本病は「本虚標実」に属するので治療には「標本兼顧」の法をとる。
1.炙麻黄と炙甘草の配合
私は小児哮喘には一般に生麻黄を用いず炙麻黄を用いる。
何故なら小児哮喘の発作の際には必ず自汗があり、
炙麻黄なら発汗を軽くするし、止咳平喘の効果もかなり強いからである。
若し炙甘草と配合すれば止咳平喘・解痙作用を助ける他に
麻黄の毒性と辛散の功能を減軽し、更には心悸という弊害を回避し、
治療効果を高める。
炙麻黄と炙甘草の用量の問題は長年の経験から証明されている。
用量は少なすぎても駄目で有効量まで用いなければならない。
年齢が1~3歳なら3g、3~7歳なら3~6g、7~14歳なら6~9gとする。
但し炙甘草は炙麻黄の量を超えない。
この薬は春夏秋冬何時であっても使用可能で、
用量が少し位い多くても発汗の弊害はない。
若し夏期に自汗過多なら麻黄根を配合するか又は麻黄根に変えても良い。
用量は炙麻黄の二倍にすれば平喘作用は同じである。
2.炙麻黄と銀杏の配合
炙麻黄は辛開宣肺・止咳平喘の専門薬で、標実の咳喘を治療する。
銀杏は苦降斂肺・止咳平喘の専門薬である。
二薬を一緒に用いれば、一方は辛開宣肺で一方は苦降斂肺、
一宣一斂・一升一降、肺気を適度に宣降させて咳喘は自然と平癒する。
これは即ち標本同治で、虚実兼顧の法である。
長年来二薬を合わせて小児哮喘の発作期に用いてきてハッキリした効き目があり、
連続服用しても虚虚実実(*)の弊害はない。
用量については年齢が1~3歳なら炙麻黄3gに銀杏15g、
3~7歳なら炙麻黄6gに銀杏15g、
7~14歳なら炙麻黄9gに銀杏15g~20gを用いる。
銀杏を炙麻黄の二倍近く用いるのは銀杏が皮殻付きのまま砕いて使うからであり、
その皮殻には白果仁の毒性を消す働きがある。
用量が多少多くとも中毒の恐れはない。
(*)虚を更に虚し、実を更に実するという弊害。
「燕山医話」 劉韵遠
http://youjyodo.la.coocan.jp/geocities/mycoment/153.html
※压掌散, 小児喘息の第一選択薬, 神秘湯