は、厳格に解するべきであり、「貸付けの金額」「各回の返済期日及び返済金額」が正確に記載されておらず、また、「受領金額」の記載が誤っている書面は、法定の要件を満たさない。
▽貸金契約における「期限の利益喪失条項」については、上記1月13日及び1月19日の最高裁判決と同様の理由から任意性を否定した(但し、裁判官1名はこれと異なる意見を付している)。


3つの判決は最高裁の第1~第3小法廷で行われ、どれも「破棄差し戻し」でした。つまり、もう一度、元の裁判(広島・福岡の高等裁判所)をやり直せという判断です。

上記は分かりにくいと思いますので、アサヒコムのニュース(「法の上限超すが罰則ない『灰色金利』、最高裁が実質否定」2006年01月14日03時03分)から説明すると、下記のようになります。

・最高裁は、超過利息の任意性について、「明らかな強制だけでなく、事実上の強制があった場合も、上限を超えた分の利息の支払いは無効」と判断。
・ローン契約で一般的な「分割返済の期日までに利息を支払わなければ、直ちに一括返済を求める」との特約について、「期日通りに約束した利息を支払わないと残った元本をすぐ一括して支払わなければならないうえ、遅延損害金も支払う義務を負うことになるという誤解を与え、上限を超える利息の支払いを事実上強制している」と指摘。
・上限を超えた利息も払わなければならないとした二審判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。
・事業者は返済を受けたときにはその都度、受領証を交付しなければならず、そこには契約日や金額の記載義務があるが、契約番号だけでいいとしている内閣府令を無効とする初判断を示した。
・消費者金融や商工ローンのほとんどはグレーゾーン金利で営業している。上記の特約は、確実に利息の支払いを求める方法として広く使われているが、今回の判決によれば難しくなる。

現在、金融庁では貸金業制度について検討が進んでいます。判決を受けて、みなし弁済規定の厳格適用が図られていくことになるのでしょう。

以下、最高裁HP
平成18年1月13日 第二小法廷判決 貸金請求事件
平成18年1月19日 第一小法廷判決 貸金請求事件
平成18年1月24日 第三小法廷判決 不当利得返還請求事件