その一、その二、その三、その四の続き「2人の間の恋が、どのようにはじまったのかは知られていない。だが、法王が実は女だったと知った時の若者の驚きがどんなであったかを想像し、法王猊下の乳房を愛撫するという、歴史始まって以来のことをする時の、キリスト教徒である彼の心境はどうだったのかと想像する時、誰も思わず、口の端に笑みが浮かぶのを抑えることが出来ないであろう。おそらく、法王のジョヴァンナ、15歳以上も . . . 本文を読む
その一、その二、その三の続き はじめのうち、フルメンツィオはジョヴァンナを取り巻く名声と賞賛を自分のことのように喜んでいた。2人の庵を訪れる客人との会話には、フルメンツィオだけが取り残される。作者はその状況をこう描いている。「彼はジョヴァンナを愛するあまり、彼女のためばかりを考えて生活していたために、1人の男としての進歩が止まってしまっていたのだった。反対にジョヴァンナは、ますます彼女の素質に磨き . . . 本文を読む
その一、その二の続き フルメンツィオは既に約束の場で待っており、傍の木にはロバが繋がれていた。2人はロバに乗って、夜道を一晩中進む。夜が明けた頃、パンと共にフルメンツィオは持参してきた修道士の服を見せ、恋人にこれに着換える様に云う。修道士の服、つまり男の服を着ることにジョヴァンナは激しく首を振る。聖書では、“女は男の着物を身に着けてはならない。男は女の着物を着てはならない(申命記22: . . . 本文を読む
その一の続き 両親とジョヴァンナの親子3人は、修道士の父親の仕事である洗礼や埋葬、ミサをしながら、ドイツやフランスの各地方を放浪していたらしい。彼女が8歳の時に母が亡くなり、それに衝撃を受けた父はそれまでの生き方を変える。父は可愛らしく利発に育っている娘を連れて、豪族や金持ちの商人の家を廻り始める。誰それの家で宴があるという情報をキャッチし、父は宴の始まる頃合を見計らい、その家の扉の前に父娘で立つ . . . 本文を読む
『愛の年代記』(塩野七生著、新潮社)を暫くぶりで読み返した。全9編からなる短編集で、どれも味わい深い作品ばかりだが、今回は最終章の「女法王ジョヴァンナ」が特に面白かった。タイトル通り中世の伝説を元に、ローマ法王になった女を描いた歴史小説。私の持っているのは初版が1975年3月の単行本で、70年代当時の社会風潮も伺える。作品は次の文章で始まっている。
「私たち20世紀に生きる女にとって、やろうとし . . . 本文を読む
その一、その二の続き マリー・アントワネットの第一子で、唯一生き残ったマリー・テレーズも苛酷な人生を送った。マリー・テレーズの両親が処刑された同じ年の12月、彼女は15歳の誕生日をタンプル塔で迎えている。既に同年7月、弟ルイ・シャルルとは引き離されており、叔母エリザベート内親王と2人との監禁生活だったが、その叔母も翌年5月に処刑された。マリー・テレーズは叔母の死後、1人で誰ともほとんど会話をするこ . . . 本文を読む
その一の続き『ヴェルサイユ宮廷の女性たち』終章は、「王太子の惨死」という見出しで完結されている。ここから死に至るまでのルイ・シャルルの末路を引用したい。
―ここで哀れをとどめたのは、ルイ17世になるはずだった王太子である。彼が靴匠シモンにそそのかされ、近親相姦なるものについて、母親と叔母を告発したことは前述した。シモンはロベスピエールを尊敬するジャコバン過激派の急進分子だが、性格は野卑残忍だった . . . 本文を読む
今日はフランス王妃マリー・アントワネットが処刑された日でもある(1793年10月16日午後零時15分)。少なからぬ日本人と同じく、私がアントワネットの名を知ったのは『ベルサイユのばら』だったし、ベルばらには彼女の子供たちが登場している。ベルばらに登場したアントワネットの子供たちは3人だったが、彼女は生涯で2男2女を産んでいる。そこでアントワネットの命日に因み、彼女の子供たちについて書いてみたい。 . . . 本文を読む
その一の続き ドイツは三十年戦争で国土は荒廃、人口が激減したが、長期間にわたる戦闘や傭兵による略奪によるところが大きい。略奪して食っているのだから、傭兵は楽して豊かになれたと思いきや、話はそれほど単純ではない。「傭兵たちの掠奪」というサイトには、この時代の傭兵の背景が載っており、結論をこう結んでいる。「彼らは儲かるから傭兵となったのではない。傭兵とならなければ生きていけなかったのである。掠奪しても . . . 本文を読む
外人部隊や傭兵というと、闘う男の集団というだけで奇妙な憧れを抱く男性が少なくないらしい。そのためか劇画や小説にも取り上げられ、闘うヒーローとして描かれている。私は未見だが、「サハラ 女外人部隊」という女の外人部隊を主人公とした劇画もあるほど。実際に女に外人部隊が務まるのかはともかく、女ということもあるためか私は外人部隊や傭兵に対しては、悪印象と嫌悪感が自然にこみ上げてくる。 2010-04-30 . . . 本文を読む