平成うきよの覚え書き

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農協改革

2015年02月04日 | 政治経済雑感

以下「長周新聞」から転載。

外資の草刈り場にする農協解体
狙われる農中の預金90兆円
            権益を横取りする構造    2014年6月6日付



 環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加を急ぐ安倍政府が、その先取りとして減反廃止や株式会社の農地所有解禁などを矢継ぎ早に推進してきたが、さらに農協解体をうち出して大きな波紋を呼んでいる。TPP参加で日本の農業はほぼ壊滅状態におちいると農水省も試算している。食料自給率は今でも39%で先進諸国のなかでは最低であるが、さらに10%台にまで引き下げ、同時にアメリカ産農産物への依存を深め、胃袋までアメリカに支配される植民地国になりさがろうとしている。安倍政府は日本の農業をどうしようとしているのか、この間の動きとも合わせて見てみた。
 
 生産者にとり必要な協同組合

 安倍政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)の作業部会(座長・金丸恭文=フューチャーアーキテクト会長兼社長)が5月に出した「農業の改革案」は次のような内容である。
 ①全国に700ある地域農協を束ねる全国農業協同組合中央会(JA全中)を廃止する、②農作物の販売を扱う全国農業協同組合連合会(JA全農)は株式会社にする、③地域農協のJAバンクなど金融事業は、農林中央金庫や信用農業協同組合連合に移す、④農業生産法人に企業が出資しやすくする、⑤農地の売買を許可する権限をもつ農業委員会は縮小する、などである。
 安倍政府は6月中に新たな農業政策をまとめようとしており、その柱とする方向である。
 TPP参加で、農業関係では、アメリカの多国籍企業は、日本の農業、農地、農産物市場、農協関係の金融機関が持っている預貯金や保険などを丸ごと奪い尽くそうと狙っている。それをスムーズに進めようというのが安倍政府が推進している「農業改革」と称する「農協解体」である。
 戦後の日本の農業はGHQによって「農地改革」が強行され、「自作農主義」が基本とされた。戦前の寄生地主による過酷な小作農支配への反発は強く、小作争議が全国各地で頻発していた。「農地改革」によって、田畑の所有は実際に耕作する者だけに認めることを基本とする農地法が制定された。農地法は企業=株式会社の農地所有を原則的に禁止している。それを監視する役目として農業委員会が設置され、農地の宅地や工業用地としての転用や企業の農地取得を取り締まってきた。
 GHQによる「農地改革」の目的は、小作農を開放することではなく、反米的な要素の強い半封建的な寄生地主を駆逐して、農民を直接的に独占資本の支配下におくことであった。独占資本が生産する高い農機具や農薬・肥料を売りつけ、農家が生産するコメや野菜は安く買い叩いて生活できなくさせ、いずれは農地を農民からとりあげてしまうことを想定したうえでのものである。
 戦後の日本の農家の規模はすべて1㌶未満という零細な規模であった。その零細な規模の農家が農業生産をおこない、農産物を販売し、農薬や肥料など農業資材を購入する、また預貯金や資金の借り入れをおこなう金融事業などを、大企業に対向して有利に展開するために、協同組合が必要とされた。同時に政府の側からしても、零細な農家の貯金をできるかぎり集めて政策運用する、農家が生産する農産物を集荷し、全国の中央市場を通じて安定的に供給する必要性があった。農協は戦後1948年にGHQが戦前の農業会を再編する形で設立した。金融面では全国約700ある単協の貯金の大部分は農林中金に集中することが義務づけられ、その規模は約90兆円にのぼる。
 農協や漁協の貯金は単協での運用はできず、農林中金に集中されて政府の政策的投資資金に運用されてきたし、何兆円規模で焦げついたり、その損失の穴埋めを農民や漁民が負担するという事態があいついだ。96年には農業分野とはまったく関係のない住専に対して、ろくな審査もせず、担保もとらずに5兆6000億円も貸付けて焦げつかした。また、2008年のリーマンショックでも1兆5000億円(農林中金の公表数値)以上の損失を出した。農林中金はJAバンクから上がってくる約90兆円の預金を有価証券投資や法人向け大口貸付けする事業が主流業務となり、第一次産業事業への貸付けは全体の5%に満たない。農協系金融機関としての役割をはたしていないことへの批判は、従来から生産者のなかで充満している。
 また、農協関連の保険事業の総資産額は50兆円、農業共済事業は約300兆円にのぼる。これも外資ヘッジファンドや保険会社が喉から手が出るほど欲しがっている資金になっている。

 生産者の批判強く現体制にも多いに問題

 農民のなかで「農協は銀行のようになった」という批判は以前からうっ積している。生産者本位の協同組合ではなくなっていることへの批判でもあった。農林中金(農林水産省キャリア官僚が理事長を歴任)が君臨して、農業地帯の人人の財産をかき集められるだけかき集め、高度成長にいたる過程では都会の道路開発等の財政投融資に注ぎ込み、最近では証券投資でいつもカモにされてきたのが農林中金である。「銀行みたいになった」といっても、農民、漁民の預金を原資にして博打を打っているだけで、金融市場でも素人集団と見なされて、格好の餌食にされてきた。
 今あらわれている「農協解体」は、こうした批判を汲み取るようにして、実際にやろうとしていることは農協から金融・信用事業を切り離して、郵政民営化と同じように丸ごと外資が手中におさめようとするものにほかならない。
 ローソンの新浪氏などは「日本郵政に次ぐ資産規模の農協は、銀行(預金)、保険(生命・損害保険)、流通(農産物の流通)、物販(農薬・農業資材等の販売・リース)の四事業を分割し、農業への支配力を削ぐべきだ」と農協解体を強力に主張している。農協の金融資産、ないしは独占分野を横取りしようとしている者の思いを代表している。農協の「既得権益」独占はいけないが、自分たちの独占は良いという二重基準を特徴としている。
 ちなみに米韓FTAが2012年に発効した韓国では、農業協同組合、水産協同組合などの協同組合の保険販売が、民間保険会社と同一ルールに変更された。一般より安価な保険サービスであった協同組合の共済を一般の保険商品と同様の法規制に置き、米国系保険会社の保険商品の市場拡大を有利にした。似たような事はTPPともセットで起こりうる。
 また、全農を株式会社にすることについては、「独占禁止法を適用することに狙いがある」と指摘されている。独占禁止法では、単独では大企業に対して競争していくことが困難な小さい事業者や交渉力の弱い消費者が、たがいに助けあうことを目的とした協同組合は独占禁止法の適用を除外されている。おかげで農協や消費生活協同組合、中小企業等協同組合などが独占禁止法の適用を除外されてきた。
 全農は、農産物の共同出荷をおこなったり、農業資材を共同購入したりしている。株式会社化により、これまでのように共同出荷や共同購入をおこなえば独占禁止法が適用されることになる。実質上、農家の共同出荷や農業資材の共同購入はできなくなり、協同組合の事業や精神を否定するものにもなる。
 これについてローソンの新浪や竹中平蔵は「日本の農協はメガバンクにも匹敵する規模の金融機能をもつ流通企業であり、独禁法適用除外の理念をこえている。JAの市場シェアは、主要農産物でも過半であり、肥料や農業資材では、民間の最大手の肥料会社よりもはるかに市場支配力がある」とし、「それほど巨大な市場支配力をもつ企業を独占禁止法適用除外によって守る意味はない」と主張し、協同組合としての存在を否定している。また、「農協は、農産物の流通を独占・寡占するとともに農業資材の市場を寡占している。農協のシェアはコメで50%、野菜で54%、牛肉で63%、農業資材の販売市場では、肥料77%、農薬60%、農業機械55%だ」とのべ、これらの市場から農協を駆逐することによって、市場を大企業が手中におさめようとしている。
 農産物の流通ではかつては農家が生産した農産物を農協が集荷して共同出荷をおこない、中央卸売市場で競りにかけられ、卸売業者や仲卸業者が商店に卸して消費者の手に届くという経路が主流であった。中央卸売市場は価格形成の役割を担っていた。
 しかし、戦後からこのかたアメリカ産農産物の輸入自由化が次次に進み、国内の農業生産が破壊され、またアメリカ型の大型店出店や外食産業があいついで進出するのとあわせて、市場外流通の割合が急増し、市場機能もいまや実質的に崩壊している。
 卸売市場では大型店のいい値で買いたたかれ、輸入物との価格競争も激しく、共同出荷による収入も、農家の生活費や農産物の再生産費をまかなうにはほど遠くなっている。また、農業資材の共同購入の面をみても、ホームセンターなどが肥料や農薬、野菜の種、農業機械まで扱うようになっており、品質の差はあるが「農協で買うよりも安い」という声もある。JAそのものもピンハネ構造がすさまじく、生産者を搾りすぎた結果恨まれている。
 こうした実情のもとで、一気に農協の市場シェアを奪いたいのがアメリカ資本や日本の大企業である。
 さらに農業生産法人には、現行では企業の出資比率は25%以下、構成員は農地を提供したり、年間150日以上農業に従事したりする人員がいなければならないなどの規制がある。これらの規制をとりはらい、どんな大企業も、外資も含めて自由に農業生産法人をつくり、農業に参入することができるようにしようとしている。
 また、これまで選挙で選んでいた農業委員を、市町村長による任命制にかえようとしていることも、農地転用を促進し、大企業の農地取得が可能になるためのものであり、実質上の農業委員会の解体である。
 安倍政府のTPP参加や一連の「農業改革」「農協解体」を受けて、農業関係の専門家は「戦後自作農体制の終焉」と指摘している。国内の農業生産をことごとく破壊し、零細な農家が所有してきた農地は大企業がとりあげ、農畜産物はアメリカの多国籍企業からの輸入に依存し、農家が貯めた貯金や保険はアメリカの金融資本に丸ごと差し出すというのである。
 安倍政府が進めている「農協解体」は、農協の存廃にかかわる問題だけではなく、日本農業の生産、流通など全面的な破壊とつながった策動であることが浮かび上がっている。TPP参加で日本農業を壊滅させ、日本の富をことごとくアメリカに売り飛ばす亡国・売国政治の一つのあらわれに過ぎない。
 農林中金など生産者の労働に寄生して博打にうつつを抜かしてきた組織が解体されるのはいっこうにかまわない。「協同組合」の看板を掲げたなかにも、山口県漁協のように電力会社の手先になり下がり、海を売って飯を食おうとするような腐りきった組織もある。こうした協同組合精神のかけらもないような組織を解体することは誰も異論を挟まないし、むしろつぶれた方が社会にとって積極的な意味を持っている。
 このなかで零細な生産者にとって譲れないのは、相互扶助を基本とした協同事業、協同化が奪われることである。個個バラバラの生産者では大企業の餌食にされることは、これまでの経験からも実証済みで、そのために本来協同組合が存在してきた。外資が農林中金や全農になりかわるといっても、これまで以上に過酷な搾取をすることは明白で、上澄みの利権をどっちが取るかが問題なのではない。日本の食料生産を巡る問題として、従来の農協制度の問題点をあぶり出すことと合わせて、救世主面して横取りを企んでいる者の農業支配ともたたかうことが求められている。
転載以上
 イスラム国の日本人殺害から派兵、農協解体が我が国の解体、滅亡を指示しているのでは。
拘束、拉致、殺害(殺害されていないかも)はシナリオ通りという見方も可能かもしれない。近代史は唯物史観より陰謀史観が正しいだろう。幕末「ええじゃないか」も仕掛けがあったかもしれない。
 このような記事・論調は農業新聞を除き、一般紙では皆無だろう。


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