ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

Shahada

2010-03-22 18:00:30 | 映画(数字・アルファベット)
2009年・ドイツ・Shahada
監督:Burhan Qurbani
(IMDb:6.0 Metacritic:× Rotten:×)

ベルリン映画祭にて鑑賞。
コンペティション部門に出品され、ドイツ・アートハウスシネマ組合賞を受賞した。
監督は新人のBurhan Qurbaniという人。
おそらく日本では公開されない。



今年のベルリン映画祭のテーマはずばり「家族」そして「宗教」であったように思う。
また、ベルリン映画祭といえば、新人発掘に力を入れていることでも有名だ。
それらの全ての要素を兼ね備えた作品がこの「Shahanda」だと言える。
逆に言えば、ベルリン映画祭、しかも、2010年でないと、
コンペティション部門に入る事はできなかった作品なのだろう。



「Shahada」とはイスラム教における「信仰の告白」のことであり、
つまり、今日から私はイスラム教だけを信仰していきますと宣言することである。

主人公はベルリンに住むマリアム、サミール、イスマイルという3人の若者。
彼らはイスラム教徒の家に生まれながら、決して敬虔な信者とはいえない。
まさに今の日本における仏教のような形だけの信者なのだ。

マリアムはイスラムの導師でもある厳しい父に反発し、酒を飲み、ジーパンを履き、
夜遊びにふけている。そんなマリアムの妊娠が判明し、彼女は中絶と言う決断を迫られる。

サミールは友人であるダニエルに友人以上の感情を抱く。
もちろん、イスラム教では同性愛は硬く禁じられている。

警官のイスマイルは自分が銃の暴発で、怪我を負わせた女性と再会し、
家族がいるにもかかわらず、関係を持ってしまう。

3人の物語が交錯しながら、彼らが信仰をとるか、自分らしさをとるか、の決断を迫られるというのが大筋だ。
日本人から見れば、イスラム教への目覚めの話であるようにしか見えないが。



この作品の持つテーマははっきり言って日本人には非常にわかりにくいのだが、
宗教の問題、特にイスラム教、は世界中で巻き起こっているので、今、作られたことの意義は大きいのだろう。
そして、宗教について考えたことなどなかったので、良い機会になった。

しかし、作品が持つテーマの割には全体的に軽すぎるような気がした。
物語も三者三様とはいかず、三人とも同じような同じような話だ。
同じような話でもあるし、それぞれの構成の仕方も非常に似ていて、3つのエピソードが
上手く絡まるわけでもないので、それぞれの起承転結があまりにも見え透いていた。

映像もアップやバスト・ショットぐらいのテレビ的なもので、
フルからロングの映画的なショットは皆無だったように思う。
マリアム、サミール、イスマイルを演じた俳優たちの演技が良かっただけに、
悲劇的なシーンでのワン・パターンな音楽を大音量で流す演出はやめて欲しかった。

〈65点〉