MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2431 部長の給料袋にはいくら入っているのか?

2023年06月26日 | 社会・経済

 5月17日の経済情報サイト「DIAMOND ONLINE」に掲載されていた『知られざる「給料残酷格差」の全貌』(編集部大矢博之によるストーリー)によれば、米国やシンガポールの部長の年収は約3000万円、タイは約2000万円とこのこと。(経済産業省「未来人材ビジョン2022)。一方、日本の部長は1700万円程度にとどまり、海外と比べて課長や部長に昇進する年齢も遅いということです。

 日本の部長の給料が1700万円と聞いて「随分高いな…」と感じた人も多いと思いますが、経産省が示した部長の年収は、海外の調査会社のデータを参照したものとのこと。調査に協力した日本企業は、グローバル展開を進め、海外の給与相場に関心が高い大企業が中心で、一般の中小企業などは入っていないということです。

 それでは、実際の日本企業の部長の年収はどれくらいなのか。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2021年)」によれば、平均すると部長の年収はおよそ900万円、課長は762万円とされていると記事はしています。

 調査対象が違うだけで半分近くに下がってしまうというのもサラリーマンとしてはかなり残念な気がしますが、同じ「部長」の肩書を背負っていても、企業ごとの賃金格差はそれだけ大きいということなのでしょう。

 前述の賃金構造基本統計調査によれば、日本には部長が約90万人、課長が約174万人いるとのこと。正社員のうち部長は約28人に1人、課長は約14人に1人となると記事はしています。部長は平社員の平均年収445万円の倍以上もらってはいるものの、年収1000万円にすら届いていない。つまり、サラリーマンとして(憧れの)1000万円プレイヤーになれるのは、(実態としては)役員などのごく一部に過ぎないということのようです。

 もちろん、給料が高いことで有名な商社や金融、マスコミやIT業界などでは、30代で1000万円という話もよく聞きます。記事によれば、実際、大企業に限ると平均年収は大きくアップし、部長で1193万円、課長で935万円、平社員でも525万円と少しは見栄えがするものになるようです。

 さらに記事を読み進めると、大企業の50代の部長と平社員の年収差は約600万円で、課長と平社員では340万~380万円の差がつくとのこと。出世の有無でこれだけの年収格差が生まれることを知れば、普段は「出世は望まない」「管理職になんてなりたくない」などと口にしている若者たちも少しは気が変わるかもしれません。

 因みに、一口に部長、課長といっても、どのくらい偉い人が「部長」で、どういう立場の人が「課長」なのかは会社によって違うでしょうし、もちろん本人がどれだけ威張っているかによっても違うでしょう。

 そうしたこともあり、前述の厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2021年)では部長級・課長級のそれぞれについて一定の定義があるのだそうです。

 同定義によれば、 部長は「2課以上、または20人以上の構成員からなる組織の長」で、課長は「2係以上、または10人以上の構成員からなる組織の長」とのこと。さらに、「部長代理」「課長代理」などと呼ばれている者は含まないと(わざわざ)明記されているということです。

 さて、それを前提に、記事は(同調査をもとに)全国の部長90万人の業界別の年収事情を改めてチェックしています。

 これによれば、部長の年収トップは金融・保険業界の1331万円で、大企業に限ると1444万円に達するとされています。昔からエリ―ト・高収入の象徴とされてきた金融・保険業界は、確かに出世競争は熾烈かもしれないが、昇進すればやはり高待遇が約束されていることが判ると記事はしています。

 続く2位は、電気・ガス・水道業界の1192万円。福島の原発事故や、原油高などで電気料金やガス料金の値上げが相次ぐ中、「けしからん好待遇」と思わないでもありませんが、昔から「地味に給料がいい職場」として知られてきたのも事実でしょう。

 そして3位は、情報通信業界の1065万円とのこと。電電公社の血脈を持つNTTや派生する先端情報産業は、日本経済の効率の良い稼ぎ手として(金融・保険同様)安定かつ高収入で人気の業界だということです。

 そうした中、自動車や電機など、これまで日本経済の成長を担ってきた製造業や土木・建設業などのものつくり業界は、少なくとも給料面では(いまいち)振るいません。ベルメットに作業服という日本のお父さんたちが再び給料で報われるようになる日は、いつやってくるのでしょうか。

 こうした中、さらに苦しいのは(やはり)宿泊・飲食サービス業界だと記事は指摘しています。平均すれば、大企業の部長でも年収716万円と、トップ業界の半額以下。この業界を志すならば、収入面で他業界との残酷な格差がある現実は覚悟しておく必要があるだろうと記事は状況を総括しています。

 ともあれ、サラリーマンの世界で「部長」と呼ばれるようになる人はほんの一握り。定年も間近になって「俺もようやく部長まで来たか…」と、感慨をもって辞令を受け取る人も多いでしょう。

 しかし、多くの部長の年収がそれでも1000万円に届かないことは、実はあまり知られていないのかもしれません。しかも、所得税だの住民税だの社会保険料だのを引かれれば、手取りは(良くて)700万円そこそこ。高校生くらいの子供が二人もいれば、老後に備えて貯金をする余裕もありません。

 思えば、サラリーマンにどれほどの未来があるのか。これからの日本で、短い人生に何を目指すのかについては「よくよく考える必要があるな」と、記事を読んで私も改めて感じたところです。



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