ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

アリス・イン・ワンダーランド

2010-05-19 18:24:45 | 映画(あ行)
2010年・アメリカ・Alice in Wonderland
監督:ティム・バートン
(IMDb:6.8 Metacritic:53 Rotten:51)



ティム・バートンとジョニー・デップの7度目のコラボ。
またかよ、と思いつつも、発表された圧倒的なヴィジュアルを見ると、
やはり期待せざるおえなかった。
紛れもなくティム・バートン。どこをどう切り取ってもティム・バートン。
やはり、この世界観は好きだ。
だが、公開されて出てきた評判はあまり良くなかった。
あまりにも高まりすぎた期待を下げるべく、少し時期を置いてから見に行った。
この作戦が功を奏したのか。
傑作とは言わないまでも、見ている間は十分に楽しめる良作であったように思う。
もちろん、例のごとく、わざわざ2Dで鑑賞。これも正解。

ティム・バートンがこれまでに、そして、今も一貫して作り上げているのは
世の中からはみ出す変人・奇人たちの世界である。
いくら予算が増えようとも、そのスタンスは変わらず、この作品においても出てくるのは変人ばかり。
アンダーランドではない現実の世界においても出てくる人々は皆、変だ。
変人たちの世界を生み出そうとする作家には他にもテリー・ギリアムなどたくさんいるが、
ティム・バートンはその中でも異彩を放つ。
興行的にも成功しているのだ。

「アリス・イン・ワンダーランド」が世界的に大ヒットしているのは
ティム・バートンファンにとってはうれしくもあり、悲しいことであるかもしれない。
ジョニー・デップがその引き金になっているのは間違いないが、
監督自身の一般的な認知度はますます上がっている。



ティム・バートンが世界的に通用するヒットメーカーになれたのは
近年の彼の作品のストーリーの単純さにあるように思う。
ヴィジュアルや設定といった画面を彩るものがいかに変であろうとも
バートン作品のストーリーや構成は非常に単純であり、古典的なファンタジーに通じるものが多く、
ヴィジュアルだけでは一瞬引いてしまう人たちにも、親しみやすい。
そのような人たちは呼び込むきっかけにジョニー・デップは一役買っているのだ。
「アリス」においても単純な「行って、成長して、帰ってくる」というファンタジーの典型が用いられている。
近年の作品にこの傾向は色濃く見られ、ストーリーの単純化と同時に、
ヴィジュアルがただ変なだけで、下品ではなくなってきていることも
」ビートルジュース」や「バットマン」など昔の作品が好きなファンにとっては辛いところだ。

このようなヴィジュアル先行の作品では俳優がおざなりになりやすいが、
ジョニー・デップはいつもながらのコスプレ演技で楽しませてくれる上、
監督の妻がキャリア最高の怪演を見せたりするので不満はない。

また、いつもながら、ダニー・エルフマンの音楽が良い。
アヴリル・ラヴィーンのテーマ曲も上手く合っている。



ただ、この作品が映画ファンにとって、ティム・バートンの最後の輝きになりそうな気がして怖い。
もしかしたら、「チャーリーとチョコレート工場」だったのではないかという不安もある。

デイズニーが駄目だったから、出たのに、またディズニーに戻ったら駄目だ。
ティム・バートンの良さはディズニーをはじめとする美しいファンタジーへの反骨から
来ているのに、その毒がどんどんと薄くなっているように思う。
ファンが見たいものとバートン自身がやりたいものとの乖離がしだいに明確になってきている。

CGはやはり想像の余地がなく、味もないので、ティム・バートンには合わない。
CGばかりで、作品を見る前の印象が見た後の印象と変わらないのだ。
予告編やスチールでヴィジュアルを見たことあるなら、本編を見たも同然である。

仏作って魂入れず。

まだ“仏”が相当美しいだけに映画として成り立っているが、限界はあるし、
映画ファン以外にも見破られる時は近いだろう。

次回作は3DCGアニメ「フランケンウィニー」
そして、ジョニー・デップ主演の「ダーク・シャドウズ」

不安だ。

〈70点〉

魔法遣いに大切なこと

2010-05-18 15:07:16 | 映画(ま行)
2008年・日本
監督:中原俊
公式HP

先日、「武士道シックスティーン」を見て、気になっていた
山下リオの主演作ということで、見てみた。



なんでもこの作品、城戸賞に応募された作品らしい。
映画化の前に漫画化、アニメ化がされており、そこでの人気を受けての
映画化ということだ。

この脚本は確かにマンガやアニメで人気を博して違和感のないもの。
一方で、映画化は難しい題材だといえる。
アニメなどでは簡単な魔法が当たり前の日本というファンタジー設定を
映画で表現することは非常に難しいことだし、お金もかかるからだ。

残念ながら、出来上がった作品は魔法遣いという設定の突飛さを
演出や画面の雰囲気でカバーすることができていない。
予算がないことも理由の一つだと思うが、もう少し工夫できたのではないか。
さながら2時間ドラマ、いや、山下リオが多く出演しているらしいBSiのドラマといったところで、
映画らしい画作りは冒頭と最後の北海道のシーンをのぞき、ほとんど見られない。
ロケーションも、もう少し面白い場所を見つけることができたと思う。
照明が明るすぎて、映像が薄っぺらくなっていることも不満だ。
細部を取り上げて見ても、クラブのシーンをはじめとしてエキストラに全く演技をつけれていないこと、
オンリーが非常に下手で、一部のシーンで音に全く奥行がないことなど、気になる箇所は多い。



映像的には不満が多いこの作品。
ストーリーはその突飛な設定もあって、突っ込みながら楽しめる程度のものにはなっている。
ただ、アイドル映画として、男なら山下リオ、女性なら岡田将生を見れれば、
それでこの映画の役目としては十分なのかもしれないが。
ソーラン節はアイドル映画らしいが見ているこっちが恥ずかしいだけなのでやめて欲しい。

この手の映画にありがちな失敗がCGがへたくそ過ぎることだが、
とても健闘しており、見れるものになっていたのには驚いた。
CGが実写から浮くどころか、実写がCGから浮いているように見えるほどであり、
何か珍しいものを見たような気になった。

設定の割にこじんまりとした会議室での訓練など、全く規模を感じない描写のせいで
少し飽きてくるが、永作博美、余貴美子、田中哲司といった意外と豪華な脇役陣が
上手く支えていることもあって、見られるものにはなっている。
どこをどう切り取っても、映画ではないのが不満だが、中原監督だけに
そつなくまとめてあり、DVDで気楽に見る分には悪くない。

〈60点〉



カールじいさんの空飛ぶ家

2010-05-16 14:33:16 | 映画(か行)
2009年・アメリカ・Up
監督:ピート・ドクター、ボブ・ピーターソン
(IMDb:8.5 Metacritic:88 Rotten:98)
公式HP

ピクサーがこれまで制作してきた作品群を見渡してみると、素晴らしいという言葉を押さえて、
思わず恐ろしいという言葉が口から出てしまう。
興行的にも批評的にも百発百中。

本当に恐ろしい。

そんな中でも最高傑作の呼び声が高いのがこの「Up」つまり「昇天」である。
5月に全米で公開されたときの高評価。大ヒット。

にもかかわらず、世界の末端に住む日本人はなんと12月までお預けを食らわされた。
大変ガッカリしたものだ。

この約半年のブランクは大きい、明らかに映画ファンの熱は冷めてしまったし、
僕ももう見た気になっていた、反してハードルは上がる一方だ。



実際、見てみると、そこまで大騒ぎするほどの作品なのかという疑問が常に付きまとってきた。
「レミーのおいしいレストラン」や「ウォーリー」よりも本当に「カールじいさん」の方が面白いのか。
いや、確かに作品としてのクォリティはさすがピクサーといったレベルの高さだが、
これぐらいでは“普通”ではないか。
今までの作品群の中から抜きん出て傑作では決してない。

評判の高い冒頭約10分間は噂どおりの素晴らしさだ。
恥ずかしながら、泣きそうになり、これから先、まともに見ることができるのだろうかと要らぬ心配をしてしまう。
が、これが本当に要らぬ心配だったのは残念だ。

カールじいさんの家が飛び立つ時のカタルシスの弱さにガッカリしたのをきっかけに
肩透かしな展開が続いた。



あっという間に目的地パラダイスフォールの目前まで到着してしまうのには本当に驚かされた。
大阪から東京への移動でもあんなにアッサリと描かれないだろう。

南米に到着してからの中盤が恐ろしく退屈だ。
大人も子供も楽しめるとはよく言うが、この作品は大人も子どももどちらも
楽しませようとした結果、どっちつかずになっているように見える。
序盤の大人向けなサイレント演出から打って変わって、急に子ども向きになるのがこの中盤だ。
カラフルな怪鳥ケヴィンとの出会い。
犬語翻訳機をつけた犬ダグとの出会い。
桃太郎的一本道に空のシーンでの開放感が懐かしくなる。
(これもある意味、演出だろうが)
そして、真打ちは魅力がなく、弱すぎる悪役。

そして、終盤、カールじいさんのドラマが動き出すとまた盛り上がりはじめる。
カールじいさんが過去を捨て、未来(ラッセル)を助けに行く。
空飛ぶ家を使ったアクションシーンは見事だ。
3Dの効果も上手く使っており、高所恐怖症の人なら、
アニメーションであるにもかかわらず、思わずすくみあがってしまうだろう。



全編を通して、3Dの効果は今までに見た3D映画の中でおそらく一番、効果的に使用されており、
飛び出す効果よりも奥行きの効果が重視されているのが、
空飛ぶ家という題材とマッチしている。
空という立体感のない広い空間に投げ出された立体感のある狭い家という対比が驚くほど
効果的に空飛ぶことの浮遊感を表現している。

しかし、眼鏡を使用する身にあのXpanDの重いゴーグルは正直キツイ。
視野の広さや色の豊かさなどを考えると、2Dで見直すのも面白いかもしれない。
その方がよりストーリーに集中できるだろう。

期待しすぎたのかもしれないが、それでもRottenTomatoesで98%の新鮮さとくれば、
期待しないほうが馬鹿だろう。
日本のディズニーにお願いしたい。

もっと早く公開してくれ!

〈70点〉

追記

(2回目の鑑賞)

本当はもっと素晴らしい作品だったのではないかという予感が
月に1回ぐらい襲ってきたので、DVDで見直した。

妙に高かったハードルもさがり、メガネ・オン・メガネの苦痛から開放されての
鑑賞だったためか、ずいぶんと作品自体の印象が違った。

ストーリーに集中できたことで、ストーリーが驚くほど見事なことにもようやく気づいた。
確かに中盤は弱点だと思うが、必然性を持っている。
映像の色彩もはるかに豊かで、美しく、CGの技術の発達に驚かされた。
映画館で堪能できなかったのは、とてももったいない事をしたな。

最後にもう一度、日本のディズニーにお願いしたい。

もっと早く公開してくれ!

〈80点〉



武士道シックスティーン

2010-05-16 14:19:37 | 映画(は行)
2010年・日本
監督:古厩智之
公式HP

世間的にはあまり話題になっていないが、映画関係のブログやサイトでは高評価のこの作品。
確かに良い作品ではあるが、この程度で騒いでいるようではいけない。
この感覚は「フラガール」の時と似ている。
年に数本の傑作というよりも、たまたま見たら、良かった佳作というのがピッタリだ。

良くも悪くも普通すぎて、物足りなさを感じるのだ。
もう少し頑張れば、傑作になったかもしれないだけに、少し厳しめに見ていきたい。



スポ根ものは日本のまさにお家芸と呼ぶべきジャンルだし、
古厩監督の最も得意とするところだ。
スポ根ものにほぼハズレはない。
良くて当たり前という印象すらあるほどで、同時にやりつくされた感がある。

今回のスポーツは剣道だ。
これが実に映画的ではない。
いや、映画的にしようとすると、嘘が出やすいスポーツだといえる。
例えば、主人公たちが勝つシーンでの相手が、スローモーションで
強調されているせいもあるが、棒立ちすぎるのは気になる。
このスローモーションが曲者で、確かに“試合がどうなったのか”というのは良くわかるのだが、
“早くて、よくわからなかったが何かすごいものを見た”というような剣道らしい迫力が
半減してしまっている。
また、視線が試合をする二人にだけ注がれるため、素人目にも下手なのがわかってしまうこと。
面のせいで、誰が誰か、わかりにくいのも厳しい。
シンクロのように下手でも頑張っただけすごいと思えるスポーツではないのだ。



この作品は王道のスポ根ものでありながら、このジャンルでは定番の恋愛要素はなく、
部活動以外の学校生活もほとんど語られない。
むしろ、この作品の軸は学校よりも家にあり、教室よりも剣道場にあるのだ。
非常に珍しく、これだけで目新しい。
しかし、これには弱点があるように思う。
メインとなるストーリーはとても力強く、魅力的なのだが、
恋愛要素などのサブ・プロットが少なく、起伏に乏しいため、
中盤、いわゆる第二幕で、ストーリーが中だるみしているのだ。
中盤のサブ・プロットが弱いために、ストーリーがいつまでも
停滞しているように感じられた。
ここで、家族の物語をもう少ししっかりと描くべきではなかったか。
この家族の物語がほとんどセリフだけで処理されているのはもったいないし、
もう少し、感情的なシーンを用意しても良かったのではないか。

ストーリーがベタなのは嫌いではない。むしろ、好きだ。
ただ、演出がベタすぎるのはこの監督の長所であり、短所でもあるように感じた。
ケーキバイキングのくだりなど笑わせるところの演出がベタすぎて完全に読める。
撮影や編集にも、もう少し、遊び心があってもいいような気が個人的にはした。



主演の二人、成海璃子と北乃きいの演技が素晴らしかった。
二人とも過去最高の演技なのではないか。
それぞれの対照的なキャラクター、剣道に対する姿勢を
二人が持つ元々のキャラクターを上手く反映させながら、
演じていたのは見事だと思った。
この手の映画の脇役は下手なのが定番だが、
周りを固める山下リオらも主演の二人に引っ張られ、
それぞれの役割を的確に演じていた。

終盤の巌流島の決戦からの展開はスピーディかつ的確で、
鳥肌さえ立つほどのものだっただけに、
全体的に惜しさ感じる作品だった。
そういえば、「奈緒子」もこんな感じだった。

〈70点〉

マン・オン・ワイヤー

2010-05-11 11:50:46 | 映画(ま行)
2008年・イギリス・Man on Wire
監督: ジェームズ・マーシュ
(IMDb:8.0 Metacritic:89 Rotten:100)



今はなき、ワールドトレードセンターのツインタワーの間を綱渡りした男、フィリップ・プティのドキュメンタリー。
確かにフィリップ・プティが成し遂げたことは素晴らしいし、素直に凄い。
歴史上でたった一人。しかも、もう再現することが不可能となった稀有の挑戦だったのだ。
史上最も美しい犯罪といわれているのも納得だ。
WTC以前に行っているパリのノートルダム大聖堂とオーストラリアのハーバー・ブリッジの綱渡りも十分凄い。

だが、この作品自体はあまり好きになれない。
この作品が世界各国で絶賛を浴びていることは確かで、上記の通り、
映画サイトでは支持率が全て80%以上と非常に高い評価を得ている。
もちろん、アカデミー賞の最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したことも言うまでもない。
しかし、この作品は本当に映画として面白いのか。

僕はドキュメンタリーについてあまり詳しくはない。数もほとんど見ていない。
好きなのはマイケル・ムーア。
ドキュメンタリーの専門家が聞いたら、お前なんかにこの作品の素晴らしさがわかってたまるかと、
怒り出しそうな状況だ。
僕が不勉強なだけかもしれないが、この作品はドキュメンタリーとしてどこが優れているのか、わからない。



この作品はまるで映画のメイキング映像のようだ。
WTCに進入するまでの様子が映像で再現されているのだが、
どうせなら完全に劇映画として、作った方が面白かったのではないかと思った。
そして、この劇映画のメイキングとして存在するのがこの「マン・オン・ワイヤー」で
あるかのような様相で、一本の作品として成り立たせるには物足りないような気がした。
インタビューばかりで飽きてくる上、そのほとんどが自慢話なのでしだいにうんざりしてくる。
どうしてもインタビューを受けているフィリップをはじめとした仲間たちを
好きになれなかったことも作品の評価に結びついている。
フィリップの喋りには凄さと同時に胡散臭さも感じていた。
なので、彼が綱渡り以外にも数多くのスリや盗みなどの犯罪を繰り返していたことを知り、
ガッカリすると共に、やっぱりなと妙に納得してしまった。
他にも練習は撮影しているのに、なぜ本番は記録しておらず、写真しか残っていないのか。
911につい全く触れられていない事などに違和感を感じた。
総合的に世界仰天ニュースの域を出ていなかったのは、期待していただけに残念だった。

〈60点〉

タイタンの戦い

2010-05-08 12:16:53 | 映画(た行)
2010年・アメリカ・Clash of the Titans
監督:ルイ・レテリエ
(IMDb:6.0 Metacritic:39 Rotten:30)
公式HP



3Dカメラで撮影されるされる予定が予算の関係で、2Dカメラになったらしい。
そして、ポストプロダクションで、2Dから3Dへと変換する技術が採用された。
だが、この3D版の評判があまりにも悪く、フェイク3Dなどと呼ばれているらしいし、
2Dで撮られたものはやはり本来の姿で見るべきだと思い、2D版を鑑賞した。
3Dらしい立体感があまりないことが不評の原因らしいが、
明らかに2D向けな速い編集も3Dの効果を減退させているのだろう。
しかし、これほどまでに3D映画にピッタリな題材もないのではと思えるほど、
「タイタンの戦い」はアトラクション的で、その効果を上手く出せなかったのは
もったいない。



見ている間、ずっとワクワクしていた。
これは男にしかわからない感覚なのかもしれない。
レテリエ監督によるとこれはアニメの感覚らしいが
それよりもゲームをしている時の高揚感に似ている気がする。
「ドラゴンクエスト」や「ファイナル・ファンタジー」のような
次は何が出てくるのかという楽しさだ。
無駄に派手な音楽がまた冒険心を掻き立てる。

はっきり言ってストーリーは「ドラゴンクエスト」よりも薄い。
進んで、敵を倒して、進んで、敵を倒して、がこれは本当に映画なのかと
疑いたくなるぐらいに繰り返される。
スコーピオンとの戦いとメデューサとの戦いは驚くほど仲間が死んでいく上、
主人公が神の力を出し渋り、あまり強くないので、
緊張感が上手く継続されている。
ただ、最終的に主人公があれほどまでに拒んでいた神の剣をあっさりと使ってしまうのはどうかと思った。
また、途中で仲間になるいかにも“旅の仲間”風なジンや
定番ながら最後に意外なところで活躍する2人組みなども楽しい。
ストーリーの整合性や伏線の扱い方などは考えずに素直に映像を楽しむのが、一番の得策だろう。
最後のクラーケン戦は大迫力で、2Dでも3Dに見えそうなほど。
家のテレビで見てもストーリーの甘さが目に付くばかりだと思うので、
音も映像も十分な映画館のスクリーンで見るべきだ。



ギリシャ神話について詳しくないのだが、神様たちのやりたい放題過ぎる設定に驚いた。
ギリシャの神にレイプ魔が含まれていたとは。
やはり地球上の出来事というよりは、別世界でのファンタジーだと考えるべきか。
ゼウスやハデスの登場の仕方が“いかにも”なのはかっこいいが、
それ以外の神様たちは除け者状態で、全く目立たない。

出演者はほとんど記憶には残らず。
主人公を演じるサム・ワーシントンはセリフがあまりなく、役柄が面白くないこともあるが、
演技力は微妙で、存在感も薄い。

続編の製作が決定したそうなので、小さく期待しておきたい

〈70点〉

アドレナリン:ハイ・ボルテージ

2010-05-07 21:07:20 | 映画(あ行)
2009年・アメリカ・Crank: High Voltage
監督:マーク・ネヴェルダイン/ブライアン・テイラー
(IMDb:6.4 Metacritic:41 Rotten:62)
公式HP



前作はテンポが良い割りになぜか間延びしてしまっているところがあって不満だったが、
今回はずいぶんと解消され、最初から最後までまさにノンストップだといえるのではないか。
ただ、やっていることは基本的に同じだし、演出がやかましすぎて、次第に飽きてくるところも同じだった。

前作からの完全な続きになっているので、前作も見るべきだとは思うが、
人物関係がわかっていた方が映像に集中しやすいことを除いては、
基本的にストーリーにストーリーの欠片も見当たらないので、問題ないのかもしれない。
前作ではあやふやな設定の中国の毒とやらを入れられていたが、
ラストの落下の衝撃で毒は消え去ってらしく、なぜか直っている。
そして、今度は持ち前の強靭な心臓を抜かれ、人工の心臓を入れられる。
人工の心臓を動かすためには電気が必要で、あらゆる手段を使って充電するのだが、
まさにマンガだ。どうすればこんな馬鹿なことを思いつくのか。
一周まわって天才とはまさにこのことだ。



アクションのほとんどはジェイソン・ステイサムが棒立ちのまま、銃を撃ちまくれば、
勝手に敵が死にまくるスタイルで、それ以外にも次々と敵が家から外へ吹っ飛んでくるだけ
といった斬新なものが多く、あまり盛り上がらない。
むしろ、いかにお金をかけずに上手く激しいアクションを見せれるかに苦心しているようだ。

やはり「シューテム・アップ」がコメディ要素の強いアクション映画だったのに対し、
「アドレナリン」シリーズはアクション要素の強いコメディ映画だと見るべきだ。
R15からR18へと進化(?)しただけあって、エログロ共にネタの下品さは前作をはるかに上回っていた。
前作の病院で脅された医者の末路や救急車の患者などの死を扱ったネタから
乳首を切り落とすといった全く笑えないネタまで、ギャグの域が馬鹿を通り越して
危険な域にまで達し始めているように思えた。
発電所での特撮パロディは笑えるどころか、まるで「大日本人」のラストのように恥ずかしさだけが残った。
エイミー・スマートとの絡みは想像以上にすごい事になっており、
次回作ではいったいどうなるのか心配だ。



メイキングを見てもわかるように、全編デジタルカメラ。
しかも、家庭用の運動会を撮るようなカメラで撮影されている。
DVDで見たので、十分耐えられたが、スクリーンでは
見るべきではない画質、また撮影技術だったように思えた。
途中でスケボーを自分たちのカメラで撮っている人たちが出てくるが、
全編そのような感じで、まるでYoutubeに上げられている素人映像のようなのは
好みが分かれるところだろう。
ほとんどが人物のアップでロング・ショットがないのも映画らしく見えない原因だ。
ただ、監督二人がこのような新しいスタイルを自分たちの演出の独自色として
活かしている点は素晴らしいし、羨ましく思う。

〈65点〉

個人的ベストアワード2009

2010-05-05 22:22:33 | ベスト&ワースト
なんと日本映画プロフェッショナル大賞よりも遅い。
どこよりも遅いベスト10!

って、ただ単に書いたつもりになっていただけです。

【邦画】

第1位:愛のむきだし


第2位:サマーウォーズ
第3位:誰も守ってくれない
第4位:空気人形
第5位:ディア・ドクター
第6位:少年メリケンサック
第7位:インスタント沼
第8位:ジェネラル・ルージュの凱旋
第9位:GOEMON
第10位:おっぱいバレー

主演男優賞:西島隆弘(愛のむきだし)

主演女優賞:満島ひかり(愛のむきだし)

助演男優賞:渡部篤郎(愛のむきだし)

助演女優賞:安藤サクラ(愛のむきだし)

監督賞:園子温(愛のむきだし)

脚本賞:奥寺佐渡子(サマーウォーズ)

(総評)
はっきり言って不作だったように思う。
キネ旬ベストテンの上位に日本アカデミー賞組が来ている事からもわかる。
個人的には「愛のむきだし」と「サマーウォーズ」が抜きん出ており、
3位から6位までは良作。それ以下は見ている間は楽しめるが、
普通はベストテンには入ってこないであろう佳作レベルの作品。

【洋画】

第1位:スラムドッグ$ミリオネア


第2位:母なる証明
第3位:グラン・トリノ
第4位:ヒットマンズ・レクイエム
第5位:扉をたたく人
第6位:ハリー・ポッターと謎のプリンス
第7位:レスラー
第8位:レイチェルの結婚
第9位:チェ/28歳の革命
第10位:エスター

主演男優賞:クリント・イーストウッド(グラン・トリノ)

主演女優賞:キム・ヘジャ(母なる証明)

助演男優賞:ブレンダン・グリーソン(ヒットマンズ・レクイエム)

助演女優賞:ローズマリー・デウィット(レイチェルの結婚)

監督賞:ダニー・ボイル(スラムドッグ$ミリオネア)

脚本賞:サイモン・ビューフォイ(スラムドッグ$ミリオネア)

(総評)
低迷を極めた邦画に対して、10作品では納まらないほど良作に出会えた。
ベスト10に含まれたものが全て素晴らしいのはもちろん、
他にも「デュプリシティ」「愛を読むひと」「ディファイアンス」「スペル」「2012」などが
良く、ハリウッドの意外な懐の広さを思い知った。
しかし、「ヒットマンズ・レクイエム」のような興業的には確かに地味ながら、
非常に良くできた作品が、DVDスルーされることが多くなったのは、残念だ。
また、韓国映画の面白さにも「母なる証明」でようやく目覚めた。