『スキャンダルの世界史』(海野弘著、文藝春秋)を先日面白く読了した。文字通り、古代ギリシア・ローマ時代から20世紀末までの英雄や有名人のスキャンダルを扱った作品。“世界史”と銘打っていても、この本で取り上げられているのは欧州史で、近代以降は米国史上のスキャンダルも列記されている。そのため内容からは「スキャンダルの欧米史」が相応しいタイトルかもしれない。 本の中で最も私の関心 . . . 本文を読む
その一、その二、その三の続き「暗黒の医療-十字軍時代の西欧人」の記事でも書いたが、当時のフランク人の医療水準はお粗末な限りだった。『十字軍物語2』にもこの記録が紹介されていたが、作者は次のように当時の欧州の医術を弁護している。 ―ヨーロッパ人の医術がここに描かれたようなものばかりでなかったことは、「病院騎士団」(聖ヨハネ騎士団)の病院にはイスラム教徒の患者も来ていたことでも証明されるだろう。だが、 . . . 本文を読む
その一、その二の続き 戦う騎士にばかり目が行く十字軍だが、遠征ひとつとっても彼らや軍馬、武器を輸送したのはイタリアの海洋都市国家の船である。ヴェネツィア、ジェノバ、ピサなどの船はいざとなれば海軍船になり、十字軍以前からこれら諸都市は盛んに中近東との交易を行っていた。海洋都市国家は人や物質を中近東に送りつけただけでなく、帰りには東洋のあらゆる商品を船に積載、欧州で売りさばいている。彼らイタリア商人は . . . 本文を読む
その一の続き 結成と遠征ばかりが注目される十字軍だが、西欧も例年中東に遠征していたのではない。作者は十字軍と次の十字軍の間の時期に注目し、その中間時に中東のフランク人がどうやって生き延びたかを考察している。この視点にはハッとさせられたし、第1回十字軍から第2回十字軍までは半世紀近く間があり、第2回から第3回十字軍も40年ちかくも経ている。欧州からの新たな十字軍も期待できない状態のこの時期、中近東の . . . 本文を読む
『十字軍物語2』(塩野七生著、新潮社)を先日読了した。2巻目では第2回十字軍を取り上げ、1187年10月2日のエルサレム陥落までが描かれている。後半にはいよいよサラディンが登場。やはり歴史書はサラディンのような歴史上の“スター”が現れるのが読んでいても楽しい。第2巻は4章に構成されており、「守りの時代」「イスラムの反撃始まる」「サラディン、登場」「「聖戦」(ジハード)の年」 . . . 本文を読む
その一の続き 興味深いことにホガースは民主主義に強い軽侮心を抱いており、民主主義をより劣等な民族に鼓吹しようとする思想に対しても軽侮心を向けていた。彼は熱烈な憂国者でもあり、英国の偉大さを確信、祖国を偉大なままにしておく最善の方策に自信を持っていた。 ホガースは世界を大勢の強力な敵手たちが、それぞれに自分たちの利得権を広げ、その賭金を増やそうとやっきになっている巨大な賭博台と考えていたらしい。ゲー . . . 本文を読む
デビッド・ジョージ・ホガース(David George Hogarth/1862-1927)という英国人学者の名を知る人は至って少ない。生前は著名な考古学者であり、生国はもちろん欧州でも権威ある東洋学者として知られ、ロンドンの社交界でも高い評価を受けていた。 だが、死後は忘れ去られ伝記さえないらしい。ホガースの名は彼の教え子で愛弟子でもある人物との関連で出てくる。その教え子こそトーマス・エドワー . . . 本文を読む
今年2月はじめ、2回に亘り「ローザ・ルクセンブルク」という記事を書いた。タイトル通り、マルクス主義の理論家、女革命家でもあったローザ・ルクセンブルクの生涯についてだが、この弱小ブログには珍しく訪問者数が1,170にもなった。左翼知識人でもなければ、ローザなど半ば忘れられた理論家だと思っていたが、この数には私自身驚いた。 私はローザの著書は未読で、永井路子氏のエッセイ『歴史をさわがせた女たち』(外 . . . 本文を読む
その①の続き 民族自決についても、ローザ・ルクセンブルクとレーニンの路線に違いがある。後者がこれを提唱したのは有名だが、ローザは故郷のポーランドの独立さえ反対しており、wikiにはその背景が解説されている。 -ポーランドの独立はドイツ、オーストリアおよびロシアでの革命を通してのみ可能であると考えており、闘争はポーランド独立を目標とするものではなく、資本主義そのものに対するものでなければならないと主 . . . 本文を読む
昨年12月の記事「ある反核平和活動家の最後」でも書いたように、共産主義には強いアレルギーのある私でも、チェ・ゲバラのように、その生き方には驚嘆させられるマルクス主義革命家もいる。政治理論家、女革命家でもあったローザ・ルクセンブルクもその部類に入る。ローザ・ルクセンブルクといっても、今の日本では左派からも忘れがちな人物かもしれない。女性活動家は珍しくもない現代でも、理論家と同時に闘士でもある人物は . . . 本文を読む