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東京五輪:エンブレム 混迷続く・追い詰められる佐野氏

2015-08-11 06:52:12 | 東京五輪2020
佐野研二郎氏のデザインによる「東京五輪」のエンブレムが、ベルギーのリエージュ劇場のロゴに酷似している、あるいはスペイン・バルセロナのデザイン事務所「ヘイ・スタジオ」による、東日本大震災の際、寄付を募るために作られた壁紙アプリ「WALL FOR JAPAN」に収録されたデザインに、色彩、造形が似ている、果てはサッカー「Jリーグ」のロゴにまで似ているとされた件。
去る8月5日に佐野氏本人が「説明会見」を行い、JOC(日本オリンピック委員会)が「問題無い」としたものの、その後問題は収束することなく相変わらず物議を醸している。


左上:佐野氏デザインによる東京五輪のエンブレム。右上:ベルギーのリエージュ劇場のロゴ。
左下:スペイン「ヘイ・スタジオ」によるデザイン。右下:サッカー「Jリーグ」のロゴ


見れば、それぞれに共通する造形要素は、基本的に水平・垂直の直線と大小の正円であることがわかる。色も基本は黒と赤だ。
デザイナー視点によれば、「単純な造形は似る」としている。だがそうだろうか、まして色彩まで?

さておき、スペインのデザイン事務所「ヘイ・スタジオ」は「たまたま一致したのではないかと思うが、仮に私たちのデザインが何らかの影響を与えていたとするなら光栄なことだ」と寛容な姿勢を示す一方、ベルギー・リエージュ劇場のロゴをデザインしたオリビエ・ドビ氏は、過日JOC(日本オリンピック委員会)にエンブレムの使用停止を求める書簡を送付し、8日以内に同意しなければ法的措置をとるとしており、訴訟をも辞さない構えだ。

そんな中、Net上では大変な騒ぎになっている。
「盗作・盗用疑惑」に端を発し、最早「五輪エンブレム」云々から話題は逸れ、佐野研二郎氏の一連のデザイン作品に対して、やれ盗作だ盗用だということに話は広がっている。そこには様々な憶測が飛び交い、まさに炎上状態だ。
それらは、「佐野研二郎」「東京五輪 エンブレム」のキーワードで検索すればすぐに表示され、専ら「○○速報」や「2ちゃんねるまとめサイト」などで画像と共に確認することができる。
今や「間違い探しゲーム」の様相を呈し、まぁどこから見つけてくるのかと感心するほど「盗用の元」とされる素材が掲示され、佐野氏の作品との類似性が次々に指摘されているという状態である。特に今は「サントリー」のキャンペーンでの「トートバッグプレゼント」におけるトートバッグのデザインに注目が集まり、30種類あるバッグの10数種類において、デザイン素材がオリジナルではないという指摘がなされている。

日々内容は更新されているようだが、以下、佐野氏の一部のデザインが「盗作」あるいは他からの「盗用」とする例を示し、画像比較したサイト例。
※サイト名は“いかにも”のものがあるが(苦笑)、この話題に特化してみればそれなりに情報量は多い。
「正しい歴史認識、国益重視の外交、核武装の実現【Yahoo!ブログ 】」
「Present the France Trip」
「にわか日報」
「かけだし鬼女の 今が日本の一大事! ~よければ一緒に凸しよう!~」

こちらはサントリーのトートバッグプレゼントページ
「オールフリー 絶対もらえる!夏は昼からトートバッグ プレゼントキャンペーン」

私の経験上、キャンペーンツールのデザイン等で、制作側において「著作権フリー」の素材を使うことは多い。とは言え当然、使用許諾の条件をクリアしていることが前提となるが、この場合はどうなのだろう。素材の出所如何とも言える。
いずれにせよ、果たしてこれらを針小棒大と捉えるかどうか、「重箱の隅」と見るかどうかはそれぞれ個人の判断だろう。
だが、それにしても・・・である。いろいろな意味で、う~んと唸って、思わず腕組みをしてしまうような状態だ。

しかし中で1点、これだけはどうかと首を傾げざるを得ないものがあった。


左:カルバン・クラインのリストウォッチ(K9423107) 右:佐野デザイン kuro obi(クロオビ)

これはまるで中国の“劣化コピー”のようである。これだけは直感的に何か「確信的」な気がした。
文字盤の左右が透明か否(「kuro obi」の方はミラー?)、針の大小、ベルトの取り付け方法の差異などがあるにせよ、全体シェイプは同一である。


さて、お話は「東京五輪エンブレム」に戻って。
まず、佐野氏本人が「依拠」を認めない限りにおいて、客観的に「東京五輪エンブレム」が「リエージュ劇場のロゴ」の盗作・盗用であることの証明も、また、盗作・盗用ではないことの証明も出来ない。また、JOC側は8月5日の記者会見で、更にその後の報道でも「法的に問題無い」としている。

では実際にどうなのか。

「東京オリンピック エンブレム(ロゴ)著作権・商標権問題のまとめ 」
>裁判所でしっかり争った場合には、著作権侵害等が認められる可能性はかなり低いと思われます。

「東京五輪エンブレム「劇場ロゴ」そっくり問題 「知的財産権」侵害の可能性は低い?」(弁護士ドットコム)
>オリンピックのエンブレムが劇場ロゴの知的財産権を侵害している可能性は低いと思われます。

例えば、「偶然に似たとしても、先に公表し使用実績がある側に優先権がある」というような話もある。だが、実際には何とも言えないところだろうか。
ちなみに、著作権に関して、「著作権は、著作者による明示的な主張・宣言がなくとも自動的に発生する」という国際的に著作物を保護する条約、「ベルヌ条約」がある。

「ベルヌ条約」(コトバンク)
「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」(Wikipedia)

だが、先日も書いたが、法的に問題が無いとしても「道義的」にどうなのかという問題は残る。

“既にあったもの”に「似ている」のには間違いなく、それは事実であり、ゆえに問題になっているのだ。
ここまで騒ぎが拡大し、そうしていわゆる「ケチがついた」ものを、国民並びに世界の祭典のシンボルとして喜んで受け入れられるのかという「感情論」にもそれは及ぶ。

デザイナーなど業界を中心に佐野氏を擁護する側からも、この際やり直したほうが良いという意見は出ているようだ。
Netでは、デザインの良し悪し、好き嫌いをも通り越してこれを忌み嫌い、それらが増幅して、ともすれば妬みや憎悪さえも渦巻いているかのよう見える。


一方、そもそも何故このデザインに決まったのかというその経緯にも触れないわけにはいかないだろう。

ついてはこれも様々な憶測を呼んでいる。
下記はNetで拾ったものの範囲であるが、

■博報堂コンペティション
『Schweiz 日本 Japan スイス』展
2015年6月19日(金)~7月5日(日)会場:東京都 乃木坂 Calm & Punk Gallery
出展作家:佐野研二郎、長嶋りかこら12組

■2015東京オリンピックエンブレム選考
受賞者:佐野研二郎
選考委員:永井一正、浅葉克己、長嶋りかこ (まだ34歳で佐野の元部下)

■2014毎日デザイン賞選考(2015.3.4)
受賞者:長嶋りかこ
調査委員:浅葉克己、佐野研二郎、ほか

あくまでも「憶測」の域を出ないが、大手広告代理店「博報堂」を主軸に、関わる人脈のみで回り持ちをしているようにも思えなくはない。
言わば「出来レース」、あるいは「談合」というものである。(ここでは言及しないが、例えば永井一正氏の子息と佐野氏は共に多摩美大教授の職に就いた等々、更に調べるとその関係性がよくわかる。)


「画家の横尾忠則氏 東京五輪のエンブレム盗作疑惑で審査員の責任を指摘」(livedoor NEWS 8月10日)

>6日、画家の横尾忠則氏が自身のTwitterで、東京オリンピックのエンブレム盗作疑惑について、審査員側の責任を指摘した。

>デザイナーの佐野研二郎氏は、記者会見で「ベルギーのデザインを知らなかった」と断言する一方、ドビ氏は国際オリンピック連盟(IOC)に、エンブレムの使用差し止めの訴えを起こす構えをみせているという。また、日本国内でも、佐野氏のデザインを厳しく批判する声が沸き起こっている。

>ところが、横尾氏はそうした議論から一線を画した持論を展開する。横尾氏は、審査段階でリエージュ劇場の存在に気付いていたなら、佐野氏のデザインはきっと「選外になったはずだ」と主張してみせた。

>その上で横尾氏は、「調査の網の目からこぼれたための入賞だと考えると応募者に責任はない」「むしろ選んだ審査員側にある。審査員の説明が必要ではないだろうか」などと、審査員の責任を指摘したのだ。


果たして、ズブズブ、なぁなぁの体質というものがここにあったのだろうか。まぁどんな業界でも「カネ」と「コネ」は付きものではあるけれど、それは程度問題でもある。(ちなみに、サントリーは昔から「博報堂」との繋がりが深い。)

「東京五輪エンブレム」の選考に関しては、104点の応募作品の中から選ばれたという。
佐野氏以外の入選2作品(原研哉氏、葛西薫氏)は公表されておらず、どのような方法で審査を行なったのか、その過程の詳細も明らかにはされてはいない。


「東京五輪エンブレム盗作疑惑の佐野研二郎氏に長野五輪のデザイナーが苦言」(livedoorNEWS 8月7日)

>先月27日、デザイナーの篠塚正典氏が自身のブログ上で、佐野研二郎氏の手がけた東京五輪のエンブレムに苦言を呈した。

>篠塚氏は、1998年に開催した長野冬季オリンピックのシンボルマークをデザインしたことで有名である。東京オリンピック開催決定当時も篠塚氏は「ほんとうにうれしいです」と喜びをあらわにし、当時のプレゼンテーションを絶賛していた。

>ところが篠崎氏にとって、佐野氏が先月24日に発表した五輪エンブレムは、事前に期待していたものと少し違っていたようだ。篠塚氏は「巷では『好き』、『嫌い』がハッキリ分かれているよう」であるとしたうえで、自身としても「少しデザインする側の『押しつけ』が感じられると思います」と、言葉を選びつつ指摘している。

>記事末尾で篠塚氏は、オリンピックに関しては「ワクワク・ドキドキ!」「躍動感」「国際性」「みんなで一緒に盛り上がれる」ことが直感的に伝わるデザインでなければならないとし、「プロのデザイナーがやったんだからこれでいいんだ」という「押しつけ」であってはならないことを改めて訴えている。


▼こちらが当該ブログ。
「TOKYO2020 エンブレム」(篠塚正典のDesign blog 7月27日)


本件に関しては、更に腑に落ちない点がいくつかある。
前にも書いたが、佐野氏のTwitter、Facebookについて、佐野氏は「(騒動前の)5月で閉じた。仕事でバタバタしていたのと、普段から見てしまうので、一度距離を置いてみようと思った」と会見で述べていたが、昨年末にはデザインが決定、佐野氏がTwitter、Facebookを閉じる以前に内部的には結果が判明していたことになる。果たしてそれとは無関係であったのかどうか。

氏の経営するデザイン会社「Mr. Design」のホームページは未だ下の画面が掲示されたままである。しかも、文書であるにもかかわらず、テキストではなく画像での表示で、意図してテキスト検索から逃れているように思える。
彼自身に非が無いのであれば、堂々とHPにその旨の説明を載せアピールしたらどうなのだろう。もっとも、こうなってしまった現状においては仕方がないとも言えるのか。




これだけの騒ぎになり、おそらくオリンピック組織委員会、東京都、サントリーにはさぞ苦情や問い合わせが殺到していることだろう。当事者達がこの状況を知らないはずはない。だが、この事態を何故一般マスメディアが報道しないのだろうか。これも、「電通」と共にメディアを牛耳っている「博報堂」が、それこそ報道自粛要請をしているからではないのか。そう思うのも、あながち“勘繰り”とは言えまい。


新国立競技場は世論を受けて白紙見直しになったが、「東京五輪エンブレム」も、もうその時期に来ているのではないのか。
しかし、例えば舛添都知事は元から「審美眼」というものがまるでなく、森喜朗東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長に至っては“雲上人”で世情知らずだ。そんな彼らは「法的に問題が無い」とするのを、そのまま「“全て”問題無い」としてただ進めるだけである。JOCも博報堂も一蓮托生でスポンサーありき、世論には目を耳を塞ぐ。果たしてそれでいいのか。

一方、今頃佐野研二郎氏はどうしているだろう。ご本人はさぞ心労に耐え難いことだろう。
この場合一番良いのは、彼自身が撤回、辞退することである。何に執着してしがみついているのか、何の圧力があるのかは知らないが、どの道デザイナー生命はこうなった以上もう先が知れている。どこかの誰かみたいに、佐野氏の場合、「東京五輪エンブレム」の虜になって呪縛にかけられているのだろうか。目覚めるなら今だと思う。


来たる5年後の「東京オリンピック」への国民の関心は高い。

東京五輪世論調査 「関心ある」は8割、長野五輪を大きく上回る(FNNニュース 15/08/09)


>東京オリンピック・パラリンピックに関する内閣府の世論調査で、8割以上の人が「東京オリンピックに関心がある」と答えた。
>この調査は6月、全国の20歳以上の男女あわせて3,000人を対象に行われたもので、「東京オリンピックに関心がある」と回答した人は、全体の81.9%に達し、長野オリンピックの際の53.4%を大きく上回った。
>一方、「ボランティアとして参加したい」と回答したのは22.7%にとどまり、こちらは長野オリンピックの30.2%を下回る結果となった。
>「オリンピックを通じて、日本の何を世界に伝えたいか」との質問では、「安全・安心な社会」に次いで、「おもてなしの心などの日本的価値観」が、多く選ばれている。



目先の利権に囚われていないで、国民が歓迎するなら、それに伴って必然的に潤うものだと心得、JOC、博報堂、政府は国民の声を聞き、ぜひ善処してほしい。




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