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カズオ・イシグロと「記憶」

2020-10-06 | 2022夏まで ~本~
今年も、ノーベル賞・受賞者発表が始まりました。

2017年の発表では大興奮でした。
ノーベル文学賞・受賞はカズオ・イシグロ!
その発表に、アタクシ、狂喜乱舞・・・ウソ、ウソ、きゃ~~っ!!

翌日は、職場でも大騒ぎ!
部署を越え、本好きが集まり、イシグロ談義、受賞を喜び合いました。
今、思い出しても、楽しい「記憶」です♫


カズオ・イシグロ・・・
アンソニー・ホプキンス&エマ・トンプソンの映画「日の名残」(1993)を
きっかけに、原作者である、この作家の小説を読み始めました。

アタクシも全部を読んだわけではなく、
難しくて挫折した本もあります・・・
でも、どれを読んでも、心がしんとして、静かに涙させられています。

いちばんは、やっぱり・・・『忘れられた巨人』でしょうか・・・



作中、老いた夫婦が旅をしている間は
幼い頃から好きだった、英米児童文学の冒険譚のようだったのに・・・
思いがけない結末に、驚愕し・・・

呆然として、涙が止まらなくなったのを覚えています。


そのイシグロが、自分の作品の重要なポイントを教えてくれました。
「わたしのすべての作品において、誰かが過去を回想しているという感じが
とても重要なのです」

ああ、そういえば。
イシグロの小説は、過去と現在を、行きつ戻りつしているよね・・・



イシグロの言葉は、渡辺考『まなざしの力ーヒューマンドキュメントの人々』
(かもがわ出版)にありました。

この本は、TVマンの著者が番組を通し、出会った人々との
インタビューを題材にまとめた本です。

イシグロへのインタビューは2011年。
その折り、イシグロが最後に語った言葉は
「記憶は、死に対する一時的な勝利なのだ」だったとか。

つまり、「死者は記憶によって、生者の中で新たな命を与えられる。...
形あるものが、崩れ去っても残るもの。それが記憶なのだ」と、
著者は、イシグロの言葉を刻むのです。

これを読んで、わたしがイシグロの小説に惹かれる理由は
ここにあったのだと、気づきました。


年齢を重ねると・・・
アラカン夫婦は、親しい身内が、どんどん減っていきます。

お子さんがおいでなら、子どものパートナー、孫・・・と
つながりが増えていく可能性はありますよね・・・

でも、子どもがいない夫婦に、その可能性は絶対にない・・・
幼い頃から、ずっと近くにいてくれた人を送るばかりです。
切ないなぁ~~

亡くなった父や祖父母、懐かしい時間を、
思い出すことが、だんだん増えた気がします。

・・・もしかして、高齢者が、昔のことばかり話すようになるのは、
こういうことなのかしら?
・・・いかん、いかん!

念のため、申し添えますが、アタクシ、一生懸命、
今を生きているつもりですww


脱線しましたが・・・
イシグロの話。

過去にばかりひたって、今を見えなくしては問題ですが、
もちろん、そういうことではありません。

イシグロは、こんな風に言っています。

「人生は、短いとひしひしと感じたときに、
我々は何をとても大切に思うのかという
問いかけをしたかったのです」と・・・。

問いかけの答えは、それぞれの心にあるでしょうけれど・・・
何が大事かを意識しながら、生きることは、
アラカンのアタクシ、これから、ますます、必要なのかも・・・

わずか、数頁のインタビューですが、
含蓄あるイシグロの言葉の数々でございました。


『まなざしの力』には教育家・無着成恭や元沖縄県知事・大田昌秀など
そうそうたる面々に加え、地域で活動を続けてきた市井の人々も登場。
知らなかったことと出会う、楽しみもありそうです。


・・・ある瞬間に、ふっと、書かれた言葉が蘇るような、
読んだときには分らなかったことでも、時を経てストンと胸に落ちる・・・
イシグロの小説は、そんな小説だと思います。

イシグロの未読作品を読み返そうかと、今、ググっていたら、
なんと、なんと、来年2021年に新刊が世界同時発売されるとか。
『クララとおひさま』(早川書房)・・・待ち遠しいですっ!

ああ、楽しみが増えるって良いなぁ~~♫

◆書影は版元ドットコムより使わせていただいております。

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楽しみと言えば、朝ドラ「エール」。
いよいよ、「若鷲の歌(予科練の歌)」作曲の依頼が来ました。
今週の「エール」は見逃せません♫

熱く語っております。お目通しいただければ嬉しいです。

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