ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

ハリー・ポッターと炎のゴブレット

2009-08-04 13:38:32 | 映画(は行)
2004年・アメリカ・Harry Potter and the Goblet of Fire
監督:マイク・ニューウェル
(IMDb:7.6 Metacritic:81 Rotten:88)

夏休み特別企画の第1弾として「ハリー・ポッター」シリーズを網羅したい。
バランスが取れすぎて無難に出来になったシリーズ第4弾。



「賢者の石」「秘密の部屋」と「アズカバンの囚人」の中間点に立つような作品で、少し掴みどころがない。
脚本はシリーズ中、最もうまくまとめられていると思うが、
ストーリーを追うことに終始しすぎた嫌いがある。
最も原作に近いが、最も原作に遠い作品だとも言える。
原作の面白さはやはりストーリーだけでは収まりきらないのだ。



特に、この作品は初めから原作のメイン・ストーリーに緩急がないので、それだけでは面白くならない。
トーナメントが中心となるため、ドラゴン、湖底人、巨大迷路とゲームのような一本道なのだ。
もっとサイドストーリーを充実させるべきだった。
セドリックの扱いの悪さと彼が殺される衝撃の薄さに驚いたので、
補強すべきだったと思う。チョウ・チャンとのエピソードも薄い。

これは蛇足だが、映画のチョウ・チャンのかわいさがわからない。
ハーマイオニーをパーティに誘わないハリーは馬鹿だ!



映画版ハリー・ポッターの面白さは原作の要素を抽出しながらも、
いかに原作を上手く離れ、映画らしく味付けが出来るか
にあると思うので、本作の無難さには物足りなさを感じた。
ドラゴンとの決闘で、ホグワーツの屋上まで行ってしまうような
映画的なダイナミックさがもっと全編にあればよかったと思う。
だからといって、ダンス・パーティに出てくるロックバンドは余計だったと思う。

〈70点〉

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

2009-08-04 13:38:24 | 映画(は行)
2004年・アメリカ・Harry Potter and the Prisoner of Azkaban
監督:アルフォンソ・キュアロン
(IMDb:7.7 Metacritic:81 Rotten:89)

夏休み特別企画の第1弾として「ハリー・ポッター」シリーズを網羅したい。
第1次ハリー・ポッター革命が起こったシリーズ第3弾。



ハグリッドの家と暴れ柳がなぜか引越しされ、ホグワーツに橋がかかった。
この変更には始めてみた時に大きくとまどった。
(人間は良くできているもので、今となれば違和感も何もないが)
映画のタッチも大きく変わった。
話がダークになったのだ、とまとめられることが多いが、
それだけにとどまらず、やはり演出の方向が大きく変わったというべきだと思う。
だが、3作目というタイミングで、シリーズを飽きさせないように方向転換するのはいいと思うが、
その時に起用したのがアルフォンソ・キュアロン監督であったことは間違いだったと思う。
何せ、今までキュアロン監督が撮ってきた作品とは方向性が違いすぎる。
規模が大きくなりすぎて作品全体を見渡せていない。
重要なシーンをカットしてどうでもいいシーンがあったり、バランスが悪いのだ。
登場人物の感情も見えない。前2作も感情はあまり見えないが、今回は特に重要だったのだ。



原作の最高傑作は間違いなく「アズカバンの囚人」だ!
そう思っているから見る目が厳しくなる。それもある。
だが、それにしてこの作品の脚本は原作の良さを捉えていないし、編集もブツブツと切れすぎて、
テンポが悪いように思う。
これだけは断言したい。ハリーの父とスネイプの過去はカットするべきではなかった。
また、叫びの屋敷のシーンの重みが足りない。
シリーズ屈指の名シーンとなるはずなのに、無難にまとめられてしまっている。
これではシリウスを演じるゲイリー・オールドマン、そしてルーピンを演じるデヴィッド・シューリスらは
好演するものの十分に生かされていたとはいえない。



厳しめの評価となったが、それも原作に対する愛ゆえ・・・。
映画は映画だと思って見れば、前2作同様、完成度も高く楽しい作品だ。
特に、ラストの逆転時計のくだりはテンポもあり、良かった。
前作と違いエマ・ワトソンが大活躍なのもうれしい。

〈70点〉

ハリー・ポッターと秘密の部屋

2009-08-04 13:38:14 | 映画(は行)
2002年・アメリカ・Harry Potter and the Chamber of Secrets
監督:クリス・コロンバス
(IMDb:7.2 Metacritic:63 Rotten:82)

夏休み特別企画の第1弾として「ハリー・ポッター」シリーズを網羅したい。
次に、主演の3人がいきなり大人びて驚いたシリーズ第2弾。



「賢者の石」よりも僅差で面白いと思う。
やはり、この作品でもクリス・コロンバス監督の演出は安定しており、非常にバランスが取れている。
良質のファンタジーというハリー・ポッターのイメージにぴったりな作品になっているが、
映画として面白いのか、と聞かれると前作と同じく疑問を感じてしまう。
ベストセラーの映画化という肩書きから逃れられていない。



映画のオリジナリティに関しては前作よりは努力が見られる。
クィディッチのシーンにも映画オリジナルの側溝を加えて、新鮮味と迫力を与えている。
他にも秘密の部屋への入り口の開き方などビジュアル面での映画らしさ(映像的な補強)は与えられている。
しかし、話の流れ方、登場人物の感情などは未だに映画というよりも小説的だ。
どうも一本道な印象をぬぐえないし、登場人物たちも人間というよりも
話を進めるためのキャラクターから脱却できていない。

最後の秘密の部屋での戦いには前作のラストをはるかに超える迫力があり、
大きな盛り上がりを見せた。
全作通して見ても最も迫力あるラスト・シークエンスではないか。



アラゴグやドビー、バジリスクのデザインは素晴らしいが、暴れ柳の完成度は低い。
基本的にシリーズの途中で変更するのは反対だが、
暴れ柳だけは「アズカバンの囚人」での変更を納得できる。

〈75点〉

ハリー・ポッターと賢者の石

2009-08-04 13:38:03 | 映画(は行)
2001年・アメリカ・Harry Potter and the Sorcerer's Stone
監督:クリス・コロンバス
(IMDb:7.2 Metacritic:64 Rotten:78)

夏休み特別企画の第1弾として「ハリー・ポッター」シリーズを網羅したい。
まずは主役の3人がまだ子どもで、可愛らしかったシリーズ第1弾。
(ダニエル・ラドクリフと同い年なので、この頃は自分もまだ可愛かったということか・・・)



クリス・コロンバスが監督した「賢者の石」と「秘密の部屋」はどこかで
「アズカバンの囚人」から続くシリーズと分けてしまっているように思う。
違うシリーズを見ているような感覚なのだ。
もっと言うならば、シリーズは3つに分けられ、第2の分岐点が「不死鳥の騎士団」となる。

  1・2  /  3・4  /  5・6・7
       ↓       ↓
  ファンタジーの放棄  原作の放棄

海外では「アズカバンの囚人」からのダーク路線が人気のようだが、
日本では「賢者の石」と「秘密の部屋」の人気が根強いように思える。
(少なくとも周りにいるさほど映画好きでない人たちはそう言っている)
やはり、日本人は明るく可愛らしいのが好きで、子どもに弱いのか。



全編、クリス・コロンバスらしい暖かな仕上がりになっているのは好感が持てる。
クリスマスのシーンなどは腕の見せ所だ。
公開当時は展開が速すぎて原作未読(そんな人がいるのか!)だとついていけない
などの意見も多かったが、今思えば親切極まりないつくりだ。
原作が短く、シンプルなことも手伝って、
原作の要素や雰囲気を丁寧に網羅しきっている唯一の作品だといえる。



美術や衣装など(一部変更はあるが)この作品のプロダクションデザインによって
後のシリーズが支えられていることを考えるとその功績は大きい。
ジョン・ウィリアムズの音楽も素晴らしい。

9と3/4線への壁、寮ごとの点数争い、組み分け帽子など今となっては懐かしい。

〈70点〉

タクシードライバー

2009-08-01 16:58:01 | 映画(た行)
1976年・アメリカ・Taxi Driver
監督:マーティン・スコセッシ
(IMDb:8.6 Metacritic:93 Rotten:100)

アメリカ映画の巨匠でありながら、マーティン・スコセッシの映画は最近の
「アビエイター」「ディパーテッド」しか見たことがなかったので、
このままでは恥ずかしいと、今更ながら、初めて見た。



1976年に作られた映画であるのに、見事に“現代”を描いている事に驚かされた。
そして、トラヴィスに共感してしまった。
当然だが、無差別殺人を起こそうというのではない。
ただ、トラヴィスという人物に現代人に渦巻く感情が流れているからなのだ。
また、トラヴィスの行動があるあるネタのように共感を呼び、
自分のことのように感情移入してしまうのだ。
そして、映画にここまで感情移入したのは久しぶりかもしれない。
映画のことを勉強し始めると、演出やカメラの動きなどに目がいってしまい、
純粋に映画を楽しめることが少なくなっていたのだ。
(純粋に楽しまなくても映画は楽しいものだが)
この映画の恐ろしいところは未だに現代(現在、と言うべきか)とリンクし続けていることなのだ。
「誰でもよかった」が決め文句の無差別殺人がすでに描かれているのには驚嘆した。



腐敗した社会への不満と孤独感。
ここの演出は少しあざとい。
さらに、裏腹な自己表現の欲求、つまり、社会に自分の存在を知られたい。
そして、自己表現が失敗した時の暴走。
・・・まさに“今”だ!

トラヴィスは鏡の中の自分に語りかける。
映画史に残る名シーンとして有名だ。
見ていなくてもこのシーンは知っていた。
そして、現代人も鏡を持っている。

これだ。

パソコンだ。そして、携帯だ。
現代人はこの鏡を通して自己表現を図ろうとする。
掲示板、プロフ、SNS、そして、ブログだ。
事実、多くの事件の引き金にもなっているではないか。
「タクシードライバー」が“今”も色褪せない名作であるのは当然だ。
“今”を描いた最新の映画なのだから。
そして、今日もブログを更新する。

“You talking to me?”

〈80点〉
見返すうちに点数が上がっていきそうな予感がする。