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【ファーストタッチ】 シムカ 5 (安田征策)

2013-03-20 23:37:23 | AFV ~ 戦車・装甲車輌


【ファーストタッチ】 シムカ 5 (安田征策)
●まずはじめに
 2012年9月、タミヤさんからフランスの小型スタッフカー「シムカ 5」のキットが1/35ミリタリーミニチュアシリーズ(No.321)のラインナップのひとつとして突如発売されました
 イタリア車の流れを汲んだかわいらしいフォルムの「シムカ 5」は、現在の軽乗用車よりも小型で、単品作品やビネット、ジオラマへの展開など様々な「楽しみ方」を想像させてくれる好アイテムといえるでしょう

 この「シムカ 5」、及び原型車にあたる「フィアット 500A トポリーノ」も過去レジン製のキットが発売されており、以前、私が雑誌作例として「ルノー UE トラクター」のジオラマを製作した際、このレジンキットを登場させたことがあります
 「ルノー UE」は装軌車両としてはかなり小型の部類になり、ジオラマ作成にあたり通常サイズのソフトスキン車両を同一面に配置すると主役より目だってしまう可能性があります
 そこで、小型乗用車「シムカ 5」を「ルノー UE」と共に配置、バランスのとれた車輌配置ができたかな?という思い出があります
 このジオラマ製作の際「面白い車両だな」という印象を持っていましたので、タミヤさんからキット化され、いつでも手軽に使うことができるのが嬉しい限りです

 最近のAFV界ではソフトスキン車両の製品化が進んでいますが、トラックのような軍用車両とは趣の異なる雰囲気を持ち、組立てにストレスを感じないモールドや適度なパーツ構成のタミヤ製キットは大好物ですので、今回はこのタミヤ版の「シムカ 5」のニューキットをインプレッションしてみます



●「シムカ 5」の実車について
 「シムカ 5」はイタリアの「フィアット社」が大衆車として開発、生産した「フィアット 500A トポリーノ」が原型車となっています
 この「フィアット 500 トポリーノ」は、今なお続く「フィアット 500 (チンクエチェント)」の源泉にあたる車で、大戦前の1936年に発表され戦後1955年まで製造が続けられたロングセラーの小型大衆車として、その存在を広く知られていました

 無駄を省いたコンパクトな設計でまとめられ、イタリアらしいお洒落な曲線ラインでフォルムを構成しつつ丈夫な足回りを持つ「フィアット 500」は、大ヒット車となります
 イタリア国内での人気に気をよくした「フィアット社」は「フィアット 500」の輸出販売を計画しますが、輸出する際に問題となったのが「関税」により現地販売価格が上昇してしまう事でした
 できるだけ低価格であることを目指し、大衆車として開発された「フィアット 500」には、この関税による価格の上積みは非常に大きな問題でした
 そこで、フランスでの販売拠点と生産工場として「シムカ」社を創設、「フィアット」社から部品を供給し「シムカ」社で組み立てを行うという方式を採ります

 つまり、フランスで販売された「シムカ 5」とイタリアで販売された「フィアット 500A トポリーノ」は、細部の仕様が若干異なる他は基本的に同一車両であり、全体のデザイン、スペックはほぼ同じものとなっています。

 「フィアット 500A トポリーノ」が民間からの転用車両としてイタリア軍で使用されたのと同様、「シムカ 5」もフランス軍で採用、フランス占領後はドイツ軍に接収され運用されています
 もっとも、元々が軍用車両として開発されたものではないので野戦向きとは言い難く、後方部隊や空軍などの小型スタッフカーとして運用されいたようです



●「シムカ 5」の組立てと車内の塗装
 箱をあけてみると、小型の車両だからでしょうか、パーツ数はかなり少なめに抑えられています
 車体上のディテールを再現したモールドはタミヤらしくシャープで秀逸、ヘッドライトのレンズ部分やウィンドーにはクリアーパーツ、メーター部分もデカールが用意されていますので、パーツ数は少なくても、プラモデルとしてのポイントはしっかりと押さえていることがわかります

 さて、組立てにあたり、工作過程での注意点や問題点はほぼない、と言っていいでしょう
 パーツ同士の合いも良好ですから、「説明書に従ってただ手を動かすのみ!模型作りを楽しみましょう」と断言できます

 とはいえ、ソフトスキンの中でも「軍用乗用車」という車種、普段装甲車輌ばかり製作している者にとってひっかかる点は「車内をどの時点で塗るか」「ウィンドーをいつ取り付けるか」という2点です
 キットではキャンバストップが開いた状態となっており、この状態が塗装の順序を惑わせます
 一瞬、全てを組み上げてから車内を塗装することも考えましたが、正確で綺麗な塗り分けを考えると難しそうです
 そこで、正攻法として車内を塗装してから全体を組み、キャンバストップの開口部をマスキングする方法で組立てています、手間は掛かりますが、一番確実な方法でしょう

 側面のドア、車内の座席、レバー類、メーターパネル、バックミラーのパーツを床面パーツおよびボディ部に接着、その後に車内の塗装を行いました
 ドアの内側にドアノブがないのにギョッとしますが、何分実車の車体内部が分からないので、そのまま組立てと塗装を行います
 デザートイエローという内貼り色も、通常の軍用車両にはない色ですので、ちょっと当惑しつつ作業を進めました

 車内の塗装が完了したら、外装パーツを取り付けて、全体の組み立ては完了です

 もう一つ、「ウィンドーをいつ取り付けるか」ですが、このようなクリアーパーツの接着は、接着剤や塗装により汚れてしまう可能性があるため、装着する時にはより慎重さが求められます
 総論としてウィンドーパーツをどの時点で接着するかは、おそらく人によっても異なり、ケースバイケースになるのでしょう
 「シムカ 5」のキットのフロントウィンドのパーツには内枠がモールドされていますので、今回は車内の塗装後にプラ用接着剤で装着しました
 サイドウィンドーに関しては、実車の構造に従って枠などは存在しておらず、このままプラ用接着剤で接着すると汚れてしまう可能性が高いので、全体の塗装後に取り付けることとしました
 クリアーパーツとボディ部分との合いもピッタリですから、この方法で問題はなさそうです



●「シムカ 5」の車体の塗装
 塗装の前に、キャンバストップ部とサイドウィンドーの開口部、そして取り付けが終わったフロントウィンドー部をマスキングします
 塗装自体は、ドイツ国防軍仕様車両としてジャーマングレーを選択しました

 まず、全体をタミヤの缶スプレーのスーパーサフェイサーを吹きます
 基本塗装は、タミヤのアクリル塗料をエアブラシを使用して塗装、下地の塗装として、「ジャーマングレー (XF-63)」に少量の「フラットブラック (XF-1)」を混ぜた色を全体に吹き付けました

 次に基本色のシャーマングレーを塗装します
 使用した色は、「ジャーマングレー (XF-63)」をベースとして「フラットホワイト (XF-2)」を混ぜて明度を上げ、さらに極少量の「フラットグリーン (XF-5)」を混ぜたもを使用しています

 続いて、「フラットブラック (XF-1)」+「フラットブラウン (XF-10)」を溶剤で極薄く溶き、シャドー吹きを実施
 反対に、ハイライト吹きとして出っ張った部分を中心に、基本色に少量の「フラットホワイト (XF-2)」を混ぜた色を薄く溶いて、吹き付けています

 次に、エナメル塗料でウォッシングを行いますが、この工程の前にフロントウィンドのマスキングを一旦剥がします
 これは、マスキング部分からエナメル塗料がクリアーパーツに浸透するのを防ぐためです
 ラッカー塗料やアクリル塗料は、クリアーパーツ上にはみ出しても爪楊枝などで剥がすことができますが、エナメル塗料、特にウォッシング用として薄く溶いたエナメル塗料ではクリアーパーツが曇って、修正不可能となる危険性を持っています
 ペリスコープなどの小さなパーツはクリアーを塗ることにより修正が可能ですが、広いウィンドー部分は修正が難しいので要注意です

 エナメル塗料の「フラットブラック (XF-1)」+「レッドブラウン (XF-64)」で軽くウォッシングを施した後、エナメル塗料でキャンバス部を塗装します
 足周りには、アクリル塗料の「茶色 (XF-72)」を吹き付けて土汚れを表現、タイヤ部分にはその上から「ダークグレイ (XF-24)」でドライブラシをしています

 再び、フロントウィンドーをマスキングして、全体にツヤ消しのスプレーを吹いてツヤを整え、全てのマスキングを外します
 フロントウィンドーには、マスキングテープを円弧上にカットしたものを貼って、その上から「バフ (XF-57)」を薄く吹いてワイパーの跡を演出しました

 最後にサイドウィンドのパーツを、エナメル塗料の「クリヤー (X-22)」を接着剤代わりにして取り付けます
 エナメル塗料だとアクリル塗料の塗装面を侵しませんし、はみ出た部分は綿棒などで除去することができます
 試してはいませんが、木工用ボンドを使って接着してもよいかもしれませんね



●「シムカ 5」に付属するフィギュア
 「シムカ 5」のパッケージにはドライバーのフィギュアが付属しています
 最近発売されるソフトスキン車両のキットにはフィギュアが全く付属していないものも多く、ソフトスキンにドライバーフィギュアがいないと、いまひとつ実感が薄いものと感じてしまいがちなので、本キットのようにドライバーフィギュアぐらいは付けてほしいと思いませんか?
 「シムカ 5」は運転席が小さいでため、キットのシートにフィッティングされたドライバーフィギュアが付属していることは、普段作例を製作している者としては非常に助かります

 今回はフィギュアは無改造、ストレートで作製、ファーストインプレッションですので、フォルムには手を加えずに成型品そのままの姿となっています
 気を入れることなく、気楽に組立・素直な塗装と進むつもりだったのですが、一旦フィギュアの塗装に入ると、ドイツ軍の軍装の特徴である徽章類の塗り分けが「見せ場」であることもあり、ついつい集中してしまい、結局、フィギュアの塗装だけで6時間程かかっています
 使用した塗料は、肌の部分をタミヤのアクリル塗料の「フラットフレッシュ (XF-15)」をエアブラシで下塗り、その陰影と服の部分はタミヤのエナメル塗料を使用しています
 フィギュアの配置は、車内の塗装が終わった後に行っています



●「シムカ 5」を完成して
 やはり、「シムカ 5」は魅力的なキットです
 細部のディテールを重視するユーザーにとっては物足りなさを感じるかもしれませんが、パッと組めてパッと完成できるという要素も、プラモデルには大事な要素ではないかと思います
 組立ての段階で「ひぃ~、こりゃたいへんだ」と疲弊することなどは無縁、軽く仮組みをして、ひとしきり眺めまわした後、ジオラマやビネットへの展開、荷物やフィギュアを追加した単品作品としての演出など、「シムカ 5」をめぐる様々なイマジネーションを刺激してくれることでしょう

 民生車を転用した軍用乗用車というジャンルはAFVのアイテム的にも面白い車両ですし、なんといっても完成後の雰囲気が可愛らしい!
 無骨なスタイルの軍用車両に対して、「シムカ5」は民間車両を転用したものですから、丸みを持ったちょっとのんびりとしたような雰囲気を楽しめことができます
 完成後に机やショーケースに置くだけでも、なんだかサマになるかわいらしい車両です

 さらに、タミヤ製キットは、キャンバストップを開いた状態で際再現されていますので、内部を「魅せる」という演出も楽しいものになるでしょう
 「キューベルワーゲン」よりも一回り小さい大きさでフィギュアとも絡ませやすいです

 現在のAFVモデルは、戦車だけでなく装甲車や軍用トラックなどの様々なニューキットが急速なピッチで登場しており、次々と出現する新製品に目移りする状態のため、雑誌作例など、いまひとつ注目を集めていないようですが、以前にように新製品が少なかった時期に「シムカ 5」のキットが登場していたら、多様な楽しみ方を表現した作例が模型誌を賑わせていたことでしょう

 手軽に組立てることができ、実車の持つかわいらしい魅力をスケールモデルとして表現し、ちっちゃいながらも存在感をアピールするだけでなく、様々なAFVシーンへと応用できる可能性を秘めた「シムカ 5」のキットは、新製品が溢れかえり、AFVファンにはある意味恵まれすぎたこの時代、タミヤ「MMシリーズ」が当初目指していたミリタリーモデルの「楽しさ」を思い起こさせる逸品と評価することができるでしょう
 ぜひ「シムカ 5」を完成させてみて下さいね!



【 製作概要 】
・ スケール : 1/35スケール
・ 製作時間(期間) : 約4日間
・ 使用キット: ドイツ軍 スタッフカー シムカ 5 (タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.321)

モデル製作 : 安田征策
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