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RSO/01 タイプ470 汎用トラクター
【 「RSO トラクター」について 】
「RSOトラクター」は、東部戦線用として機動力の確保のために作られた牽引、輸送トラクターです
同車は、軟弱地などにおいての装輪式車両の代わりとして足となる存在であり、その最大速度は時速17km程度に過ぎませんでしたが、その悪路での走行性能は高い評価を受け、東部戦線のみならず、各戦線で使用されていました
あくまでも輸送用の車両ですので、戦車などと違いその足周りは徹底した簡略化が図られ、生産工程とコストが低く抑えられた結果、敗戦時までに27000両が生産されています
大戦中期以降のドイツ軍に欠かせないアイテムであるこの「RSOトラクター」のキットをインプレッションします
さて、輸送車両として若干地味な役割を持つ「RSOトラクター」ですが、その特徴的なフォルムと、装軌式車両としての存在感からか人気の高いアイテムです
ドラゴン、サイバーホビーからの「75mm対戦車砲搭載型」「角形ボディ型」に続くキット化です
この丸みを帯びたボディ型(RSO/01)は「これがRSOトラクターの本命だ!」と思ってしまいますが、実際は生産工程を簡略化するために登場した角形ボディ型(RSO/02)の方が多く生産されています。
「RSOトラクター」は、長らくイタレリのキットしか存在していませんでしたが、ドラゴンの3タイプのキット化により同車の主なバリエーションが全て揃いました
ドラゴンのキットですので、イタレリ版よりも遥かにパーツ数は多いのですが、同社の最近のキットとしてはパーツは少なめに抑えられています
【 「RSO トラクター」の製作について 】
説明書の組み立て順に説明して行きます
まず、エンジンを組み立てます
本キットではエンジンをかなり細かく再現しており、組み立ての厄介さを除くとなかなか良い雰囲気ですが、この出来上がったエンジンは完成後に「全く」見えなくなります
通常のソフトスキン車両の場合は、ボンネットを開けてエンジンを見せるということができますが、「RSOトラクター」はキャビンの下にエンジンを搭載する形式となっていますので、エンジンを再現していても活用できる可能性は極めて低くなっています
現在のトラックでは、キャビンを前方に倒してエンジンを点検することができますが、手元の資料では「RSOトラクター」のエンジン点検方法は分からず、キットにもそれを示唆するようなギミックもありません
また、シャーシ内部に通るドライブシャフトも8分割式であり、見えない部分を細分化して表現し、それを作成するのは今一つ釈然としないのも事実です
この細いシャフトが8分割されていますので、接着強度が不足し、その取り付けは少々厄介な上、これも全く完成後に見えくなります…
もちろん、組み立てを省略すれば良いのですが、完成後の姿が初めから分かっている訳ではないので、当初は説明書に従わざるを得ません
説明書内でオプション表示をしてくれていると良かったのでは?と思います
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「RSOトラクター」の簡素化された足周りを忠実に再現しています
キットを製作すると、「実車はこれで大丈夫か?」と思うほど簡単な構造が実感できます、これが模型の良いところですね
ただ、このキットは実車に忠実なあまり、模型としての強度が不足しています
転輪部分の強度不足は履帯の装着によりカバーできますが、そのシャーシ部分が弱いので、かなり不安感を覚えますので、シャーシのパーツのダボを大きくするか、一体成型により強度を確保するか工夫が欲しかったですね
ジオラマなどでベースに固定する場合には、金属線をパーツの接続部に通して補強した方が良いでしょう
履帯は、1枚ずつが分割されたお馴染みのマジックトラックの接着連結式履帯となっています
履帯の形状自体には問題は無いのですが、この車両は起動輪、誘導輪共に歯が有りますから、その装着は少々難しくなります
履帯を帯状に接着した後、接着剤が半乾きの状態の時に巻き付けるようにして、前、もしくは後ろの歯の部分で接続させます
この際、履帯の装着は、説明書通りに、キャビンや荷台を付ける前に行った方が製作しやすいと思います
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キャビン部は、複雑な形状を一体成型で再現しており、なかなか良い雰囲気となっています
フロントグリルは通常時のスリット状態か、寒冷地用のカバーを付けた状態を選択することができ、様々なジオラマシーンに対応できます
キャビン内部の現在のキットのスタンダード的な仕上がりで、パーツ数を抑えながらウィンドー越しに見える範囲でディテールが表現されています
キットには、ウィンドーをマスキングするためのマスクシートも付属しており、塗装時に重宝しそうです
ただ、最大の問題点がシャーシの前部に存在するカバー(ナンバープレートが貼ってある部分)です
キットのカバーパーツは、エッチングパーツとなっており、各面のパネルを貼り合わせることで形にしますが、説明書通りに組み立ててもカバーはシャーシ前部に装着できません
少し加工すればという範囲ではなく、各パネルの寸法が根本的に違うようです
作例では、エッチングの側面パネルの開口部を大きく切り抜いて強引に装着しています
荷台部分は板状のモールドが彫刻されているものの、木目は表現されていません
1/35のスケールですから木目表現はオーバースケールとなり、これをオミットするという判断は分からなくもないのですが、やはり模型としてはモールドされている方が「らしさ」がでるかと思います
(この点は、荷台のステー表現とあわせて、タミヤ製「ドイツ 3トン 4×2 カーゴトラック」のパーツとぜひ見比べてみて下さい)
さて、このキットの第2の難関が、荷台側面の雪上走行用のシューのラックです
このラックは、エッチングパーツが用意されていますが、パーツの組み立て方が今一つ分かりません
一応説明書には図示されてはいるのですが、上部のラックの取り付け向きと下部ラックのアーム部分の処理が判断できませんでした
資料写真ではこのようなラックの細部が写されたものはなく、そこで上部のラックは常識的な判断によりコの字の開口部分を外側に、下部のラックは仕方なくアーム部分を切り飛ばして作製しています
しかもこの下部のラックは荷台部分にイモ付けなので強度がありませんので、シューを装備して強度を上げるか、エッチングパーツの基部の裏側にプラ板を付けて補強した方が良いでしょう。
幌の支柱は、説明書では荷台部分の上に付けるように指示されていますが、これは荷台床面パネル上に取り付けるようにします
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【 「RSO トラクター」の塗装について 】
ソフトスキン車両の塗装で悩むのが室内の塗装と、ウィンドーの取り付けです
私は、「戦車」の塗装の際には、基本的に全て組み上がった状態として塗装する方式としています
その理由は、作業効率が良いことと、接着強度の確保、それとウェザリングなどの塗装効果の均一化のためです
「ソフトスキン」の場合、その塗装の手順は車両、キットによってケースバイケースで、開口部が広い車両は戦車同様に組み上げてから塗装することもあります
「RSOトラクター」は室内は丸見えで、完全密閉型のキャビンですので、室内の塗装は組み立ての途中で実施しています
もちろん、室内の様子なウィンドー越しですので、車外部分ほどに神経質には行わず、簡単に済ましています
ウィンドーのクリアーパーツは、塗装以前に装着すると汚れたり、プラ用接着剤の接着ミスによって曇ったりしますので、塗装後に装着する場合が多いです
ただし、今回のキットは、クリアーパーツにウィンドーの内枠がモールドされていますので、クリアーパーツを事前に接着する方法としました
前述のようにキットにはウィンドー用のマスクシートも付属していますので、大きな助けになります
そのマスクシートをウィンドに貼り、前照灯前部(キットパーツは前照灯全部がクリアーパーツです)をマスキングした後、下地としてタミヤの「スーパーサフェイサー」を吹きます 半日程度乾かしたら、表面上に付いたキズや埃などを400番程度のペーパーを使用して取り除きます
今回の「RSOトラクター」の場合、ストレート組みですので、この作業はそれ程重要ではありませんが、エッチングパーツなどを使用したディテールアップした作品では、その仕上がりを左右する程の大事な工程となります
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下地が完成したら、タミヤのアクリルカラーの「デザートイエロー (XF-59)」「ダークイエロー (XF-60)」「フラットホワイト(XF-2)」を「1:1:2」程度に混色した色をダークイエロー色として全体に吹付け塗装します
この混色では、少し明る過ぎると感じますが、後のウォッシングなどの工程により、全体のトーンが落ちますので、この程度明るい色で塗っています
その後、「ダークグリーン」と「レッドブラウン」で迷彩パターンを描いて行きます
使用した塗料は、「ダークグリーン」が「オリーブグリーン (XF-58)」に先程の「ダークイエロー (XF-60)」を少量混ぜたもの、レッドブラウンは同じく「レッドブラウン (XF-64)」をベースとして「ダークイエロー (XF-60)」を混ぜたものを使いました
私の場合、迷彩塗装のパターンは実際に配色しながら決めて行くので、一度に迷彩パターンが完成することは殆どなく、各色で補正しながら迷彩を完成させています
この方法は、時間が掛かるのが問題で、戦車モデルの場合は迷彩パターンの完成までにほぼ1日を必要とします
ドイツ軍の「光と影の迷彩」だと、3日程度を要することもあります。あまり自慢できませんね
迷彩パターンが完成したら、「フラットブラック (XF-1)」「フラットブラウン (XF-10)」を溶剤で極薄く溶いてシャドー吹きを実施しました
このシャドー吹きは立体感が少し強調される程度とし、くどくなり過ぎないように注意します
次いで「フラットホワイト(XF-2)」を同じように薄く溶き、エアブラシで部分的にハイライトを入れました
これも輪郭が強調される程度としていますので、完成写真ではほとんど判別が付かないと思います。
この後、チッピング(塗装の剥がれ表現)を細筆で描いて行きます
「働く」車両としてはもっとハードな剥がれとすべきなのですが、ジオラマ上ではないので、控えめとしました、荷台部分は木製ですしね
チッピング作業の後は、塗料をエナメル系に変更して、ウォッシングを実施します
この作業の前に、ウィンドーのマスクシートを一旦剥がしました
これは、エナメル系塗料は浸透力が強く、マスクシートの内部に塗料が入ってしますのを防ぐためです
マスクシートを剥がした際にマスキングのミスが発生していた場合は、爪楊枝でクリアーパーツ上の塗料をカリカリ落とすようにして修正しておきます
ウォッシング終了後、ディテールが浮き出る程度に軽くドライブラシを行い、ツヤ消しクリアーを吹いて全体のツヤを整えました
乾燥後、足周りのウェザリングとして、まずはMIGプロダクションのピグメントを水で溶き、足周り全体に塗ります
水溶きですので、部分的に弾く箇所が発生しますが、もう一度塗るとカバーできます
ドライヤーで強制乾燥後(くれぐれも、プラが溶けてしまわないように注意します)、固めの筆を使用して固着した余分のピグメントを落としますと、この作業により、土汚れの粉っぽさが演出できます
ただし、ピグメントは完全に定着していませんから、できるだけ手で触らないようにします
もっとも、定着が弱い反面、指の跡などが付いた場合も乾いた筆でなぞるだけで修正が可能です
その後、履帯の接地部分などに濃いめの鉛筆を使って金属の光沢を表現しています
また、前部ウィンドーにはマスキングテープを円形に切り取って貼り、薄く溶いた「バフ (XF-57)」を吹き付けて、ワイパーの拭き取りラインを演出しています
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【 「RSO トラクター」総評 】
本キットは、良くも悪くもドラゴンのキットの特徴が出たものとなっています
ディテールの表現は良好、一部難があるもののパーツの合いも良く、「RSOトラクター」の特徴を再現した良質なキットです
ただ、このサイズの車両としてはパーツ数が多く、組み立てには少々手間が掛かるのも事実です
そして、最大のネックは、付属のエッチングパーツです
ドラゴン社製のキットに付属しているエッチングパーツは、寸法上合わないことが頻繁で、このキットも同じ欠点を持っています
メッシュなどエッチングパーツでしか再現できないものは仕方がないのですが、このキットのエッチングパーツの部分はその必然性が低く、プラパーツでも何ら問題はなかったと思われますので、その辺りがもう少し煮詰めることができれば、更にキットは良くなったのにと、少々残念に思いました
【 製作概要 】
・ スケール : 1/35スケール
・ 製作時間(期間) : 約5日
・ 使用キット : 「ドイツ RSO/01 タイプ470 汎用トラクター (サイバーホビー 1/35AFV シリーズ('39~'45 シリーズ) No.6691)」
モデル製作 : 安田征策
サイト管理 : HOBBY SHOP M's PLUS
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