ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

スラムドッグ$ミリオネア(2回目)

2009-08-24 11:18:59 | 映画(さ行)
2008年・イギリス・Slumdog Millionaire
監督:ダニー・ボイル
(IMDb:8.5 Metacritic:86 Rotten:94)
公式HP

遅ればせながら、アカデミー賞作品賞ノミネート作をすべて見たので順番にレビューしていきたい。

第1位「スラムドッグ$ミリオネア」


素晴らしい!!
余計なことを言いたくないほど素晴らしい。

この気持ちは2回目を見てさらに高まった。
前回はほとんど感想と言うほどの感想を書いていなかったので、
少しは書き進めたいと思っていた。
しかし、2回目を見てもまだ余計なことを書きたくない気がして
そのままほったらかしになっていた。
5回ほど見れば、感想は完成するかもしれない。
だから、根気良く書き進めていこうと思う。



まず、挙げるべき素晴らしい点は映像と音楽の融合である。
インドのエキゾチックな音楽と都市的な「クイズ・ミリオネア」の音楽が
手持ちカメラを多用した細かく激しい撮影と融合し、
力強い映像を生み出している。
エンディングにミュージカルシーン置かれていることからも分かるように
基本的にはMTV感覚である。
ダニー・ボイル監督の作品は以前からその傾向が顕著で、
ゾンビ映画である「28日後…」ですら当てはまる。
だが、MTV感覚と簡単には言えても、実際に映画として成立させるのは非常に難しい。
ある意味で映画監督に対して映画が仕掛けてくる“罠”なのだ。
引っ掛かると、ただ映像がやかましいだけで内容のない空虚な映画が出来上がる。
そして、今までにもこのタイプの映画は量産されてきた。
トニー・スコットの「ドミノ」などがわかりやすいかもしれない。
しかし、「スラムドッグ$ミリオネア」はこの罠には引っ掛からなかった。
その理由はこの作品のテーマとなっている。愛であり、運命だ。



「スラムドッグ$ミリオネア」をシナリオコンクールに出したとしよう。
審査員たちは判断に困るはずだ。
なぜなら、自分たちがシナリオ本で書いてきたルールがことごとく破られているからだ。
展開が完全にいわゆるご都合主義なのだ。
そして、そのご都合主義がたった一言だけで説明されてしまう。

『運命だった』

そして、その運命を導くのがラティカへの愛、ただそれだけなのだ。
主人公ジャマールの行動の理由はすべて愛であり、感情の理由もすべて愛だ。
とてもシンプルでわかりやすい。
ジャマールの愛の結果が二人の運命として昇華される。
後にも先にもこの作品だけであろう唯一無二の素晴らしい落し所だ。



このストーリーであったからこそダニー・ボイルのMTV感覚も成り立ったのだ。
映像が複雑な上にストーリーも複雑では観客は耐えれない。
そこで、ストーリーを誰にでも分かるように『愛と運命』でまとめてしまう。
すると、ストーリーと映像が不思議と相互に支えあい、強調し合う。
演出も素晴らしすぎるが、ダニー・ボイルの脚本を見る目も素晴らしい。

この映画の演出が素晴らしいことは映画のどこを切り取ってもわかるので、
細かく「ここが良い」などというのは野暮だろう。
特筆しておきたいのは、ラティカがライフラインのテレフォンに出るところだ。
ラティカの声にジャマールと初めて出会ったシーンの映像が重なる。
二人の“運命”を1つの画面で表現しきっていて、素晴らしさに鳥肌が立った。

今、言いたいことはただ一つ『もう一度見たい!』

〈90点〉
   ↑点数がさらに上がりそうです。


最新の画像もっと見る