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東京五輪:呪われたエンブレム・JOCの姦計

2015-08-29 14:25:12 | 東京五輪2020
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思わず吹いた!

あれは一体何だ? 子供のお絵描きかパズルか? それが第一印象であり、私の素直な感想だった。

そう、「佐野エンブレム」の「原案」と呼ばれるそれである。


フジテレビ・FNNニュースより

前拙記事からほどなく、昨日の内にJOC(日本オリンピック委員会)の会見が開かれ、ついに「佐野エンブレム」の原案と“されるもの”が発表された。

「五輪エンブレム問題 組織委、原案公表 あらためて盗作疑惑否定」(FNNニュース 8月29日)



>28日、2020年の東京オリンピックをめぐる動きが、2つあった。
>メーン会場となる新国立競技場について、政府は、総工費の上限を1,550億円に決めた。
>そして、もう1つ、エンブレムがベルギーの劇場のロゴに似ているとして、提訴された問題で、大会組織委員会は、エンブレムの原案を公表し、あらためて盗作疑惑を否定した。
>オリンピック組織委員会・武藤事務総長は、「まずこちらが、審査委員会で1位に選んでいただいた、佐野 研二郎さんの作品でございます」と話した。
>明らかにされたのは、公式エンブレムのデザインの原案、そして修正案。
>オリンピック組織委員会は28日、公式エンブレムが生まれるまでの変遷を公表するという、異例の会見を行った。
>これは、ベルギー人のオリビエ・ドビ氏が、自身のデザインしたロゴに似ているとして、IOC(国際オリンピック委員会)に対し、使用差し止めの裁判を起こしたことを受けてのもの。
>オリンピック組織委員会・武藤事務総長は、「原案は、リエージュ劇場のロゴとは、全く別物ということが、おわかりいただけると思います」と説明した。

>異例の原案公表で、オリジナルを強調したオリンピック組織委員会。
>一方のドビ氏は、どう感じたのか。
>FNNの取材に対し、ドビ氏は「最初のロゴは、似ているとは言えません」と、原案については、似ていないことを認めた。
>しかし、修正案について、ドビ氏は「これは、リエージュ劇場のロゴに似始めています」と語り、そして、最終案については、「誰が見ても似ている」と、あらためて主張した。
>ドビ氏は「問題は、作品のプロセスではなく結果です。わたしのロゴに似ないよう、変更を求めます」と語った。



「五輪エンブレム:専門家「説明もっとはやく」…対応批判」(毎日新聞 8月28日)

>2020年東京五輪の公式エンブレムを巡る騒動で、7月24日の発表から1カ月以上がたった28日、大会組織委員会が選考過程を明らかにした。「もっと早く丁寧に説明していれば、混乱は避けられたのではないか」。デザイン関係者からは組織委の対応を疑問視する声が上がった。

>デザイン評論家で武蔵野美術大教授の柏木博さんは「エンブレムと(類似が指摘された)ベルギーの劇場ロゴはデザインの根本的な考え方が全く異なる。原案が公開され、一層明快になった」と話す。

>一方、大会組織委員会による原案修正の依頼について、デザイン関連の知的財産管理を手がける弁理士の日高一樹さんは「五輪は今や多数の企業が関わるビジネスの場でもある。トラブルを避けるため少しでも似ていれば、変更を加えるのは当然のことだ」と話す。

>大会組織委員会はデザインの原案段階からの独自性を強調し、沈静化を図りたい構え。だが、日高さんは「修正の過程で他のデザインを参照した疑いを完全に払拭(ふっしょく)するものではない」と指摘する。

>東京都の舛添要一知事は28日の定例記者会見でエンブレムについて「残念ながら(エンブレムの)イメージも悪化している」と語った。同日開かれた東京都議会の五輪に向けた特別委員会でも、エンブレムを巡って都議から懸念や注文の声が相次いだ。選考過程の議事録の有無をただした都議は、都幹部の「ないと聞いている」との答弁を受け、「客観的資料さえないのか」と指摘した。



早速Netでは様々な憶測が飛び交っている。
「8月5日の佐野氏の会見での説明(全体が円のイメージ)と矛盾する」、「永井一正氏の言っていたことと違う(●の位置など)」、「後付けではないのか」などである。
それに、今更というか、どうやらJOCの連中は、「原案」を以って「リエージュ劇場」のロゴとは違う、模倣ではないということの証明を試みたようだが、現状はもうそのことよりも、むしろ数々の「パクリデザイン」で評判を落とした佐野氏の、その彼がデザインしたエンブレムを使用すべきかどうかに論点が移ってきている。「デザイナー失格」の烙印を押された佐野氏のデザインが、果たして国民感情的に受け入れられるのかどうかということである。
その意味では、この期に及んでのJOCの説明は、酷くズレているようで、言わば素っ頓狂であり、滑稽にさえ感じる。しかもあの子供じみた「図(原案)」を前にしてである。

>「もっと早く丁寧に説明していれば、混乱は避けられたのではないか」

いや、この様子なら遅かれ早かれではないだろうか。それは根本的に佐野氏のデザインの完成度が極めて低いことに由来する。「一層明快になった」のはむしろその点だ。

とにかく、「原案」は実に幼稚な印象で、デザイン以前に「工夫」といったものが一切見られず、「精錬された」というには程遠い。故に、それが何故選ばれたのか、まずは不可解この上ないというところである。これはもう「佐野ありき」と疑われても仕方がないことだろう。
また、わざわざ会見を開き、「原案」を示すなら、同時に他2点の入選作品も公開して、何故「佐野作品」が選ばれたのかその理由について、そこまでを説明して然るべきではないだろうか。
何か人を食っているというか、国民を舐めているというか、からかってさえいるような感じで腹立たしくもあるが、言い換えれば、おそらく彼らはそうしたことに気付きもせず、客観的にものを見ることさえできない、創造力が欠如した哀れで気の毒な連中ということなのだろう。

果たして結果、これでまた燃え盛る炎に更に油を注ぐことになってしまったようである。

とにかく、「佐野エンブレム」が盗作かどうかは詰まるところ佐野氏自身しか知る由がない。だが、いくらJOCが「盗作・盗用ではない」と主張したところで、ドビ氏の言うとおり、現実問題として、今の「佐野エンブレム」は結果的に「リエージュ劇場」のロゴマークに似てしまっている。要は、盗作・盗用か否かはさておき、その焦点は著作権の侵害の嫌疑にある。

「元に戻せば何も求めない。」
ドビ氏の言うことは至極まっとうで、しかし一方、その「原案」がまた別の作品に似ているとなれば、いずれにせよ「佐野エンブレム」は八方塞。そうして行き場を失えばもう撤回しかない、ということになる。


一方、ここに、東京オリンピックエンブレムのデザイン選考の過程について、更に詳しく述べた記事がある。
ただし、この『宣伝会議』は昔からデザイナー、クリエイターのご用達専門誌である。その点はご承知を。

東京2020エンブレムを一般公募にしなかった理由
マスナビ2016 株式会社宣伝会議グループ(2015年08月28日 掲載)

東京2020五輪のエンブレムのデザインについて、さまざまな見解、議論が交わされている。エンブレムはどのような手順をふみ、どのような審査によって選ばれたのか。ブレーン編集部では、会見時に明らかにされていなかった審査プロセスについて、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下 東京2020組織委員会)に取材を行った。
9月1日発売「ブレーン」10月号の東京2020五輪のエンブレムのデザインについての特集から、その一部を紹介する。

東京2020五輪エンブレム審査は2014年11月17日、18日の2日間にわたり行われた。

最終応募は104名、104作品(うちイギリス・シンガポール・中国・香港から4名が参加)。通常の広告・デザイン賞の審査同様、応募作品はすべてナンバーで管理。最初の投票から、決定に至るまで、制作者名を伏せた状態で作品を審査している。

会場にはロゴと展開例があわせて並べられ、各委員は両方を見た上で、それぞれの視点で残すべき作品、議論すべき作品の上に手持ちのチップを置く方法で投票。

1日目の審査で104作品を37作品に、その後37作品を14作品まで絞りこんだ。

2日目に、あらためて14作品を審査し、再度投票。その結果、4作品が最終選考に残り、そこから新たに議論を交わしたという。それを経て再度投票し、3作品の入選(佐野氏ほか、葛西薫氏、原研哉氏)を決定した。その時点で佐野案の投票数が一番高かったが、そこで決定せず、さらなる議論を続けた。

議論の中心になったのは、展開力と拡張性。

街中に掲出されたとき、テレビ、Webではどう見えるのか。2020年に、このエンブレムはどうあるべきかなど、多岐にわたり、それぞれの専門性、見地、価値観から意見をぶつけあった。8名全員がこれで行こうと納得をするまで、議論を尽くし決定した。

永井一正審査員代表は「審査で最も力を入れたことは、オリンピックとパラリンピックは兄弟の関係、つまり一対であるという点です。単独で見たとき、それぞれの個性を発揮しながらも、イメージは統一させなければならない。さらに、モノクロで表現したときにも違いが分かる必要もある。そういった条件をもとに、差の付け方やバランスも審査のポイントになりました。それから、2020年という少し先に展開する"未来の象徴"となるものであることも意識しました」と話す。

エンブレム候補として佐野案に決定後、事前商標調査を実施。その結果をうけて、委員会はデザインの微修正を佐野氏に依頼した(当初より、Tと円はデザインに組み込まれていた)。

近年、各国のオリンピックエンブレムが複雑化しているのは、商標が影響している。ほかと重ならないデザインを求めれば求めるほど、シンプルなデザインでは通用しなくなっている。64年開催時にはそのような調査はなく、「亀倉雄策さんの東京五輪の際の日の丸のデザインも、いまは通らない可能性もある」という声も聞かれる。

国内での調査通過後、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック協会、組織委員会共同で、国際商標調査を実施。数か月にわたる調査を経て、7月24日の発表に至った。

「審査は利権などとは一切無縁、かつ一点の曇りもない状態で、きわめて公正に実施した」と、同委員会は断言している。

今回のコンペを、一般公募にしなかったのは、次のような理由による。

オリンピック・パラリンピックの理念をエンブレムに落とし込んだデザインであることは、デザインを選定する上で第一義にある。

しかし、マーチャンダイジングや多様なメディアへの展開を考えたとき、そこに対応できるデザイン力があること。制作物のクオリティも担保できることは必須だ。

さらには国際商標をもクリアにしたデザインでなくてはならない。ここには相当な知見とスキルが求められる。そのためロンドンやリオでは個人ではなく、デザイン・ブランドコンサルティング会社がこれらを請けおっている。

国内外のデザイン賞を複数回受賞しているデザイナー個人を応募有資格者としたのは、クオリティの高さと展開力を求めたことが大きい。

知的財産権やデザインマネジメントを専門とする日高一樹弁理士は、今回の件について次のような見解を示す。

「欧米のデザイナーは企業・個人問わず主張が強く、リエージュ劇場のシンボルマークのデザイナーの対応は、デザインやブランドに対する考え方の違いを感じます。欧米の企業にとってブランドを構築するのは戦いであり、自分の権利を侵すものとは徹底的に戦います。個人のデザイナーも抜きん出た独自性こそ自分の価値だと考えるため、権利意識が強くなります。 グローバル市場でデザインをしていくには、この価値観を前提にプロとして仕事をすべきです。ネットでコピー&ペーストが簡単にできる現代において、アマチュアとプロのデザイナーを分けるのは、高度な知財の理解と知財マネジメントを組み込み仕事に臨めるかどうかです」。

(ブレーン 編集部/宣伝会議 AdverTimes)


まぁ外聞も憚らず、ものは言いようという気がしないでもないが(笑)、これはあくまでも、宣伝会議ブレーン編集部が大会組織委員会に取材した、その結果を記事にしたもので、その真相はどうなのかまではわからない。

さて、ここで尚気になるのが、佐野氏以外に入選したというお2人、葛西薫氏と原研哉氏の作品であるが、残念ながらこの二点はまだ公表に至ってはいない。

葛西薫氏
日本のアートディレクター。(株)サン・アド取締役副社長。北海道札幌市生まれ、室蘭市育ち。
高校卒業後、文華印刷(株)に入社。(株)大谷印刷勤務を経て、1973年(株)サン・アドに入社、現在に至る。

原研哉氏
岡山県出身のグラフィックデザイナー。武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科教授、株式会社日本デザインセンター代表取締役。
1998年長野冬季オリンピックの開会式・閉会式プログラムを手がける。同年山口県の梅田病院などのデサイン計画に関わる。2000年RE DESIGN展で世界インダストリアルデザインビエンナーレ大賞を受賞。以降、世界各国を巡回していく。
2001年松屋銀座のリニューアル計画、深澤直人と共に無印良品のボードメンバーに参加。2004年HAPTIC展、FILING展開催。またこの年より教鞭をとる武蔵野美術大学の卒業年次の学生と共にEx-formationという共同研究を開始する。2005年の愛知万博のプロモーションを担当する。2007年SENSEWARE展開催。ほかに商品のデザイン、世界各地で企画展示・個展などを多数開催している。
Wikipediaより

なお、「サン・アド」はサントリー出資の広告制作会社である。また、「日本デザインセンター」の最高顧問は永井一正氏である。


またこちら。佐野氏の報酬や「エンブレム」の権利などについて。

「【高論卓説】五輪エンブレム問題 責任逃れに終始し泥沼化 論外の組織委対応」(SankeiBiz 8月28日)

>東京五輪・パラリンピックの公式ロゴが大きな社会問題になっている。このロゴとロゴの作者である佐野研二郎氏に関する多くの疑惑が持ち上がると同時に、誹謗(ひぼう)中傷ともいえる情報がインターネットで拡散されている。オリンピック開催国である日本にとって望ましい事態ではなく、開催都市・東京の信用を低下させるものだ。この問題はさまざまな要素を含み、解決するには問題を分解して考える必要がある。

>五輪ロゴの著作権は、既に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が保有していると思われる。今回のようなコンペでは、募集時に著作権とその権利関係が明示され、コンペに参加する際に契約書を交わす形になっている。

>組織委が提示した条件は、大賞100万円、入賞10万円で、入賞時に著作権を組織委に譲渡するという内容。つまり買い取り契約であり、入賞して公式ロゴに決まった時点で、著作権は佐野氏の手から組織委に移っている。賞金以外にロイヤルティーを受け取る権利は佐野氏にはない。

>また、ロゴを使用するかどうかの判断は、著作者ではなく著作権を保有する組織委に委ねられている。

>模倣疑惑発生後の組織委の対応はリスクマネジメントとして論外であり、ある意味、お役所仕事を絵に描いたようなものだった。ロゴが模倣であるかどうかは別問題として、類似のロゴが存在し、類似ロゴの所有者から抗議を受け、著作権の専門家の意見として係争に負ける可能性が指摘された時点で取り消すべきだった。そうすれば、その後の国際訴訟などの係争も防げ、佐野氏や組織委ひいては日本の名誉も傷がつかずに済んだと思われる。

>「問題は逃げると追いかけてくる」。これはリスクマネジメントの一番の鉄則なのだ。



今やこれだけ佐野氏の「模倣デザイン問題」が取り沙汰され、そうした一連の中にある「佐野エンブレム」は尚更に忌み嫌われ、国民の、取り下げを求める気運は一層高まっている。JOCもそれは充分に承知のはずだ。問い合わせのメールや電話が日々絶え間なく殺到していることであろう。

ちなみに、『グッドマンの法則』というのがある。これは何かというと、「(商品などに)不満を感じた人のうち、いったいどのくらいの人が実際に苦情を申し立てるかという」その割合を示す法則のことだそうだ。

「苦情とはなにか?」(顧客ロイヤルティ協会【Mail Magazine】第17号 2011年8月17日)

この記事によると、
>この調査の集計の結果として、4%から20%という数値が上がっています。
>4%というのは、100人不満を感じたら実際に企業に苦情をいう人は、たったの4人しかいないということです。


例えば日々、Netの書き込みなどで「佐野エンブレム」に対し、批判や禁忌を述べるつぶやきはどのくらいの数に上るだろうか。
仮に“行動派”がその内の1%だったとしよう。しかしそう考えても、JOCをはじめ、政府や東京都、ポンサー企業などに寄せられるクレームはそれでも相当な数になるはずだ。

にもかかわらず、「佐野エンブレム」に固執し続け、使用を強行するなら、それは民意無視以外のなにものでもないということになる。彼らは国民の金を使ってオリンピックを私物化していることにほかならず、まさにJOCは権謀術数をめぐらし悪計を弄す邪悪な組織ということになるだろう。


さて、一方の新国立競技場の1,550億円。
まだまだ高いのではないだろうか。1,000億あれば充分な気がするがいかがだろう。
とにかく、造るなら、区切り区切りでその工程と、掛かった金額を透明・明瞭にして逐次国民に向けて公表すべきだ。最後に「実は・・・」はもう通用せず、決して許されるものではない。

波乱含み、前途多難、先の見えない東京五輪。さて、一体どうなることやら。
(最終更新:8月30日 1:40)


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