2010年・アメリカ・Alice in Wonderland
監督:ティム・バートン
(IMDb:6.8 Metacritic:53 Rotten:51)
ティム・バートンとジョニー・デップの7度目のコラボ。
またかよ、と思いつつも、発表された圧倒的なヴィジュアルを見ると、
やはり期待せざるおえなかった。
紛れもなくティム・バートン。どこをどう切り取ってもティム・バートン。
やはり、この世界観は好きだ。
だが、公開されて出てきた評判はあまり良くなかった。
あまりにも高まりすぎた期待を下げるべく、少し時期を置いてから見に行った。
この作戦が功を奏したのか。
傑作とは言わないまでも、見ている間は十分に楽しめる良作であったように思う。
もちろん、例のごとく、わざわざ2Dで鑑賞。これも正解。
ティム・バートンがこれまでに、そして、今も一貫して作り上げているのは
世の中からはみ出す変人・奇人たちの世界である。
いくら予算が増えようとも、そのスタンスは変わらず、この作品においても出てくるのは変人ばかり。
アンダーランドではない現実の世界においても出てくる人々は皆、変だ。
変人たちの世界を生み出そうとする作家には他にもテリー・ギリアムなどたくさんいるが、
ティム・バートンはその中でも異彩を放つ。
興行的にも成功しているのだ。
「アリス・イン・ワンダーランド」が世界的に大ヒットしているのは
ティム・バートンファンにとってはうれしくもあり、悲しいことであるかもしれない。
ジョニー・デップがその引き金になっているのは間違いないが、
監督自身の一般的な認知度はますます上がっている。
ティム・バートンが世界的に通用するヒットメーカーになれたのは
近年の彼の作品のストーリーの単純さにあるように思う。
ヴィジュアルや設定といった画面を彩るものがいかに変であろうとも
バートン作品のストーリーや構成は非常に単純であり、古典的なファンタジーに通じるものが多く、
ヴィジュアルだけでは一瞬引いてしまう人たちにも、親しみやすい。
そのような人たちは呼び込むきっかけにジョニー・デップは一役買っているのだ。
「アリス」においても単純な「行って、成長して、帰ってくる」というファンタジーの典型が用いられている。
近年の作品にこの傾向は色濃く見られ、ストーリーの単純化と同時に、
ヴィジュアルがただ変なだけで、下品ではなくなってきていることも
」ビートルジュース」や「バットマン」など昔の作品が好きなファンにとっては辛いところだ。
このようなヴィジュアル先行の作品では俳優がおざなりになりやすいが、
ジョニー・デップはいつもながらのコスプレ演技で楽しませてくれる上、
監督の妻がキャリア最高の怪演を見せたりするので不満はない。
また、いつもながら、ダニー・エルフマンの音楽が良い。
アヴリル・ラヴィーンのテーマ曲も上手く合っている。
ただ、この作品が映画ファンにとって、ティム・バートンの最後の輝きになりそうな気がして怖い。
もしかしたら、「チャーリーとチョコレート工場」だったのではないかという不安もある。
デイズニーが駄目だったから、出たのに、またディズニーに戻ったら駄目だ。
ティム・バートンの良さはディズニーをはじめとする美しいファンタジーへの反骨から
来ているのに、その毒がどんどんと薄くなっているように思う。
ファンが見たいものとバートン自身がやりたいものとの乖離がしだいに明確になってきている。
CGはやはり想像の余地がなく、味もないので、ティム・バートンには合わない。
CGばかりで、作品を見る前の印象が見た後の印象と変わらないのだ。
予告編やスチールでヴィジュアルを見たことあるなら、本編を見たも同然である。
仏作って魂入れず。
まだ“仏”が相当美しいだけに映画として成り立っているが、限界はあるし、
映画ファン以外にも見破られる時は近いだろう。
次回作は3DCGアニメ「フランケンウィニー」
そして、ジョニー・デップ主演の「ダーク・シャドウズ」
不安だ。
〈70点〉
監督:ティム・バートン
(IMDb:6.8 Metacritic:53 Rotten:51)
ティム・バートンとジョニー・デップの7度目のコラボ。
またかよ、と思いつつも、発表された圧倒的なヴィジュアルを見ると、
やはり期待せざるおえなかった。
紛れもなくティム・バートン。どこをどう切り取ってもティム・バートン。
やはり、この世界観は好きだ。
だが、公開されて出てきた評判はあまり良くなかった。
あまりにも高まりすぎた期待を下げるべく、少し時期を置いてから見に行った。
この作戦が功を奏したのか。
傑作とは言わないまでも、見ている間は十分に楽しめる良作であったように思う。
もちろん、例のごとく、わざわざ2Dで鑑賞。これも正解。
ティム・バートンがこれまでに、そして、今も一貫して作り上げているのは
世の中からはみ出す変人・奇人たちの世界である。
いくら予算が増えようとも、そのスタンスは変わらず、この作品においても出てくるのは変人ばかり。
アンダーランドではない現実の世界においても出てくる人々は皆、変だ。
変人たちの世界を生み出そうとする作家には他にもテリー・ギリアムなどたくさんいるが、
ティム・バートンはその中でも異彩を放つ。
興行的にも成功しているのだ。
「アリス・イン・ワンダーランド」が世界的に大ヒットしているのは
ティム・バートンファンにとってはうれしくもあり、悲しいことであるかもしれない。
ジョニー・デップがその引き金になっているのは間違いないが、
監督自身の一般的な認知度はますます上がっている。
ティム・バートンが世界的に通用するヒットメーカーになれたのは
近年の彼の作品のストーリーの単純さにあるように思う。
ヴィジュアルや設定といった画面を彩るものがいかに変であろうとも
バートン作品のストーリーや構成は非常に単純であり、古典的なファンタジーに通じるものが多く、
ヴィジュアルだけでは一瞬引いてしまう人たちにも、親しみやすい。
そのような人たちは呼び込むきっかけにジョニー・デップは一役買っているのだ。
「アリス」においても単純な「行って、成長して、帰ってくる」というファンタジーの典型が用いられている。
近年の作品にこの傾向は色濃く見られ、ストーリーの単純化と同時に、
ヴィジュアルがただ変なだけで、下品ではなくなってきていることも
」ビートルジュース」や「バットマン」など昔の作品が好きなファンにとっては辛いところだ。
このようなヴィジュアル先行の作品では俳優がおざなりになりやすいが、
ジョニー・デップはいつもながらのコスプレ演技で楽しませてくれる上、
監督の妻がキャリア最高の怪演を見せたりするので不満はない。
また、いつもながら、ダニー・エルフマンの音楽が良い。
アヴリル・ラヴィーンのテーマ曲も上手く合っている。
ただ、この作品が映画ファンにとって、ティム・バートンの最後の輝きになりそうな気がして怖い。
もしかしたら、「チャーリーとチョコレート工場」だったのではないかという不安もある。
デイズニーが駄目だったから、出たのに、またディズニーに戻ったら駄目だ。
ティム・バートンの良さはディズニーをはじめとする美しいファンタジーへの反骨から
来ているのに、その毒がどんどんと薄くなっているように思う。
ファンが見たいものとバートン自身がやりたいものとの乖離がしだいに明確になってきている。
CGはやはり想像の余地がなく、味もないので、ティム・バートンには合わない。
CGばかりで、作品を見る前の印象が見た後の印象と変わらないのだ。
予告編やスチールでヴィジュアルを見たことあるなら、本編を見たも同然である。
仏作って魂入れず。
まだ“仏”が相当美しいだけに映画として成り立っているが、限界はあるし、
映画ファン以外にも見破られる時は近いだろう。
次回作は3DCGアニメ「フランケンウィニー」
そして、ジョニー・デップ主演の「ダーク・シャドウズ」
不安だ。
〈70点〉