少しだけ残したブログ

現在更新していません。

不当表示があったとき誰が罰せられるのか

2005-11-01 | 公正取引委員会
不当表示があった場合に、排除命令を受けるのは、事実と異なる表示を作り出した者か、はたまた、関与した者であれば対象となるのか・・・。これが今、ホットな話題なのです。(そうでもないか (^^;)

話の発端は平成16年11月24日に公正取引委員会が排除命令を出した事例です。
輸入総代理店が輸入したズボンを販売業者に卸す際、本当はルーマニア製なのにイタリア製だと説明して、販売業者がイタリア製と表示してズボンを販売したところ、原産国の不当表示で排除命令を受けた、というものです。

この事例は、不当表示があった場合、排除命令は誰に対して出されるかという問題を提起しました。「表示主体」の問題です。計6社に対して排除命令が出されたうち、八木通商はこれに同意しましたが、販売業者5社はこれを不服として、審判で争っています。
 ▽輸入総代理店=八木通商
 ▽販売業者=ビームス、トゥモローランド、ベイクルーズ、ワールド、ユナイテッドアローズの5社

(2月11日当ブログ記事=輸入衣料品の販売業者5社に対する審判開始決定について

10月26日にこの審判を傍聴に行ってきました。審判はすでに第6回まで進み、今回は参考人審訊。
参考人は慶応義塾大学名誉教授で公取委顧問のショウダ氏(たぶん正田彬氏かと)で、公取から20分、小売5社から90分で、質問に答えました。

表示主体の問題は大きく分けると「内容決定説」と「作成関与説」の2つの学説に分かれます。簡単に乱暴に説明すると、以下のようになります。
▽内容決定説・・・事実と異なる表示をしたのはそもそも誰なのか、違反を作り出した者を罰するという考え方。上記の事例では八木通商に対してのみ排除命令を行うというもの。
▽作成関与説・・・不当表示に関与したすべての者に対して排除命令を出すことができるという考え方。上記の事例では、八木通商だけでなく、表示を行った販売業者5社に対しても排除命令を行えるというもの。

販売業者らの立場は「内容決定説」で、公取委の立場は「作成関与説」。
販売業者らが原産国の不当表示を行ったのは八木通商からそのように説明を受けたことによるので、同じように排除命令を受けるのは納得いかない、と主張するのは当然のことです。
これだけ聞くと、「内容決定説」のほうが妥当だと思われるんじゃないかと思いますが、公取委の考え方には消費者保護を第一義に考えているということが前提にあります。消費者の目に不当な表示がいつまでもさらされていることで被害が拡大する可能性があるので、誰が原因になっているのかを調査して排除命令がなかなか出せず、表示がそのままになるのは好ましくないということのようです。

今回の参考人審訊でも、販売業者側の代理人からは、
「景表法は表示主体は関係ないのではないか。表示の決定した者と表示した者が違う現状に合わない」
「関与者が誰かは消費者には関係ない」
「メーカー→卸し→小売→消費者と商品が渡る中で、卸し・小売は包装に関与しておらず、販売のみである」
などの意見が出され、さらに
「今回、販売業者は輸入業者に対して、原産国を確認して表示したが、それではだめなのか」
「最大限の注意義務をはらっても不当表示となってしまった場合、その販売業者は免責されることになるのか」
「では、最大限の注意義務とは具体的にはどのようなことすれば良いのか」
「輸入総代理店から卸されていたのは当該5社だけではないが、輸入総代理店に排除命令を出せば実効性が高いのではないか」
「八木通商が排除命令に同意したあと、販売5社にも排除命令を出す場合、公取委には立証責任があるのか」
という質問が出ました。

参考人のショウダ氏は景品表示法などを研究している方で、具体的な話をする立場の方ではないので、一般論として、
「40年ぐらい前は、表示をつけた事業者に対してのほうが、指導がしやすかった」
「メーカーが不当表示をしても、販売業者が正しい表示を行えば、消費者の目に触れないで済む」
「排除命令とは販売を差し止めるものである」
「メーカー→卸し→小売の3者を規制対象とすべきと考えている」
「消費者に対してどのような責任を負うか、日本では小売業者に欠如していると思う」
という意見を述べられていました。
(覚えているかぎりなので、正確な表現ではないと思うんですが・・・)

傍聴していたのは15人程度で、女性は私一人。みなさんダークな色のスーツ姿でした。関係者かな。同業者かな。