その①、その②、その③の続き シチリア遠征軍の壊滅は惨すぎる。デロス同盟軍からの参加兵も加えれば、5万人にもなった遠征軍の中で、生き残ったのは7千人でしかなかったという。捕虜となった7千人のうち半分はアテネ市民だったと考えられているが、残り半分の非アテネ人は奴隷として売られる。 後者のように奴隷として売り飛ばされた方がマシだったかもしれない。アテネ人は地下の石切り場で強制労働を強いられ、飢餓や病で . . . 本文を読む
その①、その②の続き 繁々と訪ねてくるアスパシアの男友達にソクラテスがいたので、ペリクレスはこの大哲学者の影響を受けたのでは?と想像したくなるが、彼はソクラテスに興味は持たなかったそうだ。ペリクレスが哲学に無関心ではなく、哲学者アナクサゴラスは親友の仲だった。しかし、市民集会の場で、「無知であることを知れ」等と言おうものなら、それだけでブーイングはもちろん、陶片追放にさえなりかねない。 ギリシア史 . . . 本文を読む
その①の続き 紀元前ゆえに古代ギリシア世界は、現代のイスラム圏と同じく完全な男優位社会だった。既婚未婚問わず、父や夫が中流~上流階級に属する女は、祝祭日に行われるのが恒例の神殿までの祭列に加わる以外、まず外出の機会そのものからしてなかった。あのオリンピックも女は観戦を許されず、家にこもっているのが良しとされ、家の女主人は夫の客に挨拶に出ることもなかった。いかもに女性作家らしく、著者はこう述べている . . . 本文を読む
『ギリシア人の物語Ⅱ/民主制の成熟と崩壊』(塩野七生著、新潮社)を先日読了した。前巻『ギリシア人の物語Ⅰ/民主制のはじまり』は既に見ていたが、古代ギリシア史には特に関心はなかったし、元から私は古代ペルシア贔屓。それでも塩野氏の作品なので、ペルシアが“悪役”だった第1巻でも面白く読めたが、記事にしたくなるほどの感銘はなかった。 しかし、今作は違った。一般に古代ギリシア=アテネ . . . 本文を読む
1602年設立、世界初の株式会社と言われるオランダ東インド会社。会社といえ、現代人のイメージするそれとは極めて異なり、アジアにおける交易はもちろん、植民地経営や支配を行う一大海上帝国でもあった。オランダが東インド経営の基礎を固めたのは、第4代並び第6代東インド総督ヤン・ピーテルスゾーン・クーン(在任1619-23年、再任1627-29年)の時代だった。 記録好きでは定評のあるオランダ人らしく、ク . . . 本文を読む
その一、その二の続き「地獄部隊」と名付けられたとおり、ヴァンデ鎮圧に派遣された連隊は虐殺と破壊を繰り返した。住む家を失った人々はカトリック王党軍に身を寄せるも、焦土作戦により食糧も得られず、飢えと疲労で疫病が流行り、士気は低下する。 そして季節は冬に入っており、1793年12月23日のサヴネの戦闘で、反乱軍は壊滅する。反乱軍は戦闘員・非戦闘員問わず虐殺され、捕虜となった1,679名はナントに連行さ . . . 本文を読む
その一の続き 革命で国王夫妻を処刑したフランスだが、アンシャン・レジーム体制の頃、国王はフランス国民に深く愛されていた。王が病人の手に触れると病気が治るという「神聖なる治癒者」という信仰もあったという。王が触れて瘰癧の難病がたちまち治ったという証言まであり、王が患者に手を差し伸べている絵画も多数あるそうだ。これは自国には見られないフランス独特の現象として、当時フランスを訪問した英国人旅行者が特記し . . . 本文を読む
世界史に関心のない日本人にもフランス革命は、それに伴う恐怖政治で夥しいフランス人が処刑されたことで知られる。日本の場合は「ベルばら」の影響が大きいが、それでも恐怖政治でフランス革命の印象が良くない人は多い。 だが反革命分子と見なされ、不当な略式裁判で処刑された人々はまだマシな方だったと思う。若くしてでっち上げや濡れ衣により断頭台で命を絶たれた人々も悲惨だが、フランス革命におけるヴァンデ戦争で犠牲 . . . 本文を読む
その一の続き マーロウが最も活躍した1587年は、絶えずエリザベス1世に対し陰謀を企てていたスコットランド女王メアリー・ステュアートが処刑された年でもあり、ウォルシンガムが本格的にスペイン工作を始めていた。メアリー・ステュアートの背後でカトリック大国スペインがエリザベス廃位を画策していたのは書くまでもなく、ウォルシンガムはメアリーを「胸中の蛇」とまで呼んでいたという。 フランスのランスにはカトリッ . . . 本文を読む
昨年8月31日付の河北新報の国際・総合面に、英国人作家フレデリック・フォーサイスに関する記事があり、見出しにはこうあった。「英人気作家「私はスパイだった」」「フォーサイス氏、自伝で告白」「MI6に協力、冷戦下の東独や南アで極秘任務」「フレデリック・フォーサイス MI6」で検索すると、多くのサイトがヒットし、「作家フォーサイス氏はMI6の協力者だった これがスパイ組織の広報戦略だ」という記事は河北 . . . 本文を読む