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家族性良性慢性天疱瘡(指定難病161)

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 家族性良性慢性天疱瘡(ヘイリー・ヘイリー病)は、常染色体優性遺伝を示す先天性皮膚疾患で、生下時には皮膚病変はなく青壮年期に発症することが多い。腋窩・陰股部・頸部・肛囲などの間擦部に小水疱やびらん、痂皮を形成するが、より広範囲に皮膚病変を形成することもある。通常、予後良好な疾患であるが、夏季に悪化し、紫外線曝露や機械的刺激、二次感染が増悪因子になることがある。病理組織学的には、表皮基底層直上から上層の棘融解が特徴的である。責任遺伝子はATP2C1である。

 【原因】
 本症の責任遺伝子であるATP2C1遺伝子は、ゴルジ体膜上のsecretory pathway calcium -ATPase 1(SPCA1)というカルシウムポンプをコードする。SPCA1はカルシウムやマグネシウムをゴルジ体へ輸送する機能を持ち、細胞質及びゴルジ体のホメオスタシス維持に関与している。ダリエ病と同様に常染色体優性遺伝する機序として、カルシウムポンプ蛋白の遺伝子異常によってハプロ不全が起こり、正常アレル由来遺伝子産物の発現が更に低下し生じるとされるが、細胞内カルシウムの上昇と皮膚病変の関係は明らかではなく、表皮細胞内に水疱を形成する機序も明らかにされていない。

 【症状】
 生下時には皮膚病変はなく、青壮年期になると腋窩・鼠径・頸部・肛門周囲などの間擦部を中心に、小水疱やびらんを生じ、症状は慢性に経過する。温熱・紫外線・機械的刺激・感染などが増悪因子となる。ときに、より広範囲に皮膚病変が拡がることがあり、胸部・腹部・背部などに拡大する。また、夏季に増悪し、冬季に軽快する傾向がある。発汗時に増悪する。しばしば、皮膚病変部に、ヘルペスウィルスや細菌感染を合併する。広範囲・重篤になったときは著明な疼痛を示しQOLが低下する。合併症として、皮膚症状に細菌・真菌・ウイルスなどの感染症を併発することがある。皮膚病変の癌化は認められない。しかしながら、皮膚病変が広範囲・重篤になったときは著明な疼痛を示しQOLが低下する。高度の湿潤状態の皮膚病変では、ときに、悪臭を呈することがある。全身の細胞の細胞内カルシウムの上昇が存在する可能性があるが、他臓器病変は一般的に認められない。

 【治療法】
 局所のステロイド軟膏や活性型ビタミンD3軟膏外用やレチノイド、免疫抑制剤などの全身療法が文献的に使用されているが、効果に一定の知見はない。対症療法が主体であり、根治療法は見出されていない。二次的な感染症を生じたときには、抗真菌薬、抗菌薬、抗ウイルス薬を使用する。最近、異常な変異部を取り除くようにmutation read throughを起こさせる治療として、suppressor tRNAによる遺伝子治療やゲンタマイシンなどの薬剤投与が試みられている。

<出典:難病情報センター>

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