ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

リダクテッド 真実の価値

2009-08-10 17:37:22 | 映画(や・ら・わ行)
2007年・アメリカ/カナダ・Redacted
監督:ブライアン・デ・パルマ
(IMDb:6.1 Metacritic:52 Rotten:42)
公式HP



これは何なのか!?

映画のようであるが、映画らしくない。
教育ビデオのようでもあるが、そうでもない。
ドキュメンタリーのようでもあるが、そうでもない。



デ・パルマがこのような映画を撮ったことは驚きだ。
今までの彼の映画の路線とは真反対だともいえる。
ヌーヴェル・ヴァーグの映画みたいなのだ。
そして、ベネチア映画祭で銀獅子賞を受賞。
デ・パルマが?
やはり、ヌーヴェル・ヴァーグなのか。

今までのような分かりやすいケレン味を封印し、ドキュメンタリー・タッチで描く。
だが、そのドキュメンタリー・タッチ自体がまた新たなケレン味になっている。
やはり、デ・パルマだ。



日本での公開はかなり遅れたが、アメリカでも遅かった。
そして、ヒットしなかった。大して評判にもならなかった。
当然だろう。
ヒットするわけがない。
ただでさえ、イラク関係はヒットしない。
「告発のとき」「大いなる陰謀」・・・
これらの傑作が興行的にも批評的にもリダクテッドされてきた。
映画としての完成度に劣るこの作品が注目を浴びるはずがない。
だが、そんなことはわかっていたのではないか。
それでも、デ・パルマは訴えたかったのだ。

戦争反対!

この作品が作られたことの意義は大きい。
だが、単体の映画として見た時の魅力不足は否めない。
「訴えたいことがあるなら、プラカードを持って街頭に立てばよい」
まさにこの言葉が当てはまる。
映画はイラクの検問所で誤射された人間の数を発表する場ではないのだ。



ニュース映像やネット上の映像、チャット映像などを組み合わせるというアイデアは
POV映像という枠に収まりきらず、見事だ。
だが、多少の変化はつくものの、それでも全体的に淡々としすぎている。
検問所の退屈さを表したいのはわかるが、それ以外のシーンでも長すぎると思うところが多かった。
椅子に仕掛けられた爆弾が爆発するシーンのようなシーンがもう一箇所あれば、
もう少し緊張感が持続したのかもしれない。
そして、最後の写真はあざとすぎる。

やはり、デ・パルマが大好きなだけに、あのデ・パルマタッチが見れないのには
少し物足りなさというか、寂しさを感じた。

〈60点〉