箕面の森の小さなできごと&四季の風景 *みのおハイキングガイド 

明治の森・箕面国定公園の散策日誌から
みのおの山々を歩き始めて三千余回、季節の小さな風景を綴ってます 頑爺<肇&K>

<綾とボンの絆>

2016-01-26 | *みのおの森の小さな物語(創作短編)

 

箕面の森の小さな物語

          (創作ものがたり  NO-10)

 

 

 

 <綾とボンの絆>

 

 

箕面山麓の坊島(ぼうのしま)に住む88歳になる綾さんが、1月の寒い朝、

自宅でボヤ騒ぎを起こした。

愛犬のボンが激しく吼えてなければ近所の人も気づかず、全焼するところ

だった。

 

それで綾さんは視力も体力も衰え、もう一人で生活する事が難しくなったので、

市や福祉の担当者に勧められ、森の中の老人ホームへ入る事になった。

 

綾さんの夫 雄一郎はすでに他界し、子供もなく、近い親族もいないので、

住んでいた自宅は後見人の弁護士から依頼された業者が

買い取っていた。

綾さんが一番気がかりだった老犬ボンは、その業者が 

  「大切に面倒みますから・・・それに、たまにホームに連れて

   行きますから・・・」  

とのことで、やっと自宅を手放す事に同意した経緯があった。

  しかし、業者はその後 家屋の解体のさい面倒になり、箕面の山にボンを

連れて行き放置してしまった。

 

ボンは16年前、まだ元気だった雄一郎が山歩きの帰り道、清水谷園地に

立ち寄ったとき、その東屋に置かれていたダンボールの中で クンクン と

泣いていた捨て犬だった。

  「あんまり可愛くて、可哀想だったから連れてきたよ・・・」 

と嬉しそうに綾に見せたが、綾はその黒いブチの子犬が可愛いとは思えず、

正直困ったな~ と思っていた。

子供を育てた事もないので、躾なども不安だった。

  しかし、部屋の中を元気にはしゃぐ姿を見ていると、戻すわけにも行かず、

それに足元にじゃれつき嬉しそうに遊ぶ子犬に、だんだんと情が移り、

やがてもう離れられない大切な存在へと代わっていった。

 

名前は雄一郎が ボン と名づけた。

雑種で、ちょっとボンクラなところがあり、それを親しみをこめて名づけた

ものだった。

ボンはよくヘマをするので、雄一郎はよく 「コラ このボンクラめ!」 と

頭をコツンとする・・・ すると、その都度 ボンがおどけた顔と仕草をして

二人を笑わせた。

 

やがて雄一郎は、自分の山歩きに、ボンを連れて出かけるようになった。

ボンも一緒に山を歩ける日がくると、尻尾を大きく振りながら喜んだ。

それから10数年、雄一郎とボンは毎週のように、一緒に箕面の山々を

歩いてきた。

 

ところがある日のこと、歩きなれた東海自然歩道の最勝ケ峰の付近で、

雄一郎が突然発作を起こして倒れた。

その時 ボンは、人気のない山道を人を探して走り回り、その姿を察知した

ハイカーが気づいて雄一郎にたどり着いたのだ。

 しかし救急隊が山を登り駆けつけたとき、もう二度と戻らない体となっていた

けれど、ボンは最後まで雄一郎のそばを離れなかった。

  雄一郎の死を信じられないボンは、綾に何度も山へ行きたい仕草をしたり、

コツン としてもらいたいのか? わざとヘマをしたり、おどけたりして涙を

誘った。

 

毎日のように催促するボンをつれ、綾は何度か近くの散歩に出かけて

いたが、ある日 いつになく強く引っ張るボンを止めようとして転倒し、

動けなくなった。

 足を骨折した綾は、それ以降 ボンと外へ出歩くこともできなくなり、

一日中一緒に家の中で過ごす事が多くなった。

  毎日 独り言で昔話をする綾の話しを、ボンは玄関口の座布団の上に

寝ながら、いつまでも聞き耳を立てていた。

そして ときどき ウー ウー と、綾に返事をしてくれるかのように声を

発するので、綾もボンと話すことを毎日の生きがいに過ごしていた。

 

季節は春になり、暑い夏がすぎると秋になり、そしてまた厳しい冬がきた。

 綾とボンの毎日は、ゆっくり ゆっくり と時が刻まれていった。

そして お互いに老体を支えあって生きていた。

 それが一変したのが、一ヶ月前のボヤ騒ぎだ。

目が見辛くなっていた綾が、牛乳を鍋に入れ火にかけたとき、鍋に

張り付いていた紙片に火が燃え移り、危うく大火事になるところだった。

ボンが激しく吼えて危険を知らせてくれたので、隣家の人が気づき、間一髪

惨事にならず済み、綾もボンも無事だった。

 

あれからすぐに福祉の人に付き添われ、森の中の老人ホームに入った

ものの、綾は離れ離れになったボンのことが心残りでならなかった。

唯一、寒い日の時のためにと編んで着せていたボンの背あての一つを

持ってきたので、綾はいつもそれをさわってはボンを想っていた。

 

  「いつか犬を連れて行ってあげますから・・・」 

と、あの業者は言っていたのに・・・

思い余って綾は後見人を通し、あの業者に問い合わせしてもらったら・・・

  「どこかへ逃げていってしもうた・・・」

との返事だった・・・ と。

  ガックリと肩を落とした綾は、その日から生きる望みを失い、食もノドを

通らなくなり、日毎 身も心も急激に衰えていった。

思い出すのは愛犬ボンのことばかり・・・

子供を失った母親のごとく、綾は放心状態だった。

 

見かねた施設の介護士が、時折り綾を車椅子にのせ、近くの森へ散歩に

出かけていた。 

小雪の降るような寒い日でも、散歩に出る日の綾は、少し表情が穏やかに

るので、介護士もマフラー、手袋、帽子にひざ掛けなど、いつもより温かく

して出かけた。

散歩に出ると綾は、いつもキョロキョロと森を見て、何かを探すような

仕草をしていた。

 

ボンが山の中に捨てられたのはこれで二度目だ。

生まれて間もない頃、雄一郎に拾われなければ、ボンの命はすぐに

終わっていたかもしれない・・・ その後の生涯を、温かい家族の中で

過ごしてきた。  そして16年を経、老体となった今、再び・・・

  「じゃまや!」 と、心ないあの業者によって森の中へ捨てられた。

 

ボンが業者の車から下ろされ、リードをはずされたのは、五月山林道沿い

だった。

ボンは雄一郎と共に、箕面の山の中を毎週のように歩いたので、地理はよく

分かっていた。 

ボンはリードを外されたことに これ幸い! とばかり雄一郎を探して

森を走り続けた。

 

猟師谷から三国岳、箕面山から唐人戻岩へ下り、風呂ケ谷から

こもれびの森、才ケ原池から三ッ石山、医王谷と下りながら、何日も何日も

探し続けた。 谷川で水を飲み、ハイカーが食べ残したもので飢えをしのぎ

ながら・・・ 

 

ボンはどんどんやせ細り、もう余命いくばくのなかった。

 やがて疲れ果て、谷道から里の薬師寺前に下り、大宮寺池の横から家路に

ついた・・・ のだが?  

    懐かしい家がなくなっている?

すでに家屋は全て解体され、何一つ無い更地になっていた。

ボンが毎日飲んでいた水受けが一つ、庭跡に転がっていた・・・

家族の匂いがする・・・ 綾さんの匂いがする・・・  ワンワン ワンワン

 

ボンは我に返ったかのように、ついこの間まで共に過ごしていた綾さんを

探し始めた。  

    どこへいったんだろう?  どこにいるんだろう?

    ワンワン ワンワン  

ボンは必死に叫び続けた・・・

ボンは再び箕面の山々から里を歩き、綾さんを探し続けた・・・

しかし 綾さんの姿はなく、ボンの体力ももう限界にきていた。

 

そして 小雪舞い散る寒い日の夕暮れ・・・ 奇跡が起こった。

 この日も里道をフラフラになりながら探し続けていたボンが・・・ 

    うん?

と、耳を立て鼻をピクピクさせた。

 あの懐かしい綾さんの匂いがする・・・

 

少し先に、綾さん車椅子で散歩に連れて行ってもらったときの片方の

手袋が落ちていた。

 

 懐かしい綾さんの匂いがする・・・ 

    どこにいるの?  ワンワン  ワンワン

ボンは嬉しくなり、思いっきり声の限りに叫んだが、その叫び声は

強い木枯らしにかき消されていった。

    この近くに綾さんがいるに違いない・・・ 

ボンは気持ちを奮い立たせ、必死になって探し始めた。  

やがて大きな建物の前に出た。 

綾さんに似た老人達がいることを察知したボンは、外から必死にその姿を

追ったが見つからなかった。

やがて疲れ果て、建物が見える山裾に倒れるようにして体を横たえた。

 

夜も更け、今夜も眠れぬ綾は、ベットの脇の窓から見えづらくなった目で

ボンヤリと外を眺めていた・・・ 「今夜は満月のようね・・・」

もう食もほとんどノドを通らず、気力、体力共に無くなっていた。

その時だった・・・ 

             ワン !

 

遠くで一言だけど、犬のなく声が聞こえた・・・ ような気がした。

 「あれは? ひっとしてボンの声かしら?  きっとそうだわ

  きっとボンに違いないわ・・・」

 

綾はそれまで一人では起き上がれなくなっていたベットから、自力で窓辺に

立ち、やっとの思いで外の小さなベランダにでた。

 

ボンはいつも自分を励まし、雄一郎や綾さんを探すために、寝ながらも

無意識のうちに一言だけ  ワン !  と発していたのだが・・・

 

目の前の建物のベランダに、満月の明かりに照らされて一人の老人が

立ち上がったことにボンは耳をそば立てた。

綾はかすれたノドを振り絞るように、か細い声で叫んだ・・・

 

 「ボンちゃ~ん  ボン ボン ボンちゃ~ん・・・」

 

小さな叫び声が、北風にのってボンの耳に届いた。

 

   綾さんだ!

   ワンワン  ワン ワン  ワンワン

 

 「やっぱりボンちゃんだわ  ボンちゃ~ん  ボンちゃ~ん

  どこにいるの  どこに?  

  あのあたりね・・・ 近くだわ  

  嬉しいわ  そこにいてくれるのね  ありがとう  ありがとうね

  元気そうだわ 嬉しい  

  うれしい  よかったわ  

  ボンちゃ~ん  ありがとう・・・」

 

谷間を挟んで、綾とボンはお互いに声の限りに叫び続けた。

 

 「今夜はようノラ犬が鳴くな~」 と、施設の当直が話していた。

 

綾とボンは、心通わせつつ温かい幸せの世界に浸っていた。

やがてその声も叫びも、いつしか小さくなり、途切れとぎれになっていった。

 

森の夜がしらじらと明けてきた頃・・・

ベランダの下で、小さな編み物を手に永遠の眠りについた綾さんを、

職員が発見した。

そして向かいの山裾では、ボンもまた片方の手袋を口にくわえたまま

死んでいた。

 

やがて箕面の森に明るい朝陽がさしこんできた。

その輝く光の上を、綾とボンは仲良く並びつつ、天国で待つ雄一郎の

元へと登っていった。

 

 

(完)

 

 


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<二つの硬貨> (1)

2016-01-15 | *みのおの森の小さな物語(創作短編)

みのおの森の小さな物語 

           (創作ものがたり) NO-14

 

 

 

<二つの硬貨> (1)

 

 

 

箕面北部に広がる八天の森には静かに粉雪が舞っていた。

時折り冷たい北風が軽い雪を吹き上げている・・・

柏木 和平は、頬についたそんな雪を払いながら空を見上げた。

 

 積もるような雪じゃないな~ それにしても鳥は元気だな!

 

上空を飛び交う冬鳥を目で追いながら、気持ちのいい風景を

楽しんでいた。

 

やがてリュックサックの中から、ポットに残っていた温かいコーヒーを

飲み干した。  モカのまろやかな香りが漂う・・・ 

真冬の森を歩くときは、いつもポットに入れたコーヒーが身も心も

暖め癒してくれる。

 

  さあ~ そろそろ出発せねば日が暮れるまでに帰れないぞ・・・

 

和平は一人呟きながら一休みの腰を上げた。

時計は午後の三時になろうとしていた。

ここから東海自然歩道を南下し、自然8号路から旧巡礼道、谷山の

尾根、谷を上り下りし、才ケ原の森を抜けて地獄谷を下れば箕面瀧道に

下る・・・ 

    あと2時間半はかかるな~ 

と和平は心づもりをしていた。

 

和平の山歩きは定年後に始めたものだが、最近は週に2~3回ほど

体調を見ながら箕面の山々を歩き、森の散策を楽しみとしている。

箕面の山々は高くとも300~600m位の低山ばかりだが、

冬山の日暮れは早く、谷間では5時前になると足元が暗くて見えなくなり

危険なのだ・・・ 

    少し急がねば・・・

 和平がリュックを背に歩き始めたときだった。

遠くのほうから声が聞こえた・・・?

 

   ~あのう~ すんません!

 

   えっ! どこからだ?

和平がキョロキョロしながら声の方向を探すと、上方の墓地の先から

若者が大声を挙げながら下ってくる姿が見えた。

 

   何? 誰れ? なぜこんな所に人が・・・?

 

和平は一瞬驚き身構えた。

 

この八天の森周辺の山々約30万坪は箕面、茨木、豊能郡にまたがり、

その山の斜面を切り開いて約25.000柱の墓石が並ぶ

大阪府下最大の山岳霊園「北摂霊園」が広がっている。

 

和平はこの日、鉢伏山・明ケ田尾山(619.9m)から高山の村落を通り、

この森へ上ってきたのだが、この粉雪舞う寒い森や霊園に参拝の人影はなく、

まだ誰一人ハイカーとて出会っていなかった。

それだけに人がいること事体が驚きだった。

 

 やがて息は弾ませながら若者が一人駆け下りてきて頭をペコンと下げた。

見れば手ぶらで学生服を着ているが、いかにもだらしない不良っぽい

格好をしている。 

ズボンはずり落ちそうで、足元はスリッパのようなズック靴を引っ掛けた

だけ・・・ ベルトには何やらクサリなどをジャラジャラつけて寒そうな

仕草をしている。

 和平は逃げ出したいような違和感を感じたが、よく見ればまだ子供の

ような顔をしている。

    なぜ一人でこんな所に・・・?

 

  「あの~ すんまへん! オレ 財布落としてしもうたみたいで

   バス代貸してもらえまへんか?」

 

不良っぽい格好と、その慇懃無礼なものの言い方に、和平は一瞬 

嫌悪感と拒否感を覚えた。

そしてそれは同時に嫌な体験を瞬時に思い出させていた。

 

 

それは和平がまだ若いサラリーマン時代のことだ。

ある日 車で営業中、信号で止まった時に助手席をたたく人がいた。

何事か? と窓を開くと、中年の男の人が・・・ 

 

  「すいません! 天王寺の方へ行きたいんですがお金を落としてしまい

   途中まででいいのでちょっと乗せてもらえませんか・・・」

 

和平が躊躇していると、前の信号が青に変わりそうだったので

仕方なくドアを開いて乗せた。 

 すると・・・

   「自分は和歌山の大きなみかん農家で農園も経営していて、所用で

  大阪に出てきたものの、どこかでスリにやられたようで一文無し

  なってしもうた・・・ けど 急いで和歌山まで帰らないかんので、

  電車賃も貸してもらえまへんか?  帰ったらすぐ速達で送りますし、

  うちのみかん美味いと評判なんで、このお礼に毎年送らせて

  もらいまさかいな」

 

そう言いながら自分の住所、名前、電話番号を書いたメモをくれた。

和平は仕方なくなけなしの3000円と名刺を男に渡し、遠回りだったが

男を天王寺駅まで送り届けた。

 和平はその頃、妻から小遣い3000円をもらい、これで一週間の昼食などを

賄っていた。 

しかし、何日待っても男から速達は届かなかったので電話を入れたら

全くのでたらめ電話だった。

 

それから数ヶ月後、新聞に寸借サギ常習犯が捕まった記事をみて

 あっ! と驚いた・・・ あの時の男だった。

一週間昼食抜きの恨みもあって、あれから注意をしてきたのだが、

それでもそれから何年か後にはマルチ商法にひっかかったり、

海外出張の時にニューヨークで子供サギにあい、パリではジプシーに

危うくだまされ、身ぐるみ剥がされそうになったりして、自分はほとほと

騙されやすい人間なんだと自嘲したものだ。

そしてそれは和平の大きなトラウマにもなっていたのだった。

 

 「君は何年生?」            「中2」

 「どうやってここまで来たの?     「バス」

 「どこから?」              「せんちゅう」

 「どこで財布落としたの?」      「分からん」

 「何しにここへ来たの?」       「墓参り」

 

和平が矢次ぎばやにいろいろ質問するので若者は少しウンザリした

様子だったが、しかし必死さだけは伝わってきた。

和平は自分のトラウマごとを思い出しながらも

    まあいいか~

 ポケットを探った。

 

 「来るときバス代はいくらかかった?」  「680円」

 「じゃあ 680円でいいのかい?」    「ハイ!」

 「家に帰ったら送りますんで・・・」  と少年は付け加えた。

 

    いつもそう言われて騙されるんだよな・・・ 

と、和平は心の中で呟きながら財布を取り出した。

小銭入れの中にはいつも予備の小銭500円玉を2枚入れているので

それを取り出して若者に手渡した。

 

  「もし財布落としたんなら警察に届けるんだぞ ひょっとしてバスの中

  だったら千里中央のバス発券場で係りの人に聞いてみたらいいよ」

 「ハイ! 助かったわ・・・ これで帰れるわ! 歩いて帰ろう思たん

  やけど道分からんし、寒うて雪降ってくるさかいどないしょ思てたん 

  すんまへん・・・」

 

口ぶりは大人ぶって突っ張っている口調だがやはりまだ少年だった。

 

 「ほんで この借りた金はどこへ送ったらいいっすか?」

  「いいよ 君にあげるよ・・・」

 「オレ 乞食じゃないっす」 

 

と、少しムッとする顔が可笑しかった。

どうやら少年の自尊心を傷つけてしまったようだ。

 

 「そうか それはすまなかったね」

 

かと言って住所を教える事はいまどき危ないし・・・

 

 「それはそうとバスの便はあるのかな?」

 

和平は話をそのままに、少年と近くのバス停に時刻表を見に行った。

 次のバスまで30分以上あった。

和平は自分の時間のほうが気になっていた・・・ 冬の日暮れは早い。

 

  「そうだ! おじさんいつでもいいからこのバス停の後ろの大きな

   杉の木の下にお金埋めて置いてくれたらいいよ。 半年先でも

   一年先でもいいから、次にお墓参りに来たときでいいから・・・

   おじさんは山歩きを趣味にしていてよくここを通るから・・・

   だからここで返してもらう事でどうかな・・・?」

 「分かった・・・ でもおじさんこれから歩いて帰るんやったらオレを

  下まで連れててや・・・」

  「そんなスリッパみたいな靴で山道は歩けないよ。 それにそんな

   寒い格好では無理だよ。 それよりそのお金でバスで帰りなさい」

 「ハイ」

  「千里中央から家までどうするの?」

 「歩いて帰れるんで・・・」

 

和平は自分の時間のほうが気になり急いでリュックを担いだ。

  「じゃあ おじさん行くから 気をつけてね・・・」

歩きかけたその後ろから・・・

 

   ハックション  ハックション!

 

若者は2回大きなクシャミを連発した・・・ 見れば半分震えている。

 

和平は最近年のせいか冬になると指先の感覚がなくなるので

両手の手袋にいつもミニホッカイロを入れていた。

 

  「寒そうだからこれあげるよ」

 

和平は手袋からホッカイロを二つ取り出すと両手に握らせた。

 

 「あったかいわ! ありがと!」 

 

そう言いながら若者はズボンのポケットに両手を突っ込んだ。

そして和平は残っていたアメ玉2個を少年に手渡し、山道を急いだ。

 

 

 

(2) へ続く・・・

 

 

 


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<二つの硬貨> (2)

2016-01-15 | *みのおの森の小さな物語(創作短編)

みのおの森の小さな物語 

              (創作ものがたり)  NO-14

 

 

<二つの硬貨> (2)

 

 

あれから1年が経った・・・

和平はすっかり忘れていたけれど、今日久しぶりに同じコースを辿り

同じ場所で一休みをしている時にふっと思い出したのだ。

あの日と同じように寒い日だ。

冷たい風が森の木々を揺らしている・・・

 

和平は 「まさかな~」 と苦笑しながらもバス停の後ろの杉の木に

周ってみた。

冬枯れの森の中に真紅なヤブ椿の花が咲いている。

 

目で探してみても、やはりそれらしき物を埋めている気配はない・・・

指で枯葉を掻き分けてみたけれど何もない・・・

   「やっぱりな~」

こんな事をして探している自分がピエロに思えた。

期待もしていなかったのでそうガッカリもしなかったけど

何となく空しい気持ちになった。

 

  ボクの人生で騙されたのはこれで何回目になるのかな・・・?

 

和平は苦笑しながらももう一度木の周りを見回し山道へ戻ろうと

した時だった・・・

 雲の間から太陽が顔をだし一筋の明るい木漏れ陽が森の中に

差し込んできた。 

そして何かビニールの端のようなものがキラリと光った。

   どうせゴミだろう・・・な?

そうと思いつつ つまんでみたけれど、先が土に埋まっているようで

取れない。

和平はもう一度ピエロの気分で土を掻き分けながら、ゆっくりと

ビニールを取り出した。

 

よく見ると中に紙切れが入っている・・・ 

   「何かな?」

やっとのおもいで取り出してみる・・・ 

ボールペンの文字が湿気に滲み読みづらいが、何とか一つ一つ文字が

読めそうだ・・・

 誤字、脱字だらけの汚い文字が並んでいた。

そしてそこには真心と誠意のこもった文面が綴られていた。

 

 

  「名も知らない しんせつなおじさんへ

 

   オレは2週間前におじさんから 金 借りたもんです

   カゼひいてもて寝てたんで返すのがおそくなりすんません

   今日は学校が早く終わったんでもってきました

   (次のバスまでじかんあるんでノートに書いときます)

 

   あれからバスにのって千中について おじさんにいわれたとおり

  バスの切ぷうりばへ聞きにいったら バスの中に落としてたらしく

  オレのさいふありました  よかったです  よの中にはしんせつな人が

  いるんやなと思った   おじさんもそうですが・・・

 

   オレはあの日 どうしても会いたくなって気がついたらカバンを

  教室においたまま学校をぬけだしてなんにももたずにバスに

  とびのってました 

  一時間かかって母さんの墓について思いっきり泣いてました

 

  オレ 悪いことばっかして母さんこまらせたり 泣かせてばかり

  やってきたから あやまりたかったんやけど・・・

  それにすっごくさみしなってしもうて・・・

  一人で泣きつかれて そんでもう帰ろうかと思うたらサイフなかった

  んです

   だいぶ探したんやけど分からんし それにどこ見ても人が

  一人もおらへんし それに寒うてさむうて  それならもう母さんとこで

  死んでもええか と思うてました

  そしたら遠くにおじさんみつけて 大声でさけんで助けてもろて

  ほんまよかったです

   あれ最終のバスでした  あれから雪がごっつふってきて・・・

  ホッカイロ ごっつあったこうて アメなめてたら生きかえった感じで

  ほんま おじさん ありがとう  です

  あそこでおじさんに会ってなかったらと思うたら ゾー です

 

  家に帰ったら先生が心配してきてて 父さんにもだいぶ怒られたけど 

  先生帰ってから父さんに今日のこと言うたらとつぜんハグしてくれて 

  それで母さんのことで二人で大泣きして それで二人のわだかまり

  みたいなもんが消えました

 

  オレ 来月 父さんの転きんにあわせて転校せなあかんので

  しばらく母さんとこへこれへんので少しかなしいけど

  しかし さっき母さんの墓にちかってきました

  オレ これから人に親せつして まじめな生きかたするから~ て

   おじさん ほんま ほんまにありがとう  です

 

                    00中学2年  丸00真一    」

                                         」

 

和平は小さな約束を守ってくれた少年のたどたどしい感動の手紙を

涙で読み終え、天を仰いだ・・・

箕面の森の上空を、一羽のトンビがゆっくりと旋回している・・・

 

ビニール袋の底には、2枚の500円硬貨が光っていた。

 

 

(完)

 

 

 

<物語の参考資料>

          ‘15-1月 撮る

 

箕面・八天の森 バス停

   

 

北摂霊園

   

 

箕面の森に隣接する能勢・高山の村落

      

  

高山から明ヶ田尾山、鉢伏山への登山口

   

 

     写真をクリックすると拡大へ) 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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初雪の自然3号路

2016-01-15 | 箕面・冬のハイキングガイド

 

‘16-1-13  

 

 

箕面ビジターセンターから天上ヶ岳へ向かう途中、

自然3号路で急に強い風とともにあられが降り始めた。

 

         

 

  

 

          

 

 

 

今年 箕面の森で見る初雪か!?  アラレ・・・

 

 

         

  (箕面川ダム湖から)

 

 

森の温度は1℃   やっと冬らしくなってきたようだ。

 


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外院里山から 初春の光り 

2016-01-12 | 箕面・冬のハイキングガイド

 

‘16-1-9  

 

 

森の温度は6℃とは言え、初春の光りが差し込み温かい・・・

 

   * 帝釈寺--外院の里--旧参道--勝尾寺道--ウツギ谷

 

 

粟生外院(あおげいん)の帝釈寺へ参拝

      

 

 

外院(げいん)の里から

         

           

 

 

            

 

 

 

 

旧参道から

         

 

      

 

 

 

 

 

     

    

  

 

 

 

 

 

ウツギ谷へ

         

 

 

         

 

 

  

 

森のアート

 

 

 

 

 

明るい春の光りが差し込み気持ちのいい森の散策だった。

 

 

 


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箕面の森 初歩き!

2016-01-04 | 箕面・冬のハイキングガイド

 

‘ 2016 元旦

新年明けましておめでとうございます

 (箕面・教学の森 わくわく展望所から)

 

 

 

 

 

‘16-1-2  

 

箕面新春ハイキング 箕面大瀧へ

 

 

今年初の箕面の森の散策です。

新鮮な森の空気を胸いっぱいに吸い込みながら

ゆっくりノンビリのハイキングです。

 

 * 箕面川沿い--箕面駅前(11時半~)--西江寺--聖天の森

    --才ヶ原池--才ヶ原林道からこもれびの森--雲隣の森--

    杉の茶屋前--箕面大瀧--瀧道--瀧安寺--箕面駅前(~3時)

 

 

桜井の箕面川沿いから新稲を経て箕面駅前へ

    

 

           

         

 

         

  (今年初のホンドリスを見る)

 

 

箕面駅前から西江寺に参拝後、裏山から聖天の森・展望所へ

 (北の谷間に瀧安寺を遠望)

 

         

 

 

 

           

 

 

   

 

 

 

              

 

 

才ヶ原林道に入り 才ヶ原池で一休み

      

 

  

 

         

 

 

才ヶ原林道からこもれびの森へ

            

 

 

          

 

 

 

再び林道に戻り雲隣の森・展望所へ

 (今日はどこも春霞か? 視界がきかない)

         

 

 

 

雲隣の森を下り杉の茶屋前へ

         

 

 

 

一目千本口から 箕面大瀧 へ

         

 

 

         

 

 

 

         

(森の茶店も賑わっている)

 

 

瀧道を下り 瀧安寺に参拝後 箕面駅前へ

          

 

 

         

                      

 

 

今年は暖かいお正月です。

身も心も温かくなります。

 

今年も一年 宜しくお願いいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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