国際情勢について考えよう

日常生活に関係ないようで、実はかなり関係ある国際政治・経済の動きについて考えます。

一番難しいこと

2006-10-25 | 地域情勢

人にとって、一番難しいことは何でしょうか?大好きなものを食べないで、我慢することでしょうか。大好きな人に会えないのを、我慢することでしょうか。 ― 私は最近、人にとって一番難しいのは、自分の犯したミスを正直に認めることではないかという気がしています。

アメリカのイラク政策が転換する兆しが出てきました。駐留米軍の撤退に向けて、政策上の準備を始めることを、アメリカ政府とイラク政府が合意したのです。これはまだ政策上の準備を始めるという話に過ぎませんから、今後さまざまな紆余曲折も予想され、実際に現地部隊の撤退が始まるのは、まだまだずっと先のことです。しかし、これまでブッシュ政権は、撤退の「て」の字もタブーにしてきましたから、これは大きな潮目の変化と言っていいと思います。

 

ブッシュ政権が、この時期にこのような政策転換の兆候をあえて示した最大の理由は、来月7日に控える中間選挙をにらんでのことです。以前も少し触れましたが、今度の中間選挙では、連邦議会の中で、上院の3分の1、下院全員が改選されることになりますが、最近になって、ブッシュ政権と同じ与党の共和党が苦戦し、野党の民主党が善戦する観測が出始めているのです。これは、アメリカ国民の間でイラク戦争への厭戦気分が広がってきた結果だと言われています。

アメリカの連邦議会は、1994年以来共和党が過半数を制し、これまでブッシュ政権の対外政策における予算請求も、ほぼフリーパスで通してきました。しかし、もし今回民主党が過半数を獲るようなことになると、民主党は議会の予算権を使って、ブッシュ政権の対外政策の息の根を止めることもできるようになります。ブッシュ大統領は、この事態を最も恐れています(報道解説)。

 

イラク駐留の米軍撤退に関して、ブッシュ政権は今のところ、「行程表」という撤退までのタイム・テーブルを、イラク政府と共同で作成していくことを合意した段階にあります(報道1報道2動画付き報道)。ですから、今後、この行程表の内容がどうなるのか、またそれを作成しても予定通りに計画を実行できるのか、まったく未知数なところがあります。しかしそれでも、繰り返しになりますが、撤退の「て」の字を明言したことの意味は、きわめて大きいように思います。

これまでも何度かこのブログで書いてきたことですが、イラク戦争というのは、アフガニスタンを主戦場にした「対テロ戦争」と違って、道義を欠き、すべてにおいて準備不足のまま、ネオコン勢力の暴走で始めてしまった戦争です。ですから、今回このように政策転換を図ったことは、ずいぶん遅すぎた決断ではありましたが、それでも妥当かつ賢明なことです。

ただ、今回ちょっと残念だったのは、この大きな政策転換を、バグダッドに駐留する駐イラク・アメリカ大使と現地総司令官という二人の「役人」に発表させたことです。これほど大きな政策転換は、やはり大統領自らがテレビ演説して発表すべきだったのではないでしょうか。 ― 誰でも自分が間違ったことをしたときに、それを認めるのは大変勇気が要ります。しかし、それができるかどうかというのは、とくに政治家のような公人の場合、政治生命をも左右するインパクトを受けるのではないでしょうか。もし、大統領がテレビ演説で過ちを認めていたら、共和党への支持率も、うなぎのぼりに上がっていたのではないかと考える私は、やはり甘いのでしょうか・・・。 


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