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消費者機構日本がNOVAに申し入れ

2005-10-28 | 団体
※中途解約希望の方は右の記事(の下にあるコメント)をどうぞ →  NOVA中途解約訴訟の判決は妥当か

消費者機構日本が、NOVAの約款は問題があるとして、同社に対し、改善を求めました。

申し入れ内容
契約時に交付する「書面」に記載された事項に関して、以下のことを求める。
1.中途解約時の精算方法についての「役務提供済ポイント数以下で最も近いコースの契約時のポイント単価」「役務提供済VOICE枚数以下で最も近い枚数単価」との記載を、「当該登録者が実際に役務提供を受けたレッスンポイント数、VOICEチケット枚数にその購入時単価を乗じて算出した額とする」と改訂する。
2.有効期限徒過のレッスンポイント数およびVOICEチケット枚数を役務提供済みポイント数、チケット枚数に加える旨の記述を直ちに削除する。
3.生徒登録申込書裏面の記述の方法、内容を明確かつ平易なものに改める。

上記の申し入れについての「理由」として、(1)提供済み役務の単価の計算方法、(2)有効期限後のポイント等の無効化―の2つの問題点を挙げ、次のように説明しています。

(1)単価の計算方法について
特定商取引法49条2項1号イについて
中途解約の場合、事業者が消費者に「提供済み役務対価相当額」を請求し得る(前払いの場合は返還を要しない)と定め、解除の効力の非遡及(49条1項)との関係で、事業者は既提供済の役務の対価を正当に請求し得ることを確認するとともに、それを上限とすることにより消費者の中途解約権の行使を実質的に保障しています。
この場合の対価相当額は、それが既提供済役務の対価の精算であることから、その単価は契約時単価とすべきであり、これと異なる単価により算出する場合、49条の規定が片面的強行規定であるから、相当の合理性がない限り、49条2項1号イに違反するものです。
(略)
東京地方裁判所、東京高等裁判所の訴訟において、同規定は中途解約権を必要以上に制限するもので、特定商取引法49条2項に反し無効の旨判断されています。


(2)有効期限の設定と計算方法
同法49条2項1号イの規定(略)の範囲は既に提供した役務に対する対価に限られ、未だ提供されていない役務について、提供されたものとみなし、「対価相当額」を算出する旨の記述は同法49条2項1号イを超えて、受講者の負担を強いるもので、明らかに受講者に不利益であり、同条7項により無効です。
さらに、相談事例からは、予約が取れなくて解約する状況や、東京地裁判決(平成16.7.13)でも指摘されていた有効期間や「みなし規定」の説明がされていない状況は、解消されていない実状がうかがわれます。また、相談事例からは、常識的には1年間では消化不可能と思われるポイント数が販売されていると推察もされます。
上記の特定商取引法49条の趣旨及びこうした事情をも総合的に判断する場合、有効期限徒過のレッスンポイント等を役務提供済とみなして精算計算する旨の規定は特定商取引法49条2項1号イに反し、無効です。


参考:
第49条 役務提供事業者が特定継続的役務提供契約を締結した場合におけるその特定継続的役務の提供を受ける者は、第四十二条第二項の書面を受領した日から起算して八日を経過した後(その特定継続的役務の提供を受ける者が、役務提供事業者が第四十四条第一項の規定に違反して前条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は役務提供事業者が第四十四条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでに前条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除を行わなかつた場合には、当該特定継続的役務の提供を受ける者が、当該役務提供事業者が同項の経済産業省令で定めるところにより同項の規定による当該特定継続的役務提供契約の解除を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した後)においては、将来に向かつてその特定継続的役務提供契約の解除を行うことができる。
2 役務提供事業者は、前項の規定により特定継続的役務提供契約が解除されたときは、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務の提供を受ける者に対して請求することができない。
一 当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始後である場合 次の額を合算した額
 イ 提供された特定継続的役務の対価に相当する額
 ロ 当該特定継続的役務提供契約の解除によつて通常生ずる損害の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額
二 当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始前である場合 契約の締結及び履行のために通常要する費用の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額

7 前各項の規定に反する特約で特定継続的役務提供受領者等に不利なものは、無効とする。


また、書面の記載方法・内容は、「非常にわかり難く、一読してその内容を理解することは全く困難なもの」であるため、消費者基本法5条1項1号(消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供することを事業者の責務としている)、消費者契約法3条1項(事業者は契約条項を定めるにあたり、消費者にとって、契約の内容が、明確でかつ分かりやすいものとするよう努めるべき旨規定している)の趣旨に反するもの、としています。

     ◇

消費者機構日本(COJ)は、日本生活協同組合連合会、日本消費者協会、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会が作った組織で、平成16年9月に設立されました。場所は主婦連ビルの中です。
そのホームページトップには「消費者被害の拡大防止のため、消費者団体訴訟制度の実現と活用を目指」すとあります。

そのCOJは、今年6月に各種学校・塾・予備校等の契約トラブル110番を開催しましたが、その結果を受けて、今回、NOVAへの申し入れを行い、9月28日に送付しています。
内容は「特商法に違反するので改善を求める」というものですが、アサヒドットコムには、「NOVAは『約款は所管の経済産業省と意見交換するなど、法に基づいて作成したもの。今すぐかえるつもりはない』などとする回答書を送った」と書かれています。

消費者機構日本ホームページ
http://www.coj.gr.jp/
(株)ノヴァに約款等の是正を申し入れました

またまたNOVAの中途解約訴訟

2005-10-10 | 裁判
(※中途解約希望の方は右の記事(の下にあるコメント)をご覧ください。 NOVA中途解約訴訟の判決は妥当か 

このブログでも、NOVAの中途解約をめぐる裁判については今年2月の東京地裁、その控訴審である7月の東京高裁をご紹介していますが、今回のは別件で、9月26日に東京地裁であったものです。

生徒側は弁護士をたてず、それに対してNOVA側は17人もの弁護士を擁しましたが、生徒側が勝訴しています。

     ◇

●当事者
原告・・・田町校の生徒(H14年5月に登録、H16年3月に中途解約申し出)
被告・・・NOVA

●原告の購入ポイント数
・レッスンポイント600(@1260円)=718,200円(5%割引キャンペーン中だった)
・VOICEチケット10回=21,000円
・その他の発生金額=7,150円(判決文に書かれていますが何の代金なのか不明)
合計746,350

●NOVAの料金システム
まとめ買いすると1レッスン当たりの単価が安くなるシステム。レッスンポイント1pt当たり1レッスンが受けられる。
 600pt @1,200円    150pt @2,050円
 500pt @1,350円    110pt @2,100円
 400pt @1,550円     80pt @2,300円
 300pt @1,750円     50pt @3,000円
 250pt @1,850円     25pt @3,800円
 200pt @1,950円
なお、このポイントには有効期限がある。

●中途解約時の原告の消化ポイント数
・レッスンポイント 57ptを消化
・VOICEチケット 4枚(8,400円)を消化
レッスンポイントは約1割を消化

●NOVAから交付された「解約清算書」
・消化済みレッスンポイント 384pt×@1,750円=651,000円(消費税加算の上、5%割引)
・消化済みVOICEチケット 10回分=21,000円
・中途登録解約手数料 12,800円
・その他発生金額 7,150円   この4項目合計691,950円
54,400円(746,350-691,950)を返金する旨記載

解約精算金額が少ないことに驚き、消費生活センターに相談、契約時に、経過週ごとにポイントが消化済みになること、1年間で200ptが消化済みになることについて説明を受けていなかったと指摘してNOVAと交渉した。
これにより、2度にわたり金額の異なる「解約清算書」が交付された。
返金額 (1)54,400円 → (2)279,175円 → (3)329,175円

(3)329,175円の解約清算書は「この金額で最終的解決とする旨記載した同意書に署名捺印の上返送されたい」と記載されており、原告は対応に不満を抱き、平成16年8月25日に提訴した。
なお、本訴でNOVAは、「現在のNOVAの約款には経過週数に応じた標準受講ポイント数等とみなす規定がないことを踏まえ、消化済み受講料及び消化済みVOICE利用料を算定する際に用いるべき単価のみ主張する」として、精算金額を510,228円と主張した。

《NOVAの約款に記載されていること》
消化済み受講料を算定する際に用いるべきポイント単価は、役務提供済みポイント数以下で最も近いコースの契約締結時のポイント単価とする。ただし、登録種別に拠らず、消化済みポイント数が25pt未満の場合は5,000円、25pt以上50pt未満は3,800円、50pt以上80pt未満は3,000円とする。
VOICE利用回数に2,000円を掛けた金額を消化済みVOICE利用料とする。


●裁判所の判断
【特商法49条の趣旨】
・特商法49条はクーリングオフ期間経過後、かつ役務提供開始後の中途解約権を認めるとともに、違約金上限を定めている。しかもこれは強行規定である。
・なぜこのような規定があるかというと、(1)契約が長期なので生徒に続けられなくなる事情もあり得る(2)役務の効果が不確実―ということから設けられた。
・つまり、同法は生徒に中途解約権の行使を実質的に保障している。
・そうすると、特商法に定める「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」の算定にあたっては、生徒が契約したときの単価で計算しなければならず、合理的な理由なくこれと異なる単価で計算することは許されないというべき。

【NOVAの約款規定】
・NOVAは、大量購入して中途解約した生徒と、最初から少量購入した生徒とで不公平を生じるばかりでなく、多くの者がとりあえず大量購入して中途解約することになり、数量割引制度が維持できなくなるとして、JR定期券、NHK受信料を引き合いに出し、約款の算定は合理的な理由があると主張する。
・この主張は一見、衆人の納得を得られそうな理屈であるが、大量購入するには多額の前払い金を要する上、5万円または契約残額の20%に相当する損害金を徴収されるので、多くの者がとりあえず大量購入して中途解約する手法をとるかは多分に疑問である。
・仮にそのような懸念があるなら約款の既定を改訂し、レッスンポイントの単価を平準化してリスクを回避することができるのである。
・大量購入させることにより、NOVAは役務提供に着手する前に多額の前払い金を収受して運転資金とすることができ、また長期間に安定した顧客を得るという利点もある。
・またNOVAは、JR定期券、NHK受信料を引き合いに出しているが、特定継続的役務は取引内容に不確実性、不透明性が伴い、JRやNHKの提供する役務とは性格が異なる。さらにJR、NHKは中途解約に伴う損害金が徴収されることはないし、大量購入による割引も本件のような極端なものではない。
・特商法の趣旨からすると、中途解約精算金の計算に当たっては、消費者に予期しない損害を与えることのないよう配慮すべき。
・NOVAは、大量購入&中途解約者であっても、解約時に適用する料金は、実際の消化数量に応じた割引率が適用されているから合理性があり、中途解約権行使を不当に制限するものではないと主張する。
・しかし、契約時の単価が1200円であっても消化数が25pt未満の場合、その単価は実に5000円となり、その差は3800円にも上る。本件消化済み受講料算定に関する規定は、一体となって解約権行使を制限するものとして機能しているといえる。

【事前説明】
・原告が契約時に、NOVAから勧められて600pt購入したが、その際、中途解約した場合の精算方法について明確な説明を受けていない。
・NOVAが交付した「Course Guide」という書面には、消化済み受講料算定規定が記載されている。
・しかし、600ptは70万円を超える高額なもので、これを3年内に消化するには多くの困難が伴い、中途解約せざるを得ない事態に至ることも少なくないと思われ、原告のような大量購入者にとって中途解約の精算条件は重大な関心事に属するから、「Course Guide」の交付だけでは足りず、購入時に算定方法の明確な説明を加えた上で、何ポイント購入するか選択を求めるべきである。
・「Course Guide」の精算規定を見ても、容易に消化済み受講料の算定方法を知ることができるとは言いがたい。
・NOVA担当者は、中途解約について口頭説明を加えることなく大量購入を勧めており、特定商取引法上の消費者保護の要請に反する。
・NOVAは当初、精算金として54,400円を提示し、原告の了解を得られないと見るや、279,175円、329,175円と増額した案を順次提示したことからも、NOVAが原告に対し、中途解約について明確に説明していなかったことを如実に示すものである。
・したがって、NOVAの規定により特商法の定める「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」を算定することには合理的な理由がない。

【精算金額】
・上記のとおりであり、中途解約にあたり、NOVAの消化済み受講料算定規定を適用して計算することは許されず、1200円をもとに計算すべきである。
 746,350(原告が支払った額)-(1,200円×57pt-5%相当額)-8,400円(ボイスチケット)-50,000円(特商法の定める違約金)-7,150円(その他発生金額)=612,571円+年5分の遅延損害金

     ◇

「1レッスンは3800円。但し600ptまとめ買いしてくれれば1200円にする」という契約だとして、1レッスン受けたところで解約したとしたら、これを3800円で精算したとしても特別に変なことではないでしょう。
しかし、英会話教室は特商法の「特定継続的役務提供」として指定された業種ですので、通常の業種と同様に考えるわけにいかない事情があります。

英会話教室、家庭教師派遣、結婚相手紹介サービス、学習塾、エステ、パソコン教室の6業種については、サービスが完了しても効果が出るかどうか分からないという業種であり、また契約が高額になることも多いことから、トラブルが多発していました。それで特商法に指定されたわけですが、この一連の判決から、これら6業種はまとめ買いすれば安くなるという料金体系を実質取りにくいということになります。

私は、今回のような購入時と解約時の単価の差が、特商法の定める違約金に当たるとは思いませんでした。また、そう判断されることによって、6業種に関しては実質このような料金体系が取りにくいことも改めて知った次第です。特商法の規定をはっきりさせる機会となる、いい判決だといえるのかもしれません。特商法にその業種が指定されることは、事業者にしてみれば営業手法を根本から見直さなければならないという、大変なことになるわけですね。その大変さが今回ようやく分かったような気分です。

NOVAのシステムには解約時の適用単価のことだけでなく、明らかに問題な部分もあります。例えば、有効期限によるみなし消化の問題、事前説明がない問題、有効期限が3年(600ptの場合?)などです。
特商法の規定では書面交付が義務付けられ、この中に解約に関する事項も含まれています。交付された書面に、「みなし消化」や「解約時の適用単価」などが記載されているのか分かりませんが(本判決では「当該部分を見て、容易に消化済み受講料の算定方法を知ることができるとは言い難い」と書かれています)、事前の口頭説明がなかったとしても法的には問題にならないでしょう。

このような小さな文字の約款を交付する形で契約するものには「保険」があります。保険もまたトラブルが多く、適用除外などで加入者と保険会社の間でもめますが、現状では、約款に書いてあれば消費者の主張はまず通らないでしょう。
今、パンフレットなどの表示を消費者にもっと分かりやすくすべきではないか、という議論があって、委員会で検討しているように聞きました。英会話教室などについても、詳細が書かれた書面を渡しているのだから事業者は免責になる、というのではなく、分かりやすくしていく努力が必要でしょう。事前説明で消費者が理解していれば、こんなにトラブルが起こらないでしょうから。

この記事は、杉浦幸彦先生に判決文をご提供いただきました。
さい法律特許事務所ホームページ
NOVA第3事件判決(H17.9.26東京地裁)
http://homepage2.nifty.com/psypsy/NOVATDC3.pdf