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【 プラモ早作り大会 】 イタリア自走砲 M40 セモベンテ (安田征策)

2012-11-24 00:10:35 | AFV ~ 戦車・装甲車輌

【 プラモ早作り大会 】 イタリア自走砲 M40 セモベンテ
 去る2012年8月18日にエムズプラス恒例のプラモ早作り大会が開催されました。
 この「早作り大会」は、模型を短時間に完成することに主眼を置いて、1日で「完成」を目指すイベントです
 「早作りって言うけど雑に作ってどうすんのよ?」とう意見も納得いくものがありますが、「模型は改造しなければならない」「キットの不足部分を埋めなければならない」といった制約を一旦忘れることで、模型本が本来持つ「作る楽しさ」という感覚を楽しんでもらおうというのが目的のイベントです
 また、普段は一人一人、個人で机に向かって模型作りをしている人達が集合し、一同会して模型製作を行うことで、他の人の作り方をその目で知ることができ、今後の製作での参考、そしてモチベーションの向上にも繋がります。
 なにより、皆でワイワイ言いながら作るというのも結構楽しいものです。



【 キット選択 】
 さて、この「早作り」イベントでは、その日に手がけるキットのセレクトが最大のポイントとなります。
 当日の製作時間は、午前10時から午後6時ごろまでの約8時間、もちろん、完成しなくても何ら問題とならないし、ペナルティが発生するものではないのですが、1日で完成することが目標ですので、自分の工作ペースを考慮して、このキットなら完成させることができるかな?というキットを選択することが大事です。
 私は日頃、AFVモデルを中心に製作しており、その中でも1/35のスケールがメインとなっています。
 こんな機会ですので、AFV以外の他ジャンルのキットを選択することを考えましたが、日頃慣れていないことをすると完成までの道筋が読めないことから、これを断念。やはり手馴れたAFVモデルから選択するようにします。

 問題は、そのスケールです。
 いかんせん、1/35スケールではパーツ数が多いため、当初は1/72スケールか1/48スケールのキットから選択しようかと考えました。
 しかし、1/72ではその小ささからジオラマ化ぐらいしないとイベントらしく無いですし、パーツ自体が小さなため不慣れな場所ではパーツ紛失の可能性もあります。
 1/48は比較的簡単に組み立てが完了しそうですが、キットの中身を見ると思った以上にパーツ数は多く、8時間で完成させるのは難しいかな?と判断しました。

 そこで、1/35のキットで、パーツの少ないキットを選択することにしました。
 ここで、その候補に上るのはやはりタミヤのキットでしょう。自分が昔から作りなれているフォーマットである上、パーツ数が抑えられたキットを選択すれば、パーツ同士の合いも良好ですので、制限時間内に充分完成させることができそうです。
 最近のタミヤ製キットでも、現在のAFV界の潮流に従いパーツが増えていますから、1970年代のキット(個人的にはビンテージキットと呼んでいます)をチョイス。
 手持ちの「クォード・ガントラクター」や「Sd.kfz.222」などを検討しましたが、車体内部の塗装工程が必要となるので戦車物へと変更。さらに、この年代のキットに付属するキャタピラの素材はポリ製ですので、これを転輪に沿って装着させる追加工作の必要性から、最近リニューアルされ、一部連結式キャタピラのパーツが付属した「セモベンテ」に決定。
 この戦車でしたら塗装も単色で良いですし、パーツ数も少なく、リニューアル化に伴いディテールも追加されていますから、ちょうど頃合いのキットと感じました。
 ちなみに、個人的にイタリア物は大好きです。
 本当は「M13 カーロアルマート」の方が好みなのですが、エムズの当日の店頭在庫の関係で「セモベンテ」としています。




【 当日 】
 イベント当日、時間が惜しいので10時前にお店に到着、早速「セモベンテ」を購入して戦いに臨みます。
 ただし、あくまでも自主的なイベントですので、会場のセッティングや個人的な準備のために製作開始は10時半頃となりました。
 参加メンバーの多くは11時~12時頃を中心に三々五々到着、中には到着早々ノコギリでパーツを切り刻むメンバーも出現し、意表を付く展開を横目で眺め驚きながら製作を進めて行きました。
 しかし、当初このようなイベントでは、和気あいあいと製作するものと思っていましたが、製作時間の絡みからその余裕は無く、私を含めて多くのメンバーが、個人個人で黙々と必死になってキットを製作する時間が過ぎていきました。


【 組み立て編 】
 さて、「セモベンテ」自体の製作は、その目論見通りに順調に進み、複雑な足周りも転輪パーツの他はボギー部分が2パーツ、その上部のリーフ式サスペンションと上部のディテール部が各1パーツの合計4パーツのみの構成であり、タミヤらしくパーツ同士のフィッティングも極めて良く、ガンガン組んで行くことができました(ちなみに、このキットはリニューアル前のものを中学時代に組んだ経験があるのみで、ほとんど初見に近い状態です)。

 車体下部はキャタピラも含めて1時間弱で完成、そのまま車体上部に移ります。
 このキットの最大の特徴は、戦闘室内部が再現されていることです。実車もベンチレーターを装備していないことと、暑さ、視界の悪さから上部のハッチを閉めることはほとんど無く、ハッチを開いて内部が見えるのが通常の状態となりますが、この「早作り大会」ではそのような事情を考慮する時間的余裕は全くなく、内部パーツは作らず、ハッチも全て閉じてしまいました。パーティングラインの処理が必要な小さなパーツは、そのまま車体パーツに接着、接着強度が確保された後に整形処理しています。
 左右分割式の砲身はその接合を瞬間接着剤で行い、時間の短縮化を図りました。
 ただ、ここでモデラーの性が出てしまいます。砲身先端部のマズルブレーキに開けられた穴が成型の関係で上部の1列が再現されておらず、これをドリルで開口。その他の穴も同ドリルで彫りを深くしました。排気管先端の排気口もドリルとノミで開け直しています。

 また、キットには、アクセサリーパーツが多く付属しているのですが、これも製作時間を消費してしまう元となりますので、基本的に使用しません。
 しかし、全体が組み上がると色気が出てしまい、「セモベンテ」らしく戦闘室前部に予備キャタピラを装着、車体前部には牽引ワイヤーを取り付けました。この牽引ワイヤーはフック部分も含めて一体成型で、そのシャープさに感心しましたが、なんとこれはリニューアル「前」のパーツだったんですね。さすがはタミヤ、ちょっと驚きました。

 組み立てが完了したのは午後2時。
 目標では1時頃に完了する予定でしたが、まだまだ挽回が可能な時間帯と判断し、塗装に備えて缶スプレーのサフェイサーを吹いた後、休憩を兼ねて昼食を摂りに行きました。



【 塗装編 】
 もちろん、ゆっくりと昼食を楽しむ時間はありませんので、ファーストフードで簡単に食事を摂取していますと、その短い時間に急激に天候が悪化、雷が鳴り始め、本降りとなる前に何とか会場に戻ることができました。
 会場の関係で屋内でのエアブラシ塗装は行えず、その横の野外での実施を予定していましたのですが、この悪天候のために給湯室の換気扇の下での塗装となりました。(この時、エムズでは、店舗前の道路の排水溝から水が溢れ、さらに屋上の排水不良のためダブルで浸水のピンチ、店長は屋上で必死になって水かきをしていたそうです)

 しかし、雨のせいで湿度も上がったせいか「暑い!」
 当日は夏本番の猛暑日で、給湯室には冷房が無く、野外のように風が吹き抜けることが有りませんから、熱が籠っています。強制乾燥のためのドライヤーを持参していましたので、塗装面の乾燥と、吹き出す汗とを乾かしながらエアブラシ塗装を行うという少々ワイルドな展開となってきました。

 エアブラシ塗装の工程は、「キャタピラ塗装」「下地塗装」「基本塗装」「シャドー吹き」「ハイライト吹き」の5段階を実施。暑さにより体が限界に達して来ましたので、30分程度の時間でサッと済ませました。
 エアブラシの準備や撤収に時間を取られ、この作業が終了した時点でもう3時半を過ぎています。時間的にかなりヤバい状況です。

 早速、休むまもなくデカールを貼ります。乾燥時間を考えるとデカールを貼らない方が無難ですが、モデラーとしての本能がそれを許さず、自然と手が動いていました。
 ところが、通常の場合は半乾きの状態でデカール軟化剤を塗るところを、焦ったために定着不十分のまま塗ってしまい、側面の部隊記号のデカールの淵が反った状態となってしまう事故が発生。それにより、塗装で修正しなければならないという余計な手間が増えてしまいました。
 この後、細部の塗装に移行、アクリル系塗料を使用して細部の塗り分けをします。
 ドイツ戦車などと違い、車外装備品が少なく、順調に塗装が進んで行きます。しかし、アクセサリーパーツとして取り付けた予備キャタピラ、牽引ワイヤーも塗り分けなければならず、少なからず時間を必要としました。
 塗り分けが完了したらチッピング作業(塗装の剥がれ表現)を開始。本気でチッピングを行うと、いくら時間があっても足りないので、塗装は簡潔かつポイントを絞って実施し、作業自体は15分程度で終わらせています。
 ここまではアクリル塗料を使った塗装で、次にエナメル塗料を使用します。
 まずは、ウォッシング。拭き取りに時間か掛かってしまうと厄介ですので、エナメル塗料は薄めに溶き、最低限度の拭き取りとするようにしました。
 通常の場合は次にドライブラシを行うのですが、キット自体にメリハリが有り、表現的に十分と考え、ドライブラシ作業をパスしています。
 一旦、ツヤ消しスプレーでツヤを整えた後、タミヤのウェザリングマスターを使用して排気管や車載工具、予備キャタピラなどにサビの表現を加えました。



 さて、ここに至って午後6時となり、周囲のメンバーが片付けを開始しました。ところが私の作品はまだ足周りのウェザリングが残されています。
 ロスタイムとして作業の継続は認められていますが、ウェザリング作業には1時間が必要で、技法の関係から途中で止めることができません。
 そこで、やむなく自宅に持ち帰って完成することを決断。断腸の思いで作業を完了しました。
 ここまでがんばって作成していたのに完成に至らなかったのは、さすがに、悔しい…。


【 敗戦の弁 】
 最初に上げたように、この早作りのポイントはキットの選択です。
 難しいキットでは時間内での完成は無理ですし、簡単過ぎても手持ち無沙汰となり、達成感も今一つです。
 今回、キットの選択は決して間違いではありませんでしたが、もう少し割り切りの徹底が必要でした。
 日頃、手の込んだ模型作りをしている関係から、どうしても手を入れたい箇所が発生し、それが時間内に完成できなかった最大要因となったと思います。
 また、転輪部分はヤスリ掛けをしてしまいましたが、切り出し部分を下にしヤスリ掛けを省くなどして、時間の短縮を図るべきでしたね。
 「早作り大会」当日、キットに手を入れた部分は、
  ・予備キャタピラ、牽引ワイヤーを装着
  ・マズルブレーキの穴を追加
  ・排気管の排気口を開口
  ・前照灯のガラス部分をウェーブのライトレンズへと変更
 となります。

 土日を使ったモデリングでしたら、このような追加工作を行う時間がありますが、8時間で塗装まで完了するには、これらをバッサリと切り捨てる必要があったようです。まあ、これをあきらめきれないのがモデラーの性ということになるのでしょう。



【 戦い終わって 】
 この「早作り大会」のレポートを読むと、「こんなにまで焦って作る必要はあるのか?」「8時間で完成することに意義はあるのか?」「手を加えたければ普通に家で作ればよいのではないか?」という意見を持たれるかもしれません。私もそう考えて参加には二の足を踏んでいました。
 ところが、実際にこの制限時間内に製作をした上、製作過程をつらつらと書きてみると、想像とは全く異なる感想となりました。

 私は、模型雑誌のライターとして10年程活動しており、これまで作例を随分と製作してきました。ライターであるため、キットをそのまま作る(正確にはストレート組みでは許されない)ことは全くありません。
 特に、最近のAFVモデルでは部品点数が800パーツを超えることは珍しくなく、さらにディテールアップにより手間を必要とします。このような手を加えるモデリングは、達成感や深い洞察力を得ることができるのも事実ですが、我々が初心の頃に感じた模型本来の「楽しさ」という感覚から、どんどん遠ざかっていくような気がしていました。
 ただ、趣味として模型作りを楽しんでいる人にしても、「このキットはこの部分を修正しなくては」とか「この部分はディテールアップパーツに変更するべきだ」などという思考が先行してしまい、製作に必要とする時間が増大、その結果モチベーションが低下して未完成に終わってしまう場合があると思います。また、組み上がった状態で気が済んでしまい、その後に塗装しないでそのまま放置されてしまう例も多々あることでしょう。
 このイベントは、こんな未完成病をから抜け出し、模型作りの楽しさを再認識させてくれました。短時間で仕上げたものですが、完成した作品には愛着がありますし、今も傍らに置いた作品を眺めながら、この文章を書いています。
 そして、このイベントでは自分自身の力量(技量では有りません)を知る機会にもなります。
 この力量を知るということは、自分が模型を作る上での基準となり、「このキットは製作にどれだけの時間が必要か」「どれ位手を加えたら自分が満足するのか」などということへの道標となるでしょう。
 また、模型雑誌では、このようなサッと作る方法なんてほとんど紹介されません。めまぐるしく新製品が登場する今の時代では、要領よくサッと作る方法を身に付けることは模型を楽しむための大事な要素かもしれません。

 キットをとことん追求することは私の本道なのですが、たまには、キット本来の素性を軽く味わうのも楽しいものだと、昔の感覚を思い出し、終わって見ると楽しい時間であったと思います。
 なお、完成状態の「セモベンテ」の画像は、家に帰って足回りの汚し(1時間ほど)をしてから撮影したものです。
 もう一度「セモベンテ」を作りたいですね。


【 製作概要 】
・ スケール : 1/35スケール
・ 製作時間(期間) : 8時間+1時間
・ 使用キット : イタリア自走砲 M40 セモベンテ (タミヤ 1/35ミリタリーミニチュアシリーズ No.294)

モデル製作 : 安田征策
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