21年4か月ぶりに高水準を取り戻した株価に、日本の株式市場が沸いています。
11月2日の日経平均の終値は2万2539円で、過去最長となる16日間連続の上昇が始まる前の9月との比較で、既に2182円上げています。この間の上昇率は実に10.7%と年初から9月までの上昇率である6%大きく上回り、世界の主要市場ではトップの水準だということです。
11月3日の日経新聞では、こうした好調の理由を、政権与党が衆議院で勝利したことで外国人投資家を中心に安倍政権の経済運営への期待感が再燃し、出遅れが一気に進んだところに見ています。
量的金融緩和と積極的な財政投入を基調としたアベノミクスの経済対策が今後も引き続き、企業業績を(躊躇なく)丸ごと後押しすると考えられているということでしょう。
加えて、投資家らが評価しているのが日本企業の収益力だと、記事は指摘しています。実際、2018年3月期の上場企業の経常増益率は11月2日時点で13%まで伸長し、最高益を更新する企業も幅広い業種に広がりつつあるということです。
こうして、(安倍政権の政権基盤の安定化により)外国人投資家を中心に投資マネーを呼び込んでいる日本経済ですが、その一方で、この記事と同じページの(日経新聞の看板コラムのひとつ)「大機小機」には、「おごるなアベノミクス」と題する辛口の論評記事が掲載されています。
「景気は良いが、経済が悪い。」今の日本経済を一言でいえばこうなると、記事は冒頭で解説しています。
日本経済は、完全雇用状態で株価も上昇。好転する世界経済にアベノミクスによる金融、財政刺激が加わっている。しかし、この「景気の良さ」はその一方で「経済の悪さ」をもたらし、将来不安をかきたてていると記事は現状を指摘しています。
そして、そこでは皮肉なことに、アベノミクスの「成功」こそが「経済の悪さ」の要因になっているということです。
異次元の超金融緩和と機動的な財政運営の組み合わせによるリフレ政策が、デフレ脱却への第一歩になったのは確かかもしれない。しかし、日銀の国債大量購入という「財政ファイナンス」は財政規律を緩め、日本を先進国最悪の財政赤字国にしてしまったと記事はその理由を説明しています。
短期目標である基礎的財政収支の黒字化はいつまでたっても達成できず、2度も先送りされた消費税増税は、実現しても財政赤字削減にはあまり寄与しそうにない。(それにもかかわらず)新たに打ち出した「教育国債」など、歳出拡大要求は後を絶たないということです。
そもそも、日銀が財政赤字を下支えするのは不健全で、米連邦準備理事会(FRB)に続き、欧州中央銀行(ECB)も金融緩和からの出口戦略を進めているのに、独り日銀だけが出口の議論さえ封印している。(政権におもねる)この姿は、成熟国家の中央銀行としてあまりに異常ではないかと記事はしています。
無作為が続けば、出口に向けての金利上昇リスクが累積する。「見えざる円安誘導」とのそしりも免れないということです。
一方、金融、財政政策の「成功」の陰で、何故かなかなか起動しないのが(本来であればこちらが本流であるはずの)「成長戦略」と言えるでしょう。
日本の強みであるところの「ものづくり」の劣化は既に始まっている。主要企業がまともに品質検査もできないようでは、国際的な産業競争力にも響きかねない。
さらに、AI(人工知能)、自動車のEV(電動)化、新エネルギーなど未来産業分野で日本企業が先頭集団にいないのは、成長戦略の失敗を物語っているというのが、日本の産業の現状に対する記事の認識です。
記事は、現在の日本経済に活力が乏しいのは、日本が開放社会になりきっていないからだろうと指摘しています。
日本人だけが対象とみられる「1億総活躍社会」構想は、見方を変えれば「日本第一主義」でしかないと記事はしています。外資や外国人材に産業やサービスをもっと開放し、その活力を受け止めていくことが求められているということでしょう。
また、安倍晋三首相は企業に「3%の賃上げ」を求めるが、単なる賃上げ要請ならともかく、目標を明示した要求は(自由な競争や企業活動を妨げる)「国家資本主義」そのものだと記事は懸念を表しています。
さて、大きく混乱した総選挙も、ここで(ようやく)終わりました。
そして、肝心の成長戦略としての規制緩和や財政収支の健全化が放置されている足下を改めて見直せば、これから先、安倍政権と責任政党としての自公両党が進むべき道は自ずと見えてくるはずです。
(政権の安定化がかなった現在はまさに)アベノミクスの「落とし穴」を謙虚に見つめ直し、日本の将来のために経済政策の正常化に立ち上がる時ではないかと結ばれたこの記事の指摘を、私も重く受け止める必要があると改めて感じたところです。
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