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小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(90)

2009-02-05 18:51:53 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(90)

「はい!な,何でも言う事を聞きます。だから助けて下さい」。
「ボス、それはまずいですよ。この男は真田の名前も顔も家も何も可も知り過ぎているんです、始末しましょう」。
三河は追い詰めるように威した。男はただおろおろしてゴリラの面をした二人の顔を代わる代わる見て居た。
「まだ二十歳前じゃ殺すのも気の毒だ、チャンスをやろう、少しでもこの事を口にしたら今度は問答無用で始末する。それで、山下とか言ったな。何を使って傍受した」。
「はい、自分はパソコンや無線機を作るのが趣味で、あの日たまたま警察無線を傍受して遊んでいたんです。
偶然なんですが、携帯電話のチャンネルが合って、会話が入ったんです。その日だけで後は取れませんでした。本当に済みません」。
「そうか、俺たちは誰でもいいから掃除している訳じゃない。悪の中の悪を掃除しているんだ。それを揺するとはな。死ぬか」。
「死にたくはありません、もう絶対に傍受なんかしません。助けて下さい」。
「分かった、一言でも漏らしたら殺す。明日、あの電球を変えておけ」。
「はい、変えておきます。神様に誓って誰にもいいません。真田さんの事も絶対に口にしません。ですから助けて下さい。真田さん済みませんでした」。
「その言葉絶対に忘れるな、仲間はこれだけじゃないんだ。住所氏名、全ては俺達の手の中だ。いつもお前を見張っているからな。
酒に酔って冗談で口にしても家族は全員死ぬぞ。それだけ代償は大きいって事だ。分かったか!」。
「はい、分かりました。有り難うございます。絶対に喋べりません。忘れます。済みませんでした」。
「よし、それなら命だけは助けてやる。真田。小遣いくれてやれ」
「いいえ、要りません、助けて頂いた上にお金は貰えません」。
「山下、お前金が欲しかったんだろ。誰も全部やるなんて言ってねえよ。此れを受け取ると言う事はお前も仲間になったと言う事だ。それが一番安心じゃないのか」。
「はい。じゃあ頂きますです。済みません」。
すると、三河はポケットから警察手帳を出してバッチを見せた。
「山下、これは分かるな、バッチだ。信じる信じないは別だ。何か耳に入った時はこの世とさようならだ」。
「ほ本物です、本当に警察にも仲間がいたんですね。僕も死にたくありません。約束は絶対に守ります」。
「山下、それで幾ら欲しかったんだ。嘘は駄目ぞ」。
「はい、車のローンが払えなくて百十万残っていて、時期に持っていかれてしまうんです。済みませんでした」。
「そうか。だったら二百万やるから明日払ってこい。残りは部品でも買え。嘘だったら承知しないぞ」。
「はい。嘘じゃありません。明日必ず払って来ます」。
すると京平は真田貴明から二百万を受け取ると男に渡した。男は震える両手で受け取るとしっかり握りしめた。
「有り難うございます。有り難うございます」。
「良し、免許証は預かるから再発行してもらえ。もし仲間が捕まった時はお前も仲間だと言う事を話すからな。お前も同罪だ。俺達が先に帰るがお前を信じて助けるんだ、忘れるな」。
男は頭を下げると車を降りた。そしてその場を離れた。そしてゴリラの面を取った。
「紺野さん、あの男大丈夫ですか?・・・」。
「ええ、心配ないでしょう。あれだけ怖い思いをすれば山下だって自分も危険になる事は分かっている筈ですからね。それより残った現金は僕等は要りませんから三河さん持って帰って下さい」。
「紺野さんは欲がないですな。半分づつにしましょう。真田はどう思う」。
「いえ、僕が口を挟む事じゃありませんから。持って帰って下さい」。
京平は頷いていた。そしてホテルに着いたのは午前一時になろうとしていた。三河は京平の言う通りバックを持つと車を降りた。
そして別れると真田は京平を送って行った。特に話す事もなく、美保の待つ実家へと帰った。すると二階の明かりがまだ着いていた。
NO-90-20

小説・鉄槌のスナイパー3章・89ー

2008-12-26 14:48:56 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(89)

「そう、御苦労様。九時四十五分か、後一時間ちょっとだな。それで、あのあと幸子さんの家に寄ってご両親に何も可も話しておいたぞ。
そしたら分かってくれた。それから、この中から五千万、お前からだと言って置いて来たから」。
「そうですか、有り難うございました。そうですか、分かってくれたんですか。流石紺野さんですね」。
「いや、話したのは妻だ。お前にも同情していたよ。友世さんのお父さんの面倒を看ている事を聞いて誉めていた。
それで、今度訪ねて来てくれた時は上がって貰うってさ。もし幸子さんの死因の事で細かい事を聞かれたら俺から聞いたと言っておけ。たぶん聞かないと思うが、お前の口から話さない方が良い」。

「有り難うございました。じゃあお金足りないですね。どうします?・・・」。
「俺達に任せておけ。金なんか払う必要はない」。
京平はそう言いながらバックからブリーフケースを出した。そして窓から入る明かりの下で銃に消音器を付けるとカートリッジを入れて弾を「カチャッ」と装填した。そして三河に渡し、また準備を始めた。
「凄いピストルですね、僕本物を見るのは初めてです。僕に持たせてくれませんか」。
「素人がオモチャ代わりに持つ銃じゃない。それに持たない方がいい」三河は低い声で諭すように口にした。
「済みません、それがライフルですか」。
「うん、出来れば使いたくないな。真田、覆面は?・・・」
「はい、買って来ました。一応三つ、ゴリラの覆面ですが買って来ました」。
すると、山道をヘッドライトの光が照らした。京平と三河は覆面を被り、車を降りた。「真田、合図はあるのか」。

「いえ、特にありません、着いたら携帯に電話するそうです」。
「そうか、電話が入ったらあそこの小屋まで来てくれって言え。俺達は先に行って隠れているから」。そう言うと二人は走って物置小屋へ向かった。
そして暗がりに姿を隠すと真田の携帯が鳴るのが聞こえた。
すると、上って来た車のライトが消えた。そして駐車場にゆっくり入り、小屋に向かって近付いて来た。
真田はバックを持つとゆっくりとした足取りで小屋に歩いた。すると、運転席のドアが開いてルームライトが着いて男は急いで消した。
中には誰も乗ってはいなかった。男はエンジンを掛けたまま車を降りるとドアを開けたまま歩いて来た。そして真田に気付いて向きを変えて歩いていた。
「止まれ、一人だろうな」。
「ああ、お前は。それに此れきりだと言う証明はあるのか」。
京平はサッと飛び出すと男にライフルを突き付けた。三河は同時に車に走りエンジンを止めた。

「貴様、良い度胸じゃねえか。俺達を揺するとは」。
「ああああ、ぼぼ僕を殺したら、てて手紙が警察に届くぞ、そそれでも、いいい良いならこここ殺せ」。
「そうか、俺達はいっこうに構わないぜ。警察にも仲間がいるからな、じゃあここで死んで貰おうか」。と京平は額にライフルをグイッとを押し付けた。
「ワワワッままま待って下さい、ししし死にたくない。お願いですからこここ殺さないで下さい。おおおお願いです。お願いです」。
「我々が本気だと言うことを見せてやる」。と京平は駐車場の奥、200メートルはあるだろう、街灯の電球に照準を合わせ、引き金を引いた。パシュッ、と微かな音と共に、パンッ、と電球が弾け散った。
「ア~ッ・・・わわわ分かりました。ご・ごめんなさい、ごめんなさい・・・」。とガタガタ震えだした。
「貴様、俺達に張ったりは効かねえんだ。仲間の面を知った以上生きては帰れねえ。それ位分かって揺すったんじゃねえのかっ!」。京平は男の襟を掴むと車に連れて行った。三河は車を移動させて隣に着けて止めた。
「うう嘘です、誰にも話していません。手紙もありません、それに本当に来るとは思っていませんでした。許して下さい」。
「駄目だ。お前は相手にしてはいけない相手を恐喝したんだ。自殺行為だよ。それに兄弟や両親も気の毒にな。手前の欲の為に明日の朝日は拝めない。心からお悔やみを言うよ。気の毒にな」。
「おおお願いです。両親や妹や弟は助けて下さい。ぼぼ僕が悪かったんです。おお願いです。真田さん何とか助けて下さい」。
そこへ三河が来て車検証と免許証を持って乗り込んで来た。
「おい、お前、山下辰彦。西京区の下津林か、桂離宮の近くだな。此れで彼女とも家族ともお別れだな。相手が悪すぎたな。見たろ、ボスの腕を。短い命だったな」。三河はどすの効いた声で立ち直れないように追い込んで威した。
「ただ、一つだけ助かる方法がない事はない。従うか山下」。
NO-89-18

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(88)&CG

2008-12-17 02:28:48 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(88)&CG

「こりゃ失礼しました。物分かりのいい奥さんで。アッハハハ・・・」。
「もうお父さんたら。ねえ貴方、私少し横になってもいい?・・」。
「いいよ、少し急いで廻ったから疲れたろ。休んでいいよ」。
と美保を連れて二階に上がった。
そして横にさせるとリビングに戻り、義父明雄と話が盛り上がり、時の過ぎるのも忘れていた。
そして夕方、五時を過ぎると出掛けていた母美代子が買い物袋を下げて帰って来た。すると、リビングから京平と夫の笑い声が聞こえ笑みを浮かべていた。
「ただいま、随分楽しそうね。美保はどうしたの?・・・」
「ここに居るよ。お帰りなさい、お父さんがなんか話しがあるってさ。ねえ、お父さん。そうだよね」。
すると父は戸惑いながら見る気もないテレビのスイッチを入れた。すると母美代子は夫の前に座った。「なあにお父さん」。
「う、うん。それはだな、美保。美保が高橋さんの奥さんが作った茶巾寿司が美味しいから、母さんの店で出したら良いんじゃないかって。それに、なんだ、ほら・・・」。と話がメチャクチャだった
「アッハハハハ、なあにそれ、お父さん。お母さん、今日幸子のお墓にお参りに行ったの。そしたら小母さんも来てね、お宅へお邪魔してお昼をご馳走になったの。帰りに手作りの茶巾寿司と天むすをお土産に頂いて来たの。
そしたらお父さんまだお昼食べて無くてそれ食べて貰ったの。
職人さんが作った味と違って家庭的な味で美味しいから、お母さんの店で出したらどうかって。ねえ京平さん」。
「うん、それにじっと家にいるより表に出て働いていた方が気が紛れるだろうって。そう言っていましたよ」。
「まあ、お父さんったら。だったらそう言ってくれたら良いのに。私もその事は気になっていたの、いいわ、後で電話してみますから」。
こうして母と美保は夕飯の支度を始めた。
そして京平は義父の明雄の晩酌に付き合って食事を済ませた。そして七時半になると美保が口を開いた。
「京平さん支度して出掛けないと、知恩寺で待ち合わせでしょ」。
「うん、もうそんな時間。じゃあ義父さん義母さん失礼して行って来ます」。義父母の二人は頷いていた。そして部屋に行くと着替えて金の入ったバックにブリーフケースを入れると玄関を出た。
「京平さん、気を付けてね」。と京平に抱き着いて耳元でそっと告げる美保だった。そんな二人を見ていた両親は笑みを浮かべていた。
そして五分も歩くと知恩寺に着いた。
すると、真っ黒なワンボックスカーが正門に止まっていた。歩み寄るとドアが開いて真田が降りて来た。
「紺野さん、どうぞ」。真田の恰好は黒ずくめだった。
「うん、まるで泥棒にでも行くようだな。じゃあ行こうか」。後部座席に乗り込むと三河昇の待つ京都駅に向かった。
そして二十分、約束通り八時二十分に着くと三河が待っていた。
三河も後部座席に乗り込むと、シャワーを浴びて来たのか石鹸の匂いが車内に漂った。
「今日ははしゃいで廻り過ぎました。でも京都は良いですな。戦争でアメリカさんが空襲しなかった訳が分かりましたよ」。
三河はまだ肌寒い京都に満喫していた。
「三河さん、戦争でアメリカは東京をあんなに空襲したのに京都は何故空襲しなかったんですか?・・・」
真田はまるで子供のような事を聞いて三河は呆れていた。
「それはだな、京都には世界中どこを探してもない日本古来の文化があるんだ。アメリカさんはそんな文化が色濃く残っている京都は残しておきたかったのさ。
寺院仏閣、孰れを取っても世界遺産だからね。日本人にもそう言う心があれば戦争なんかしなかったろうがね」。真田は黙って頷いていた。
車は駅前から七城に出ると西大路通りに出て北へ上った。
間もなく金閣寺に着くと脇の道を火葬場に向けて入った。火葬場には水銀灯の怪しいげな光がただ広々とした駐車場を照らしていた。
真田は京平の指示で一番奥へ車を走らせ、管理棟の裏に車を止めた。
「紺野さん、言われた事を調べてきました。警備会社の巡回が九時に終わっていますから、後は午前一時です」。
NO-88-16

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(87)&CG

2008-12-14 13:19:09 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(87)&CG

「今度来てくれた時は家に上がって貰います。それにお金の事もお礼を言わせて頂ます。所で房子、真田君は佐々木さんの旦那さんを面倒看てるっていうじゃないか、お前知ってたか?・・・」。
「いいえ、さっき美保さんから聞きました。なんて人だろうって」。
「うん、私も今日会社で聞いて来た所だ。貴明君あの父親と血が繋がってなくて良かったな。紺野さん奥さん有り難う。おや、おめでただね、お目出とう」。
「はい、有り難うございます。九月なんです」。
「そうですか、美保さんもお母さんになるんだね。お二人の子供なら可愛いですね。生まれたら私にも抱かせて下さ」。
「はい、是非。小父さん今年の夏は絶対に避暑に来てくれますね」。
「ええ、紺野さん御夫婦には色々御心配頂いてますから、ご挨拶がてら女房と娘の写真を持って必ず行かせていただきます」。
「約束ですよ。小父さん小母さん」。美保の満面んな笑顔に夫婦は揃って頷いて笑っていた。
美保はその笑顔を見ると頬にツ~ッと涙が流れていた。

「美保さん紺野さん。お昼作るから食べてってよ。茶巾寿司と天むす、美保さん好きだったわよね」。
「うん、大好き。じゃあ遠慮なく御馳走になります」。
すると幸子の母房子は化粧を直すと買い物篭を持って出掛けた。
「紺野さん、美保さん、本当に色々有り難うございました。佐々木さん御夫婦があんな事になって女房も塞ぎこんでいたんです。
こんな時は男ってなんの役にもたたなくて。久し振りに女房の笑い顔を見ました。此れでふっきれたでしょう」。と、目を潤ませて頭を下げた。
美保は来て嘘でも良いから話して良かったと胸の内で思っていた。
そして買い物から帰った房子は台所に立ち、料理を始めた。
「小母さん、お手伝いします」。美保に娘の幸子が使っていた前掛けをして、二人は楽しそうに作っていた。

そして茶巾寿司と天むすを山ほど作るとテーブルに並べた。
「わあ~っやっぱりおばさんの茶巾寿司は最高だね、美味しい。大学の頃が懐かしい。幸子ったら良く茶巾寿司持って来てくれて、良く食べたな」。
「そうね、幸子も好きだったわね。お父さん、今日は二人に来て貰って良かったわね。幸子もきっと喜んでいますよ」。
「うん、帰った後が寂しいけどね。房子、これでスッキリしたろ」。
「はい、何ですか胸に支えていた物がス~ッと取れた気がします。幸子はいいお友達を持ったわね。紺野さん、美保さんを泣かせたら私が承知しませんよ、ねえ貴方、アハハハ・・・」と豪快に笑っていた。
「ええ、約束します。幸子さんの分まで幸せにします」。
京平はその言葉の深さに気を引き締めていた。
こうして久し振りの墓参を終えて、茶巾寿司の土産を貰って二人は帰った。

そして真っすぐ実家へ帰った。すると母美代子は店に出掛けて留守で父は午後二時過ぎだと言うのにまだ昼も食べていなかった。
美保は貰って来た茶巾寿司を出してお茶を沸かして食べさせた。
「もうっお父さんったら困っちゃう、お母さんがいないと何も出来ないんだから。そんな事じゃ困るじゃん」。
「こりゃ美味しいな、何所で売っているんだね」。
「もう、ごまかして。それは幸子のお母さんが作ってくれたの」。
「そうかね、高橋さんの所へ寄って来たのか。美保、良かったら母さんの店でこの茶巾寿司だしたらどうだ。家庭的な味で職人が作るのと違って大衆的な味で受けると思うがな」。と、驚くような事を言うのだった。
「うん、それも良いかも。だったらさ、お父さんがお母さんに話してみたら。その方がお母さん喜ぶよ」。
すると、どうしてと言う顔をして娘を見た。

「だってお父さん、お母さんのお店の事気になっている癖に知らん顔してるんだもん。そこから糸口を解いたら」。
「そうだな。美保の言う通りだな。じゃあ今夜にでも話してみるか。お前も大人になったね」。
「そうよ、もう主婦だもん。お父さん、それで今夜だけど、夕食が済んだら京平さん出掛けるから。さっき町でお友達に偶然あって誘われたの」。
「そう、いいよ。それで美保も行くのか?・・・」
「ううん、私は大きいお腹して行かれないよ。それに男同士で行く所は決まっているでしょ。私はそんな野暮じゃありませんよ」。
とニヤッと笑みを浮かべていた。NO-87-14

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(86)&CG

2008-12-12 01:34:29 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(86)&CG

「こんな立派な車に乗せて貰うの初めて。やっぱり高級車ね」。
「小母さん、此れは父のなんです。今日も本当は仕事だったんだけど私達が来るからって休んでくれたの」。
「そうなの、美保さんもやっとお父さんと仲直り出来たのね。幸子もその事心配していたわ、お父さんも頑固だけど美保さんも頑固だからって。でも良かったわね」。
「うん、此れも彼のお父さんのお陰なんです。父を説得して白馬まで連れて来てくれたんです。クリスマスプレゼントだって」。
「そう、居ないわよそこまでしてくれるお父さんは。ご主人のお父さんはハイカラなのね。そうそう、紺野さん、お父さんに宜しく伝えて下さい。私達の事を心配してしょっちゅう電話して下さるんです。気晴らしに泊まりに来てくれって招待状を下さるんですよ」。
「そうですか、でも気晴らしは必要ですよ。幸子さんだって元気な御両親になって欲しいと願っている筈ですから」。
「はい、今度主人と伺います。有り難いわ」。
こうして幸子の実家に行くと幸子の母は先に降りて家に入った。
「京平さん、お願いがあるの」。
「お金の事だろ」。
「えっ、どうして。どうして分かったの」。
「うん、美保が真田の話をした時そんな気がしていたんだ。真田から預かって来た事にして五千万渡してやろう」。
美保は満面な笑みを浮かべて頷いた。そしてバックと白馬の土産を持つと家の中へ入った。
そして仏間に上がると蝋燭の火が灯されていた。二人は幸子の位牌の前に座ると線香を供え両手を合わせた。
そして、バックから五千万の現金を仏壇の前に積んだ。
幸子の母は驚いて目を丸くしていた。
「此れは真田さんから預かって来たんです。こんなお金じゃ取り返しが着かないのは分かっています。でも真田さんの責めてもの償いなんです。貰ってくれますね」。
「はい、有り難う美保さん紺野さん。有り難く頂ます」。
「真田さん言っていました。父は罰が当たったんだって、二人を手に掛けた罰が当たったんだって。小母さん、だから私達が話した真実はおばさんの胸に収めておいて下さい」。
「ええ、今更蒸し返しても幸子は戻って来ませんから。それにマスコミのオモチャにされるのが落ちですからね。
私は真実が分かっただけでいいんです。でも苦しまないで死んだ事が分かって良かった。ねえ幸子」。
そう言うと幸子の母は涙をボロボロ流して嗚咽していた。そして涙を拭くと真面な顔をして二人を見た。
「一つ聞かせて下さい、幸子が殺された事はどうして分かったの」。
「小母さんもニュースで聞いて知ってると思いますが、私達の所へ手紙が届いたんです。それはピース同盟鉄槌の輩って言う人からでした。
その手紙に友世の死因と幸子の事が事細かく書かれていたんです。それで真田茂さんはその人達が処刑したって」。
「えっ、じゃあ真田さんもその人達から知らされたの?・・・」。
「いいえ、詳しい事は私達が知らせました。もっと早くお知らせしようと思ったんですが、私達も悩んだんです。真実を話しても良いのかどうか。
もし警察が動いて小母さん達にまた嫌な思いをさせるんじゃないかって。でもお話しする事に決めて伺ったんです」。
「そうですか、有り難う。でも私の胸だけに収めて置きます。このお金の事は主人には真田さんの見舞い金と言う事で話します」。
「房子、聞かせて貰ったよ。美保さん紺野さん有り難う。声を掛けようと思ったんですが、つい言葉が出なくて」。
幸子の父親が帰っていたのだった。
「小父さん、お邪魔しています。小父さん、いまの話しは本当です」。
「はい、私も幸子が苦しまずに死んでいった事が分かって少しは。警察には言いません、そんな事をしても幸子は生き返りはしませんからね。
それより美保さんや紺野さんに迷惑を掛けてしまう、それに真田君にも。彼は本当に良く来てくれます。
こいつが門前払しても毎月の月命日には花を持って来てくれてるんです。私はもう彼の事は許していたんです。女房だってそうですよ、なあ」。
すると幸子の母も涙を流しながら頷いていた。
NO-86-12


小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(85)&CG

2008-12-09 18:30:33 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(85)&CG

「三河さんそれはまずいよ。目的は逮捕じゃありませんからね」。
「あ痛!・・・そうでした。どうも刑事根性が抜けません。それで此れからどうします?・・・」
「ええ、ともかく一緒にいる所を人に見られるのはまずいから、真田は帰って自由にしていてくれ。それから三河さんは観光でもしていて下さい。僕等はまだ幸子さんのお墓参りが残っています。
真田、車を調達してくれないか。出来たら目立たないのが良いな」
「はい、それだったらワンボックスがありますから使って下さい」。
「うん、それにしよう。今夜八時に知恩寺の正門に迎えに来てくれ。三河さんは八時二十分ころ駅前のタクシー乗り場の近くに出ていて下さい。速めに行って待ちます」。
「分かりました、ではそうします。じゃあ金閣寺で降ろして下さい。ゆっくり京都見物でもしますか」。
「僕は買い物がありますから京都駅の辺りで降ろして下さい。それと此のお金は約束した一部として貰ってくれませんか」。
「いや、それは仕事が済んだ後にしよう。三河さん、少し貰って行って下さい。経費は幾らあっても困りませんよ」。
すると真田はバックを開けると札束を一掴み三河に差し出した。
「いや、そんなには要らない。一つで良いよ、有り難う」。
三河は百万円を受け取ると内ポケットに入れた。そして出した手には帯び封を切って丸めていた。それをポケットにいれた。
火葬場を出て金閣寺で三河を降ろした。
そして西大路通りに出ると南に真っすぐ下り、七条から七条堀川の信号を南に右折すると、真田がここでと車を止めた。
「紺野さん、バック重くて置いて行っても良いですか?・・・」
「うん、預かっておくよ」。
「じゃあ今夜八時に知恩寺の前で。車は黒いワンボックスです」。
「分かった。もし急に用があった時はここへ、携帯のナンバー」。京平は手帳に携帯のナンバーを書き込むと真田に渡した。
真田は何故が嬉しそうに両手で受け取って頭を下げると車を降りた。
そして京平の車が走り出すまで見送っていた。
京平達は真っすぐ南に下り、東海道線と新幹線のガードをくぐり九条に入った。
そして東寺の駐車場に車を入れた。
そして生花店に寄って高橋幸子の墓に備える花を買った。美保は花束を抱えると急に寂しそうな表情になった。すると頬に涙が流れていた。
京平はそっと涙を拭うと肩を抱いて墓地へ歩いた。途中、水桶としゃくを借り、幸子の墓へ行くと供えてある萎れた花を抜き取り、水を変えて花を生けた。
ロウソクに火を灯して線香に火を点けた。二人は一歩二歩下がると膝を着いて数珠を手にそって両手を合わせていた。
「幸子、私京平さんと結婚したの。見て、赤ちゃんも生まれるの」。美保は友世の墓に話したように幸子の墓にも同じように報告しては睫を濡らしていた。
「美保さん?・・・美保さんじゃない、来てくれたんですか」。振り返ると幸子の母親がほうきを手に立っていた。
「小母さん、御無沙汰しています。私彼と結婚したんです。見て、赤ちゃんが出来たんです。その報告をしに幸子に、今から寄ろうと思っていたんです」。
「そうだったの、美保さん紺野さんお目出とうございます」。
「おばさん、話があるんです」。
そう言うと幸子の母親は美保の隣に膝を折ると屈んだ。美保は真田から聞いた本当の気持ちを幸子の母親に伝えた。
すると始めは表情が強張っていた母親も次第に緩んで頷いていた。
「そうだったの、本当の親子じゃなかったの。知らなかったわ、って言うより私は聞く耳を持たなかったし、憎んでいたの。
真田さんも苦しんでいたのね。私、真田さんに謝らなくちゃね、あの人済まないってしょっちゅう来てくれているの。
私ったら、去年の夏に真田さんのお父さんが殺されたって聞いた時は内心喜んでいたの。此れで私達の辛さが分かるだろうって。幸子はお父さんに」。
「小母さん、真田さんはそんな事言い訳になるから言えなかったのよ。小母さんも知っているように、真田さん友世とは結婚も約束してたの。彼は噂とは全然違って心の優しい人よ、許して上げて小母さん」。
「良く話してくれたわね、有り難う美保さん。幸子は良いお友達を持ったわね。有り難う美保さん」。
そして幸子の墓を掃除すると墓地を出た。そして母親を乗せてすぐ近くにある西九条の家に向かった。
NO-85-10

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(84)&CG

2008-12-06 21:33:14 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(84)&CG

「私か、私はこういう者だ。真田、此れからは宜しく頼む」。
三河は警察手帳を出すと第一頁の高級用紙第一面を出して見せた。すると真田は驚きと共に目を丸くして声も出なかった。
「け警視庁!・・・警視庁の警視さんですか!・・・凄いです。自分こそ宜しくお願いします」。
「まあそんなに驚くな、所でその電話の主から連絡はあったのか」。
「はい、今朝ありました。今夜十一時に大文字山にある蓮華谷火葬場に一人で来いと言って来ました」。
「貴方、ここからなら三十分くらいだから行ってみましょう」
「うん、じゃあお参りして下見に行こう。真田」。
「はい、僕は月命日には幸子さんと友世には会いに来ているんです。そんな僕を見て友世のご両親には許して貰いました。
その矢先でした。でも幸子さんのお母さんにはまだ許して貰えていません。僕も辛いです」。
貴明はスーツが汚れるのも気にせず墓を掃除した。そして線香を炊いて四人で供養した。
京平はそんな真田を見て、電話でこの寺を指示したとき、真田の声が心なし動揺しているような何かを感じ取っていた。今までの話でそれが何だったのか分かった。そして寺を出て駐車場に向かった。
「このベンツはボスのだったんですか?・・・」。
「おい、ボスは止めてくれないか。僕は紺野だよ」。
「そうよね、ボスって変よ真田さん。紺野さんでいいじゃない」
「はい、じゃあそう呼ばせて戴きます。なんか夢みたいです。僕はもっと怖い人達だと思っていましたから」。
「そりゃそうさ、警察より怖いからな。ねえ三河さん」。
「ええ、悪い奴等には相当怖い組織でしょう。でも困って泣かされている人にとっては天使ですよ」。
真田は仲間が出来て安心したのか強張っていた表情も次第にほぐれて行った。
寺を出ると美保の案内で蓮華谷火葬場に向かった。
寺から北へ走り、千本鞍間口と書かれたバス停留所から東に左折し、柏野小学校方向に走り、小学校の手前を南に右折した。
そして、天神川の橋を渡って少し走ると右前方に金閣寺の看板が見えて来た。そして前方には大文字山が望めた。
「京平さん、その道を山の方へ上がると蓮華谷火葬場よ。友世もそこで荼毘に伏されたから」。
「奥さん、僕もあの日は行っていたんです。でも葬儀には出て欲しくないってお母さんに言われて」。
「そうだったの、友世は心から真田さんの事を愛していたのよ。真田さんに見てて貰えたんだ。でも酷いお父さんだったわね」。
「はい、何も反論出来ません。でも養父とは言え僕を育ててくれましたから」。
真田はそう言うと口をつぐんでしまった。そして間もなく火葬場に着いた。
すると沢山の車が止まっていた。見上げると煙突から薄い煙が立ち登っていた。
美保は手にしていた数珠をそっと合わせて頭を下げていた。
そして駐車場の隅に車を止めた。
「真田君、それでここへ十一時と言っただけなのか」?・・・三河が訊いた。
「はい、それだけでした。それに仲間もいないようでした」。すると、携帯が鳴った。それは真田の携帯だった。
真田は携帯を持つと耳に充てた、すると携帯に指さしてバックに目を送った。恐喝している犯人からだった。
京平は真田の携帯に耳を近付けた。
「真田さん、もう金は用意出来たのか?・・・」。
「いえ、此れから銀行から届けて貰う所です。場所は同じ所で良いんですね」。
「うん、誰にも話してないだろうな。もし話したら父親殺しにあんたも拘わっていた事を話すからな」。
「そんな事はどうでもいいですから、お金が欲しいんでしょう」。
「ああ、金持ちには分からないだろうな。金が欲しいさ。金さえあればなんだって出来るからな。それも一億だ。あんたも良くやるよな、父親の財産をそっくり貰ってさ。悪い事は出来ないよな。じゃあ頼むよ」。
そう言うと電話が切れた。そして携帯の電話番号を三河は控えた。
「紺野さん、まだ若いですな。それにナンバーディスプレーされる事も警戒していません。このナンバーを本庁に電話して直ぐに調べさせます」。
NO-84-8

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(83)CG&コチョウラン

2008-12-02 20:27:27 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(83)コチョウラン&CG

京平も三河も声を掛けるのを遠慮した。
美保は花束を抱えて思い出したのか、涙ぐんでいたのだった。
「ごめんなさい貴方、三河さん。友世の事を思い出しちゃった。あの子このコチョウランが好きで、自分でも家で栽培していたの。将来は蘭の栽培を本格的にやりたいって言っていたのに、殺されちゃった」。
「そう、でもちゃんと敵討ちもしたし、きっと喜んでくれているさ」。
「うん、その事も結婚した事も赤ちゃんの事も報告しなくちゃ」。そして上京区の石像寺の先にある浄光寺の駐車場に車を入れた。
京平達は美保の後に続いて墓に歩いた。途中にある墓参用の小屋にある桶を取ると水を汲んでひしゃくを持った。そして人気のない墓の中を歩いた。
すると美保は止まった。「エッ・・・誰も来てないみたいね」。
美保は裏に廻った。すると目付きが変わった。京平は裏に廻ると墓石の裏には新しい名前が掘り込まれていたのだった。
「京平さん、見て・・・小母さんついこの間亡くなっている。どうして、どうして死んじゃったのよ」。
美保は両手で顔を覆うと泣き出した。京平は美保の身体を支えると日付を見た。
すると、二月十五日、「娘の命日じゃないか」。美保は泣きながら頷いた。京平も三河もその先言葉がなかった。
そして美保は暫くの間、座って呆然としていた。
「なんで死んじゃったんだろ。おばさん友世の分まで長生きするんだって言っていたのに。辛い・・・私辛い」。
すると、砂利を踏む足音がした。見るとドクターの診察カバンに似た黒いバックを下げた真田貴明だった。そして美保に気付いた。
「立花さん、立花美保さんですよね。友世さんとお付き合いしていた真田です。済みませんでした。自分が殺したようなものです」。
京平も美保も驚いた。真田はそう言うと、鞄を置いて墓の前に土下座して詫びているのだった。
そして、済みませんを繰り返しているのだった。
「それに今度はおばさんまで自殺して、それも友世さんの命日に。あの日、命日だからお宅に訪ねたら、小父さんと二人で座敷で首を吊っていたんです。
直ぐに救急車を呼んだんです。小父さんは何とか助けましたけど、小母さんだけが手遅れでした。小父さんはその後遺症で今は寝たきりです」。
「真田さん、有り難う。貴方やっぱり友世の事を?・・・」。
「はい、好きでした。結婚も考えていました。でも父が許してくれませんでした。本当に済みませんでした」。と涙をポロポロ流していた。
「真田さん、幸子の事はどうだったの。私には分からない、幸子何も私には話してくれなかったから」。
「幸子さんは父に騙されていたんです。父は僕と結婚させるからって、僕は友世さんの事が忘れられなくて、一度も関係を持った事はありません。父が幸子さんを・・・・・」
美保はその真田の姿を見て、本当に愛し合っていたんだと感じた。美保は涙を拭くと京平の目を見て頷いた。京平もまた頷いて三河を見た。そして真田の前に立った。
「真田、俺だ。分かるか」。
すると、真田は退け反るように驚いて顔を上げた。その目は恐怖に満ちていた。
「まさか!・・・立花さん」。
美保は黙って頷いた。真田は京平を見た。
「お前の親父を始末したのは俺だ。美保も最初から知っている。俺がユキワリ草さ、それにピース同盟・鉄槌の輩。安心しろ、仲間だ」。
「はい、本当に有り難うございました。立花さんの御主人ですか」。
「美保は俺の妻だよ。悪かったな、今まで苦しい思いをさせて。どうだ、これで安心したか」。
「はい。それから立花さん、友世さんのお父さんは自分の病院で一生面倒を見させて頂きますから安心して下さい。こうなったのも僕の責任ですから」。
「お願いします。貴方の事、誤解していました。それを主人が見抜いてくれたんです。もう少しで貴方を殺してしまう所でした。それを主人が貴方の父親の茂が陰で糸を引いているって」。
「そうですか、僕に少しだけ勇気があれば知世を死なせなくて良かったんです、本当に情けなくて・・・」。と嗚咽していた。
「真田、お前も辛かったろ。これからこの墓はお前が守れ、でもまだ若いんだ、やり直せ」。
「はい、その積もりでいます。頑張ります。それで、こちらにいる方は?・・・」
NO-83-6


小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(82)&CG-イラスト

2008-12-01 21:05:47 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(82)&CG-イラスト

「ああ、私だ。今夜は駅前のホテルに泊る、明日一番で京都に行くから留守を頼む」。携帯を切ると両手を延ばして全身で深呼吸すると、その手を上げたままでいた。
すると、そこへ空車のタクシーが走って来て真横に止まった。三河は笑いながら乗り込むとカプセルホテルに向かった。
翌日。三河は駅に向かうとキヨスクで弁当を買った。
そして、予定通りひかり153号七時四十五分発の新幹線に乗り込んだ。一番の新幹線だと言うのに、こんなに乗客がいるのか?・・・そう思う程、乗客が次々と乗り込んできた。
席に座ると早速買って来た弁当を紐解いて新聞を読みながら朝食をしていた。
その頃、京都の京平と美保も起きていた。美保の母美代子の作った朝食を義父明雄と共に食べていた。

「美保、今日はどうするんだ。京平さんと何所かへ廻るのか」。
「うん、友世と幸子のお墓に結婚した事を報告してから、二人の家に行って来たいと思っているの。お父さん今日お休みでしょう。車貸してくれないかな」。
「うん、使いなさい。お母さんは午後からお店だから、父さんは留守番しているよ」。と、父明雄は何年振りかの親子揃っての食事を楽しんでいる様だった。
そして食事を済ませると二人は父親のベンツを借りて出掛けた。
美保の実家は左京区の田中と言う閑静な住宅街にあった。近くには美保の母校である京都大学や農大や理学部があり、車で五分も走ると下鴨神社があった。二人は京都大学の東のバス通りでもある東大路通りを南に下がった。
そして祇園に入ると西側には八坂神社があり、多くの観光客が朝から思い思いのお洒落をして歩いていた。

そして去年の六月に泊まった京都パークホテルを東に右折し、鴨川に架かる七条大橋を渡り、七条警察署の交差点を南に右折し京都タワー方面に入った。
そして間もなく京都ステーションホテルに着いた。
京平はロビーに車を付けると時計を見た。九時五十分、もう三河はとっくに来てていい筈だった。
「京平さんあそこ、三河さん反対の方を見ている」。
美保が指さした方向を見ると確かに三河が立っていた。京平は車を出すと真横に止めた。三河は驚いたように避けた。
ウィンドーを下ろすとニヤッと白い歯を覗かせた
「なんだ紺野さんですか。どうしたんですベンツなんか乗って」。
「お早う御座います。お疲れ様でした。美保の義父さんから借りて来たんです。どうぞ乗って下さい」。

「此れはこれは、私達はこんな高級車にはまず乗れませんからね」。そう言うと照れ臭そうに後ろのドアを開けると乗り込んだ。
ふと見ると、周囲にいた人達か見て見ぬ振りしながら誰だろうと言うような目付きをしていた。京平は車を出すと上京区へ向かった。
「それで、真田とは直接会うんですか」。
「ええ、もう隠しておく必要はないでしょう。彼も今となっては仲間と言っても良いですから。今から美保の親友の佐々木友世さんのお墓参りに行きます。そこへ呼び出します」。
「そうですな、お二人は真田を救ってやったようなものですからね。私もどんな男なのか会ってみたくなりました」。
すると京平は堀川通りの西本願寺の手前で車を止めた。
助手席の美保がバックから携帯を出し、真田貴明の電話番号を押して渡した。車の時計は午前十時ちょうどだった。
「俺だ、いまからその金を持って上京区にある浄光時に来い」。
「はい、いつも時間通りなんですね。上京区の浄光寺ですね。タクシーで直ぐに行きます。それで誰を待つんです」。
「ああ、来れば分かる。俺はお前の顔を知っているから心配するな」。
「はい、では後程。失礼します」。
京平は再び車を出した。そして途中で生花店を見付けると車を止めた。美保は花を選ぶ事もなく、佐々木友世が好きだったと言う艶やかなコチョウランを買った。そして大事そうに抱えると車に乗った。NO-82-4

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(81)&デッサン

2008-11-30 00:08:34 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー・3章・NOー(81)&デッサン

鉄槌のスナイパー3章

三河昇はその報告を受けて取り調べ室に向かった。
宮崎は取り調べ室でも手錠を掛けられ、両脇に巡査が立っていた。三河は椅子に座ると手錠が外された。そして供述を書き留める刑事が隅の椅子に掛けて書類を広げた。
「私は責任者の三河警視です。なんで逮捕されたのか分かりますね」。
男は顔を上げて三河を見た。そして黙って頷いた。
「では単刀直入に聞きます。二月二十七日、北海道釧路市にある釧路ビラホテルに滞在していた東京の闇金の社長、堂島ローン堂島岩雄さん58才を射殺しましたね」。
「ええ、自分が殺しました」。
驚く程淡々と答え、サッパリした目をしていた。三河はあまりにもアッサリ罪を認めた事に驚いていた。
「殺害の理由は恨みか、それとも誰かに頼まれたのか」?
「ああ、頼まれた」。
「誰に頼まれたんだ。依頼したのは誰だ」?
「そんな事を言うと思うのか、自分はプロの殺し屋だ。殺したのは自分だと言っている、死刑にでもなんでもしろ、覚悟は出来ている」。
そう言う西崎の顔は堂々として一片の曇りもなかった。
「では、訊くが。此の銃とライフル、それに特種な弾丸だが、何所から手に入れたか話して貰おうか」。

「そんな事は話せない、ただ日本国内じゃない事は確かだ。後の事は何も喋らない。それが殺し屋の鉄則だからな」。
「笑わせるな、一端の口を利くんじゃない。プロの殺し屋が防犯カメラに撮られたりするか。アホが」。すると、西崎の目付きが鋭くなり、顔色が変わった。
「まあそれも良いだろう。我々が見た所、貴様はまだ見習いだろう。一端の口を利くのは十年早いんだよ。何がプロだ、貴様はただの人殺しに過ぎない。では仲間は?・・・リーダーが居るだろ」
「勝手に探せ」男はふて腐れた。するとドアが空いて小川警部が三河を呼んだ。
三河は外に出た。
「警視、この写真と名前が西崎の部屋から押収したパソコンに入っていました。例の亀石峠で事故死した三人と一致しました。先程静岡県警に問い合わせして確認を取りました」。
「分かった、この名前が本名なんだな」。
小川警部は頷くと書類と三枚の写真を渡すと戻って行った。三河は椅子に座ると写真を西崎の前に並べた。

「これを見ろ、長谷川五郎35才、菊地民雄32才、戸部裕也同じく32才。お前の仲間だな」。
「馬鹿な奴等だ。事故で死にやがった。死んだ奴等まで隠す事はないからな、自分の仲間だよ。それで全員だ」。
「お前はどうしてその車に乗っていなかったんだ」?
「自分はオーストラリアにいた。奴等が事故死したのは帰国して知ったんだ。ついでに言っておくが、どうして三人は伊東に向かっていたのかは知らない」。
「そうか。話は変わるが、去年の十二月二十二日の晩、暴走族を八人殺したのもお前か。ピース同盟鉄槌の輩とか言う過激派の名前で犯行声明を出したろ」。
「あれは自分じゃない。でも良い事じゃないか、そのお陰で暴走族は次々に解散したんだろ。警察の手を省いて貰ったじゃないか」。
「確かにそれはある、では亀石峠で事故死したこの三人はお前と同じ銃やライフルは持っていたのか?・・・」

「そんな事は知らないよ。何所かへ隠したんだろ」。
「では、お前白馬に何をしに行った。目撃されているんだ」。
「ああ、その事か。お宅ら警察が調べていたろ、紺野とか言うペンションの息子の事をさ。あの三人が事故死した時も伊東にいたし、なんだっけ、大浜だったっけ。二人のヤクザが殺された時も近くにいたらしいじゃないか。
警察の動きなんか手に取るように分かっていたよ。それでどんな男か見たくなって行ったまでさ。調べるならもっと隠密に調べないとな、笑っちゃうよ公安にはよ。アッハハハ・・・」。
「勝手に笑っていろ、ではもう遅いから今夜は此れくらいにして明日からみっちり調べるからゆっくり寝ておけ」。
三河は廊下にいた巡査を呼んで手錠を掛けさせた。そして西崎は立ち上がって知り調べ室を出た。すると止まって振り向いた。
「一つ言っておくが、自分が死刑になっても殺し屋はまた送られてくるよ。じゃあなお休みなさい三河警視殿。アッハハハハハ」。
西崎は京平達の事は興味本位で顔を見に行ったと言う言葉で心ならずもホッとしていた。そして西崎の笑い声が廊下に響き渡っていた。
三河はデカ部屋に戻ると明日からの捜査方針を指示して警視庁を出た。
そして腕時計を見ると十一時を廻っていた。背広のポケットから携帯を出すと家に電話した。NO-81-3