ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

俺たちに明日はないッス

2009-08-28 15:27:58 | 映画(あ行)
2008年・日本・スローラーナー
監督:タナダユキ
公式HP



このポスターを見てのイメージと映画本編は全く異なるものだった。
劇中でも流れるロマンポルノを間違えて借りてしまったのではないかと
心配になるほどだった。

「百万円と苦虫女」が素晴らしかったので、タナダユキ監督の新作は楽しみに
していたが、この作品が発表された時、あまりの公開の早さと公開規模の小ささ
に少し胡散臭さを感じていた。
予告編にさほど惹かれなかったこともあってか、「また今度にしよう」と思っているうちに
劇場公開が終わってしまっていた。



「俺たちに明日はないッス」などと心にも思ったことない人間が評価を下すのもどうかと思うが、
やはり予告編を見たときの胡散臭さは本編を見ても消えなかった。
この鑑賞後の感覚は山下敦弘監督の「松ヶ根乱射事件」と似ている。
そして、「松ヶ根乱射事件」の前に公開された同じく山下敦弘監督の「天然コケッコー」がある。
この「天然コケッコー」と「松ヶ根乱射事件」の関係は
「百万円と苦虫女」と「俺たちに明日はないッス」の関係に非常に近い。
青春の光と闇を描いているとまとめると少し強引かもしれないが、
同じ年に全く正反対の映画を撮ってしまう監督としてのバランスのとり方が気になる。
そういえば、「松ヶ根乱射事件」の脚本は「俺たちに明日はないッス」と同じ向井康介だ。
海辺の小屋での風に揺れる木のドアなどタナダ監督の演出には唸らされたので、
ただ向井氏の脚本が好みでないだけなのかもしれない。
そして、一部ではタナダ監督が山下監督を意識していたのも事実だろう。
暴力描写や性描写が即物的すぎて、わざわざ映画で見たくない。
楽しさや悲しさといった感情が何もないように見えて、気持ち悪い。
手持ちカメラでの撮影は美しさはないが、この映画の雰囲気にはとてもマッチしていた。
ちなみに、主題歌もかなり胡散臭い。



役者たちは皆、好演していた。
柄本時生は親の力だけで微妙な役者だ、などと思っていたが、少し見直した。
安藤サクラはいつも通り怖いが、彼女と遠藤雄弥のエピソードは一番優れていたように思う。
上映時間が短い分だけ「松ヶ根乱射事件」よりも見やすい。

〈60点〉