ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団『アラジン』5月4日(水)

2011年05月05日 | Weblog

Nさんより3日続けて新国立劇場バレエ団『アラジン』をご覧になった寄稿を頂きました。

ダンサーによっての違いが判って素晴らしいですね。Nさん本当にありがとうございます。

震災以来記事のUPのペースが落ちていましたが気を取り直してこちらもUP続けますね。

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 新国立劇場バレエ団『アラジン』
アラジン:福岡雄大
プリンセス:さいとう美帆
マグリブ人:冨川祐樹
ランプの精ジーン:福田圭吾
アラジンの母:楠本郁子
 
サルタン(プリンセスの父):イルギス・ガリムーリン
 
オニキスとパール:石山沙央理 五月女 遥 盆子原美奈
               :グリゴリー・バリノフ 江本 拓 アンダーシュ・ハンマル
 
ゴールドとシルバー:西川貴子 丸尾孝子
                           :貝川鐵夫 小笠原一真
 
サファイア:米沢唯
 
ルビー:長田佳世 厚地康雄
 
エメラルド:堀口 純 細田千晶 芳賀 望
 
ダイヤモンド:西山裕子
 
初役ペアである福岡さん、さいとうさんペアを鑑賞した。
 
福岡さんのアラジンは勢いのある体育会系な腕白少年、
恐るべき身体能力をこれでもかと駆使したテクニックに目を奪われるばかりであった。
ジャンプ1つにしても縦横斜めどの方向へも大きく跳び、
舞台が狭く感じたほどである。
芝居も濃厚で表情豊か、端正な顔立ちからは考えられぬような
おかしな顔もたくさん見せて楽しませてくれた。
 
プリンセスに出会ってからはみるみると変貌を遂げ、
愛する姫を力強く守り抜く男気のある青年へと変わっていった。
プリンセス救出作戦のときはさいとうさんとの息がよく合い、
観客の笑いを誘っていた。
私の周囲にいた子供達は声を上げて笑っているほどであった。
 
この場面中、小道具が福岡さんの足元に
転がってきてしまった箇所があったが、
物語の展開に上手く溶け込ませて他の物と一緒にさっと後ろに片付けていて、
おかげでその後の舞台を安心して観ることができた。
流石主役である。
 
さいとうさんのプリセンスは清楚で淑やか、
大和撫子を思わせる慎ましさを持ち合わせたヒロインであった。
市場に降り立ちアラジンに見つめられたときの怯えるような目が印象深い。
 
再会してからは最初は戸惑っているものの、
大胆なアラジンに徐々に心を開いていく過程を
丁寧に踊り演じていた。
シンデレラのときも感じたが、
さいとうさんは役の心情をステップに込めることがとても上手である。
 
マグリブ人を誘惑するときの踊りは
窮地にも関わらず危機的な状況に堂々と立ち向かっている余裕を感じた。
アラジンに出会い、試練を経たことでプリンセスにも度胸がついたのだろう。
 
福岡さんとさいとうさんは絵になるお2人で、
宮崎駿のアニメ『天空の城ラピュタ』を彷彿とさせる
凛としたヒーローと清らかで気高いヒロインであり、大変お似合いなペアであった。
他の作品での共演が待ち遠しい。
 
福田さんのジーンは柔らかで美しく、終始洗練された踊りを堪能させてくれた。
高速回転や大きな跳躍もとても優雅で鮮やか、
ジーンが「ランプの精」であることを今一度思い出させてくれた。
2幕、3幕では側近達を従えて踊りだす場面があるが、
側近達への気配りを忘れず、
福田さんの謙虚なお人柄が役に表れていたと感じた。
 
冨川さんのマグリブ人は鋭い視線がぞくぞくとさせ、
次はアラジン達にどんな試練を与えるのだろうかと
物語の展開はわかっていてもどきどきとさせてくれた。
 
主役キャストは本日で一通り鑑賞したが、
ダンサーによって全く違ったアラジンとプリンセスになり、
同じ役でも個性豊かである。

また、分かりやすい物語運びと豪華で色鮮やかな装置、衣装、壮大な音楽に
心底楽しませてくれる作品である。
 
洞窟の場面では次々と宝石達の踊りが繰り広げられるが、きちんと物語性がある。
各踊りの間にはアラジンが宝石のところへ向かってやりとりを交わし、
ときには踊りの輪にも加わる。
最後にアラジンをランプの元へ送り出すときは
全ての宝石達が手を取りながら道を作り、アラジンを通し見届けていく。
ただの辻褄の合わぬ踊りの大宴会になっていない点がとても良い。
 
新国立劇場が誇る群舞の場面も盛り込まれ、
煌くような美しさである。
 
英国人の視点で描かれたアラジンのため
東洋文化が不思議な入り乱れ方をしているとの意見もある。
確かに日本で生まれ育った者からすれば首を傾げたくなる箇所はいくつかある。
しかしながらそれはさておき、何よりも明るい作品であることがこの作品の魅力である。
劇場を訪れた観客にたくさんの幸せと元気を与えてくれることであろう。
楽日の8日まで、引き続き舞台の成功を祈るばかりである。



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3 コメント

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ありがとうございました (バレエファン)
2011-05-08 10:31:37
管理人さん、Nさん
最近このサイトの更新が無くて残念に思っていたのですが
震災明けの公演を早速初日から3日続けて感想読ませていただきました。
自粛ムードが漸く解除されつつあり復興に向けて元気を出す為にもこのような晴れやかな舞台を見るのは良いものですよね。
今日が千秋楽とのことで今回はアラジンを見に行くことは叶いませんが是非次のチャンスに行きたいと思わせる寄稿でした。Nさんの寄稿を今後とも楽しみにしております。
管理人さんも是非引き続きサイト続けてください。
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コメントありがとうございます (N)
2011-05-08 11:27:31
バレエファン様

Nです。
このたびもお心のこもったコメントいただき
誠にありがとうございます。
とても嬉しく拝読し、感激致しました。

『アラジン』は復興に向けて、また公演再開の
シンボルに相応しい明るい作品で、
たくさんの元気や舞台を観る喜びを
与えてくれました。
次回は是非、ご覧いただければ幸いです。

今後も寄稿続けて参りますので、
またお立ち寄りくださいませ。



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ありがとうございました (管理人)
2011-05-09 23:52:32
バレエファンさん暖かい言葉ありがとうございます。これを励みに続けます。

Nさん
早速コメントありがとうございました。
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