日本特派員Yさんからキエフバレエの東京公演の11月24日 東京国際フォーラムAにての「白鳥の湖」の観劇記を寄稿いただきました。写真は管理人が行った今年6月14日のキエフバレエ団の本拠地のウクライナ国立歌劇場。
「白鳥の湖」
オデット・オディール エレーナ・フィリピエワ
ジークフリート王子 イーゴリ・コルプ(マリインスキー・ゲスト)
ロットバルト ルスラン・ベンツィアノフ
パ・ド・トロワ オリガ・キフィヤク テチヤナ・ロワゾ セルギイ・シドルスキー
大きな白鳥 田北志のぶ オリガ・キフィヤク テチヤナ・ロゾワ イリーナ・ボリソワ
ヴェニスの踊り 菅野英男
指揮 ヴォロディミル・コジュハル 管弦楽 ウクライナ国立歌劇場管弦楽団
☆1幕1場のコルプの王子は、脚の線が綺麗で、端正な王子様でした。
背景画、とても広い湖を描いていて、トロワも良く揃っていて、コールドも若々しい感じがしました。
☆1幕2場が、湖のほとりで、フィリピエワの白鳥の美しさを堪能しました。
必要以上に大げさな動きはないですが、十分に情感が伝わってくる白鳥で、音楽にも上手く合っていて、静謐な白鳥です。
日本人の田北志のぶさんが、大きな白鳥に入り、よく目立つ場所にいて、しっかり見分けることが出来ました。
また一人、海外のカンパニーで活躍する日本人を、観られて嬉しかったです。
☆2幕が、黒鳥の舞踏会のシーンですが、落ち着いた色合いの民族舞踊が続き、それぞれ趣があって、臨場感がありました。
フィリピエワの説得力のある黒鳥は、素晴らしかったです。
王子が、のぼせ上がるのも分る妖艶さでした。
☆3幕は、再び、湖畔に戻りますが、謝る王子を受け入れるオデット
コールドの白鳥の中には、黒鳥も数羽混ざってました。
ロットバルトと王子が戦って、ハッピーエンドになりました。
カーテンコールで、面白いなと思ったのは、オーケストラの方が、ピットの中から、ダンサーさん達を撮影していました。
彼らにとっても、記念の公演だということでしょう。
音楽・演奏がとても良く、バレエ団の数だけ違った「白鳥の湖」があるなと思いました。
東京公演、良い公演だったようで何よりです。
さすが光藍社で東京は客演もあり、堅実にまとまったようで。
いま、意外と普通にまともな「白鳥の湖」をやってくれるところが少ないので、その意味でも良かったですね。
バレエ団との一体感がある、座付きオケ。ボリショイの方は重厚な感じですが。
このバレエ団所属の寺田宣弘さんの著書は、読まれた方も多いと思いますが、その中でバレエダンサーの条件として「女の子は、まず可愛くなくてはダメ」とあったことが印象的でした。
(ボリショイとは価値基準が異なりますよね)
この伝統で、四肢の長い、舞台映えのする体形のバレリーナを集めたコールドを見せていたのかなと、レポ拝読して思いました。
各国バレエ団の「白鳥」を見ると、確かに装置、衣装の雰囲気が、それぞれ趣が違っていて、文化の違いを感じることすらあります。レポの仰る通りです。
(それと、同じバレエ団でも、時代の変化も反映してるとも感じます。当方、キエフバレエの「白鳥」を見たのは、もう何年も前なので、旧ソ連から、ロシアの市場経済への移行の中で、街も色彩感覚も変化して、
多少昔のキエフ・バレエの舞台とは、印象が違うかもしれないと思っています)
今年来日ののグルジア・バレエは、装置、衣装の一部が、かなり個性的でした。2幕祝宴で、座ってる貴族の姫のドレスや髪型等。(昔の東欧の王室のに似てるかなと思いましたが、自信はありません)1幕1場の背景も、ロシアの白鳥では見かけないもので、こちらはロシアよりも、西欧の「白鳥の湖」に見られるものに近かったです。
それに比べれば、キエフ・バレエの舞台は、ロシアのオーソドックスな「白鳥」の背景だったと記憶しています。
もっとウクライナ風味が出る(?)「森の詩」という全幕作品を持ってきた時もありました。
日本のバレエ公演を見たアナニアシヴィリが、「とても簡素」と言った話が伝わっています。日本人はスターが出てくればそれ中心に見てる感じですが、ロシアの人は、「背景画などもしっかりあって当たり前、総合芸術なのだから」、という感じ方の差を感じています。
【フィリピエワとコンクールの二人】
エレーナ・フィリピエワは、当方数年前に見たのが最後です。昔は可愛い系アイドルにそっくり。
このフィリピエワと、ニーナ・アナニアシヴィリ、
そしてダンチェンコのチェルノブロフキナの3人は、
若い頃、モスクワ国際コンクールだったと思いますが、メダル争いをし、この3人がメダルを取りました。
ニーナはボリショイから出場。ここで突出していたフィリピエワとチェルノブロフキナは、その後、プリセツカヤの気に入りのバレリーナとしても活躍しました。そのため二人は一時期プリセツカヤの「カルメン」を継承し、踊っています。
フィリピエワの黒鳥。カルメンを踊ったことも、妖艶さを増した遠因でしょうか?
モスクワ、コンクールでの3人が、現在まで息長く好評を博し、奇しくも今年、日本で3人とも「白鳥」を踊るとは。
正直、新しいプリマを見たい気も半分ありましたが、
結局、古株のプリマの方が、無難、という選択になってしまいそうです。
フィリピエワは、近年、技術よりも情感の面で完成度の高い世界を見せてくれるプリマだと思います。
相手はマトヴィがいいと思いがちですが、レポ拝読し、元彼のマトヴィより、新しい相手でマリインカのコルプの方が、フィリピエワ自身は、新鮮な気持ちで踊れたかも??と想像しています。
レポ拝読し、モスクワのコンクールの3人の、円熟期「白鳥」を比べて見たかった気もしました。物理的にもそんなにたくさん行けないので、貴重なレポート有難うございました。
Nanaさん
いつもながら詳細なコメントありがとうございます。
別に記載しましたように12月24日のキエフバレエ日本公演最終日の福岡公演を帰郷のついでに見ることが出来そうです。
6月にキエフで見たバレエと見比べるのが楽しみ。
それにしても日本の年末年始にはCISのバレエ団が全員集合(大御所のボリショイ、マリインスキーは無理ですが)という感ありますね。
日本が如何に稼げるかということでしょう。
バレエ観劇の裾野が広がっている証拠でしょう。
各劇団の振り付けの違いを見比べるのが楽しみです。
キエフバレエはお初で、くるみ、ライモンダと見ましたが、予想を超えてダンサーの力量、オケが素晴らしく、堪能しました。特に「ライモンダ」は、どうみてもアブデラマンにより魅かれている、という独特さも、コルプの魅力で説得力あるものになっていました。
日本でも有名なフィリピエワ以外のダンサーも全員の容姿、スタイル、技量の水準が高いバレエ団で驚きました。
「ライモンダ」はなじみのない演目の平日公演なので、客席には空席が目立ったのだけは残念です。
感想誠にありがとうございます。
水準高いのは同感です。
12月24日に日本の最終公演を見るのが楽しみです。