国際情勢について考えよう

日常生活に関係ないようで、実はかなり関係ある国際政治・経済の動きについて考えます。

食のグローバリゼーション

2007-01-18 | 経済・社会問題

グローバリゼ-ションという言葉は、世間でも頻繁に使われる言葉ですが、その意味は極めて多義的で、専門家の間でも定義が確定していない言葉だと言われています。ただ、経済的な意味合いで使われることが最も多く、経済的なグローバリゼーションという意味に限定すれば、「欧米の金融・貿易・投資ルールが世界中に普及・浸透して、経済ルールの均一化が世界レベルで進んだ結果、世界各国間の相互の金融・貿易・投資が促進されて、各国間の経済市場の融合が進み、結果的に地球規模の単一市場を現出させつつあるプロセス」といった意味になるのでしょうか。

しかし、冒頭に記したとおり、この用語は多義的で、文化や社会の分野でも使われる言葉ですから、そういう別の分野には別の暫定的な定義があるのだと思います。ただし、これらの別の分野で使われる場合も、世界各国の固有の属性が、国境をまたいで互いに融合し、世界規模でひとつの属性に均一化されていくというニュアンスがあるということは言えるのではないかと思います。というわけで、今日のテーマは「食のグローバリゼーション」です。

 

フランスのパリには、600以上の日本食レストランがあるそうですが、その中には、いわゆる「ニセ・ジャポ」と言われる日本食とはかけ離れた創作料理を出す店もたくさんあるそうです。こうした様子に危惧を抱いたのが日本政府で、何とかしてパリで日本食の統一基準を示して、本当の日本食文化を保護しようと、有識者で作る「日本食レストラン価値向上委員会」を創設し、このたびパリの"理想"とされる日本食レストランを独自に選定したようです(関連記事委員会公式サイト)。当初は、日本政府がパリの日本食レストランを公式認定する動きも、フランス政府の黙認の上であったようですが、それはあまりに行き過ぎだということで、有識者団体が非公式に選定するという形にトーンダウンしたようです。

私はパリには行ったことがないので現地の状況は分からないのですが、たしかに海外にいて、たまに和食が食べたくなって日本食レストランに入ると、ゲッと思うような未知の食べ物に出会うことがあります。たいてい、そういう店では中華やコリアンの食事も、全部一緒くたにして出していることが多く、とくに欧米諸国などでは、これらの食事は全部同じように見えてしまうのかなあという気がします。

 

しかし、今回のパリでの動きは、原案よりトーンダウンしたとはいえ、なんかすごく狭量な気がします。「日本人はうるさい」というネガティブな印象をフランス人に与える可能性はないのでしょうか。思えば、日本人こそ世界の誰よりもマネがうまく、外国の文化等を上手に取り入れて、原形をとどめないほどアレンジを加えて自分の文化に取り込んでしまうところがあるのではないでしょうか。

たとえば、日本のカレーライスは、インドのカレーとは全く別物ですね。ラーメンも、本格中華にはないメニューです。スパゲティ・ナポリタンも、イタリアンのメニューにはありません。しかし、インド政府、中国政府、イタリア政府が、東京に乗り出してきて何かをしたという話は聞いたことはありません。日本のカレー、インドのカレー、ラーメン、広東麺、ナポリタン、ポモドーロは、それぞれに別物で、それぞれに大変うまいものです。そして、みんなそれで良いと思って、落ち着いているのではないでしょうか。こういう「食のグローバリゼーション」は不可避なもので、別に止めなくても良いのではないでしょうか。

なんで日本政府はパリでこんなことをするのか、別に批判するつもりはないですが、理解はできないですね。なんか、このようなことをする必然性があったのでしょうか・・・。「ニセ・ジャポ」が普及して、誰か損をするのでしょうか。「ニセ・ジャポ」が普及すると、本格派の日本料理店が損をするという考え方もあるかも知れませんが、現実の状況は逆ではないでしょうか。「ニセ・ジャポ」が普及すると、和食のマーケットが拡大して、本格的な日本料理店も儲かるのではないでしょうか・・・。そして、日本人が日本のカレーとインドのカレーが違うことを知っていて、機会に応じて食べ分けるのと同じように、フランス人もニセ・ジャポと本格派の違いを既に知っているか、もしくはこれから学んで、両者を食べ分けるようになるのでないでしょうか。別にまったく問題ないと思うのは私だけでしょうか・・・。

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