ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

短編アニメーション賞 全作品レビュー2010

2010-03-10 18:07:28 | 映画全般
先日発表された第82回アカデミー賞の短編アニメーション賞に
ノミネートした全5作品を見てみました。

「Logorama」監督:François Alaux、Herve de Crecy、Ludovic Houplain、アメリカ、16分


本年度の最優秀短編アニメーション賞受賞作。
にして、数多くの有名企業のロゴを全編に“無許可で”あしらった問題作。

さすがの面白さ。
マクドナルドのドナルド(正確にはロナルド)が犯人で、ミシュランマンが口の悪い警察官など、設定の妙が光る。
確かにロナルドって怖い……。あのキャラクターが好きな子供っているのか?
また、細かく登場するニケロディオンやX-BOX、エビアンなどがツボ。
最終的に広告だらけの町が崩壊する。広告だらけの現代への見事な風刺。
それだけには留まらず、宇宙に行ってまでもロゴだらけ、地球を離れる時に
ユニバーサル映画のロゴが登場した時には思わずお見事と言ってしまった。

よくもここまで多様なロゴがあるものだ。
そして、この素晴らしいアイデアを見事に作品として成り立たせてることに驚いた。

・カンヌ国際映画祭2009 批評家週間 コダック短編賞受賞
・ストックホルム国際映画祭2009 最優秀短編賞受賞

「French Roast」監督:Fabrice Joubert、フランス、8分


実にフランスらしいオシャレな一編。
鏡の使い方、照明などの伏線の使い方が上手い。
カメラの切り返しを行わなかったことで、作品に独自のムードが出ている。
そして、音楽も作品の雰囲気とよくマッチしていて、そのムードを盛り上げているように思った。

・SIGGRAPH 2009 Big in Show部門 最優秀賞受賞

「Granny O'Grimm's Sleeping Beauty」監督:Nicky Phelan、アイルランド、6分


「眠れる森の美女」のストーリーが語りの中で、滅茶苦茶なものになっていくというアイデアは面白いと思うが、
アニメーションとしてその面白さが活かせているかというと疑問。
子供の時って、ああいう話を聞くと、無性に怖くなって、眠れなくなったりするものです。
恐怖の物語を熱演しながら語ったおばあちゃんの罪は重い。

・アイルランド・アカデミー賞2009 アニメーション賞受賞。

「The Lady and the Reaper」監督:Javier Recio Gracia、スペイン、8分


アニメーションならではの飛躍と過剰の面白さが詰まった作品。
ただ、スペインの風土なのでしょうか。ブラック過ぎます。
死神につれられていき、死んだおじいさんに会いたいおばあさんとそれを止めようとする医師。
そして、最後のおばあさんの行動にはあまりの衝撃のために、絶句した。
最後まで見るとポスターの意味がわかる……。

・ゴヤ賞2010短編アニメーション賞受賞

「ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢」監督:ニック・パーク、イギリス、29分


2008年のクリスマスにイギリスで放映され、視聴率58%を記録したらしい。凄い。

やっぱりこのシリーズは面白かった。
ノミネート作の中でベストを選ぶなら、これ。
ストーリーは30分間全く開きさせないし、クレイアニメーションの質感も素晴らしい。
ウォレスに従順なグルミットが大活躍。とても可愛い。
全体的にホラー風な味付けで、残酷さと紙一重のブラックなイギリス式ユーモアも炸裂していた。
パイエラの最期は少し残酷すぎる気がしたが。

・アヌシー国際アニメーションフェスティバル2009 短編アニメーション コンペティション部門出品。
・オタワ国際アニメーションフェスティバル2009 短編アニメーション Narrative部門コンペティション出品

今回のノミネート作品は全てブラックな笑いを狙っているように感じた。
アカデミー賞だけあって、総じて質は高く、どの作品も飽きることなく、サクッと楽しめた。

上記は鑑賞順だが、個人的な好みで並べるとこのようになります。

1、ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢
2、Logorama
3、The Lady and the Reaper
4、French Roast
5、Granny O'Grimm's Sleeping Beauty

ティム・バートンのコープス・ブライド

2010-03-10 11:13:48 | 映画(た行)
2005年・イギリス・Tim Burton's Corpse Bride
監督:ティム・バートン、マイク・ジョンソン
(IMDb:7.5 Metacritic:83 Rotten:83)



キャラクター造形や美術などティム・バートンらしさは随所に現れてはいるのだが、
どこか物足りない。77分と言う上映時間の短さからもわかるように、
きれいにまとまり過ぎていて、遊びとか、余裕というのがほとんど感じられないのが、
ティム・バートン映画としての魅力を著しく損ねているように思う。



ロシアの民話がベースになっているので、この絵本的なまとまり方は仕方がないことなのかもしれない。
しかし、あまりにも展開が見え透いているように思えたし、
主人公のビクターやエミリー、ビクトリアの感情の変化をもう少し丁寧に描いてもいいように思えた。



この作品で魅力的に見えるのは、やはり生者よりも死者のほうだ。
生者より死者のほうが生者らしく、死者よりも生者のほうが死者らしい。
生者の世界は暗く、色調も押さえられてより、非常に陰鬱な印象を受ける。
登場するキャラクターも高圧的で、主人公ビクターを苦しめる。
一方の死者の世界は真逆で、明るく、カラフルで、陽気なキャラクターたちにあふれている。
彼らが次々と披露する“死者”ギャグにはブラックさも絶妙で、笑わせられる。
ビクターが死者の世界に来た時に死者たちが歌い踊る「Remains Of The Day」は名曲だ。
さすがはダニー・エルフマンといったところ。ただし、これ以外のダニー・エルフマンの
過去の名曲と比べると水準以下だといわざる終えないのは残念だ。
ピアノ曲の評価は非常に高いようだ。



メイキングを見て、改めてストップモーション・アニメーションの凄さを思い知った。
映像でその作業の一部を見ただけで、すでに狂いそうな緻密な作業で、
その繊細さがあってこそ、あの独特な映像が生まれるのだ。
ストップ・モーションアニメの2Dアニメにも3Dアニメにもない、あの温かさ、安心感は
時間も労力もかかるが、残していかなければならない技術なのだと思う。
アニメーターの人たちがあまりにも凄すぎて、失礼ながら、ティム・バートンが何もしていないように見えた。

〈70点〉