トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

終戦の日に

2005-08-15 19:51:32 | マスコミ、ネット
   しばらく前から、終戦の日が近くなると放送する戦争関連番組を見るのが苦痛となっている。必ず悲惨な場面が強調され、命と平和の尊さのお題目の繰り返し。 戦争はヤラレた方こそ悲惨だが、勝った側は多数の戦死者を出しても惨事さえ忘れさせるものだ。そして、ごく一部のヒューマニストでもない限り、敵側の命な ど動物以下なのが実態なのだ。

  私がわが国の戦争関連番組を敬遠するようになった理由は、かなり感傷的で情緒的な場面が多い 為。如何に悲惨さを強調したところで、平和主義者が増えるのでもない。反戦をテーマにしたアニメが量産される割に、この手の作品が興行成績も振るわないの は何故だろう?逆にSFやファンタジーものでも戦闘シーンが多い映画は大うけ。「戦争は自分に被害が及ばないのなら、面白い」と明言したのは作家・井沢元彦氏だが、まさに当を得ている。

  平和が尊いのは分かり切っている。ただ、諸行無常の言葉どおり、永遠に平和が続くというものでもないし、1国だけで平和を築くことも出来ない。第二次大戦後も戦争が絶えないのは、戦争が己の利益になる者、ことに支配者側に多数いるから。「戦争は政治の継続である。・・・政治は血を流さない戦争であり、戦争は血を流す政治である」と言ったのは毛沢東だ。

  戦後60年特集で、8月5日付けの河北新報の紙面に、'94-96まで日弁連会長を務めた土屋公献氏へのインタビューが掲載されていた。彼は731部隊訴訟の弁護団長でもあった人物だ。彼が戦後補償問題に関心を向けるようになった理由は、日本が他の国と友好的な関係を保つ為らしい。「攻めてこられないように、敵になる可能性のある国々と仲良くしなければならないそのためには昔のことは謝らなければ」と語っている。最後の方で、土屋氏はこう締めくくっている。
 「特に苦々しいのは戦争を経験した事のない人たちが、政治家を含め大きな顔をして北朝鮮や中国を罵っている事全く反省がない。戦争の怖さを知らないで、何言っているんだと言いたい…こんな情けないことはない

   “戦争を経験した事のない人”の1人である私から言わせれば、典型的な友好好き平和主義者の意見だ。この種の者の決まり文句は“戦争を経験した事のない 人たちが、何言っているんだ”に尽きる。が、彼が体験したのは如何に戦時下の異常な時代といえ、一個人の体験に過ぎず、あの戦争全体を把握しているのでは 決してない。経験した事のない者が何言っているんだとの前提に立てば、殺人事件に対処する検事、弁護士、裁判官すべて人殺し経験者に限るということになる のだが。そして、未経験者や部外者は黙っていろ、と異なる意見を封殺するのは旧日本軍の権威主義そのものであり、ファシストとなんら変わりない。当人は気 付いてないだろうけど。

 『政略論』でマキアヴェッリはこんなことを書いている。「次の2つのことは絶対に軽視してはならない。第一は忍耐と寛容を持ってすれば、人間の敵意といえども溶解できる、などと思ってはならない。第二は報酬や援助を与えれば敵対関係すらも好転させうると思ってはいけない」。
  同じ本で他にもこうある。「譲歩に譲歩を重ねたところで相手は満足する訳でもなく、それどころか相手の敵意は貴方への敬意を失ったことによって、より露骨になり、より多くを奪ってやろうと思うようになるのがオチだ」と。
  かつて中国の北宋王朝(960-1127)も譲歩を重ね、相手に様々貢物をして友好に努めたところで、背信行為があったにせよ、結局金に滅ぼされたではないか。
 
   西欧の諺に「賢者は歴史に学び愚者は体験に学ぶ」というのがある。双方学んでこそ真の賢者だが、土屋氏のようなタイプはどちらからも学んでいないようだ。日弁連会長を務めた人の意見としては、こんな情けないことはない

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4 コメント

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戦争論 (Mars)
2005-08-15 22:19:44
こんばんは、mugiさん。



暦の上では秋ですが、残暑は厳しいですね。

夕立や雷雨等、急の天候の変化には、気をつけないといけないですね。



私は読んでいないのですが、クラウゼヴィッツは戦争論でも説いています。政治の延長に戦争があると。

かの孫子等の兵法書でもあります。戦わずして勝つ。戦わずには勝つにはどうすればよいか?敵の軍より強大な軍を持ち、外交で下せばよいのです。少なくとも、敵と同等な兵力または武器を持てば、簡単には攻め込まれることはない、という考えは、現在の核の抑止力に通ずるものがあります。



そして、城を攻めるを下策、心を責めるのが上策なれば、どうすればいいか?○巻きの人には申し訳ないですけど、策にまんまと乗っていますね(外交官も同様です。これの篭絡の仕方は、六韜に譲ります)。残念ながら、彼を知り己を知れば、という、兵法の基本中の基本を○巻きの人は、ご存知ないですね。



平和は、おまじないで守れるものではありません。自国の、平和と経済のみに執着すれば、スパルタやカルタゴの再現になるかもしれません。



私は、これから、スイス出版の民間防衛を読んでみます。かの国は、いかに中立国でたりえたのか。が、もちろん、武装放棄もしていません。いかに、テロに、思想テロに対応するか、読んでみます。



(万が一、日本が戦争に巻き込まれても、最大の敵は内にあるでしょうね。反日日本人&外国人(協力的な外国人もいるとは思いますが)に対処する方法を、そろそろ、本格的に考えるべき時期に達しているように思われます)
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チベット化 (mugi)
2005-08-16 21:39:15
こんばんは、Marsさん。



私の住んでいる宮城県は、お盆なのに曇り続きで梅雨時のような天気が続いてます。

今日の昼頃の地震はかなり揺れました。ガス、水道、電気などのライフラインは無事だったので、とりあえず一安心ですが、いつ起きるか知れぬ地震列島ゆえ、お互いに備えが必要でしょうね。



孫子の兵法書で最悪とされてるのは、己を知らず敵も知らずのタイプ。私は○巻きの連中は、彼らが憧れる共産国のように収容所送りにして、思想教育する他ないと思います。まさに敵性分子ですから(笑)。

“インドのマキアヴェッリ”こと、カウティリア(マウリヤ朝開祖チャンドラグプタの宰相)も、『実利論』で盛んにスパイの効用も説いてますが、いまだ日本はスパイ天国の有様。



中共など信用すればチベットの二の舞になるのは明らかなのに、友好を築けると思い込んでるお人よしが多すぎるのです。
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コメントありがとうございます (morokuzu)
2005-08-17 23:36:45
地震大変でしたね。私も近くに住んでますので、揺れは大きく感じました。



トラックバックのタイトルを見て、変に思われたかもしれません。



「私はたとえ、日中間で戦争がなかったとしても、良好な関係にはならなかったと思います。」・・・これは、非常に重要なポイントです。私もその通りだと思います。歴史にIFはない、とも言いますが、中国を理解する上で、これほど的確な言葉も少ないでしょう。



アイリスチャンは自殺したようで、残念ですね。捏造写真ばかり使用した事を、日本に謝罪すれば、可愛げがあったものをと思いました。w

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コメントありがとうございます (mugi)
2005-08-18 21:16:08
こんばんは、morokuzuさん。



地震で幸い我が家では、棚のものが落ちた程度で済みました。本当に常に備えが必要ですね。



たとえ三世でもチャンはアメリカ人というより完全に中華思想の権化ですから、日本などに謝罪するはずがない。「愛国無罪」だし、中国、朝鮮人共に、日本人に対する犯罪は英雄行為と見なしてますから、捏造など平気なのです。同じアジアの国と思う人は認識が甘すぎる。
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