トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

アウシュヴィッツ

2005-08-22 20:04:33 | 音楽、TV、観劇
 BBCとアメリカのテレビ局共同のドキュメンタリー「アウシュヴィッツ」を見た。5回連続のテレビシリーズで、NHKが放映した。この悪名高い強制収容所の誕生から崩壊までを描いている。

  ナチス親衛隊というと規律正しき精鋭部隊のイメージがあるが、総勢約8千人の中で戦死その他で死亡したのは千人ほどだそうだ。さらに、国家 に治めるべき欧州各地から集められたユダヤ人の金品所持財産を結構着服した者が多かったので、腐敗と堕落が蔓延っていたのも今回初めて知った。

  笑えたのはゲシュタポ長官ヒムラーが、囚人がよく働く よう収容所施設内に売春宿を設置したこと。確かに効率は上がるだろうし、発想が冴えてるとさえ感心した。対象者からユダヤ人は除外されたのは言うまでもな い。チケット制だったそうだが、男たちはこの券を手に入れるのにさぞ血眼になったろう。女は泣きを見たとは必ずしも言えない。死を免れるなら、自ら進んで 志願しただろう。このドキュメンタリーでは無視したが、命欲しさに体を売った女囚が実際少なからずいたのは、元囚人の手記に見える。

  連合国は既にアウシュヴィッツの存在に気付いていたが、特に爆撃をするのでもなく攻撃地点にさえならずじまい。戦争遂行のため最優先事項か らはずされた理由もあるが、本音では開放したユダヤ人を受け入れたくなかったのではないか。戦争中亡命ユダヤ人を最も受け入れたのはアメリカだが、爆撃に 晒されているロンドンの子供たちや犬猫のペットにまで疎開地を積極的に提供したこの国は、ユダヤ人孤児には冷淡だった。イギリスなどは東アフリカの植民地 にユダヤ人入植地を作ることを検討していたほど。

  アウシュヴィッツを真っ先に開放したのはソ連軍だが、捕虜となっていたソ連軍兵士やポーランド人政治犯は開放どころか新たな収容所送りが 待っていた。女囚に暴行したソ連兵もいたらしい。連合国軍にもいたと私は想像してるが、もちろんBBCは報道などしないだろう。

  せっかく生き延びて故郷に帰ったユダヤ人たちは、自宅が他人に占領されてしまったケースも多かったそうだ。新しく家の持ち主になった人間は居座り立ち退かず、反って元の住民が去る羽目になる。家屋が破壊されずとも、このような悲運もあるのだ。

  戦後、親衛隊員に報復殺人を行ったユダヤ人組織があったらしい。アングロサクソンというのはどこまでお体裁屋なのか、彼らに対する質問は愚にもつかないものだった。「裁判も経ず殺人を行うのは如何なものか」「殺すのはどんな気持ちか?」など、肉親多数を虐殺されたユダヤ人に聞いているのだ。もし、イギリス人が復讐の念などない殊勝な性質なら、大英帝国など建設できなかったろう。

 戦後生き残った親衛隊7千人のうち、逮捕されたのは約8百名ほどで、他は起訴さえされなかったそうだ。わが国の“良心的”マスコミが持ち上げる「真摯に過去を反省してる」ドイツの現状がどんなものか、これで知れよう。

最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アウシュヴィッツ (Mars)
2005-08-22 22:39:18
こんばんは、mugiさん。



こんなことを質問するのは変かもしれませんが。

mugiさんは結婚されてますか?また、家族の為に死ねますか?(某映画での、記者会見での質問です)



この質問の場合、私では、まだ、独身です。しかし、守りたい家族はいます。家族とは、配偶者と子供だけでなく、親、兄弟、祖父母、おじおば、従姉妹、すべて家族です。家族の為に簡単に死ねるかというと、そうではないです。しかし、そういう立場になると、、、。そういう立場にならないと、わからないことです。



アウシュヴィッツにも、やはり虚実と現実とでは、少し差があるのでしょう。残酷、ではあったかもしれません。確かに悲劇です。しかし、悲劇であればこそ、美化もあるでしょう。

歴史は残酷であるといえるでしょう。しかし、歴史の名を借りた、捏造・歪曲も多々あるでしょう。歴史が、残酷であれば残酷である程、美化され、繰り返されると思います。



アウシュヴィッツで亡くなった方にはご冥福を祈ります。しかし、アウシュヴィッツの言葉で、人々を惑わす輩には、辟易します。

(やはり、私の歴史観は、問題ありでしょうね)
返信する
「2万人のユダヤ人を救った樋口少将」 (Unknown)
2005-08-23 12:02:31
「樋口は、関東軍司令部からの出頭命令を受け、参謀長・東条英機(後の首相)に対して次のように述べた。

もし、ドイツの国策なるものが、オトポールにおいて、追放したユダヤ民族を進退両難におとしいれることにあったとすれば、それは恐るべき人道上の敵ともいうべき国策ではないか。

そしてまた、日満両国が、かかる非人道的なドイツの国策に協力すべきものであるとするならば、これまた、驚くべき軽侮であり、人倫の道にそむくものであるといわねばならないでしょう。

私は、日独間の国交親善と友好は希望するが、日本はドイツの属国ではないし、満州国もまた、日本の属国ではないと信じている。



樋口は、東条の顔を正面から見据えて言った。「東条参謀長! ヒトラーのおさき棒をかついで、弱い者いじめをすることを、正しいとお思いになりますか」



東条は、ぐっと返事につまり、天井を仰ぐしぐさをしてから、 言った。



樋口君、よく分かった。あなたの話はもっともである。ちゃんと筋が通っている。私からも中央に対し、この問題は不問に付すように伝えておこう。」

「2万人のユダヤ人を救った樋口少将」より抜粋

http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h11_1/jog086.html
返信する
上は私の投稿です(苦笑 (加納綾一郎)
2005-08-23 12:06:55
ユダヤ人を救った日本人というと、駐リトアニア外交官の杉原千畝氏が有名ですが、樋口少将のことも忘れてはいけないと思います。



日本帝国が掲げた人種平等の精神の具現が、このユダヤ人救出なのでしょう。

返信する
家族の為に・・・ (mugi)
2005-08-23 21:56:10
こんばんは、Marsさん。



重いテーマですね。

独身者でも既婚の子供持ちでも、一番大切なのはやはり家族です。同じ死でも家族の為に死ぬなら、決して犬死ではないと思います。特攻隊員も本心は天皇の為でなく、家族を守りたかったのが動機でしょう。

ただ、極限状態は体験したことがないし(したくもないですが)、いざとなるとどのような行動が取れるのか、現時点では確信はないです。



以前アウシュヴィッツの元囚人の手記を読みましたが、やはり自己弁護も働くのか、己の都合の悪いことは書かないでしょうね。



英米がアウシュヴィッツを繰り返し取り上げるのは、ドイツに対する牽制だと思います。中韓が歴史問題で責めるのと基本的に同じ。実際は反ユダヤ主義は欧州に蔓延していて、アウシュヴィッツのあったポーランドなど度々ポグロム(大量虐殺)を以前から行ってました。イギリスの王子が仮装パーティーでナチの軍服を着ていたニュースからも、ユダヤ問題などイギリス人にとって重要ではないのでしょう。
返信する
コメント、ありがとうございます (mugi)
2005-08-23 22:00:31
こんばんは、加納さん。



外交官の杉原千畝氏に比べて樋口少将を知る人は少ないですよね。やはり旧日本軍特務機関長という経歴が災いしてるのでしょうか?数からすれば前者の3倍以上のユダヤ人を救ったのに残念です。英米軍人でこのような行動を取った者がいるでしょうか。

私は日本に彼のような軍人がいたのを誇りに思います。
返信する