ひきこもりのアート

2007-04-06 05:36:15 | Weblog
 「世界一長い小説はなにか?」というのがふと気になり、
ネットでかちゃかちゃと検索した。やっぱ栗本薫の「グイン
サーガ」だろうなあ、ああ、「ぺりーローダン」も長いけど作
者複数だしなあ、てなことを考えつつ調べたおったのだが、
まるで聞いたことのないタイトルの話が検索でひっかかっ
た。ヘンリー・ダーガー「非現実の王国で」という作品。ど
うも15000ページくらいあるシロモノらしいのだが、調べて
みてこれまたびっくりであった。

 このダーガーという作者、幼くして両親と死に別れ、施設
に収容されるも十代で脱走、シカゴで病院の雑役夫の職
を得、その後およそ50年間変化のない単調な生活を営み、
老人ホームで生涯を終えたという、なんかもうこれだけ見る
と不幸だがパンチのない、むしろ凡庸な人生である。唯一
凡人と異なったのは、50年近く暮らしたアパートから老人
ホームへ移ったとき、所持品の整理をまかされた大家が部
屋へはいったところ、そこにはタイプ原稿で15000ページに
もなる物語の原稿と、その物語のための数々の挿絵が残さ
れていた。この大家、アートに関してはかなりの目ききであ
ったがためにこの残された作品の芸術的な価値を見抜き、
そのおかげでこのヒキコモリ老人の残した作品が世の人々
の目にふれることになったという、まあそういう訳である。

 この作者、グーグルで検索してみるとおわかりのように、
今ではかなりメジャーな知名度を持っているようである。し
かもこの作品、「子供を奴隷として虐待している悪の帝国に、
七人の美少女戦士が戦いを挑む」という、かなりわが国の
オタクの皆様と親和性を持つ作品なのである。天涯孤独、
友人もいないヒキコモリ男が、ひとりアパートでだれに見せ
るわけでもなく書き綴った妄想な物語だ。その「生の魅力」
が他人をひきつけるのも、当然といえば当然である。

 もっとも評価されているのは専ら挿絵の方であって、物語
への言及というのはいささか少ない。まあ、「素人の書いた
妄想話」であるから、文章等があまり「他人が読むものとし
て妥当でない」のかもしれない。それが文学と絵画のいちば
ん異なるところであろう。

 しかし、ダーガーが亡くなったのは1973年、そんなに昔の
話ではない。というか、むしろ現代の方がこの手の「ヒキコモ
リ」は増加しているはずで、そのうちの何人、あるいは何十人
かはこの手の「妄想」を芸術的に昇華させた作品を、ひとり孤
独な部屋の中でしこしこと制作しているに違いない。

 そのうちのほとんどは、「目きき」のひとに発見されることも
なくゴミとして廃棄され、この世から消え行く運命なのだろう
が。そう考えるとダーガーの作品がこの世に残ったことが、ど
うも奇跡のように思えて仕方がなかったりする。

 長くなりそうなので続編は次回。

1 コメント

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Unknown (腐れ厨房(゜腐゜))
2007-04-08 23:38:29
3年くらい前に青山のワタリうむ美術館でヘンリダガ展見もしたです。
皿洗いかなんかでその評価さりてる挿し絵もチラシの切り抜き使たりとか表現方法が素人的なのが逆に新鋭て評価さりてるもたいです。
少女達が切り刻まれたりけこグロサド嗜好もあるよですが股間にはおちんちんがぶら下がてもしたです。真童貞で女性器知らないかたのかもです。
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