うわごと

しかし、相変わらずいい女だね・・・僕は・・・人生でひどい失敗をした。損得でいえば・・・明らかに大損だ。全負だ。

彼女が微笑むと模造花までもがそよぐ、照明も色をなくす、彼女は掛け声とため息に浸される。僕はその美に圧倒され、つぎに戦慄する。

騙しだまされあう、それが男女の付き合い方である。ただし、底に通ずる信頼があってこそのものだと、今気づきそして恥じ入っている。

ただ好きだといって成る恋もあろうが、それは単なる恋情のぶっちがい。徒な恋に身をやつすには、彼女も僕も機が熟しすぎている。

彼女は正直な女だ。そして僕も正直だ。これでよかったのかもしれない。しかし僕は損をして彼女も得をしていない。僕の損分、ちょっとだけあずかった幸福は、おそらく天に戻っていったのだろう。天の寺銭とはなんにでもかかるもの、時間と情愛への税金なのかもしれない。