これは今でなく、
過ぎ去りし日々でなく、
やがて来るだろう世界
う~ん、う~んと唸り声。
りーん、りーんと電話のベル。
六畳一間のアパートに、オーケストラの如く音が響き合い、ハッキリって
五月蠅い。
風邪で寝ていた海城だったが、寝てられずむくっと起きあがろうとした。
くらっ、頭が揺れ視界が歪む、まだ熱が引いてないようだ。
海城は起きあがるのを諦めてた、でも電話は止めないと五月蠅くて寝てられ
ない。仕方ないと、海城は布団にくるまったまま毛虫の如く這って電話の所ま
で行くことにした。
「さっちゃんには見せられないな~」
なんとか辿り着き、海城は電話を取った。
「はい、か」
「大変です」
名乗る間も与えられず、せっぱ詰まった少女の声が響いてくる。
「えっと、何が」
「健気な少女に悪の魔の手が迫っているのです。
力を貸して下さい、天空レッド」
「えっ、あなたは誰? なぜ、この番号を知っているのですか?」
少女が危険云々より、自分の正体が知られていたことに衝撃を受ける海城。
基本的に、正体は秘密。
この電話番号だって、天空レッドとしては誰にも教えてないはず。
「私です、必殺技コーディネイターのツインローズです」
なんだと、ほっとして、はっとなる海城。彼女とは正義の味方の関係上色々
連絡を取り合ったが、基本的に番号を教えてない。いつもこちらから一方的に
非通知で電話をしただけ。
決して熱の所為でない寒気が海城に襲いかかる。
「どうかしました?」
「いいえ、気にしないで下さい」
そうだ、今は熱で記憶が混乱しているだけで、きっと教えたんだね。
そうだ、そうだよ、そうだよね。
海城は取り敢えず必殺「先送り」を放った。
「それより少女が危ないって」
「はい、今一人の少女が悪い男に騙されて、悪の巣窟に送り込まれてしまった
のです。
そこから、連れ出したいのですが、私の力では無理なのです。
お願いです力を貸して下さい」
ツインローズこと西条が言うのは、当然沙耶のこと。
そして沙耶を誑かした悪い男とは、当然海城のこと。
なのですが、何も知らない海城の脳裏には、イケメンでスマートな男の映像
が浮かび上がる。浮かび上がったイケメンが美少女を甘い言葉で誑かさす三文
ドラマが脳裏で展開される。
「くそっクズ男め。イケメンは敵だ」
勝手にイケメンに怒りに燃える海城だが、別に海城はイケメンじゃないよ。
「このままでは、彼女は、×××や○○○など、18禁小説になってしまうこ
とをされてしまいます。どうか力を貸して下さい。
御礼に私が今後天空レッドを全面的にバックアップしますわ」
「しかし・・・」
ツインローズの援助といっても、微妙だしな~。
何より、今自分は病に伏せり、人を助けるどころか、自分の命の方が危ない
状態。
今一、魂に火がつかない海城であった。
「お願いです、あなたしかいなのです」
「俺しかいない」
海城の冷えた心に薪がくべられてしまった。
「そうです。
無垢な少女を救い出せるのはあなただけなのです」
「無垢な少女」
海城の心に油が撒かれた。
「お願いです、天空レッド。
正義の為に戦って」
「正義の為に」
正義の味方が喜ぶキーワード、「あなたしか」、「無垢な少女」、「正義」の
三段攻撃。単純だが効果的、海城の魂は燃え上がった。
「分かりました。詳しい場所を教えて下さい」
・
・
・
チンッ、電話は切られた。
海城はふらつく体を押して立ち上がろうとして、片膝を着いてしまった。
「立て立つんだ天空レッド。無垢な美少女が俺を持っている」
海城は布団をはね除け立ち上がった。
やはり頭がクラッとする。そりゃ、風邪で熱が出てるからね。
「なんだこれくらい、お前の正義の力はそんなものかっ。
今こそ天空の力よ俺に宿れ」
海城は天を仰ぎ、両手を掲げた。
「ぐおおおおおっーーーーーーーーーーー、力が漲ってきた」
気のせいというか、そんな気がするだけとか、思い込みです。
祈って、天から力が貰えたら人間苦労しないよ。
「よしっこれならいける。
闘うんだ天空レッド。
お前がやらねば誰がやる」
海城は酔っぱらいのように自分で自分を賛美するナレーションを恥ずかし気も
なく自分でしゃべる。
いや、海城は酔っていたのである。
そう病を推して戦う正義の味方に酔っていたのである。
みんなは海城を馬鹿だと思うがだろうが違う、こういう自分に酔える人間でな
ければ正義の味方なんて一円にもならないことをやるわけない。
そう正義の味方とは、自分に陶酔出来るナルシストでなければ、出来ないのであ
る。これはやがて来る世界でも変わらない理なのである。
海城はタンスから天空レッドスーツを取り出すとダッシュでヤガテヒルズに向かっ
たのだった。
つづく
このお話は、完全オリジナルのフィクションです。
存在する人物団体とは、一切関係ありません。
↓面白かった押して下さい。次回作の励みになります。
過ぎ去りし日々でなく、
やがて来るだろう世界
う~ん、う~んと唸り声。
りーん、りーんと電話のベル。
六畳一間のアパートに、オーケストラの如く音が響き合い、ハッキリって
五月蠅い。
風邪で寝ていた海城だったが、寝てられずむくっと起きあがろうとした。
くらっ、頭が揺れ視界が歪む、まだ熱が引いてないようだ。
海城は起きあがるのを諦めてた、でも電話は止めないと五月蠅くて寝てられ
ない。仕方ないと、海城は布団にくるまったまま毛虫の如く這って電話の所ま
で行くことにした。
「さっちゃんには見せられないな~」
なんとか辿り着き、海城は電話を取った。
「はい、か」
「大変です」
名乗る間も与えられず、せっぱ詰まった少女の声が響いてくる。
「えっと、何が」
「健気な少女に悪の魔の手が迫っているのです。
力を貸して下さい、天空レッド」
「えっ、あなたは誰? なぜ、この番号を知っているのですか?」
少女が危険云々より、自分の正体が知られていたことに衝撃を受ける海城。
基本的に、正体は秘密。
この電話番号だって、天空レッドとしては誰にも教えてないはず。
「私です、必殺技コーディネイターのツインローズです」
なんだと、ほっとして、はっとなる海城。彼女とは正義の味方の関係上色々
連絡を取り合ったが、基本的に番号を教えてない。いつもこちらから一方的に
非通知で電話をしただけ。
決して熱の所為でない寒気が海城に襲いかかる。
「どうかしました?」
「いいえ、気にしないで下さい」
そうだ、今は熱で記憶が混乱しているだけで、きっと教えたんだね。
そうだ、そうだよ、そうだよね。
海城は取り敢えず必殺「先送り」を放った。
「それより少女が危ないって」
「はい、今一人の少女が悪い男に騙されて、悪の巣窟に送り込まれてしまった
のです。
そこから、連れ出したいのですが、私の力では無理なのです。
お願いです力を貸して下さい」
ツインローズこと西条が言うのは、当然沙耶のこと。
そして沙耶を誑かした悪い男とは、当然海城のこと。
なのですが、何も知らない海城の脳裏には、イケメンでスマートな男の映像
が浮かび上がる。浮かび上がったイケメンが美少女を甘い言葉で誑かさす三文
ドラマが脳裏で展開される。
「くそっクズ男め。イケメンは敵だ」
勝手にイケメンに怒りに燃える海城だが、別に海城はイケメンじゃないよ。
「このままでは、彼女は、×××や○○○など、18禁小説になってしまうこ
とをされてしまいます。どうか力を貸して下さい。
御礼に私が今後天空レッドを全面的にバックアップしますわ」
「しかし・・・」
ツインローズの援助といっても、微妙だしな~。
何より、今自分は病に伏せり、人を助けるどころか、自分の命の方が危ない
状態。
今一、魂に火がつかない海城であった。
「お願いです、あなたしかいなのです」
「俺しかいない」
海城の冷えた心に薪がくべられてしまった。
「そうです。
無垢な少女を救い出せるのはあなただけなのです」
「無垢な少女」
海城の心に油が撒かれた。
「お願いです、天空レッド。
正義の為に戦って」
「正義の為に」
正義の味方が喜ぶキーワード、「あなたしか」、「無垢な少女」、「正義」の
三段攻撃。単純だが効果的、海城の魂は燃え上がった。
「分かりました。詳しい場所を教えて下さい」
・
・
・
チンッ、電話は切られた。
海城はふらつく体を押して立ち上がろうとして、片膝を着いてしまった。
「立て立つんだ天空レッド。無垢な美少女が俺を持っている」
海城は布団をはね除け立ち上がった。
やはり頭がクラッとする。そりゃ、風邪で熱が出てるからね。
「なんだこれくらい、お前の正義の力はそんなものかっ。
今こそ天空の力よ俺に宿れ」
海城は天を仰ぎ、両手を掲げた。
「ぐおおおおおっーーーーーーーーーーー、力が漲ってきた」
気のせいというか、そんな気がするだけとか、思い込みです。
祈って、天から力が貰えたら人間苦労しないよ。
「よしっこれならいける。
闘うんだ天空レッド。
お前がやらねば誰がやる」
海城は酔っぱらいのように自分で自分を賛美するナレーションを恥ずかし気も
なく自分でしゃべる。
いや、海城は酔っていたのである。
そう病を推して戦う正義の味方に酔っていたのである。
みんなは海城を馬鹿だと思うがだろうが違う、こういう自分に酔える人間でな
ければ正義の味方なんて一円にもならないことをやるわけない。
そう正義の味方とは、自分に陶酔出来るナルシストでなければ、出来ないのであ
る。これはやがて来る世界でも変わらない理なのである。
海城はタンスから天空レッドスーツを取り出すとダッシュでヤガテヒルズに向かっ
たのだった。
つづく
このお話は、完全オリジナルのフィクションです。
存在する人物団体とは、一切関係ありません。
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