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トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

世界史の中のアラビアンナイト その五

2014-10-18 21:39:02 | 読書/欧米史
その一、その二、その三、その四の続き ガラン版『千一夜』の出版が契機となり、欧州で東洋趣味が流行する。ガラン版愛読者だったヴォルテールはアラビアンナイトを模して東方風のロマンス『ザディグ』を書き、ユーゴーは『東方詩集』を出している。『東方詩集』序文には次の一節があった。―今日ほど東方が世人の関心の的となった時代はない。東方研究がこれほど推進された時代はなかった。ルイ14世の世紀にはギリシャの賛美者 . . . 本文を読む

世界史の中のアラビアンナイト その四

2014-10-17 21:37:32 | 読書/欧米史
その一、その二、その三の続き カルカッタ第一版の検定者には現地人が加わっており、その人物によればアラビアンナイトは口語アラビア語を学ぶには格好のテキストだったそうだ。ただし、厳密な検定作業による学術的な出版物ではなく、件の検定者もイギリス人学習者に合わせた改変を行っている。 カルカッタ第一版から四半世紀後の1839年から1842年にかけ、カルカッタ第二版が出版された。千一夜とは別系統の物語集やエジ . . . 本文を読む

世界史の中のアラビアンナイト その三

2014-10-13 21:10:30 | 読書/欧米史
 その一、その二の続き 世俗の教養人に東方文化を紹介したのはガランが最初ではない。彼の生まれた翌年の1647年、コーランがフランス語に全訳されている。コーランのラテン語訳は既にあったが、欧州の世俗語に訳されたものとしてはこれが初めてだった。当時コーランは悪魔学の書と見なされていたが、翻訳者アンドレ・デュリエ(1580-1660)はアラビア語による真っ当な作品としてコーランを紹介しようとし . . . 本文を読む

世界史の中のアラビアンナイト その二

2014-10-12 20:40:19 | 読書/欧米史
その一の続き アラビアンナイトの写本を必死に探し回っていたガランは、まもなくアレッポ(現シリア)出身でフランスに滞在していたハンナ・ディヤープという人物と知己になる。ハンナという名前でも女性ではなく、シリア語では「ヨーハンナーン」であり、フランス語にすると「ジャン」となる。さらに彼はアラブ人でもムスリムではなく、マロン派(東方典礼カトリック教会の一派)キリスト教徒だった。 ガランは故郷の民話に詳し . . . 本文を読む

世界史の中のアラビアンナイト その一

2014-10-11 20:40:46 | 読書/欧米史
『世界史の中のアラビアンナイト』(西尾哲夫 著、NHKブックス1186)を先日読了した。日本の東洋文庫版だけでも全18巻+別巻という大長編、全巻通読された方はあまりいないだろう。アラビアンナイトの原形が出来たのは9世紀頃とされているが、現代目にするような千一夜分の物語がそろった大長編になったのは、何と19世紀になってなのだ。しかも、千一夜物語に編集したのは英米の東洋学者である。『世界史の中~』のカ . . . 本文を読む

ホモセクシャルの世界史 その四

2014-06-16 21:10:14 | 読書/欧米史
その一、その二、その三の続き 大英帝国時代の有名な軍人キッチナーの名も挙がっていたのは驚いた。彼は女に関心がなく、生前から女嫌いと言われていたそうだ。さらにキッチナーはセシル・ローズと同じくお気に入りの若者を集めた“少年隊”を持っており、彼に忠実に仕えた若者もいる。 軍人でもキッチナーは美術愛好家で、陶磁器のコレクターの一面があった。彼の蒐集を助けたのは友人のロナルド・スト . . . 本文を読む

ホモセクシャルの世界史 その三

2014-06-15 21:11:04 | 読書/欧米史
その一、その二の続き さすがに欧州も近代には刑法の改正が進み、多くの国で男色を処罰する法律が廃止される。特に啓蒙君主のいた国ではそれが早かったが、欧州の大国、英国やフランスではそれが遅れた。近代までの欧州諸国では男色者というだけで処刑対象だったのだ。1783年がフランスで最後の男色者処刑と言われるが、この場合は男色よりもそれに伴う殺人が極刑理由だったらしい。そして1791年、ついにフランスでは男色 . . . 本文を読む

ホモセクシャルの世界史 その二

2014-06-13 21:10:26 | 読書/欧米史
その一の続き 古代ギリシアで同性愛が発達したのは、勇士を教育する軍隊組織の他に三つの要素を挙げた説が紹介されている。体育への情熱、男の裸体の受け入れ、そして男の裸体の美のカルトがそれらに当たるという。体育は戦争のための訓練として始まったが、やがてそれ自体として発達するようになった。体育は裸で競技されるようになり、絵や彫刻に表現され、男の裸体が美として見られるように至ったという。 これは現代の説だが . . . 本文を読む

ホモセクシャルの世界史 その一

2014-06-12 21:10:19 | 読書/欧米史
 先日、『ホモセクシャルの世界史』(海野弘著、文藝春秋)を読了した。タイトルだけで“やおい”が喜びそうな書だが、著者は資料文献を丹念に調べた上、男の同性愛について真摯に考察している。世界史と銘打っても論考の対象は欧米のホモセクシャルの歴史であり、東洋には言及されていない。歴史教科書で必ずと言ってよいほど名が載っている世界史の著名人のエピソードも豊富であり、この人もホモセクシ . . . 本文を読む

英国貴族の爵位売ります その二

2014-03-08 20:40:19 | 読書/欧米史
その一の続き 1916年から1922年までのロイド・ジョージ内閣で、実に94人の貴族が誕生しており、これはそれまでの2倍以上という。さらに1,500人がナイトの称号を与えられた。それまでの20倍らしい。ロイド・ジョージは貴族やナイトを粗製乱造し、その謝礼で稼いでいるという噂が流れた。当時ナイトには1万ドル、貴族には5万ドル以上払うのが相場と言われた。 爵位のリストは首相が選び、国王が承認する形式で . . . 本文を読む