ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団『マノン』2012年6月24日(日)26日(火)

2012年07月01日 | Weblog

Nさんからマインの追加の寄稿です。24日、26日と同じ配役の

公演を二度ご覧になって寄稿頂きました。

 

新国立劇場バレエ団『マノン』2012年6月24日(日)26日(火)

マノン:サラ・ウェッブ

デ・グリュー:コナー・ウォルシュ

レスコー:古川和則

ムッシューG. M.:マイレン・トレウバエフ

レスコーの愛人:湯川麻美子

娼家のマダム:堀岡美香

物乞いのリーダー:吉本泰久

看守:厚地康雄

高級娼婦:厚木三杏 長田佳世 堀口 純 川口 藍 細田千晶

踊る紳士:江本 拓 原 健太 奥村康祐

客:貝川鐵夫 輪島拓也 小口邦明 小柴富久修 清水裕三郎

ヒューストン・バレエ団からのゲストペア主演公演に
足を運んだ。

サラ・ウェッブは小柄で華奢、
フランス人形のような可憐さがあり
第1幕で馬車から降り舞台に現れたときは明かりがいくつも点灯したのような
輝かしいオーラがあった。
危うさよりも近寄り難く神々しい美しさのあるヒロインで、
一瞬にして目を奪われる美貌の持ち主である。

テクニックは強靭でマノンの場数を多く踏んでいるのであろう、
スピード感を保ちつつ身体のコントロールも自在で
申し分ないゲストであった。
表現もまた豊かで、指先、足先が感情を雄弁に語り、
新国立のダンサーの中に混じっても小柄な位だが、
そうとは感じさせないほどの存在感で
観客をぐいぐいと物語の世界に引き込んでいた。

ウォルシュのデ・グリューは情熱的且つ
誠実で心優しい男性であった。
デ・グリューといえば、複雑な過去を背負っていそうな
陰のある青年というイメージを抱いていたが、
明るさを失わない好青年といった印象であった。
将来に希望を持てない状況であっただろうマノンが
惹かれていくことにも納得である。
出会いの場でのバランスの難しいソロにおいても滑らかにすっきりと、
更にはマノンへの思いが伝わる踊りが
爽やかな余韻を残した。

古川さんのレスコーは色濃いキャラクターで
舞台に重厚なエッセンスを与えていた。
悪巧みにデ・グリューに詰め寄る強引さや
酔っ払いながらのソロでの豪快さ、
愛人との羽目を外したパドドゥなど
印象深い場面は数えたらきりがない。
娼家のマダムと意気投合しながら
踊り出すところも弾けに弾けて実に楽しそうであった。

役柄上マノンともレスコーとも密に関わるのだが、
ゲスト2人に対しても物怖じしない堂々たる姿で、
特にマノンをGMに引き渡すよう硬貨を撒き散らしながら
デ・グリューに無理やり取引を持ち掛ける1幕の最後は
2幕以降の壮絶な展開を予期させた。
主役2人を凌ぐ存在感だったといっても過言ではない。

マノン、デ・グリュー、レスコーの3人の
互いに遠慮のないぶつかり合いが凄まじく、
しっかりと練り上げてきたことを窺わせる。
ゲストと新国立劇場ダンサーとの間の壁を感じさせない熱演に
大きな拍手を送りたい。

トレウバエフさんのムッシューG.M.も忘れ難い。
色好みで美女に目がない男性だが、
どこか憎めない人物である。

厚地さんの看守は氷のような冷酷さがあり、
何食わぬ顔でマノンを我が物にしようとする姿に
おぞましさを感じさせた。

この日は上階から鑑賞したのだが、
舞台の隅々でダンサー達が実に豊かな芝居を繰り広げていることに
驚かされ、目がいくつあっても足りないほどである。
お金を求めては追い払われる物乞い達や彼らを軽蔑する貴族、
色目を使って男性を呼び寄せては女同士の喧嘩に発展する娼婦達など、
主役のみならず周りのダンサー達にも
要注目である。

土曜日は本島さん、山本さんペアが登場する。
主役デビュー作品がカルメンであったほど
本島さんは個性の強い役柄が得意で
  ドラマティックなヒロインをどう作り上げるか楽しみである。
山本さんは椿姫のアルマンがボリショイ劇場公演でも絶賛され、
  今年3月のアンナ・カレーニナでの切なさで胸が締め付けられるほど
  魂と気迫のこもったカレーニンは今もなお鮮やかに蘇る。
  マノンを深く愛しつつも翻弄され、
  複雑な心理描写を求められるデ・グリュー役は
  まさに真骨頂であろう。
2人が織り成す官能的で壮絶な物語の世界を期待したい



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