激痛!コロナ禍で「帯状疱疹が急増」3つの理由、「水疱瘡との知られざる関係」と「唯一の対抗手段」
5/25(水) 5:01配信(東洋経済オンライン)
【新型コロナ流行下の今、国内ではまだ公式の統計は出ていないものの、診療現場の実感として帯状疱疹の患者さんが増えている。
これは日本だけではなく、世界的な傾向のようだ。例えばブラジルでは、コロナ以前(2017年3月~2019年8月)には100万人あたりの帯状疱疹患者数は30.2人だったが、コロナ以後(2020年3~8月)には40.9人と、35.4%も増加した(International Journal of Infectious Diseases)。77%以上増えた地域もあった。
コロナ禍で帯状疱疹が急増しているのはなぜだろう? 大きく3つの要因が言われている。
① 新型コロナ感染により、免疫細胞やその働きがダメージを受けた
② 新型コロナワクチンにより、一時的に①に似た状況が生じた
③ コロナ禍の心理的ストレスにより、免疫力が低下した
①コロナ感染が帯状疱疹の引き金となることに関しては、アメリカの約200万人のデータを解析した最新研究がある(Open Forum Infectious Diseases)。
50歳以上では、新型コロナに感染した人はそうでない人と比較して、感染から6カ月以内に帯状疱疹を発症するリスクが15%高かった。さらに新型コロナの入院患者では、帯状疱疹の発症リスクが21%高かった。
世界からの報告を網羅的に調べた論文では、帯状疱疹は新型コロナ感染から1~2週間以内に最も多く発症している(Dermatology and Therapy)。
原因と見られるのが、「細胞性免疫」を担うリンパ球(T細胞)の機能障害や減少等だ。
細胞性免疫では、T細胞などの免疫細胞が、病原体に感染した細胞を直接攻撃し排除する。抗体という武器を駆使する「液性免疫」と、いわば“車の両輪”の関係にある免疫システムだ。
コロナ感染によってその働きがダメージを受けると、体内にいる帯状疱疹の原因ウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)の活性化を許してしまう。
日本感染症学会も、新型コロナ患者でリンパ球減少が観察されることがあるとしている。
意外なのは、②新型コロナワクチンの影響だろう。当然、新型コロナワクチンそのものが帯状疱疹を発生させるわけではない。
国立感染症研究所によれば、新型コロナワクチンの接種後にもリンパ球の減少が見られることがある。新型コロナワクチンは、ウイルス自体を体内に入れるわけではないが、疑似的な感染を起こし、免疫反応を起こさせるものだ。一時的にせよコロナ感染と同じ影響が出ても不思議はない。
新型コロナワクチン接種後の帯状疱疹発生状況を調べた研究では、欧州では2021年7月時点で、ファイザー製ワクチン接種後に4103件(全有害事象※の1.3%)、モデルナ後に590件(同0.7%)、帯状疱疹の報告があったという。
アメリカでも同時期までに、ファイザー接種後に2512件 (全有害事象の1.3%) 、モデルナ後に1763件 (0.9%) の帯状疱疹が報告されている。】
①から②で何が主原因かわかりますよね。圧倒的に新型コロナワクチン接種者が多いでしょ。意外ではなく、新型コロナワクチンの接種後にもリンパ球の減少するのは当然です。
van Dam CS, et al : Herpes zoster after COVID vaccination . International Journal of Infectious Diseases 2021 ; 111 ; 169 – 171 .
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1201971221006810
でもワクチン接種後にリンパ球減少が起こる可能性は当然あると述べています。
もちろん、発熱しないレベルのコロナ感染(ブレイクスルー)が多いことも考えられます。でも、リウマチなどの自己免疫疾患の患者で落ち着いていた人の病勢が悪化するという話もよく聞きます。やはりmRNAワクチンは従来に比べてその圧倒的な効果からも容易に想像がつくように、免疫系に対する刺激としては強烈で、主に細胞性免疫の低下が原因になると思われます。