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トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

ヒンドゥーとムスリム その②

2008-12-04 21:28:39 | 読書/インド史
その①の続き 北方から遊牧民が侵攻する中国と同じく、インド史でも北西方面からの異民族侵入が繰り返された。そして中国と同じく異民族侵略者は軍事的にインドを制圧しても、文化的には支配されてしまい、いつの間にかヒンドゥー化、つまり同化される。アレキサンダー大王のインド侵攻以降来たギリシア人入植者がインド・グリーク朝をひらくようになり、中でも仏教に帰依したミリンダ王ことメナンドロス1世は知られている。しか . . . 本文を読む

パールシーとアヘン

2008-11-26 21:28:37 | 読書/インド史
 貿易国にアヘンを売りつけ、取り締まろうとする側を砲艦攻撃したアヘン戦争は、近代戦争で大義なき最悪な戦争の1つである。イギリスではこの戦争を歴史教科書に載せていないようで、19世紀から鉄面皮の民族性は変わらないらしい。だが、インドで生産されたアヘンを中国に輸出し、中国の茶と絹はイギリスへ輸出、イギリスから工業製品をインドに輸入するという三角貿易を発案したのは東インド会社のイギリス人社員ではなく、パ . . . 本文を読む

インドが長く支配された訳 その④

2008-11-13 21:58:57 | 読書/インド史
その①、その②、その③の続き むしろ他宗教の方が忍び寄るヒンドゥー教に恐れを感じていたと、ヴァルマ氏は見ている。古代ヒンドゥー教というべきバラモン教から分離したジャイナ教は、仏教と異なりインドで途絶えることはなかったが、教義とは裏腹に夥しいカーストがあるそうだ。キリスト教に改宗したインド人もかなりいるにせよ、改宗後も己の属するカーストを確認するのだ!16世紀に誕生したシク教も聖典にはヒンドゥーの神 . . . 本文を読む

インドが長く支配された訳 その③

2008-11-12 21:26:06 | 読書/インド史
その①、その②の続き インドの人口の凡そ8割強はヒンドゥー教徒が占めている。自身、ヒンドゥー教徒であるヴァルマ氏の見解は興味深い。一般にインド人は宗教に寛容とのイメージがあり、インド人もまたそう信じているが、そのような見方を氏は間違っていると言う。ヒンドゥーの慣例はとても偏狭で堕落しており、高カーストの教徒がシュードラ(※カースト最下層、他に不可触民までいる)に加え続けた暴力や偏見は他の宗教では見 . . . 本文を読む

インドが長く支配された訳 その②

2008-11-11 21:22:03 | 読書/インド史
その①の続き 7世紀に訪印した中国僧・玄奘は、「インド人は明るい気質で…訴訟に関しては度が過ぎるほど譲歩的になる」と記している。ソグド人をよく書かなかった玄奘も、インド人にはべた褒めに近い記録を残しており、他にも「民は概ね正直、勤勉、勉強熱心」とある。18世紀の初代インド総督ウォーレン・ヘースティングズも、インド人の特質をこう語っている。「インド人は優しく慈悲深い性質で、親切にされたこと . . . 本文を読む

インドが長く支配された訳 その①

2008-11-10 21:30:41 | 読書/インド史
 ある若い方が発した疑問で、ずっと気になっていたことがある。「何故あれ程理知的な人がいるインドが、長らくイギリスに支配されたのか、ツッコミたくなる」。素朴だが実に鋭い問であり、インドに関心のある私も色々考えてみた。その理由として、カースト制と多民族、多宗教国家ゆえ、大同団結が出来にくかったことが挙げられる。しかし、先日見たインド人著者の本で、他にも興味深い事情があったことが分った。 その本こそ『だ . . . 本文を読む

サティー/焼殺される妻たち その②

2008-10-29 21:24:53 | 読書/インド史
その①の続き 迷信深いヒンドゥーにとり、不吉とされるものの中でも未亡人は最悪な存在であり、朝、最初に見るのが未亡人なら1日中が不運だと信じられた。また旅に出る前、道で未亡人に出会えば、出かけるのを延期したと言われる。未亡人が忌み嫌われたのは、前世からの業で夫を殺したとか、未亡人となるのは前世で犯した罪に対する罰だと考えられていたからだった。「夫を食べた、飲み込んだ」とも言われ、夫の死の責任を負わさ . . . 本文を読む

サティー/焼殺される妻たち その①

2008-10-28 21:23:30 | 読書/インド史
 インドに関心がない方でも、この国にサティーと呼ばれる未亡人殉死の恐るべき因習があったことを耳にされたかもしれない。独立後、サティーは消滅したと思いきや、今から20年程前に「サティー復活」として衝撃を与えた事件が起きている。私も以前この出来事を新聞のベタ記事で見たが、最近その詳細を知り、改めて慄然とさせられた。 1987年9月4日、18歳のループ・カンワルは病死した夫の遺体と共に生きながら焼かれる . . . 本文を読む

ノーベル賞再考

2008-10-12 20:28:07 | 読書/インド史
 今年のノーベル賞で物理学賞が3名、化学賞1名と日本人学者が受賞した。まずは受賞者たちのこれまでの業績を讃えたい。ただ、私はどうもへそ曲がりの性分ゆえか、立て続け4名もの受賞者には腑に落ちない。アジア諸国で最多の受賞者を出しているのは日本だが、続いてはインドであり、日本よりお先に受賞者を出している。しかも、英国からの独立以前に。 アジア人初のノーベル賞受賞者はインドの詩人タゴール。詩人ゆえ文学賞で . . . 本文を読む

伝統保持と同化 その②

2008-08-12 21:23:54 | 読書/インド史
その①の続き インド亡命後、パールシーは衣食といった基本の日常生活の変更を迫られた。既に移住時、土地のヒンドゥー支配者からグジャラート風の服装をすることを居住条件の1つに求められていたが、具体的な史料がないため、どのような衣装で来印したのか不明である。彼らの服装が判明出来るのは16世紀以降であり、当時のパールシー女性は花柄のブラウスの上からカラフルなサリーを羽織り、その端を右胸から頭に巻き付けスカ . . . 本文を読む