失われたメディア-8cmCDシングルの世界-

50円とか100円で叩き売られている8cm CD singleを見るとついつい買ってあげたくなることはないか。私はある。

「赤い鳥逃げた」1985年 「TATTOO」1988年 中森明菜

2006-06-05 | アイドル系
「ちょっとエッチな美新人娘(ミルキーっこ)」明菜の8cm。

80'sアイドル勢力図を大雑把に描けば、女王聖子、裏聖子としての明菜、メタ聖子としてのKYON2という構図になる。その他は上記三者いずれかのフォロワーか、狭いとこ突いてくるマニアックな存在に大別される。まあ、80'sといっても10年の歳月があるわけで、聖子の真の黄金時代は1985年の結婚まで、小泉がメタアイドルとしての真価を発揮し始めるのは84年頃から。明菜が無敵の強さを誇っていたのは、聖子の音楽的不在が始まった85年から89年の例の事件まで、ということになるだろう。(小泉のピークもほぼ重なるが、やはりメタはメタ。真の主流には成り得なかった)

左、1985年5月1日リリースの12thシングル。翌月には「聖輝の結婚」を控えた時期の明菜の一手は、前作「ミ・アモーレ」の別歌詞かつリミックス。85年当時は12インチアナログでのリリースであった。

①赤い鳥逃げた 「ミ・アモーレ」別歌詩&ラテン・ロングヴァージョン
作詩:康珍化、作曲・編曲:松岡直也
もともとラテン調の曲だったが、よりラテン風味を加えたパーカッション多めの5分4秒。歌詞は、先に「ミ・アモーレ」をさんざん聴いているので、さすがに違和感は否めない。ちなみに原曲はレコ大受賞曲。

②BABYLON (Re-Mixロングヴァージョン)
作詩:SANDII、作曲:久保田真箏、編曲:井上鑑・久保田真箏
イントロでのサンディーさんのコーラスがとにかくカッコいい!名盤「Eating Pleasure」(1980)あたりの音を彷彿とさせる、ファンキーなトラック。リズムは「ごきげんいかが1・2・3」と「レッツ・ダンス」の中間くらい。明菜の声はエフェクトがかかっていて、フロア仕様?同時代では、UKのペット・ショップ・ボーイズに通じるような、クールで退廃の香り漂うダンスナンバーになっている。6分32秒。

定価1000円、レンタル落ち100円。
ジャケはカツラの明菜二態。右の白い口紅がなんとも言えず懐かしい気分。


右は明菜の全盛期の終わりを飾る1988年の23rdシングル。

①TATTOO
作詩:森由里子、作曲:関根安里、編曲:EUROX
明菜の退廃路線、ここに極まれり。「デザイア」も「難破船」も凄いと思うけど、個人的にはこの曲の人工美、豪華に爛れた世界観はひとつの達成点だと感じる。イントロでうるさいくらいに鳴り続ける分厚いシンセのフレーズ、性急なシャッフル・ビート、猥雑さを盛り上げる女性コーラス、と80年代型キャバレー歌謡としての完璧なアレンジを聴かせる。「アンドロイド」「レプリカント」とあからさまにブレードランナーの世界を引用しつつ、バブル景気に沸く東京の、空虚なお祭り感を切り取ってみせる詩も見事。そして当時確実に天下を取っていた歌姫・明菜の、堂々としつつもどこか追い詰められているようなヴォーカルが強烈な魅力を放っているのは、翌年の悲劇を知っているからだけではないだろう。

②小悪魔(ル・プアゾン)
作詩:麻生圭子、作曲:西村麻聡、編曲:三宅純
タイトル曲に比べればやや小ぶりな印象だが、これも何とも淫靡な一品。

定価1000円、中古で100円。
しかし、このジャケのデザインは酷い。何してどうすればここうなるの?88年と言えば当然アナログ同時リリースありなわけで、上半分は7インチのジャケと同じ。下は何だよ!?柄ストッキング(タイツ?)の明菜の下半身と手袋の左手のみ。上半分との繋がりが中途半端で、全体としては奇怪な印象になっている。


明菜について検索する中で、「まこりんのわがままなご意見」というページを発見。明菜に対する愛情、分析力、文章力、どれをとっても私など足元にも及ばないレベルに圧倒された。素晴らしいです。明菜以外の記事も面白いし。







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6 コメント

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Unknown ()
2006-06-06 22:26:30
いや~、「TATTOO」!参りました!

個人的にコレは凄い曲だと思っていたのですが誰も理解してはくれなかった。師匠の書いてるそれに近い感覚を持っていたので頷きまくりながら読ませていただきました。う~ん、久々に聴きたくなったぞ。
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TATTOO (nakamura8cm)
2006-06-07 00:25:51
「歌謡曲の時代」の終わりだったのかも知れませんねえ。8cmの誕生した88年というのはそんな時期でもあったんだなあ。「ザ・ベストテン」は89年まで、明菜の終わりとシンクロします。

ええ、凄い曲です。是非、聴いて、歌っちゃって下さい!
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「赤い鳥に下駄」 (ほっけ)
2006-06-12 14:39:07
どうも。いよいよ、自らのブログ再開させます。

・・が、その前にこちらへ寄稿(笑)。



>「ミ・アモーレ」改「赤い鳥逃げた」



フュージョンがクロスオーバーと呼ばれなくなった辺りからそこらじゅう聴き漁り始め、そのときに本CDの作曲者松岡直也さんの作品とも出会いました。おっしゃる通りラテン寄りですが、この手のジャンルのアーティストは少ないですね。娘の真由美さんもCD出してますが、かなりマイナー。



その頃彼は、藤波辰彌さんの入場テーマ曲(12インチ盤!)も書いているのですが、アイドルやってた羽生名人の嫁さんに書いた「ターミナル」と時期的に重なってて、同じレコード会社の縁故関係で「仕事」した、って感じなのでしょうか。畠田理恵ちゃん、顔に似合わずデビュー曲から思いっきりアキナのフォロワーでしたもんね。



いずれにせよ、「ワーナーパイオニア」という会社の響きも懐かしいです。

分離した二社の変遷も目まぐるしいものがあります。
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おっ! (nakamura8cm)
2006-06-13 23:03:22
いよいよ再開ですか。楽しみにしてます!



毎度、マニアックなネタありがとうございます。

娘までフォローされているとは…恐れ入ります(笑)



松岡直也さん、 「トゥナイト」のテーマ曲も作ってるんですね。

とは言いつつ、どんな曲だっけ?(笑)

聴けば絶対思い出すはずなのですが。
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Unknown ()
2014-12-04 22:55:42
8cmシングル黎明期にあったジャケットをふたつ並べたかのような雑なデザイン(ふたつに折ることを考えてのことでもありますが…)を逆手に取ったのが信藤さんでしたね。
フリッパーズギターやオリジナルラブやゴーバンズのデザインは今も好きです。
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Unknown (nakamura8cm)
2014-12-10 00:26:18
コメントありがとうございます。

初期は7インチも同時リリースが多かったので単に縮小版として考えられていたのでしょう。
その頃の短冊下半分が死に枠だったのは致し方ない面があると思います。
それを差し引いてもこの「TATOO」は何かを間違えたとしか思えない極悪さが目を惹きますねえ。
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