箕面の森の小さなできごと&四季の風景 *みのおハイキングガイド 

明治の森・箕面国定公園の散策日誌から
みのおの山々を歩き始めて三千余回、季節の小さな風景を綴ってます 頑爺<肇&K>

千の風に・・・

2020-08-26 | *編集・冬/12月

千の風に・・・

箕面・外院の山里に立つ・・・高村光太郎の詩の中に・・・「きっぱりと冬がきた~ 刃物のような冬がきた~」 とありますが、冷たく切り裂くような冷たい風に、思わずキャップの耳あてをするぐらいの冬の風が吹いていました。冬枯れの季節となり、いつも土手で見る野花が少ない・・・しかし、よく見ると黄色い花をつけて西洋タンポポが一輪だけ咲いていてホッとします。

少し歩くと、早くもスイセンが蕾をつけています。稲株の跡から新芽が育っています・・・でも成長する前に寒枯れするか、耕やされてしまうかと思うと少し淋しい感がします。 しかし、ヨモギ、ハコベ、ナズナ、ホトケノザなどの野草が姿を見せています。 枯草や落ち葉で埋まる山野は、まるで自然の布団のようになって早春を待つ野の草花たちを守っています。 木枯らしの中でも、もう早春の為の準備が始まり、その先に萌える春があることを思えば、この少し淋しい山里にも温かいものを感じます。

あたごの森からはチェーンソウのうなる音がこだましています。 この寒い中で森の間伐作業をされているのでしょうか? ご苦労様です。 旧参道の山道を登って行くと、落葉した枯れ葉で山道が埋まり、歩くたびにザク ザク ザクと音をたて、飛び交うヒヨドリやメジロ、アトリ、シジュウガラなどのさえずりと共に、森のシンフォニーを奏でているようで嬉しくなります。 しばらく登り、第二ベンチ手前で一呼吸おき一休みしていると、近くから急に大きな叫び声にビックリです・・・

 O O ちゃ~ん !

森の中での大声は、たまに子供たちが ヤッホー! と叫んでいたり、カラオケまがいに大声で歌っている人がいますが、今の声は絶叫に近い・・・? 何ごとかな??

私がゆっくりと登って行くと、同年輩ぐらいの男性が東の空へ向って再び名を呼びながら叫び声をあげました・・・私の姿を見つけた男性は一瞬恥かしそうな様子で・・・「すいません!  大声で!」 「いいえ~」 私は涙を拭いているその方を見て、それ以上は言葉がでませんでした。 でも私が少しそのまま立ち止っていると・・・

「かあちゃんですねん!」 「 え!」 「ようこのベンチで座って、あの景色見ながらようおにぎり食べましてん・・・かあちゃんとな~ 死によりましてな!そんで、千の風に向ってですわ・・・ほんま、寂しいですわ!」 再び大粒の涙が流れ落ちました・・・「そうですか・・・辛いですね。 でもいい奥さんだったんですね・・・」 男性は大きくうなずいていました。

僅か数分の出逢いでしたが、私も事情を察知してもらい涙を流してしまいました。 懐かしさと、寂しさと、辛さに、思わず奥さんの名前を叫ばれたようですね・・・ どうぞ、思い切り涙を流してください。 思いきり、千の風に向って叫んでください。 私はそんな思いを抱きながら失礼をしました。 辛いでしょうね。

ひときわ冷たい風が尾根道を吹いていきます。 振り返って見ると、真っ青な冬空から太陽がキラキラと輝き、そのこもれびが、丸太で組んだ男性のいるベンチ前を温かく照らしていました。 ご夫婦の愛情の証でしょうか!?

<’13 12月16日の当ブログより再掲載>


 


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