goo blog サービス終了のお知らせ 

勇者様の雑記帳

ゲーム暦40ウン年の勇者様の足跡が書き散らす日記。ゲームや映画、読んだ本などについて、好き勝手に書いています。

『吸血鬼ハンター”D"』(菊地秀行 著 朝日ソノラマ 1983年初版)

2025-04-16 06:29:02 | 書籍

近頃Kindleで色々と本を買うようになり、

昔持っていた本で、今は手元にないものについても、

気が向いたときに買いなおしている。

 

先日購入したのは、1983年に伝奇ホラーの名手である菊地秀行氏が書いた、

「吸血鬼ハンター”D”」だ。

この本を読んだのは、中学生時代だったと思う。

世界観に引き込まれるように、一気に読まされてしまった。

あの頃、菊地氏の作品を手当たり次第に読んだ記憶があるが、

40年経った今も続く吸血鬼ハンターDの1作目は、

今読み返しても本当に面白い。

 

眉目秀麗で剣の達人、吸血鬼である「貴族」たちも恐れる「ダンピール」である”D"と、

彼の左手に宿る謎の生命体である”人面疽”という設定は、

この1作目から既に確立されているが、

何より惹きつけられるのは、人間にとって恐怖の対象である吸血鬼たちが、

すでに繁栄の最盛期を過ぎて、緩慢な滅びの時代を迎えているという世界観だ。

 

生きることに飽き、自らが築き上げた超文明の痕跡を残しながら、

人間に取って代わられようとしている吸血鬼たち。

”D”が対峙するのは、種族としての衰退に抗おうとする、一握りの「貴族」という構図は、

この「吸血鬼ハンター”D"」というシリーズにほぼ共通しており、

敵である「貴族」たちの滅びの悲哀が、作品の大きな魅力になっている。

 

近頃は、こういう伝奇ホラーとしての「吸血鬼もの」はほとんど見かけなくなったが、

菊地氏には1作でも多く、世に”D"が活躍するストーリーを送り出していただきたい。