王様の耳はロバの耳

たったひとりの叫びでも、そのうち風にのって広がれば・・・

東京五輪:エンブレム、撤回したはいいけれど

2015-09-05 18:09:28 | 東京五輪2020
こうなると、全てが疑心暗鬼に思えてくる。
何が真実なのか、何が真相なのか。
やめるにやめられない、引くに引けない東京五輪。今後の成り行きは・・・。

・・・いや、思い切って全てをやめてしまえばいい。そう思うのだが。

クローズアップ現代「2020東京オリンピックエンブレム白紙撤回」佐野研二郎


ここで、永井一正氏は、エンブレム修正の経緯は知らなかったと語っている。
嘘か誠か、もし氏の言うとおりであるならば、密室で一体何が行なわれていたのだろう。まるで「国家的重大機密」扱いである。
こうしたことひとつ捉えても、オリンピックが、果たしてスポーツの祭典、国民的行事と言えるのかどうか。今に始まったことではないけれど、知らぬ間に好き勝手に進められる計画の数々。結局は国と大企業の、国と大企業による、国と大企業のためのイヴェントでしかなく、常に国民は出汁に使われるという、それに尽きるような気がする。


「五輪エンブレム:再公募、デザイナーに戸惑い」(毎日新聞 9月4日)

>2020年東京五輪・パラリンピックの公式エンブレム撤回を受け、大会組織委員会は受賞歴などの応募要件を緩和し、開かれた公募のあり方を検討している。だが、デザイナーの受け止め方は複雑だ。前回の公募は参加者には不満が残るものだった上に、制作者の佐野研二郎氏(43)はネット上で厳しい批判にさらされた。デザイナーからは「こちらも生活がある。とても応募できない」と深刻な声も聞こえてくる。

>前回応募したあるデザイナーは「組織委は素人だった」と憤りを隠さない。求める作品の構図など基本的な条件が何度も変わったほか、締め切りの1週間前には提示された資料のパラリンピックのアルファベットのつづりが間違っていたことが伝えられたという。このデザイナーも今回は応募を見送る考えだ。

>佐野氏の作品を選出した理由を組織委は「展開力」と説明した。しかし、デザイン監修をするクリエーティブディレクター(CD)の安原和夫氏(67)は「どのような五輪にするのか。前提をはっきりさせないから審査委もきれいな作品を選んでしまう。あの『T』を見て、東京が思い浮かびますか」と疑問視する。今回の大会コンセプトは「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」と抽象的だった。

>安原氏が好例とするのは招致段階で使用した「桜」のリースをモチーフにしたロゴ。11年に発表され、その年の東日本大震災からの復興の思いも込められた。1964年東京五輪の赤い丸も「敗戦から復興を遂げた日本の象徴そのもの」と語る。安原氏は「理念を打ち立て、審査の基準をはっきりさせなければ、単に応募の間口を広げても結果は同じになる」と提言した。



前の拙記事に私はこう書いた。
「とは言っても、また新しいロゴにもNetの厳しい「監視の目」が及ぶだろうし、参加者はそうしたNet検閲の洗礼を覚悟での応募にはなりそうだ。
一方、例えば、桜の「招致ロゴ」は評判が良かったりもして、案外大多数の人が納得する落としどころとも言えるのではないだろうか。パラリンピックのエンブレムに関しては、それこそプロのデザイナーがアレンジを加え、その結果の数点を公表して絞り込むのが妥当というふうにも考えられなくはない。」

だが、どうやらその桜の「招致ロゴ」さえ使うことができないらしい。

「「招致の桜」エンブレム、継続使用はダメ なぜ?【東京オリンピック】」(The Huffington Post 9月3日)

>佐野研二郎氏デザインのエンブレムの使用中止を受け、東京オリンピック大会組織委員会は9月1日、公式サイトなどから佐野エンブレムを削除し、招致活動で使用していた桜のエンブレムに差し替えた。新しいエンブレムが決まるまでの暫定措置だ。しかし、桜エンブレムは、本大会用には使用できないという。

>スポニチによると、国際オリンピック委員会(IOC)の指針で「大会エンブレムは招致ロゴに取って代わるもので、発表まで機密事項として管理すること」などと定められていることが理由。組織委は「これらの要件を満たすため、招致ロゴを継続して使用することはできない」と説明した。

>オリンピック大会のエンブレムはライセンス商品として管理されており、その利用権を販売することで、大会の運営資金などを得る仕組みとなっている。

>毎日新聞によると、例えば1社あたり150億円の巨額の契約費を支払って国内最上位のスポンサー「ゴールドパートナー」になると、エンブレムを独占使用できる。

>しかし、招致活動に使われた桜のエンブレムは無償で多く配布されていることもあり、組織委の布村幸彦副事務総長は、「有償で(権利ビジネスの)ライセンス展開するのは難しい」と話した。



また、産経新聞の記事でも、
「桜のリースの招致ロゴ使用の待望論も 組織委、IOCなどの規定で「使えない」」(産経新聞 9月3日)

>組織委によると、エンブレムについては国際オリンピック委員会(IOC)の規定で、(1)招致ロゴに代わるもの(2)発表まで機密事項として管理する(3)パラリンピック版と補完的でありながら区別できるもの-と定められており、「すでに発表されたデザインをそのまま使うことはできない」という。

>また、招致ロゴの使用は無償で、すでにピンバッジなどの関連グッズも多く、グッズ作成やCMへの起用にライセンス料を課す公式エンブレムに転用することは「スポンサーの理解を得られない」(組織委)としている。

>招致ロゴを修正して使用する可能性については、組織委の武藤敏郎事務総長が1日の会見で「われわれ(組織委)が修正することで皆さんが納得するのかどうか。そういうアイデアがあれば(コンペに)応募していただければいい」との見解を示している。


・・・としている。
一方で、この際、1964年の東京オリンピックエンブレムを復活すれば良い、という話もある。
「まるく治める」のに、これも良い手立てだと思うが、それもまた難しいという。

「1964年東京五輪のエンブレムが新五輪エンブレムとして使えない理由」(YAHOOニュース 9月5日)

>この案は現実的には困難だと思います。
>第一に、五輪憲章には、オリンピックエンブレムは他のオリンピックエンブレムと明確に区別できなければならないと明記されています。
>4.2 The IOC may approve the design of an Olympic emblem provided that it considers that such emblem is distinct from other Olympic emblems.
>(栗原訳)IOCは他のオリンピックエンブレムと区別できる判断した場合にはオリンピックエンブレムのデザインを承認できる。

>もうひとつの問題点として商標登録の問題があります。日の丸マークとTOKYO 2020の文字を組み合わせて商標登録することは可能です。TOKYO 2020の部分が識別力ありとされるからです。そもそも、TOKYO 2020単独の文字商標は既に組織委を権利者として登録されています(通常は「地名+年号」の商標は識別力なしということで登録されませんが、これについては組織委がオリンピック関連で使用すれば識別力を発揮するだろうという理由で登録されています)。

>しかし、日の丸マーク単独で商標登録することは、あまりにもシンプルな図形であるため困難です。そして、仮に全商品・全役務で登録されたとすると他の日の丸マークが商標として使えなくなってしまうという問題が生じます。結果的に、五輪のマークもTOKYO 2020もつけず日の丸マークだけを付けた「脱法」非公式グッズの販売は防げません。加えて既存の合法的に使われている商標(たとえば、日の丸交通のタクシー)と区別しにくいという問題もあります。こういう状況をスポンサーが許容するかという点が最大の問題です。

>1964年の五輪はアマチュアリズムの祭典でした。エンブレムを商標登録してスポンサーにライセンスして収益化するという今日の五輪の世界とは全然環境が違っていたので、当時のエンブレムをそのまま使うというのはそもそも無理筋なのです。



とは言え、日本オリンピック組織委員会が毅然とした態度で何か方策を考えれば、桜の「招致ロゴ」にしろ「1964年東京五輪のエンブレム」にしろ、可能性が無いと言い切れない気はしないでもないが、「異例」ついでにやればいいのでは無いだろうか。新たな公募で、また新たな問題が発生するより余程無難である。

 * * * * *

さて一方、「佐野エンブレム」を撤回したことによる金銭的な損失は如何ほどのものだろう。

「組織委経費は5700万円=エンブレムの白紙撤回で-東京五輪」(時事ドットコム 9月4日)

>2020年東京五輪・パラリンピックの公式エンブレムが白紙撤回となった問題で、大会組織委員会は4日、エンブレムの選考や商標登録に支出した経費が約5700万円に上ることを明らかにした。
>組織委によると、国際オリンピック委員会(IOC)などと共同で進めた商標の調査や登録費用に約4700万円を支出。応募用のホームページ作成や審査会場のレンタル費、ポスター作成費などに約1000万円がかかった。
>これとは別に、7月24日に東京都庁都民広場で行ったエンブレム発表イベントに約6900万円がかかった。この費用の負担割合は組織委と東京都が協議中で、まだ決まっていない。



「東京都の損害1億円超 五輪エンブレム撤回で無駄金」(日刊スポーツ 9月3日)

>2020年東京五輪・パラリンピック公式エンブレムの撤回を受け、東京都が受ける損害が、最大で1億円を超える可能性があることが2日、分かった。

>7月24日に都庁で行ったエンブレム発表イベント費用も、都は7000万円を上限に負担することになっており、最大で1億1000万円以上が無駄になる恐れがある。





更に、スポンサー企業等の動き。

「五輪エンブレム問題受け 経済界が会合」(NHK 9月4日)

>経団連や日本商工会議所などで作る協議会はエンブレムが白紙撤回されたことを受けて、4日に東京都内で臨時の会合を開き、企業のトップらおよそ100人が出席しました。
>この中で、大会の組織委員会の佐藤広副事務総長が白紙撤回の経緯を説明したうえで、「お騒がせして申し訳ない」と陳謝しました。
>これに対して企業からは、スポンサーの契約はエンブレムの活用が前提となっており、早く国民に支持されるものを作ってほしいといった要望や、組織委員会は意志決定のプロセスを明確にし、より説明責任を果たすべきだといった意見が出されました。そのうえで今後、協議会として大会組織委員会との意思疎通を活発にし、協力関係を一層強化していくことを確認しました。

アサヒビール「新エンブレムを早く」
>アサヒグループホールディングスの荻田伍相談役は「組織委員会から、きちっと説明を受けたし、これから一緒になって大会を盛り上げていこうという話だった。新しいエンブレムを早く作ってもらって利用していきたい」と話しました。
>また、傘下のアサヒビールが組織委員会との間にスポンサーとして最高位の「ゴールドパートナー」として契約を結んでいますが、組織委員会に対し賠償を求める考えがあるかとの質問に、「全然ありません」と答えました。

JAL「大会成功を」
>組織委員会と「オフィシャルパートナー」としてスポンサー契約を結んでいる日本航空の大西賢会長は会議のあと、「組織委員会からは経緯の説明をしてもらい、今後のエンブレムについて、どのようなかたちでやっていきたいかという説明を受けた。財界としては2020年の大会が成功してくれるのが、いちばんうれしい」と話しました。
>また、組織委員会に対するスポンサー企業からの賠償請求について、「それは先の話で、きょうは全く出ていない。今後、賠償について組織委員会と話し合いの場を持つかどうかも個別の判断になるのではないか」と話しました。

組織委「早急に取りかかる」
>組織委員会の中村英正企画財務局長は「エンブレムの撤回の経緯を説明したうえで、おわび申し上げた。会議ではスポンサー企業から、今回の問題を受けての賠償の話は一切出なかった。今後、いいエンブレムを作ってほしいという話だったので早急に取りかかりたい」と話しました。



取り敢えず事件直後なだけに、即ち「損害賠償」という生々しい話に及ばないまでも、何れは避けて通れない問題にもなってくるだろう。

さて、この東京五輪エンブレムの白紙撤回騒動の原因、その元凶は「佐野エンブレム」にあった。
これがようやく白紙撤回となって、多くの国民は大方これに納得し、胸を撫で下ろした。
結果、エンブレムをデザインした佐野研二郎氏の姿勢が問われるところではあるが、その責任の所在ということになれば、まずこのデザインを選んだ選考委員にあると言え、それよりも、これを取り仕切った日本オリンピック組織委員会(JOC)に最大の瑕疵があると言える。更に管轄の文科省、ひいては政府の管理、監督責任は重大だ。

それぞれがどのような形で責任を取るのか、またその責任をどう補って今後どう対処するのか。それは未だ曖昧である。
何にでも言えることだが、このままうやむやにすること、そのことが次の事件、次の被害や損害を生むことになり兼ねない。それこそ国会でしっかりと追及、究明することが望まれる。

「国民が、世界のアスリート達が歓迎する大会にしたい」
言うのは簡単だが、キレイゴトでは済まされない。


《関連記事》
「エンブレム顛末記」


※記事内でリンクしたサイト、貼り付けた動画は時間経過と共に削除、更新される場合があります。ご了承ください。



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。