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NOVA中途解約訴訟の判決は妥当か

2005-02-23 | 裁判
※一番下に何人もの方がコメントを書き込んでくれています。

《参考-当ブログ記事》
NOVA精算規定は無効、高裁でも受講者勝訴 18.2.28東京高裁判決
NOVA、京都地裁でも敗訴 18.1.30京都地裁判決
消費者機構日本がNOVAに申し入れ
またまたNOVAの中途解約訴訟 17.9.26東京地裁判決
NOVAの主張、控訴審でも通らず 17.7.20東京高裁(本件の控訴審判決)

英会話教室入学時に前払いで支払った受講料のうち、中途解約したときに返還される金額についての訴訟があり、2月17日に東京地裁で判決が出ています。

原告(受講者)は、レッスンポイントとVOICEチケットをまとめて購入して受講していましたが、購入したポイントなどのうち過半を消化したところで中途解約し、教室側が約款の規定に従って10万円余り(※金額ははっきり分かりません)を返還したのは不当として、原告は31万円余りの返還を求めました。
地裁の判決では、原告の主張が全面的に認められています。

この判決の内容について、紹介します。

●経緯
原告は、NOVA王子校に平成13年9月に入学し、以下を支払っています。
 ・ レッスンポイント 600ポイント×1200円+消費税=756,000 (1ポイントで1レッスン受講できる)
 ・ VOICEチケット 10枚+消費税=21,000
入学後にポイントなどを買い足しているため、合計(税込み)でレッスンポイント787,500円、VOICEチケット105,780円を支払いました。その後、平成16年7月にレッスンポイント386ポイント、VOICEチケット25枚を消化したところで、中途解約しています。

●受講料のシステム
ややこしくなるので、上記のうち、レッスンポイントのみについて説明し、さらに消費税抜きにします。

まとめ買いで受講料が安くなる制度を採っている。例えば・・・
 ・ 600ポイント → 720,000円(1ポイント当たり1200円)
 ・ 500ポイント → 675,000円(〃1350円)
 ・ 400ポイント → 620,000円(〃1550円)
 ・ 300ポイント → 525,000円(〃1750円) ・・・という具合。

●NOVA側の返還額算定
同社約款により、以下2つの低いほうの金額を控除額とすることになっています。
 ・ 消化ポイント数386"以下"で最も近い300ポイントコース
   → 386ポイント×1750円=675,500
 ・ 消化ポイント数386"以上"で最も近い400ポイントコース
   → 620,000円
ということで、控除額は620,000円。
既払い額から620,000を差し引いた額を返還したものと思われます。(※返還額がはっきり分かりません)

●原告の主張
・ 特商法49条2項1号は、サービス開始後に中途解約された際の精算額について、以下2つとこれらに対する法定利率による遅延損害金額を加算した金額と限定しており、これを超える額を請求できない。
  イ 提供された特定継続的役務の対価に相当する額
  ロ 当該契約の解除によって通常生ずる損害の額として、5万円または契約残額の100分の20に相当する金額のいずれか低い額
・ 特商法には、購入時と異なる単価で精算することを認める規定はない。
・ NOVAが価格表記をするに当たり、1ポイント当たりの単価のみを表示しており、このような強調表示で販売した以上、受講者が購入時の単価で精算してもらえると信じるのは当然。

したがって
控除額   386ポイント×1200円=463,200円
返還額   31万円あまり(合計の請求額)

●地裁の判断
・ 特商法の規制の一つとして、クーリングオフ期間経過後に利用者が中途解約をした場合の違約金等の上限規制がある。
・ 前払い金として受領していて、その中から既に提供された役務の対価相当分を控除して返還する場合において、前払い金の授受に際して役務の単価が定められていた場合は、その単価に従って算出するのが原則と解すべきであり、合理的な理由なくこれと異なる単価を用いることは、事実上、違約金を収受するに等しいものとして、上記制限規定に触れるというべき。
・ 被告(NOVA)は約款の趣旨として、購入ポイント全部を受講する意思がないのに、割引価格で大量購入して、中途解約により少数回受講する受講者がいれば、自社の割引制度の意義を無にするため、というが、中途解約を申し出る者がすべてこのような目的とは限らない。
・ 特商法の定める「特定継続的役務」の性格として、現実に利用を開始したところ、サービスや成果が期待通りでないとの理由で中途解約しようとする者が相当数いることも推認するに難くない。だから、中途解約権を保障し、違約金等の上限規制がある。
・ 被告は、当初から少量ポイント購入した受講者と、大量購入して中途解約した受講者の公平を図る必要があると主張するが、中途解約する際に、すでに多額の前払い金を支払っていたという理由によって、優遇された単価で提供済み役務の対価を受けたとしても、あながち不公平とはいえない。
・ 被告は、JR定期券、NHK受信料の中途解約においても同様の制度は見られると、被告約款の合理性が裏付けられると主張するが、特商法の規制対象となる役務と、JR定期券等で提供される役務とでは、役務の内容に関する予測可能性を含め、その性質を異にする。

等々から、被告の約款は、合理的な理由があるとはいえず、中途解約時に制約する役割を果たす点において、特商法の上限規定に反する。
したがって、386ポイント×1200円=463,200円 を超える金額を控除することは許されない。


まとめ買いをすると安くなるのは商慣習としてよくありますが、中途解約による返金のときに、すでにサービス提供を受けた部分の金額算定にどの価格を適用させるかで争われた裁判です。
本判決は、まとめ買いの安い価格(購入時)と通常価格などの高い価格(返金時)との差が、特商法でうたう違約金等と同視できるか、という問題を提起しているように思います。

このような方式をとる事業者は多いと思いますが、この判決が確定するとしたら、それら多くの業者に影響を与えることになるでしょう。

MAINICHI INTERACTIVEによれば、NOVAは「判決は『まとめてたくさん買えば単価が安くなる』という商取引の常識を実質的に否定することになり、到底、納得できない。即、控訴の手続きを取る。」と話しているようなので、この判決で確定することはないと思いますが、控訴審ではどのような判断がなされるでしょうか。

H17.2.16 東京地方裁判所 平成16年(ワ)第25621号 解約精算金請求(最高裁判所HP)

追記:17年7月31日
ここ2週間ぐらい、「NOVA」のキーワードで検索をかけて、このブログに来てくださる方が急に増えました。
新たな裁判でもあったかと探してみましたが、よく分かりませんでした。
どういうきっかけで検索されたか、コメントを残していただけたら幸いです。

追記:8月24日
国民生活センターホームページに、以下の判例紹介記事が出ています。
外国語会話教室の中途解約方法を定めた約款と特定商取引法