ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

城戸賞、応募

2009-08-31 10:17:49 | シナリオ
何とか書き終わり応募しました!

え?初稿ですけど何か?

リライトと言うものを知らないのかって?

何、それ?

と言う感じでまさに突貫工事です・・・。

まぁ、間に合っただけ良しとしましょう。

個人的には面白い作品になったと思います。

次は万葉ラブストーリーシネマプロットコンペティションに応募したいと思います。

って、締め切りヤバ!!

俺たちに明日はないッス

2009-08-28 15:27:58 | 映画(あ行)
2008年・日本・スローラーナー
監督:タナダユキ
公式HP



このポスターを見てのイメージと映画本編は全く異なるものだった。
劇中でも流れるロマンポルノを間違えて借りてしまったのではないかと
心配になるほどだった。

「百万円と苦虫女」が素晴らしかったので、タナダユキ監督の新作は楽しみに
していたが、この作品が発表された時、あまりの公開の早さと公開規模の小ささ
に少し胡散臭さを感じていた。
予告編にさほど惹かれなかったこともあってか、「また今度にしよう」と思っているうちに
劇場公開が終わってしまっていた。



「俺たちに明日はないッス」などと心にも思ったことない人間が評価を下すのもどうかと思うが、
やはり予告編を見たときの胡散臭さは本編を見ても消えなかった。
この鑑賞後の感覚は山下敦弘監督の「松ヶ根乱射事件」と似ている。
そして、「松ヶ根乱射事件」の前に公開された同じく山下敦弘監督の「天然コケッコー」がある。
この「天然コケッコー」と「松ヶ根乱射事件」の関係は
「百万円と苦虫女」と「俺たちに明日はないッス」の関係に非常に近い。
青春の光と闇を描いているとまとめると少し強引かもしれないが、
同じ年に全く正反対の映画を撮ってしまう監督としてのバランスのとり方が気になる。
そういえば、「松ヶ根乱射事件」の脚本は「俺たちに明日はないッス」と同じ向井康介だ。
海辺の小屋での風に揺れる木のドアなどタナダ監督の演出には唸らされたので、
ただ向井氏の脚本が好みでないだけなのかもしれない。
そして、一部ではタナダ監督が山下監督を意識していたのも事実だろう。
暴力描写や性描写が即物的すぎて、わざわざ映画で見たくない。
楽しさや悲しさといった感情が何もないように見えて、気持ち悪い。
手持ちカメラでの撮影は美しさはないが、この映画の雰囲気にはとてもマッチしていた。
ちなみに、主題歌もかなり胡散臭い。



役者たちは皆、好演していた。
柄本時生は親の力だけで微妙な役者だ、などと思っていたが、少し見直した。
安藤サクラはいつも通り怖いが、彼女と遠藤雄弥のエピソードは一番優れていたように思う。
上映時間が短い分だけ「松ヶ根乱射事件」よりも見やすい。

〈60点〉

スラムドッグ$ミリオネア(2回目)

2009-08-24 11:18:59 | 映画(さ行)
2008年・イギリス・Slumdog Millionaire
監督:ダニー・ボイル
(IMDb:8.5 Metacritic:86 Rotten:94)
公式HP

遅ればせながら、アカデミー賞作品賞ノミネート作をすべて見たので順番にレビューしていきたい。

第1位「スラムドッグ$ミリオネア」


素晴らしい!!
余計なことを言いたくないほど素晴らしい。

この気持ちは2回目を見てさらに高まった。
前回はほとんど感想と言うほどの感想を書いていなかったので、
少しは書き進めたいと思っていた。
しかし、2回目を見てもまだ余計なことを書きたくない気がして
そのままほったらかしになっていた。
5回ほど見れば、感想は完成するかもしれない。
だから、根気良く書き進めていこうと思う。



まず、挙げるべき素晴らしい点は映像と音楽の融合である。
インドのエキゾチックな音楽と都市的な「クイズ・ミリオネア」の音楽が
手持ちカメラを多用した細かく激しい撮影と融合し、
力強い映像を生み出している。
エンディングにミュージカルシーン置かれていることからも分かるように
基本的にはMTV感覚である。
ダニー・ボイル監督の作品は以前からその傾向が顕著で、
ゾンビ映画である「28日後…」ですら当てはまる。
だが、MTV感覚と簡単には言えても、実際に映画として成立させるのは非常に難しい。
ある意味で映画監督に対して映画が仕掛けてくる“罠”なのだ。
引っ掛かると、ただ映像がやかましいだけで内容のない空虚な映画が出来上がる。
そして、今までにもこのタイプの映画は量産されてきた。
トニー・スコットの「ドミノ」などがわかりやすいかもしれない。
しかし、「スラムドッグ$ミリオネア」はこの罠には引っ掛からなかった。
その理由はこの作品のテーマとなっている。愛であり、運命だ。



「スラムドッグ$ミリオネア」をシナリオコンクールに出したとしよう。
審査員たちは判断に困るはずだ。
なぜなら、自分たちがシナリオ本で書いてきたルールがことごとく破られているからだ。
展開が完全にいわゆるご都合主義なのだ。
そして、そのご都合主義がたった一言だけで説明されてしまう。

『運命だった』

そして、その運命を導くのがラティカへの愛、ただそれだけなのだ。
主人公ジャマールの行動の理由はすべて愛であり、感情の理由もすべて愛だ。
とてもシンプルでわかりやすい。
ジャマールの愛の結果が二人の運命として昇華される。
後にも先にもこの作品だけであろう唯一無二の素晴らしい落し所だ。



このストーリーであったからこそダニー・ボイルのMTV感覚も成り立ったのだ。
映像が複雑な上にストーリーも複雑では観客は耐えれない。
そこで、ストーリーを誰にでも分かるように『愛と運命』でまとめてしまう。
すると、ストーリーと映像が不思議と相互に支えあい、強調し合う。
演出も素晴らしすぎるが、ダニー・ボイルの脚本を見る目も素晴らしい。

この映画の演出が素晴らしいことは映画のどこを切り取ってもわかるので、
細かく「ここが良い」などというのは野暮だろう。
特筆しておきたいのは、ラティカがライフラインのテレフォンに出るところだ。
ラティカの声にジャマールと初めて出会ったシーンの映像が重なる。
二人の“運命”を1つの画面で表現しきっていて、素晴らしさに鳥肌が立った。

今、言いたいことはただ一つ『もう一度見たい!』

〈90点〉
   ↑点数がさらに上がりそうです。

ブーリン家の姉妹

2009-08-24 10:24:21 | 映画(は行)
2008年・イギリス/アメリカ・The Other Boleyn Girl
監督:ジャスティン・チャドウィック
(IMDb:6.8 Metacritic:50 Rotten:41)
公式HP



歴史映画はあまり好きではない。
それは日本の歴史であっても、外国の歴史であっても一緒だ。
結局の所、下世話な話であるのに、やたらと重々しく描いていたりするのに
違和感と見難さを感じている。
登場人物の複雑さとストーリーの単調さも気になる。
だが、この作品のスタンスはまるっきり逆だ。
下世話な話をとても軽く描いている。
まるで昼ドラの総集編を見ているかのような速い展開と分かりやすさには
シェイクスピア的な重厚さよりもはるかに好感が持てた。

この軽さを助長するのが、美しいが映画とは到底、思えないデジタル撮影や
この手の映画には珍しいビスタ・サイズの画面だ。
しかし、この昼ドラ感覚が作品の雰囲気に良く合っており、
無理してフィルム撮影のシネスコにするよりかは賢明な判断だったと思う。
美術、衣装などは美しく、豪奢で安っぽさが全くないのは良い。



ストーリーはまさに昼ドラで、対象層を絞りすぎた所にこの映画の限界はあるが、
30代過ぎの女性なら間違いなく、大いに楽しめるだろうと思う。
そして、それで十分なのだろう。

ナタリー・ポートマン演じるアンとスカーレット・ヨハンソン演じるメアリーが
対照的に描き分けられており、観客が必ずどちらかには感情移入できるように
作られているのも上手い。
どちらに感情移入するかでちょっとした性格判断すらできそうだ。

〈70点〉

1408号室

2009-08-15 14:05:07 | 映画(数字・アルファベット)
2007年・アメリカ・1408
監督:ミカエル・ハフストローム
(IMDb:6.9 Metacritic:64 Rotten:78)
公式HP

評判が良かったので、劇場で見逃したことを後悔していたが、
実際、蓋を開けてみると、いつものスティーブン・キング作品以外の何者でもなかった。



後半の有り得なさが何とか許容できるのは最初の30分でしつこすぎるぐらいに
現実味が積み重ねられているからだろう。
少し1408号室に着くまでが長すぎる気も見ている間はしていたが、
このセットアップがなければ、部屋に入ってからのの怖さは生まれなかっただろう。
1408号室には行ってからのしばらくは結構怖い。
サミュエル・ジャクソンがいつもながらの胡散臭さを醸し出していたのもここでの不安感につながる。
ハリウッド製ホラーにありがちなビクッとさせられる怖さはラジオが突然鳴り出すばかりで物足りないが、
向かいのビルに映る人影の怖さなどJホラー的な怖さは存分に楽しめる。
トイレット・ペーパーが折りたたまれるのも面白い。
その分、流血などのバイオレンス描写は皆無だ。
最近のホラー映画にしては珍しい。



問題は(評判のなぜか良い)隣の部屋に行こうとして窓がなくなる所からだろう。
余りにも有り得なさ過ぎる。
特にロング・ショットで窓がないことを見せたのは良くない。
誰の視点なんだ。
見る者が主人公と共に恐怖に立ち向かうというよりも、
主人公が恐怖によってどのような反応をするのかを
外から見るという視点が用いられているため恐怖が半減した。

また、中盤からお得意の家族ドラマが出てくるのも今ひとつだ。
サイン会のシーンで読めたのは深読みのし過ぎか。

最後のインパクトのあまりないオチは個人的に好きだった。

〈60点〉

谷村美月~この女優が気になる(1)

2009-08-13 15:02:42 | 映画人


生年月日 : 1990・6・18
血液型 : O型
出身地 : 大阪府
サイズ : T158 B76 W56 H78 S24
趣 味 : ダンス
特 技 : 水泳、肩もみ

プロフィール
谷村美月 ここです。

谷村美月が気になりだしたのはどの作品からだろうか。
出演暦を見て驚いた。最近、出てきたばかりなのだ。
ここ数年で凄い量の仕事をこなしている。
どうりで、どの作品なのか分からないわけだ。
ずいぶんと昔から知っているような気もする。
だが、2005年の「カナリア」が映画初出演だ。
なのに、勝手ながら昔から知っているような妙な親しみを感じている。
例えるなら、小さい時に一度だけ家に来たことがある親戚のようだ。

ずばぬけて可愛いわけでもなく
(芸能人としてであって、近所にいたら可愛すぎるが)
かといって、綺麗だと表現するのも間違っている。
だが、恐ろしく雰囲気が良いのだ。
そして、画面映えしている。
彼女が出てくるだけで、作品はずっと引き締まり、魅力的になる。
どんな駄作でも彼女が出ているシーンだけは必ず光る。

老若男女に受け入れられ、大女優になるのは間違いないと確信している。



出演した映画のリストを見る。微妙だ。
どうも駄作が多いようだ。
そして、その中でのオアシスにしかなりきれていないものが多い。
才能と素質を完全に活かしきれていないのだ。
「笑う大天使」はどこに出てたのかもスッと思い出せないほどだ。
映画自体の内容も思い出せないが
「東京ゾンビ」も映画自体がひどかった。

転機は「かぞくのひけつ」だろう。
ネイティブの大阪弁のセリフで演じたこともあって、見事だ。
明るい雰囲気に大阪弁が良く似合う。
「神様のパズル」では今までの谷村美月だとは思えない大人な演技を見せ付けた。
そして、「死にぞこないの青」「おろち」で、恐怖の対象となる難しい役柄にも挑戦する。
イメージが下がるから、なんていうふざけた言葉は存在しないようだ。



数々のテレビドラマにもゲスト出演、チョイ役を含め、出演する。
月9「太陽と海の教室」
(内容や視聴率はともかく、自分がキャスティングしたのではないかと思ってしまうほど、
ツボを押さえたキャスティングに驚かされたドラマだった)にも出演。
谷村美月演じる澤水羽菜がフィーチャーされた回は傑出していたように思う。

「メイちゃんの執事」も興味が全くないのに谷村美月が見たいがために見続けた。
出ない回はすっ飛ばした。
演技ができない出演者陣の中で唯一、演技をしていた。
演技が上手かったのではない。ただ演技をしていたのだ。
自然にそこにいるという演技だ。
マンガのドラマ化、派手なセット、中身のないストーリー、
そんな中に自然にいた。これは凄い。

やはり、谷村美月を活かしきれるような場が欲しい。
「MW-ムウ- 第0章 〜悪魔のゲーム〜」では駄目だ。
もっと素晴らしい場を与えてあげて欲しい。
そうすれば、きっと彼女は今までにない大爆発を起こすだろう。
その時が楽しみだ!

(映画)
カナリア(2005年)ヒロイン・新名由希役
東京ゾンビ(2005年)ユカリン役
笑う大天使(2006年)沈丁花娘役
時をかける少女(2006年)声の出演・藤谷果穂役
海と夕陽と彼女の涙 ストロベリーフィールズ(2006年)上田マキ役
ユビサキから世界を(2006年)主演・リンネ役
red letters(2006年)掛橋の娘役
銀河鉄道の夜 I carry a ticket of eternity(2006年)主演・ジョバンニ役
かぞくのひけつ(2006年)桜井典子役
酒井家のしあわせ(2006年)筒井秋役
檸檬のころ(2007年)主演・白田恵役
恋路物語 -each little thing-(2007年)主演・沢崎ミキ役
魍魎の匣(2007年)楠本頼子役
茶々 天涯の貴妃(2007年)千姫役
リアル鬼ごっこ(2008年)ヒロイン・佐藤愛役
神様のパズル(2008年)ヒロイン・穂瑞沙羅華役
死にぞこないの青(2008年)ヒロイン・アオ役
おろち(2008年)主演・おろち役
コドモのコドモ(2008年)持田秋美役
海の上の君は、いつも笑顔。(2009年)主演・成瀬汀役
おと・な・り(2009年)
蟹工船(2009年)
サマーウォーズ(2009年)声の出演・池沢佳主馬役
ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜(2009年)声の出演・美穂役
十三人の刺客(2010年)

(ドラマ)
まんてん(2002年 - 2003年、NHK)甚六先生の娘、穂積美海役
ほんとにあった怖い話 夏の特別篇2004 ひとりぼっちの少女(2004年、フジテレビ)三田村美雪役
ほんとにあった怖い話(セカンドシーズン) 窓にうつる少女(2004年、フジテレビ)主演・森山ともみ役
11通の…出せなかったラブレター 第10通 カミヒコウキ(2005年、ABCテレビ)主演・飯田早紀役
祖国(2005年、WOWOW)小野寺江梨役
生物彗星WoO(2006年、NHK)主演・神代アイ役
マチベン 第5・6話(2006年、NHK)ゲスト出演・深川友香役
14才の母 愛するために 生まれてきた(2006年、日本テレビ)柳沢真由那役
ひとりぼっちの君へ a gift for every one(2007年、毎日放送)主演・高原さくら役
彼女との正しい遊び方(2007年、テレビ朝日)西園寺静香役
トリハダ〜夜ふかしのあなたにゾクッとする話を(2007年、フジテレビ)主演
わたしたちの教科書(2007年、フジテレビ)仁科朋美役
勉強していたい! 第2・3話(2007年、NHK)杉原友美恵役
長い長い殺人(2007年、WOWOW)三室直美役
初恋net.com〜忘れられない恋のうた〜 episode.3 陽に向かう(2007年、ABCテレビ)ポニ子役
一瞬の風になれ(2008年、フジテレビ)鳥沢圭子役
トリハダ3〜夜ふかしのあなたにゾクッとする話を(2008年、フジテレビ)主演
パンドラ(2008年、WOWOW)水野愛美役
太陽と海の教室(2008年、フジテレビ)澤水羽菜役
キャットストリート(2008年、NHK)主演・青山恵都役
藤子・F・不二雄のパラレル・スペース 征地球論(2008年、WOWOW)主演
トリハダ4〜夜ふかしのあなたにゾクッとする話を(2008年、フジテレビ)主演
必殺仕事人2009(2009年、テレビ朝日)如月役
メイちゃんの執事(2009年、フジテレビ)山田多美役
ケータイ捜査官7 第45話(2009年、テレビ東京)清水美穂役
トリハダ5〜夜ふかしのあなたにゾクッとする話を(2009年、フジテレビ)主演
ホームレス中学生2(2009年、フジテレビ)奥寺奈央役
イケ麺そば屋探偵〜いいんだぜ!〜 エピソード7(2009年、日本テレビ)ミルク役
子育てプレイ 第12話(2009年、毎日放送)ゲスト出演
MW-ムウ- 第0章 〜悪魔のゲーム〜(2009年、日本テレビ)ヒロイン・ゆかり役
誰かが嘘をついている(仮)(2009年、フジテレビ)佐藤由香役
さよならが言えなくて〜子供たちに迫るドラッグの誘惑、夜回り先生の苦悩〜(2009年、テレビ朝日)少女役

リダクテッド 真実の価値

2009-08-10 17:37:22 | 映画(や・ら・わ行)
2007年・アメリカ/カナダ・Redacted
監督:ブライアン・デ・パルマ
(IMDb:6.1 Metacritic:52 Rotten:42)
公式HP



これは何なのか!?

映画のようであるが、映画らしくない。
教育ビデオのようでもあるが、そうでもない。
ドキュメンタリーのようでもあるが、そうでもない。



デ・パルマがこのような映画を撮ったことは驚きだ。
今までの彼の映画の路線とは真反対だともいえる。
ヌーヴェル・ヴァーグの映画みたいなのだ。
そして、ベネチア映画祭で銀獅子賞を受賞。
デ・パルマが?
やはり、ヌーヴェル・ヴァーグなのか。

今までのような分かりやすいケレン味を封印し、ドキュメンタリー・タッチで描く。
だが、そのドキュメンタリー・タッチ自体がまた新たなケレン味になっている。
やはり、デ・パルマだ。



日本での公開はかなり遅れたが、アメリカでも遅かった。
そして、ヒットしなかった。大して評判にもならなかった。
当然だろう。
ヒットするわけがない。
ただでさえ、イラク関係はヒットしない。
「告発のとき」「大いなる陰謀」・・・
これらの傑作が興行的にも批評的にもリダクテッドされてきた。
映画としての完成度に劣るこの作品が注目を浴びるはずがない。
だが、そんなことはわかっていたのではないか。
それでも、デ・パルマは訴えたかったのだ。

戦争反対!

この作品が作られたことの意義は大きい。
だが、単体の映画として見た時の魅力不足は否めない。
「訴えたいことがあるなら、プラカードを持って街頭に立てばよい」
まさにこの言葉が当てはまる。
映画はイラクの検問所で誤射された人間の数を発表する場ではないのだ。



ニュース映像やネット上の映像、チャット映像などを組み合わせるというアイデアは
POV映像という枠に収まりきらず、見事だ。
だが、多少の変化はつくものの、それでも全体的に淡々としすぎている。
検問所の退屈さを表したいのはわかるが、それ以外のシーンでも長すぎると思うところが多かった。
椅子に仕掛けられた爆弾が爆発するシーンのようなシーンがもう一箇所あれば、
もう少し緊張感が持続したのかもしれない。
そして、最後の写真はあざとすぎる。

やはり、デ・パルマが大好きなだけに、あのデ・パルマタッチが見れないのには
少し物足りなさというか、寂しさを感じた。

〈60点〉

伊参、一次を通過!

2009-08-08 18:14:28 | シナリオ
「伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2009」の1次審査を通過しました。
応募した中編の部は198本から115本となりました。
とにかく1次を通過できて良かったです。安心しました。

つまり、まともに読める脚本にはなっていたということですよねぇ?

過去と現在を行ったり来たり、回想になったり、回想から現在の話が始まったり
ややこしい作品なのですが、それでも理解できたということですよねぇ!?

なんか東京弁になってる!!

(落ち着いて、1次で興奮しすぎ)

ここからは質の高さ、面白さなどによって間引かれていくのでしょう。
2次審査で50作程度、3次審査で10作程度、そして最終審査となっていくそうです。
まだまだ道のりは長い。

けど、欲は言いません!
誰かしらが読んでくれて、通してくれたんですから!!

初めてのシナリオ・・・書いて良かったです!


スクリーム(1989)

2009-08-08 09:05:41 | 映画(さ行)
1989年・アメリカ・Tales from the Crypt
監督:ウォルター・ヒル、ロバート・ゼメキス、リチャード・ドナー

「スクリーム」とは言ってもあのムンクの叫びが襲ってくる映画ではありません。
アメリカでカルト的な人気を誇るテレビシリーズ「Tales from the Crypt」の
劇場版で、テレビ版の中から有名監督3人による作品を抜粋してオムニバス形式にした作品。
その3人というのがウォルター・ヒル、ロバート・ゼメキス、リチャード・ドナーです。
豪華!
プロデューサーも監督3人のほかにデヴィッド・ガイラー、ジョエル・シルヴァーと
後にダーク・キャッスルに関わる布陣なのも魅力的だ。

DVDかもされていないこの作品をどこで手に入れたのか。
それはなんと英語の先生から・・・
「I love horror movies!」
「Really? Do you know "Tales from the Crypt"」
「No!!」
「No? My mother bought that video long time ago. So,I lend you」
「Oh,Thank you!!」
ってな感じで借りました。

監督たちは豪華なのですが、やはりテレビ・サイズの作品に仕上がっていて
期待の大きさもあってか、全体的にやや平凡な印象を受けた。

1、電気イスは私の恋人 The Man Who Was Death(IMDb:7.2)
監督:ウォルター・ヒル

殺人の快楽に溺れた死刑執行人がクビになった後も罪人に対して死刑を繰り返し、
自分自身が死刑になってしまうという話。

すっきりとまとまりすぎている。
まとまりすぎて、再現VTRのような印象を受けた。
「アンビリーバボー」などで紹介される海外の実話みたいだった。
邦題が素晴らしい。

2、殺人ゲームはサンタと共に And All Through the House(IMDb:7.8)
監督:ロバート・ゼメキス

サンタに扮した殺人鬼が襲い掛かってくる正統派スラッシャー。

やはりゼメキス監督はこういうホラー映画が元来、好きらしい。
スピルバーグ・ファミリーらしい暖かなセットの中で惨劇が起こるというのは
自分が作ってきた楽しい映画へのアンチテーゼなのか。
監督が立ち上げたホラー映画専門レーベル「ダークキャッスル」の作品は
「ダークキャッスル」特集をしようかと思うほど、どれも好きなので、
ぜひとも、ゼメキス監督自身にも(CG映画はもういいので・・・)
この作品のような正統派なホラー映画を作ってもらいたい。

三作の中では一番、面白かった。
一作目と同じく邦題が素晴らしい。

3、9回死んだ男 Dig That Cat...He's Real Gone(IMDb:7.6)
監督:リチャード・ドナー

9回生き返ることができる男が回数を間違え、自滅するという教訓話。

この作品はあまり好きになれない。
脚本の単調さに画作りの安っぽさが加わり、ただゴチャゴチャしているだけで、
「世にも奇妙な物語」で2時間の中に必ず一本はあるくだらない作品のようだった。
監督のまじめさがこの企画に適さなかったのだろう。

〈60点〉

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

2009-08-04 13:38:44 | 映画(は行)
2004年・アメリカ・Harry Potter and the Goblet of Fire
監督:デヴィット・イェーツ(IMDb:7.4 Metacritic:71 Rotten:77)

夏休み特別企画の第1弾として「ハリー・ポッター」シリーズを網羅したい。
第2次ハリー・ポッター革命が起こったシリーズ第5弾。



シリーズ中、最もバランスの悪い映画だ。
はっきり言って、この作品は観客のことをわかっていない。

まず、原作好きの観客には物足りないだろう。
原作の長さはシリーズの中でもトップクラスだ。
しかし、この映画版は最も短い138分となっている。
そして、大半を占めるであろう原作未読者には展開が速すぎてわからない。
いろいろな登場人物が休みなく現れては消え、
その上、、ストーリーが省略されている割には、
妙なところで特殊な設定が出てきたりして混乱を誘う。

映画化する際の定番の脚色方法はストーリーの枝葉を切ることだろう。
だが、この作品はその切られた枝葉が積み重なってできているようだ。
原作の省略というよりは原作の無視である。



では、つまらないのか。いや、おもしろい。
ただ単にみんなが楽しめる映画から映画好きのための映画へと
路線変更してしまっただけなのだ。
脚本の細部など気にする暇もないほど演出が面白い。
突然現れた登場人物が誰かなのか気にする必要はない
どうだっていいのだ。
この映画が要求する観客は実験映画を見る観客なのだ。
つまり、『画面』の面白さである。



アンブリッジ先生の規則をウィーズリー兄弟が花火で破壊する面白さ、
それが分からなければこの作品は楽しめない。
このシーンのように原作の面白さを離れたところで映画の面白さが爆発する。
原作好きも今までの映画版好きも突き放してしまうのだ。
ファンタジーとしての楽しさはもう捨てられてしまった。
だが、これは必然であったといえる。
映画版「ハリー・ポッター」から映画「ハリー・ポッター」へと
移行するための過程がこの作品なのだ。
新たなハリー・ポッターを映画らしく築き上げようという挑戦が始まっているのだ。
そして、この革命が次の「謎のプリンス」で実を結ぶ。

もうすでに子どものための映画ではない。

〈75点〉