1月15日、自民党の麻生太郎副総裁が地元福岡県で開かれた講演会で、「少子化の最大の原因は晩婚化」との見方を示し議論を呼んでいます。メディアによれば、麻生氏は講演の席で「(少子化の)一番大きな理由は、出産するときの女性の年齢が高齢化しているから」としたうえで、女性の初婚年齢が「今は30歳で普通」だとし、複数の子供を出産するには「体力的な問題があるのかもしれない」と話したとされています。
麻生氏独特の「物言い」ということもあるのでしょうが、聞きようによっては、「(若いうちに遊びまわって)なかなか結婚しない国民(特に女性)が悪い」と言っているようにも取れるこの発言に、早くもSNS上では反発の声が上がっているようです。
「少子化の原因は晩婚化だと言うなら、なぜ晩婚化してるかを考え対策をとるのが与党の役割ではないか」「原因を作ってるのはあんたらじゃないの?他人ごとみたいに言ってるんじゃない」などなど、その反応にはなかなか手厳しいものも多いと聞きます。
(誰のせいかはともかくとして)確かに平均初婚年齢の推移をみれば、皆婚時代だった1980年には夫27.8歳、妻25.2歳だったものが、2020年には夫31.0歳、妻29.4歳となっておりそれぞれ4歳近く伸びています。
振り返れば、かつて女性の結婚適齢期年齢を「クリスマスケーキ」に例えたり、「25歳はお肌の曲がり角」などいう(「マダムジュジュ」の)CMがテレビから流れたりしていた時代が確かにがありました。実際、バブル崩壊前の1980年代、女性の初婚数がもっとも多かったのは20~24歳だったということですが、最近の婚活市場では「結婚適齢期=年越しそば理論」というのがあるようで、これは31歳までが勝負という意味だということです。
こうしてデータを見る限り、「晩婚化が進んでいる」という指摘自体にはうなずけるところもありますが、それではなぜ、日本の初婚年齢はここまで上がってきているのか。(少し前の記事になりますが)2021年10月16日のYahoo newsに、コラムニストの荒川和久氏が『「高望みはしません。年収500万円くらいの普通の男でいいです」という考えが、もう「普通じゃない」件』と題する興味深い論考を寄せていたので、この機会にその一部を紹介しておきたいと思います。
女性のための転職サイト「女の転職type」による「教えて!今どきの結婚観アンケート調査(2021.6)」によれば、結婚相手に求める最低年収平均額は526万円だったとのこと。500万円以上と回答した割合は実に6割弱にも達していると、荒川氏はこの論考に記しています。
これを見る限り、彼女たちにとって500万円は普通なのだろう。しかし、結論からいえば、「500万円以上の年収」は世の男性の普通でも平均でもない。少なくとも、(初婚がもっとも多い)25~34歳のアラサー世代において、年収500万円以上を稼ぐ未婚男性など少数派だというのが氏の指摘するところです。
その割合は、全国的に見て、当該年代の未婚男性のわずか11%。東京都に限定してもたったの22%でしかなく、普通どころか上位2割に相当すると氏は言います。
つまり、都内の婚活女性が「年収500万円以上」という条件を提示しただけで、上位22%以下の男性は足切りされてしまうということ。裏を返せば、「年収500万円以上」と口にしただけで、婚活女性の6割が東京在住の独身男性の8割、全国では9割の独身男性を候補者リストから失うことになるということです。
因みに、年齢を拡大しても、500万円以上の年収があるのはわずかなもの。20代で2%、30代で5%、以下40代5%、50代3%しかいないと氏はしています。何より、(年齢を問わず)未婚男性の約半分が年収が300万未満であるという現実を、女性たちはしっかり受け止める必要があるというのが氏の見解です。
これを「未婚男性は金がないから結婚できないのだ」と理屈付けしたところで、500万円以上の未婚男性の数が増えるわけではないし、それが女性にとっても1割から2割の狭き門であることに変わりはない。しばしば耳にする「上方婚志向の女性の婚活は、当たりのないガチャを延々と引き続けるようなものだ」という意見は、こうしたファクトに基づくものだということです。
婚活女性は「適当な相手がいない」とよく言うが、それは「相手の年収」という色眼鏡をかけ現実を見ようとしていないせいとも言える。言い換えれば、実際に結婚しているのは、男性の年収にこだわらない(奇特な)女性とも言えると荒川氏は話しています。
さて、そのように考えていけば、若者の初婚年齢が高くなっているのは、第一に男性の給料が(この失われた30年間、ほとんど)上がっていないから。そして第二に、女性が現実を直視できていなから、というのがその理由に挙げられるのかもしれません。
オーネットが行った「2023年新成人の連会・結婚に関する意識調査」によれば、「結婚相手に求める条件」として男女で最も差が出たのは「年収」の項目とのこと。若干19・20歳の若者を対象としたアンケート調査にもかかわらず、女性(30.2%)男性(7.1%)と、女性が男性より20ポイント以上高い結果だったということです。
荒川氏によれば、結婚相談所の婚活面談で仲人さんたちが婚活女性からよく聞かされる言葉が、「高望みはしません。普通の人でいいです」というもの。次に続く条件は今まで書いてきたようなものだが、この言葉を受けた仲人さんは、口には出さずともこう思うだろうと氏はこの論考に綴っています。
それは、「ここに普通の人なんていません。あなたのいう「普通の人」は、ここに来る前に結婚しています」というもの。厳しく聞こえるかもしれないが、仮にこういうことを言ってくれる仲人さんがいたとしたら、むしろ真剣に、親身にあなたのことを考えてくれていると考えるべき…というのが氏の認識です。
本当に結婚したいと思う人にとって、まず初めに、そして最も大切なのは「現実への気づき」とではないか。結婚は、ドラマでもマンガでもなく現実である。現実を受け入れられない人に「結婚という現実」はやってこないとこの論考を結ぶ荒川氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。
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