今朝、千早茜氏の『しろがねの葉』を読み終わった
重々しそうな表紙とタイトルに、読み始めるまでに少し逡巡したが、
読み始めると一気に読み進んでしまった。
それぐらい面白い作品だった。
舞台となっているのは、今や世界遺産の「石見銀山」だ。
戦国末期から江戸時代初期にかけての、
銀がわんさか採れていた時代の銀山で暮らす、
うめという名前の女性の人生を描いている。
読み進む中で魅力に感じたのは、
うめをはじめとする登場人物たちの、生き生きとした描写だ。
400年も前の時代の人々の暮らしを、
想像力を縦横無尽に働かせながら、まるで見てきたかのように情緒豊かに表現している。
もちろん、銀山の様々な資料に目を走らせ、十分な知識を得た上での表現なのだけれども、
堅苦しい歴史資料から、これほど人間味のある作品を作り上げていただいたことに感謝したい。
うめの成長とともに、幼少期にはうめを導き、生きていくための知識を与えてくれていた人も、
次第に年を取ってゆき、早く生まれた世代から世を去っていく。
鉱山特有の、鉱夫の健康を奪っていく病の中で、
うめと関わり、生活を共にしている男たちは次々にいなくなっていくのだけれども、
女性であるうめは彼らを見送りながら、年を重ねていく。
最後の最後まで、先が読みたくて仕方がなかった。
頭の中で自分だけの世界を作ってしまえる、
小説家というのは、本当にすごいなぁ。
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